俺んトコは田舎で私立小学校に通ってる奴は珍しかった。
と言うか皆無に近かった。
Hを見掛けるようになったのは俺が五年生の頃だった。

バス停から歩いてる姿はよく見掛けたんだが、誰も声を掛けなかった。
ある日誰かが

「あいつ誰?」

って言ったが、誰も知らない。

「聞けばいい!」

俺は

「お〜い!お前、○○小学校行ってんの?家どこだよ?××町だろ?」

Hは少し戸惑いながら話しだした。


四年生で親父の転勤で二学期から××町に住んでる。

「なぁ、帰って何してんだよ?遊ぼうゼ!」

田舎の子供は学年関係なしだ。
Hは町の仲間になった。
帰りに俺達の姿を見ると自分から声をかけてきた。

「○ちゃん!野球やろう!」

とか

俺は六年生になって

「学校は違っても××町の子供だから!」

と言ってHを子供会に勧誘した。
Hの親父さんが俺の家まで礼を言いに来た。
祭りやキャンプ、Hはすっかり俺達の仲間だった。
夏休みの地区対抗のソフトボール大会はHの活躍で優勝した。

二学期が終わり子供会のクリスマスパーティーや餅つき大会にもHは普通にやってきた。
が、Hは元々××町に血縁が居る訳でもなく、親父さんは転勤族だ。
俺達六年生は卒業式を終えて少し早い春休み。
Hと親父さんが俺の家に別れの挨拶にやってきた。
Hには母親はいなかった。
親父さんの転勤には必ずついて行かなければならない。
Hの親父さんは涙を流して

「ありがとう。」

と俺に言った。
転校は三回目。
私立の小学校ばかりで地元の子供と友達になれたのは初めて。
Hも泣いていた。

「○ちゃん、ありがとう。○ちゃんが俺のコト呼んでくれた日、一生忘れないよ」

「おい、ちょっとまて!俺達は子供だぜ?友達だぜ?お礼なんて言うなよ!」

俺は子供会のお別れ会にHを呼んだ。
本来は中学生になる俺達のお別れ会だ。
田舎だから転校していく奴なんか、ほとんどいない。
六年生+H君のお別れ会が終わってHは新しい街へ、俺達は中学生になった。
それから三十年近くがたった。
その間、Hのコトを思い出す回数は何回あったか?
俺は高校を出て地元の会社に就職。
普通に働いて、普通に遊んで、結婚して、至って普通の生活をしてた。
そんな平凡な日常が勤務先の倒産によって破壊された。

失業保険を貰いながら必死に職を探した。
しかし、田舎には職はない。十を越える会社に面接を受けに行ったが、アラフォーには厳しかった。
ある日、近郊の大手製造業か期間社員を募集していた。
採用人数は多いが年齢がどうか? 建前上は年齢制限はNGだが実際は若い者が有利なのは明白だ。俺はダメ元で応募したら面接の通知がきた。
今までは、例の〜お祈りします。
って結ばれる通知だった。

