まず前提として、私の父はすごくお風呂にこだわる人だった。
こだわりにこだわって我が家の風呂は泳げるまで大きくなった。
職人さんを数人集め、お風呂のためだけに激しい討論をかわし、打ち合わせで遅くなったと帰ろうとする職人さんに
「まだ私の風呂への情熱をお話できていない!風呂に私は生涯をかけてるんだ!」
と引き留めたアレな人。
結局、和風にこだわったので見た目は完全檜風呂。
そして意味なくでかい。
色々と他の部分にもこだわった結果、こじんまりとした温泉という感じの出来栄えになってしまった。
私と母はひたすら呆れてた。
母なんて「そんなことにお金を使うのは勿体ない!」と涙したほど。
それでも父は止まらなかった。
俺は一国一城の男には興味がない、風呂になる!と言い放った。
(当時大学生だった私は本気でぼけたと思った)
まあ幸い父、母ともに経済的に潤っていたため、借金や苦になるローンもなく完成。
当時はこの状況が母にとっての修羅場だったと思う。
ここまでが前提。
時は流れ、私にドイツ人の恋人ができた。
彼は日本の檜風呂、大きな温泉、銭湯にあこがれて来日し、就職した。
付き合っていった温泉旅館では恋人である私と混浴したのにがっかりしていて、理由をたずねると
「日本では猿と温泉に入るのがデフォと聞いていたのに…
どうして温泉には君しかいなかったんだろうね。猿はどこに行ったんだろう」
と本気で落ち込んでいた人。
そもそも猿のでる温泉に行ってない。
結婚のあいさつにそんな恋人と恋人両親が家に来ることとなった。
そして父による我が家の風呂自慢を聞いて、大興奮。
日本文化への憧れが止まらず、急きょ恋人と父と恋人父で風呂に入ることに。
恋人母はがっかりしていたので私と後で入りましょう、と宥めた。
父の風呂熱弁→恋人父、恋人そろってのぼせあがる。
しかもいつのまにか父が
「風呂場では酒を飲むのがオツ!」
といって、日本酒を持ち込んだらしく、三人そろって飲んだらしい。
父は慣れているので強かったのだが、恋人父・恋人は興奮やらなんやらで見事にダウンした。
結局、母→父を風呂場で説教。裸で母に土下座する父。
私・恋人母→「あほなことするからだ」とそれぞれの恋人父・夫(もちろん素っ裸)の介抱。
状況的に結婚前とは思えぬ修羅場だった。
補足するとあんなことがあったというのに、なぜか恋人両親も恋人も満足したらしく、未だに毎年夫両親は実家に来日して風呂につかっている。
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