高校生当時、職員室。
新任で来たばっかりの先生の机に本が置かれていた。
補助教材だったか問題集だったか、とにかく何かの本が1クラス分。
先生、困ってる様子でも無かったけど、次の授業は俺のクラスだったから、取り敢えず声をかけた。
先生の「受け」良くしておいて損はないしね。
オレ「先生、それ授業で使うヤツですか?俺運びましょうか?」
先生「うわーほんと?たすかるー、ありがとう」
身長なんか俺の胸くらいでちっちゃくて、若かったから当然だけど威厳も貫禄もなくて、ナチュラルに嬉しそうに笑ったのが先生のくせに可愛くて、あれはたまらんかった。
それまで挨拶や自己紹介くらいはしてたけど、その時が初めての会話。
正直、憧れたけどね、可愛い先生と放課後のナントカ準備室でうひょーとかさ。
でも無理でしょ、そもそも俺を気に入ってくれるとかくれないとかそれ以前に、立場とか年齢差とか未成年だとかね。
どうやってもお断りでしょ、普通。
だから、せめて先生の授業では良い成績をキープして印象を良くしようと、「良い生徒」であろうと、そればっかり心がけた。
あとは困ってそうな時に手伝ったり。
でも表面上は平静装いつつ、それでいて同じクラスの女の子達がする先生の話に内心一喜一憂したりもしててな。
カレシはいないみたいだとか、そんな話聞いただけで嬉しかったっけね。
告白できたのは卒業式の日。俺は県外の大学に通うのが決まってたから、このタイミングならきっぱり振られてももう顔も合わせないしってことで、お世話になったお礼に添えて、なるべくあっさりと軽く言った。
つもり。
オレ「大学の方が落ち着いたらナンパしに来ますんで、よろしくお願いします」
先生「いーよ、どっからでもかかって来なさいな」
またナチュラルに笑ったのが可愛かったから、内心ではテンパりつつ、まあ少なくとも全然ナシではなさそうかなとホッとしてたら、先生は言いました。
俺がずっと前から好きだったの、うすうす感づいてたって。
たぶんいろいろ考えて、態度に出さないようにしてるんだろうなって思って、わざと俺の思惑に乗って気付いてないフリしてたんだってさ。
先生「自覚ないだろうけど、すぐ顔にでるよ」
ってまた笑ったよ。
それから付き合う様になった。
だから誰もいない教室にふたりっきりでうひょーとかは無いんだ。
ゴメンね。
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