義実家はいつ行ってものんびりとした空気が流れていて、とても居心地がいい。
ウトメものほほんとした人で、夫も同じ。
なので、中距離にも関わらず割としょっちゅう遊びに行っていた。
義実家の近くにコトメ一家が住んでいて、こちらも良く義実家に来る。
コトメ夫もおっとりした人で、パパに似たのかコトメ子ちゃんもおっとりさん。
みんな仲良しで、集まるととても楽しい。
なのに、コトメだけが
「また変な化粧して」とか
「趣味が悪い」とか
言って私をいじめてくる。
もちろんみんなが〆てくれるし、コトメがむかつくこと以上に義実家大好きなので、あまり気にせず遊びに行っていた。
数年前のお盆に義実家参りしたとき、コトメ一家も来ていた。
リビングで談笑していると、玄関でコトメとトメが何やら揉めている声がした。
急いで行ってみると、出かけようとしているコトメをトメが止めている模様。
コトメ、私の服を着てた…。
「減るものじゃないでしょ!」
と騒ぐコトメを叱りつけるウト。
しかしコトメは折れない。
最終的にコトメ夫がブチ切れ、コトメをぶっ飛ばして無理やり着換えさせた。
コトメは私達夫婦が使わせてもらう客間に忍び込んで私の荷物を物色したらしく、下着まで私のを着けていた。コトメはふて腐れたけど
コトメ子ちゃんが
「ママ、私が○○ちゃんのお家からおもちゃを持って帰って来ちゃった時、すごく怒ったよね。
お友達のおもちゃを勝手に持って来ちゃいけませんって言ったよね。
なのに、何でママは嫁子ちゃんのお洋服を着るの?いけないことでしょ?」
と泣いてしまって…。
コトメはっとして、みんなもしんみりした空気に。
これで反省してくれたら、と思った瞬間、
「うちの子泣かせて!許さないから!」
とコトメにビンタされた。
この段階でトメがコトメ子ちゃんを別室に連れて行ったので、無言でコトメのボストンバッグのところに行き、コトメの服を引っ張りだした。
「何するのよー!!」
と騒ぐコトメを
「減るものじゃないでしょ」
と制止しつつ、コトメの服を装備した。
ブカブカだった。
コトメが
「バカじゃないの!?人の服着て!止めてよ!」
と叫ぶので、
「減るものじゃないからいいんでしょ?自分で言ってたじゃないですか」
と言うとまたビンタされた。
ここで私は
「自分のしたことをやり返されて何で怒るの?
私とコトメさんと何が違うの?私がこの家の嫁だからですかあああ」
と号泣。
ここでいつも間にか背後にいたトメが
「私の大切な嫁子ちゃん泣かせて!許さないわ!」
とコトメにビンタし、親に殴られたことのないコトメは
「何で私が殴られるの!?」
とふぁびょる。
しかしトメ気丈に
「同じことされた気分はどう?コトメ子を泣かせたのは自分だって分からないの?
あなたは嫁子ちゃんの何が気に入らないの?」
と懇々とお説教。
その後私と夫は帰ることになったんだけど、ひたすら謝るウトとコトメ夫、目を真っ赤にして
「嫁子ちゃん、ママがごめんね」
と言うコトメ子ちゃんに心が痛んだ。
後から聞いた話だと、コトメのパート先にいる若い女の子と私の雰囲気が似ていて、明るくはきはきしている彼女にはみんなが笑顔で話しかけるのに、周りと事務的な会話しかできないコトメは彼女を逆恨みしていたんだそうです。
彼女のようになりたいという憧れの気持ちと、彼女さえいなければという気持ちが混ざってしまい、混乱してあんなことをしてしまった…とのことでした。
いつもぶすっとした顔してるから近寄りがたいんだろうなと思う。
その後は義実家に行く時はコトメに会わないように、トメが気を使ってくれている。
このたびコトメ子ちゃんがめでたく中学生になる。
テキスト:独眼竜の逆鱗に触れた [おもしろ]
伊達政宗が鷹狩りに出かけたある時、その途中で芝の上に寝転がり、よほど気持ちが良かったのか、そのまま昼寝を始めた事があった。
政宗、スヤスヤと寝入ったが、この時俄かに雨が降り出す。
付き従っていた近習が、政宗を起こした
「殿、雨が降り出しました。目をお覚まし下さい。」
が、気持ちよく寝入ったところを起こされた事は、独眼竜の逆鱗に触れた
「誰が起こせといったーーーー!!!!」
政宗、傍に置いた刀を抜くと、刃をその近習に向けた!
寝起きの独眼竜の目は本気だ。
近習、逃げる。
が、逃げられれば政宗も当然追いかける。
そのまま2,30間(4〜50メートル)ほども、抜き身の刀を振り回しながら追いかけた。
これが、政宗に雨が降りかかる事を心配した、その結果の出来事なのだ。
近習、逃げているうちに、流石にその馬鹿馬鹿しさに気がついた。
はた、とその足を止める。
そしてくるりと振返ると、そのまま政宗の前につかつかと歩み寄り、
「君臣の礼もこれまででござる!さあ!お手に懸けられよ!」
と、その場に胡坐をかいた。
『もう勝手にしろ!殺すなら殺せ!』というわけだ。
おそらく途中から追いかけることが面白くなっていた政宗、こう言う態度に出られて
ふと冷静に戻ってしまった。
しかし振り上げたこの刀、さて、どう治めたものか?
そうだ!
「何を勘違いしておる!?」
政宗、近習を叱り付けた
「わしはお前を斬ろうとして追いかけたわけではない!」
「ええっ!?」
あんた、殺る気満々だったじゃないか!?
近習が吃驚した顔を向けると、政宗、
「わしは、お前がわしを起こしてくれた褒美に、この刀を与えてやろうと思って追いかけたのだ。
それをわしが殺そうとしたように取るなどとは、まったく、ひどい思い違いだ。」
と、抜き身の刀を投げ出して、その近習に与えた、とのことである。
これを記録した江戸期の書物には、このような事が書かれている
『政宗に関しては、この手の変人行為の記録が大量にあるんだけど、
多すぎてきりが無いし、スペースも足りないので、あえてこれ以上記載しない事にする。』
全部書いてくれればよかったのに。
おしい。
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