某所で崖から転落した車が発見された。
発見したのは8歳の男の子。
救急隊員が車を運転していた外国人男性と助手席に乗っていた女性が死んでいるのを確認。
後部座席にいた5歳の女児はまだ生きていた。
女児はすぐさま病院に運ばれた。
この女児は30年前の私。
もう事故の様子は鮮明に覚えていて、落ちはじめの浮遊感、落ちた瞬間の衝撃は今でも忘れない。
しばらく両親は生きてた。
母の○○ちゃん、○○ちゃん、大丈夫だからねと言う声が聞こえてきた。
両親どちらも座席から動けず、声だけで生存確認している状況だった。
次第に両親の声が聞こえなくなってきた。
私もなんだか眠い。
そんなときに聞こえてきたのが、男の子の声だった。
高い場所から叫んでいたので、うっすらとしか聞こえなかったが、私達がここにいるのに気がついてくれた。
次に意識を取り戻したときは病院でした。
両親の死亡を聞かされ発狂。
病院食やお見舞いをやだやだと拒否しまくった。
祖父母の泣きながらあんただけは生きてくれの訴えでようやく食事を摂った。
私は25歳の時に結婚した。
毎年両親が死んだ場所に花を持って行って拝んでたんだけど、その時に出会った男性。
彼の第一声が、
「君、あのときの子?」
だった。
あの場所で花と線香を持って拝んでるハーフ女なんて特定されて当然でした。
彼は私達を発見してくれた8歳の男の子だった。
ずっと私の安否が気になっていたらしい。
「君だけは助かったってきいてたけど不安だった。
両親無くしてどうしているんだろうとか。
」
って言ってた。
彼は事故車を発見して、しばらく硬直していたのだと言う。
慌てて近くの大人に助けを求めたが、硬直なんかしている時間さえ無ければ両親は助かったのかもしれないといってた。
彼の両親に相当責められたらしい。
お前がグズだから助かる命も助からなかったと。
私はそんなことない、私には貴方の声は聞こえていた。
聞こえる随分前に両親は動かなくなってた。
それに貴方はまだ8歳だった。
怖いと思うのは当然だ。
それなのに貴方はしっかりと適切な行動を取ってくれた。
だから私は助かったんです。
感謝しきれません。
と返した。
その後、彼は彼両親と縁を切った。
相当な毒親でしたがここは割合。
彼から告白され、交際し結婚した。
思い出すだけでも吐きたくなるが、あの事故の経験は二度と味わいたくない。
私の命の恩人とこうして巡り会えたのも奇跡だ。
最初に私達を見つけてくれた旦那、通報してくれた方、救急隊員。
そして私を育ててくれた祖父母。
僅かの間だが私を愛してくれた両親。
感謝の一言では済ませられません。
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