俺の祖父は医者だった。
っていっても金はなく家はボロボロで食事なんか庭の野菜とお茶漬けと患者さんからの頂き物だけ。
毎朝4時に起きて身寄りのいない体の不自由なお年寄りの家を診察時間になるまで何件も往診して回る。
診察時間になると戻ってきて待合室に入りきらないで外まで並んでる患者さんを診察していく。
昼休みはおにぎりを片手にまた往診。
午後の診察をこなし食事をすませてまた往診。
夜中に玄関口に患者が来たり電話があればいつでも駆けつける。
一年365日休みなど無かった。
自分の体調が悪くなっても自分を必要としている人がいるからと病院にもいかず診療を続け無理矢理家族に病院に連れて行かれた時にはもう手遅れ。
末期がんだった。
でもどうせ治らないなら入院はしないと痛みをごまかし死ぬ間際まで往診続けてた。
遺産なんか何もなし。
残ったのはボロボロの家だけ。
聞けば治療費を支払えない人ばかりを診察・往診していてほとんど収入なんか無かったんだって。
でも葬式のとき驚いた。
患者だけで1000人ぐらい弔問に訪れ、中には車椅子の人や付き添いの人に背負われながら来る人もいた。
みんな涙をボロボロ流して
「先生ありがとう、ありがとう」
と拝んでいた。
毎年命日には年々みんな亡くなっていくからか数は少なくなってきてはいるけど患者さんたちが焼香に訪れる。
かつて治療費を支払えず無償で診ていた人から毎月何通も現金書留が届く。
いつも忙しくしてたから遊んだ記憶、甘えた記憶など数えるぐらいしかないけど今でも強烈に思い出すことがある。
それは俺が中坊のときに悪に憧れて万引きだの、恐喝だの繰り返していたとき。
万引きして店員につかまって親の連絡先を教えろと言われて親はいないと嘘ついてどうせじいちゃんは往診でいないだろと思ってじいちゃんの連絡先を告げた。
そしたらどこをどう伝わったのか知らないけどすぐに白衣着たじいちゃんが店に飛び込んできた。
店に着くなり床に頭をこすりつけて
「すいません、すいません。」
と土下座してた。
自慢だったじいちゃんのそんな無様な姿を見て自分が本当に情けなくなって俺も涙流しながらいつの間にか一緒に土下座してた。
帰り道はずっと無言だった。
怒られるでも、何か聞かれるでもなくただただ無言。
逆にそれがつらかった。
家にもうすぐ着くというときふいにじいちゃんが
「おまえ酒飲んだことあるか?」
と聞いてきた。
「無い」
と言うとじいちゃんは
「よし、着いて来い」
と一言言ってスタスタ歩いていった。
着いた先はスナックみたいなところ。
そこでガンガン酒飲まされた。
普段仕事しているところしか見た事がないじいちゃんが酒飲むのを見るのも、なによりこんなとこにいる自体なんだか不思議だった。
二人とも結構酔っ払って帰る道すがら川沿いに腰掛けて休憩してたらじいちゃんがポツリと
「じいちゃんは仕事しか知らないからなぁ。おまえは悪いことも良い事もいっぱい体験できててうらやましい。
お前は男だ。悪いことしたくなることもあるだろう。
どんなに悪いことをしても良い。ただ筋の通らない悪さはするな。」
と言われてなんだか緊張の糸が切れてずっと涙が止まらなかった。
それから俺の人生が変わった気がする。
じいちゃんのような医者になるって決めて必死で勉強してもともと頭はそんなに良くは無いから二浪したけど国立の医学部に合格した。
今年晴れて医学部を卒業しました。
じいちゃんが残してくれたボロボロの家のほかにもうひとつ残してくれたもの。
毎日首にかけていた聴診器。あの土下座してたときも首にかかっていた聴診器。
その聴診器をやっと使えるときがきた。
さび付いてるけど俺の宝物。
俺もじいちゃんみたいな医者になろうと思う。
残ったのはボロボロの家だけ。
聞けば治療費を支払えない人ばかりを診察・往診していてほとんど収入なんか無かったんだって。
でも葬式のとき驚いた。
患者だけで1000人ぐらい弔問に訪れ、中には車椅子の人や付き添いの人に背負われながら来る人もいた。
みんな涙をボロボロ流して
「先生ありがとう、ありがとう」
と拝んでいた。
毎年命日には年々みんな亡くなっていくからか数は少なくなってきてはいるけど患者さんたちが焼香に訪れる。
かつて治療費を支払えず無償で診ていた人から毎月何通も現金書留が届く。
いつも忙しくしてたから遊んだ記憶、甘えた記憶など数えるぐらいしかないけど今でも強烈に思い出すことがある。
それは俺が中坊のときに悪に憧れて万引きだの、恐喝だの繰り返していたとき。
万引きして店員につかまって親の連絡先を教えろと言われて親はいないと嘘ついてどうせじいちゃんは往診でいないだろと思ってじいちゃんの連絡先を告げた。
そしたらどこをどう伝わったのか知らないけどすぐに白衣着たじいちゃんが店に飛び込んできた。
店に着くなり床に頭をこすりつけて
「すいません、すいません。」
と土下座してた。
自慢だったじいちゃんのそんな無様な姿を見て自分が本当に情けなくなって俺も涙流しながらいつの間にか一緒に土下座してた。
帰り道はずっと無言だった。
怒られるでも、何か聞かれるでもなくただただ無言。
逆にそれがつらかった。
家にもうすぐ着くというときふいにじいちゃんが
「おまえ酒飲んだことあるか?」
と聞いてきた。
「無い」
と言うとじいちゃんは
「よし、着いて来い」
と一言言ってスタスタ歩いていった。
着いた先はスナックみたいなところ。
そこでガンガン酒飲まされた。
普段仕事しているところしか見た事がないじいちゃんが酒飲むのを見るのも、なによりこんなとこにいる自体なんだか不思議だった。
