曽祖父が百歳越えての大往生。
ずっと暮らしていた家が空家になった。
さすがに曽祖父と共に生きてきた家なので、こう言っちゃ何だがかなりのボロ家。
ただリフォームなんかは曽祖父が反対していたし、たとえリフォームしたとしても誰も住む者がいない家であるので、生前から
「わしが死んだらこんな家はさっさと壊してしまえ」
と曽祖父自らが笑いながら言っていた程。
入院先の病院で曽祖父が亡くなり、葬儀も済んで落ち着いた頃。
親族で話し合い、曽祖父の家と土地を任されたうちがその家を片付けにいった。
床は板が腐って歩くとふわふわするし、壁紙なんかも剥がれた部屋も、雨漏りしている所もあった。
これはやっぱり壊した方が良いね。
おじいさんのお願いでもあったし。
と全員の意見が一致。
取り壊す時機を見て……
と話し合った数日後、空家の話を仕入れたママA登場。
・うちは賃貸の安アパート。息子(B)と住むには狭すぎる。
・この家は広いし、私達(ママA&B)に格安で貸してくれ!
・家は誰も住まないと荒れてしまうから、A達が住めば管理する手間も省ける!
申し訳ないがこの家は人が住める状態じゃない。
リフォームにも金と手間が掛かるので取り壊す事が決まっていると丁寧にお断りした。
もちろん壊れているというのは本当。
それからしばらく。
訳あって曽祖父の家を念入りに施錠。
雨漏りの屋根も床下の穴もがっつり塞いだ。
家の周囲にロープも張って人の立ち入りを制限していた所を見たママA。
実はあの家壊れてないんじゃないか。
あんな事を言っていたけど、本当はただ貸したくなくて渋っていただけじゃないか。
だから誰も入れないようにしたんだと邪推。
こうなったら自分の目で確かめてやる!
と空家に忍び込んだママAを出迎えたのは、
ブゥゥゥンと唸るような羽音と黄色と黒色の空飛ぶ住人達。
その年はスズメバチが大発生していて、空家だったそこにもしっかりと巣を作られてた。
危険なので家を封鎖&立ち入り制限して、駆除を依頼してたんだよ……。
ご近所さんにも事情を説明してあったんだが、ママAはそんなの聞こえてなかったらしい。
悲鳴上げて逃げ出し、不法侵入発覚。
やれ病院だ何だと大騒ぎ。
空家を確認して、住める状態だと判断したら無理矢理に上がり込んで住み着いてしまうつもりだったらしい。
住めないなんて嘘を言っていたんだから向こう(私達)に非がある。
だから住んでも追い出せないと、斜め上の発言。
まぁスズメバチに襲われた家なんてもう住もうと思わないだろうし、きっちりハチも駆除して家は取り壊し、今は更地になっている。
ママA達に住んで欲しくなかった理由は、家が壊れているという他にも、実はあった。
息子のBてのが、実は塀の中から戻ったDQN。
父(ママA元旦那)から追い出されて母親の所に身を寄せてきた。
その頃から空き巣が多発。しかも老人の家ばかり。
(うちはど田舎なので、老人だけの世帯も結構ある)
ペットを飼っている家なんかには、散歩に連れ出した時間を見計らって侵入していたらしい。
(年寄りなので散歩に出る時間がほぼ毎日同じ&ジジババでおしゃべりするので中々帰って来ない)
やっぱりというか、犯人はB。
曽祖父の家とうちは地続き。間に垣根も柵も塀もない。
そんな近場に、ヤバいとわかっている人達に住んで欲しくなかった。
田舎で、ジジババの横のつながりも強いし、何より救急車騒ぎでママAのは皆知ってる事。
ついでにママAはナマポ。
親が親なら……とみんなヒソヒソ。
その後、ママAは引っ越して行った。
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