「ニッポンは今どうなってますか?」
地震の後、アハメド・カリールさん(49)の携帯は、本国からの電話で鳴りっぱなしだった。
本国とはインド洋の島国モルディブ。
カリールさんはその駐日大使だ。
男性の声、女性の声、子どもの声。
知らない人ばかり。
とにかく心配していることだけ伝えると、名前も言わず1分足らずで切れる。
「国際電話で長く話すお金がないんですね」(大使)。
それでも1週間、毎日2回かけてくる女性の声もあった。
モルディブでも地震直後に、テレビやラジオを通じた被災者支援キャンペーンが始まった。
大使の電話番号が画面で紹介され、それを見て直接電話をしてきたらしい。
キャンペーンでは大統領もスポーツ選手も歌手も、協力を呼びかけ続けた。
36時間で700万ルフィヤの義援金が集まった。
人口31万人の国民の多くは貧しく、約4600万円の義援金は「記録的」。
お金が出せない人はツナの缶詰を持ってきた。
ツナ缶は国内の業者が引き取り、塩水ではなくオイル漬け、缶切りなしで開けられるプルトップの日本特別仕様に替えられた。
69万個。
国民1人あたり2個以上だ。
2万人が参加した首都での追悼行進。
国家元首が亡くなった時でも1日限りの半旗掲揚が閣議決定で3日間に。
「前代未聞のことばかりです」
支援は今も届き続ける。
合言葉は「日本に恩返しを」。
こちらはほとんど知らなかったけれど、モルディブの人たちは日本にとても感謝しているという。
小中学校や、04年のインド洋大津波から首都を守った防波堤などが日本のお金(政府開発援助)で造られたこと、国を支えるマグロ・カツオ漁や水産加工業が日本の技術と資本で発展した歴史……。
忘れずにいてくれたのがうれしい。
今度は日本が深く心に刻む。
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