私には兄が一人、姉が二人いるが、皆血がバラバラ。
私だけが、父と母と血がつながってる。
3人は養子。
昔、私達と3人それぞれの家族は、は同じマンションに住んでいた。
そこで母は、今でいう無料託児所にされていた。
が、母は嫌な顔もせずに、
「こんな小さい子が一人で留守番をするよりは」
と言って、愛情たっぷりに子供達を世話していたらしい。
兄や姉達は、母にとてもよくなついていったらしい。
いくら産みの親とは言え、自分をほったらかし遊びほうけ、迎えに来た後もろくに世話しない母親達より、愛してくれ叱ってくれる私の母を兄達は選ぶようになった。
兄達はいつも、
「帰りたくない」
とごねるようになった。
そしてその頃から、兄達の体には傷が出来始めた。
私の母と、兄達の母達との話し合いが始まった。
「そんなにうちの躾が気に入らないなら引き取れ。100万もあればそっちによこす。」
と、兄達の母達は言ったらしい。
結局それが結論であり、さらにいろんなゴタゴタを乗り越え、兄達は私達家族の一員になった。
どんなゴタゴタがあったのかは、未だに詳しくはわからない。
父は口を固く閉ざしたままだ。
私は、よくわからないけどなんとなくわかるような、そんな感覚のまま育ってきた。
兄達がどうなのかはわからないけど。
兄達は母のことが大好きだった。私も大好きだった。
ケンカも小さいことからすごく大きなことまで、何度も何度もした。
兄妹の間や、母と兄妹で。
本当は血がつながってない、だとか、そんなことは、まるで皆ほとんど忘れてるようだった。
それくらい、私達は普通に家族だった。
兄と上の姉と私は大学まで進学し、就職した。
下の姉は専門学校に行き美容師になった。
4人とも、すぐ実家に帰れる場所に就職した。
普段はバラバラだけど、お盆や正月は皆集まった。
母のご飯を食べ、父と晩酌し、ゆっくり過ごす。
そんな日々が何年か過ぎ、上の姉の結婚が決まった。
相手の人は、姉の過去や私達家族のことを、すべて知って、受け入れてくれたらしい。
私達には想像がつかないくらいお金持ちだったが、威張ることもない、穏やかで優しい人だった。
上の姉達は皆から祝福されながら結婚した。
本当に幸せそうだった。
すごく憧れた。
ただ、どこから聞き付けたのか、上の姉の母から、幸せに影を落とす手紙が届いた。
「私が本当の母親です。
ずっとあなたに会いたかった。
お母さん、あれから大変だったの…」
から始まり、苦労話と金の無心が綴られていた。
曰く、
「借金してまで買い物したのはあなたのため」
「あなたに会いたくて寂しくてパチンコにハマった」
「お父さんお母さんは今、とっても苦しんでます」
「生みの親のこの辛さがわかるかしら」
「1000万あればなんとかなる」
「老い先短い私達には借金返済の時間がない」
「なるべく早く助けてね」
「私の本当の母はお母さん(私の母)だから」
と姉は言っていたが、すごく傷付いていた。
あんなのが産みの親だなんて、と号泣していた。
繰り返し繰り返し届く「お金を送って」の手紙。
ついには、
「親不幸者。
あんたがそこで良い暮らし出来てるのは私のおかげ。
本当はおろしたって構わなかったんだ。
感謝の気持ちがあるならさっさと金を送れ。」
とまで言う始末。
理解できない。
上の姉の旦那さんや、父や母が拒否しても効果はなく、弁護士に間に入ってもらいやっとおさまった。
姉はある時急に「悲しむより怒った方がまし」と、泣くことを辞め、毅然とした態度に変わった。
なんにせよ、姉が元気になってよかったと、
家族皆で喜んだのもつかの間、母が倒れた。
あまりに急すぎて驚くことも出来ないまま、母は逝った。
兄達も私も泣くことができなかった。
本当にいきなりすぎて、訳がわからなかった。
でも、やっぱり悲しみはあって、しばらくしてからようやく、私兄妹は泣いた。
ずっとずっと泣いてた。
親孝行できなかったことも悔しくて泣いた。
そうしたら、また、手紙が届いた。
上の姉の「産みの親」からだった。
「偽物のお母さんはいなくなりました。
残ったのは本物のお母さんです。
偽物のお母さんのお金いくらくらい入った?
今度こそあなたが、そのお金で私に恩返しする番。
そういう使い方を偽物のお母さんも望んでるよ」
そんな内容。本当に理解できない。
頭おかしい。
おかしすぎる。
意味がわからなすぎてびっくりした。
今思い出しても悔しくて涙がでそうになる。
姉はすぐに弁護士に連絡をとってた。
すると家にまで押し掛けてきたので、警察を呼んだ。
それきり、行方もなにもわからない。
本当に神経がわからない。
今でも理解できない。
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