二人とも結構酔っ払って帰る道すがら川沿いに腰掛けて休憩してたらじいちゃんがポツリと
「じいちゃんは仕事しか知らないからなぁ。おまえは悪いことも良い事もいっぱい体験できててうらやましい。
お前は男だ。悪いことしたくなることもあるだろう。
どんなに悪いことをしても良い。ただ筋の通らない悪さはするな。」
と言われてなんだか緊張の糸が切れてずっと涙が止まらなかった。
それから俺の人生が変わった気がする。
じいちゃんのような医者になるって決めて必死で勉強してもともと頭はそんなに良くは無いから二浪したけど国立の医学部に合格した。
今年晴れて医学部を卒業しました。
じいちゃんが残してくれたボロボロの家のほかにもうひとつ残してくれたもの。
毎日首にかけていた聴診器。あの土下座してたときも首にかかっていた聴診器。
その聴診器をやっと使えるときがきた。
さび付いてるけど俺の宝物。
俺もじいちゃんみたいな医者になろうと思う。
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がんばれ
どうせ新手のヴェルタースオリジナルだろうとタカを括って読み進めてたら不覚にも泣いた
さびついてたら正確な音が聞こえないから診察時に使うなよ。患者の迷惑だ。
素晴らしいお祖父さんだ
聴診器は錆びてても大して変わらんがな
使うのは2つの耳よりもその間にある脳ミソが重要なんだよ
ドアホが
使うのは2つの耳よりもその間にある脳ミソが重要なんだよ
ドアホが
飾りとしてはいいけど、古いのは使うなよ
とか思ってしまう俺は捻くれもん。
とか思ってしまう俺は捻くれもん。
爺ちゃんの顔を知らない俺にとっては羨ましい限りだ。
ところで筋の通らない悪さってなんだろうな。
逆に筋の通る悪って、悪じゃないんじゃね。
ところで筋の通らない悪さってなんだろうな。
逆に筋の通る悪って、悪じゃないんじゃね。
じいさんが病院行ってれば、もっと多くの患者が助かったかも知れない。そういう意味でも自分の体も大切にしてほしかった。
でもお前が窃盗やら恐喝した事実は変わらない。
3の心が錆びている
国民皆保険の日本でこれはありえない
一部負担金が払えない人に対して医療行為を行っても残りの7割か9割はもらえるわけで
後半部分は本当かもしれないけど前半は明らかに嘘
一部負担金が払えない人に対して医療行為を行っても残りの7割か9割はもらえるわけで
後半部分は本当かもしれないけど前半は明らかに嘘
※11
払えないような人のはデータすら記録してなかったかもよ。
そもそも国民健康保険の支払いも滞ってるような人は保険も使えなくなるわけだし。
払えないような人のはデータすら記録してなかったかもよ。
そもそも国民健康保険の支払いも滞ってるような人は保険も使えなくなるわけだし。
中学生に酒を勧めた時点でダメだろ。
じい様かっこよすぎワロタwww
ただでさえ鼻水が止まらないのに・・・
ぼーちゃん乙
そんな昔の聴診器、ゴムがいかれてるだろ。
今時こんな医者はいないだろうな。みんな金と名誉が第一だろ。
赤髭待望論みたいなのが皆さんお好きですが、薬やマトモナ(最先端とまでは申しませんが)医療用具にお金がかかることを考えれば、成立しないのが当たり前。救急病院などでは診療費の踏み倒しが少なからずありますが、機器の更新が遅れるなどこれも結局は多くの患者さんの犠牲の上でのお話になります。
・・・・その上でこれを読まれると・・・・涙を流す人が多いのでしょう。結局作り話であろうと、この国の人は浪花節が好きなんです。
・・・・その上でこれを読まれると・・・・涙を流す人が多いのでしょう。結局作り話であろうと、この国の人は浪花節が好きなんです。
報酬は「聞きたかったセリフ」。
※19 おまえさん つまんないやつだね
※7
人に悪意を持って害を成すのが筋の通らない悪さ
人の為にやらざるを得ないのが筋の通った悪さ
後者を例えるなら、医師免許は無いけど緊急時に救うために医療行為をするとかだな
人に悪意を持って害を成すのが筋の通らない悪さ
人の為にやらざるを得ないのが筋の通った悪さ
後者を例えるなら、医師免許は無いけど緊急時に救うために医療行為をするとかだな
※19が人気になりそうな気配なので
ドサ周りみたいな往診をする病院にも、その割と先端目の「しっかりした医療器具」って必要なんかね?
医者にとっては不合理なことにしか見えなくても、身寄りが近くに住んでいない老人を医者が見回ることには別の意味があると思う。その見回りを医者がやる必要が云々とか言われそうだけど、役割を担ったのがたまたま医者だったというだけ。別におじいちゃんが医者であることについて少なくとも俺はこれっぽっちも尊敬のポイントを置いてはいないわ。赤ひげじゃなくて夜回り先生でも同じように感動したと思う。
ドサ周りみたいな往診をする病院にも、その割と先端目の「しっかりした医療器具」って必要なんかね?
医者にとっては不合理なことにしか見えなくても、身寄りが近くに住んでいない老人を医者が見回ることには別の意味があると思う。その見回りを医者がやる必要が云々とか言われそうだけど、役割を担ったのがたまたま医者だったというだけ。別におじいちゃんが医者であることについて少なくとも俺はこれっぽっちも尊敬のポイントを置いてはいないわ。赤ひげじゃなくて夜回り先生でも同じように感動したと思う。


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