指定日に面接に行った俺を迎えてくれたのはHだった。
ドアを開け

「○○です。よろしくお願いいたします」

「○ちゃんだろ?俺、H!昔××町に住んでたH!覚えてない」

さすがに当時のようにタメ口で返事は出来ない。
Hは他に二人いた面接官に

「俺の恩人なんだ。内定でいいな!○ちゃん来週から来てよ。」

「ありがとうございます。一生懸命頑張ります。よろしくお願いいたします」

「○ちゃん。辞めてよ!Hさん!とか絶対に言うなよ!
 ○ちゃんが俺にしてくれたコト忘れたコトないよ。また友達で居れるよね?」

Hの顔を潰す訳にいかない俺は一生懸命働いている。
H課長は正規登用に推薦してくれた。

Hは大学を出て、今の会社に就職したらしい。
会社を選ぶ時に ○県に事業所がある!コトが決め手だったと言っていた。

「○ちゃん?俺、××町に家建てようと思ってるんだ。今、会社の借り上げだから・・・」

俺に酒をつぎながらHは言った。

「本社採用だろ?総合職だろ?転勤は?」

酒をつぎ返し言った俺に、

「俺さぁ、故郷ってないのな?××を故郷にしたいだよ。○ちゃん達とさぁ、遊んだトコをさぁ。」

「部長には成れんだろうし、転勤あっても子供置いておきたいし帰ってきたいんだ××町に。」

Hは再び××町民になり、仲間になった。


コメントの数(24)
コメントをする
コメントの注意
名前  記事の評価 情報の記憶
この記事のコメント一覧
1 . 名無しさん  ID:91FW1Htl0編集削除
イイハナシナノカナ----
2 . 名無しさん  ID:Mr0uA8VP0編集削除
で、HとHしたと・・・・・・・・
3 . 名無しさん  ID:8U6ORMW90編集削除
涙が止まらない
やっぱり初めてのHの思い出は、みんな覚えてるんだね
なんちてwwwwなんちってwwwww
4 . 名無しさん  ID:1gGVmt2t0編集削除
これはきつい。いい話だ。そしてリアル。
俺の産まれた場所も育った場所も今じゃ見知らぬ巨大なビル。中央区の都心育ちなんてこんなもんだ。
5 . あ  ID:bUNAxV0nO編集削除
おれ、北海道の山間部の部落(被差別に非ず。戸数50ほど)に受け入れてもらったクチ。
コミュ障、30過ぎ、加えて酒もぜんぜん飲めない。振り返ると不思議でしょうがないが、今はこここそが自分の故郷。
6 . 名無しさん  ID:HZbByTQr0編集削除
アッ
7 . 名無しさん  ID:vG3vGTs.O編集削除
バケラッタ
8 . nkaz  ID:WE02aIfg0編集削除
いい話だな
9 . ななし  ID:xCTKb6Rr0編集削除
えー話や。(泣)
10 . 名無しさん  ID:m4aHsXCf0編集削除
何回か見たことあるけど、この話好きだ
11 . たた  ID:9PlF135JO[評価:4 ]編集削除
ケロロ軍曹の子供時代のエピソードみたい
12 . 名無しさん  ID:sLfuCA5X0編集削除
無shockじゃなかったというお話
13 . 名無しさん  ID:cRDsWojC0編集削除
なんどか読んだことある話だけど、いい話
14 . 名無しさん  ID:OqQDhEfo0編集削除
時間の把握の感覚がたしかで筋の運びかたがじつはかなりの名文なんだ、これ。
善きひとたちの善きことがしあわせな同化を誘う。締めくくりが見えない未来に希望のヴィジョンを抱かせる。
15 . 名無し  ID:Bz7d7tMf0編集削除
お前ら何してんだよ?働こうぜ
16 . 名無しさん  ID:N7k3jpq60編集削除
ふーん
課長の身分で他に二人いた面接官に
「俺の恩人なんだ。内定でいいな!○ちゃん来週から来てよ。」


17 . 名無しさん  ID:Wm1nbI.x0編集削除
あるんだなぁ・・こんな話が。
本当に良い話だ。
俺も30過ぎたオッサンである親友が、俺の為に泣いてくれた時は
感動したわ。
18 . 名無しさん  ID:ZQ2PSf0A0編集削除
くっそww感動して涙が・・・
19 . 名無しさん  ID:EPf.yASk0編集削除
すげえ良い話
映画になってもおかしくない
20 . 名無しさん  ID:Qj.gFnGQ0編集削除
※16 課長でも採用する権限を与えられてる面接官として座ってたんだろうよ
面接官として社長が座ってるとか思ってるの?
21 . 名無しさん  ID:1DYdjFBK0編集削除
ええ話や
22 . 名無しさん  ID:EPMEqgoW0[評価:5 ]編集削除
号泣。スレ主の人格に深い尊敬。大人達は移住者にでもよそ者には冷徹。
子供会にも入れてくれないのも現実。
H課長も古里出来てよかったね。
23 . 名無しさん  ID:9tS03BAZ0編集削除
不覚だが涙が…
24 . 名無しさん  ID:xScyWqCe0編集削除
泣いたー

コメントを書き込む

今月のお勧めサイト



週間人気ページランキング
アクセスカウンター
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

記事検索
月別アーカイブ
タグ
ブログパーツ ブログパーツ