もう20年近く前の話になります。
あれは夕方の、学校帰りの学生さんやら早めに帰るサラリーマンなどでちょっと混み始めた時間帯だったと思います。
私は某駅ホームで電車を待っていました。
電車の入ってきた気配に、何気なく振り返ったその瞬間、目に飛び込んできたのはホームから転がり落ちる黒い物体。
と同時に、狂ったように警笛を鳴らしまくりながら滑り込んでくる電車。
見た瞬間は黒い物体としか認識できませんでしたが、間違いありません、人が落ちたのです。
全身が硬直しました。
線路に落ちた人影は一瞬ホームの陰で見えなくなり、電車が通過する寸前、間一髪線路の向こう側へ転がって行くのが見えました。
無事が分かったとはいえ、あまりのショックでしばらくは動けませんでした。
ホーム全体にも異様な空気が漂っていました。
少しすると、ちょっと離れた場所で別の違う空気があることに気が付きました。
虚ろなままそちらに目をやると、ちょっとお年がいってらっしゃる、かなり横に体格のいい男性が、両手両足を伸ばしたまま、ホームに突っ伏して倒れています。
両手を万歳の形に、まさに「突っ伏す」という形容がぴったりの状態でした。
そして万歳をしているその片手には、白い杖が握られていました。
近くにいたサラリーマン風の方が、おそるおそるといった感じで倒れた男性の肩を揺すりました。
しかしその男性、変なのです。
普通、気を失っていても肩を揺すったり起こそうとしたりすれば、多少は身体が動きますよね、自然に。
でもその男性、まったく動かないんです。
丸太を揺すっているような、といった感じでしょうか。
見ていておかしいと気づいた他のサラリーマン風の方々数名と駆けつけた駅員さんも参加し、長い時間かかってようやくその男性が立ち上がった頃、別の駅員さん二人に両脇を抱えられ、痛みに顔を歪ませた50代くらいの男性が来ました。
たぶん線路に落ちた人なのでしょう。
どうやら白い杖を持った男性の連れのようでした。
私はちょっと離れた位置にいたので
どんな会話をしてたのかまでは分かりませんでしたが、倒れていた男性はちょっと恥ずかしそうな笑顔を浮かべ、駅員さんと話をしていました。
そしてそこに、線路に落ちた男性と、男性を連れてきた駅員さん達も加わり、しばらく話をした後、たぶん駅の事務室にでも行くのでしょう、5人で移動していきました。
結局、なにがどうなったのかはひとつも分からず終いでしたが、線路に落ちた男性が無事でよかったと、ホッと胸をなでおろしました。
ここまでなら「見てしまった修羅場、でもなにがなんだか分からない」
というカテゴリーで終わってしまったのでしょうが、この「なにがなんだか分からない」ことが全て分かる日が来たのです。
三ヶ月後に。
捕まったんです、この白い杖を持った男性が。
白い杖の男性、小さな会社を経営していました。
身寄りのない中高年男性ばかりを雇い、会社を受取人にして高額の保険金をかけていたそうです。
と書けばお分かりでしょう。
あの日、白い杖の男性は持病のてんかんの発作をおこした*フリ*をし、倒れる時に被害者男性を突き飛ばした。
もちろん電車の入ってくるタイミングを見計らって。
しかし、突き飛ばした勢いが強すぎて、
線路の向こう側まで転がっていってしまった、と。
えぇ、私が見たのは殺人未遂現場だったんです…。
倒れた直後の変な様子も、てんかんの発作をおこしたという設定の元、わざと身体を硬直させていたようです。
白い杖の男性はこの殺人未遂の以前、既に二件ほど殺人を犯していたそうです。
私が見た未遂現場のように、多少でも目が見えていないと難しいようなタイミング重視の方法を取り、全盲の自分には疑いがかからないようにしていたそうです。
しかし全盲というのはただの自己申告で、実は多少見えていた。
医学的に全盲と診断されていたのかどうかは分かりませんが。
(そこまで公開されていなかったようです)
直接逮捕に繋がったのはこの事件だったようです。
いろんな意味で未遂で終わってよかったと本気で思った事件でした。
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カモネ(^▽゚*)
Σ(゚Д゚;)えっあの漫画ってそういう理由で丸太もってたの!?
明さんに失礼だぞ!
『丸太萌え』で攻めろとアドバイスした経験があります。
「丸太って重いんすよ。」とのこと。
男の全裸シーンもあったけど、当時は目覚めてなかった。てか、目覚めてても、内容的に無理だけど。
読んでいて本当にイライラするというか途中で止めた
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