「ねえ、超能力おじさんって知ってる?」
学校の帰り道、友人が突然そう聞いてきた。
「何だよそれ。超能力を使うおじさんなのか?」
「それもあるけど、もっと凄いんだよ。そのおじさんは『他人に超能力者にする』能力を持っているんだ。
そのおじさんに千円を支払うだけで、誰でも3時間だけ超能力者になれるんだ。
学校の校門前にいつも座り込んでる汚いホームレスがいるだろ? あれが、超能力おじさんなんだよ。」
「嘘だろ。」
と、俺は一笑に付した。
「嘘じゃないよ。今まで何人も、おじさんに超能力を授けて貰ったって奴がいるんだ。かく言う僕もそうさ。」
友人はそう言うと、掌を上向けた。
その掌から、ゴーッと灼熱の火柱が上がる。
「パイロキネシス。……発火能力って奴だよ。
僕もさっき超能力おじさんに千円を支払って、この能力を貰ったんだ。」
「そりゃ凄いな。」
俺は考えた。もし俺に超能力があれば、凄い金儲けが出来るかもしれない。
今の貧乏暮らしからも抜け出せるかもしれない。
俺は千円札を手に、校門前のホームレスの前に行ってみた。
どうせ駄目で元々だ。
千円札を受け取ると、その汚らしいホームレスはニヤリと笑っておれの手を握った。
「いやあ、これは助かるぜ。今日も一日食いっぱぐれなしだ。
お礼に、君に3時間だけ特別な能力をあげよう。」
「どんな能力ですか?」
「君はギリシャ神話のミダス王を知っているかい? 触れた物を総て金に変えたという伝説の王さ。
それと同じ力だよ。今から君が触れた物は全て黄金になる。最強の錬金術さ。
ああ、ちなみに3時間経つと君の錬金術の能力自体は消えるけど、
一度変化させた黄金はずっとそのままだから安心しろよ。」
そう言って、超能力おじさんは笑いながらその場を立ち去った。
俺は試しに、道端の石ころを拾い上げてみた。
すると、その石は俺が触れた瞬間に光輝く黄金になった。
マジかよ。
これ、本物の金なのか?
俺は触るだけでどんな物でも黄金に変えられる超能力を手に入れたのか。
超ラッキー!!
俺は辺り構わず石ころや木の枝や、鉄くずなどを拾い集めた。
それ等のガラクタは俺が触る度に光輝く黄金に変化する。
これだけの黄金を換金したらどれだけの価値になるだろう。
俺は一気に億万長者になってしまったみたいだ。
そう思うと余裕が出てくる。
今まで金の無駄だからと思って我慢してたけど、ゲーセンにでも行ってみるかな?
ええと、今財布に何円入ってたっけ……と、財布に触れた時、俺の財布自体も、そして中の札も小銭も皆黄金に変化してしまった。
やべ、自分の所持金まで黄金に変化させてしまった。
これじゃあ今はゲーセンで遊べないじゃないか。
どうしよう、困ったな。
俺は思わず頭を抱えた。
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