体験談：天才肌の友人 ［感動］

運動全然してないはずなのに、体育の授業やると、
バレーの時はバレー部に、陸上の時は陸上部に、などなど、
大抵部活で全力で打ち込んでる人らに平気でついていく。
時に上回る。
流石に全国クラスの奴にはかなわないけど、それにしたって良い勝負をする。

熱烈には勧誘するが、逆にやる気のない奴はすぐ切る、
どんなに昔凄くても、サボって鈍ってる奴は、自己管理できないとして入部拒否。
そんな意味不明に厳しいことで有名だった、うちの野球部のコーチが、
3年の6月まで

「お前なら今からでも入れるから、頼むから野球やらないか」

と体育の授業のたび、声をかけつづけてたのが凄い印象的。

「やんねーっつってんだろハゲｗｗ」「ハゲでいいから入部しろよｗｗ」

と、終いには掛け合いのようになっていったけども。
3年の6月に勧誘て。最後の大会まであと1ヶ月じゃないか。

とはいえ、やはり運動性能先行型。
勉強は元々苦手だったというし、
その上宣言通り遊びまわってる訳だから、成績は最低クラスだった。
どうやって、うちの学校に入ったんだろう、
というくらいダメだった。

本当に頭悪かった。
中高生って、頭良い奴って、変に隠したがるよね。
謙遜とは違う、嫌味な隠したがりかたのアレ。
でも話してて、何か判るよね。
頭悪いふりしてるのか、隠してるのか、それとも真性で頭悪いのか。

間違いなく、彼は真性で勉強ダメだった。
テストの点は悉く壊滅的。
両親が医者だそうで、その期待に答えようと
テストの時は頑張ってたが、やはり壊滅的。
模試の全国偏差値は、我が校屈指の40前後。
うちの学校だけでの偏差値なら30代半ばか下だったろうか。

どんな競技も、かなり高いレベルで軽々こなし、
運動性能だけで、既に天が2物も3物も、10物だって与えたような奴だったけど、
流石に勉学までは無理だったか。

とはいえ、人柄は最高に良い奴で、
優しいし明るいし、人として好きだった。
勉強くらい出来ないったって、別に誰も気にしてなかった。

が、3年の秋。
もう自由登校に入ってたから、既に冬だったかも。

唐突に

「俺、そろそろ勉強頑張らないとダメかな〜？」

と言い出したんよ。
いつもみたいに、ダルそうな声で、笑いながら。

そんな台詞は、この3年間、期末テスト前に山と聴いてたので、
いつも通り

「そうだよーほらやんないとーｗ」

なんて一緒に笑ってた。

さて年明けの、最後の全国模試。
偏差値68とか70とかが平気で踊ってた。

今はお医者目指して大学で頑張ってる。

今でも信じられない。
物理的におかしいだろ普通に。
ドラゴン桜とか、トライのCMとか、
そういう受験の奇跡物語でだって無理だろ。
3年間勉強してなかった子が、
冬休みだけで何を挽回するってのか。

しかし実際に素晴らしい結果を残してるわけで、
なんていうか、高校3年間ずっと夢でもみてたんじゃないかと、
今でも彼の存在が不思議で仕方がない。

神様ってたまに凄いのつくるんだなと。
あそこまで行くと逆に失敗作かもなとか。