俺は独り暮らしを始めてから料理に開眼した。
それまでは実家ではなーんもしてなかった。
母が専業主婦で姉も祖母もいて
家事をする手が足りてたのと、部活ばっかやってたんで洗濯物のたたみ方も知らんかった。
しかし進学で一人暮らし開始、コンビニ弁当に早々と飽き
モヤシ炒めから始めて、炒め系に飽きて煮物系の本を買ったりなんだりで
そのうち料理が好きになり、人に食ってもらえるレベルにまでなった。
ある日家に帰ってみると、鍋いっぱいに作ったはずのおでんがなかった。
後輩たち(いつもメシ作って食わせてやってた。食費はもらってた)が勝手に食ったのかな?と思い
まあいいやあとで請求しようとその時はあんま気にしなかった。
ちなみに戸締りははっきり言っていいかげんで、鍵しめてないことも多かった。
誰でも出入りできると言って過言でない状態だった。
後日ふたたび鶏の治部煮が消えるという事件が起きた。
その時はさすがに腹立って
後輩に
「おまえ黙って食うんじゃねーよ。金も払え」
と言った。
そしたら後輩は
「オレたちじゃない」
と否定。
「おでんは?治部煮は?」
と聞くと
「知らない、それ空き巣じゃないんですか」
と言われ
やっとその可能性に思い当たって警察を呼んだ。
その夜、実家に電話して
「空き巣に入られたから警察呼んだ」
と言った。
母がそれを家族に報告したら、祖母がファビョって
「なんで警察なんか呼ぶんだ」
と自爆した。
家族のだれも知らなかったが、祖母は昼間俺がいない時間帯
タクシーでちょくちょくアパートに来て俺の部屋に出入りしてたらしい。
祖母いわく「様子見。確認」
そしていつからか部屋に料理の入った鍋やフライパンが置かれるようになった。
俺が料理なんかできないと思ってる祖母は、てっきり母が作りに来てると思ったらしい。
母が料理しに来る→俺が帰る前に捨てる→母の落ち度になる
という論法により、鍋の中身を持参のビニール袋に入れて持ち帰り、畑の堆肥にぶちこんでいたという…
それまで祖母が嫁いびりしてると知らなかった俺はビックリ。
姉は知ってた。
親父も知ってたっぽい。
母は呆れてた。
俺はそれ以来戸締りをしっかりするようになり、祖母はむやみにタクシーを呼べないよう電話帳を隠された(電話帳がないとタクシーの番号覚えてないし、携帯もないからかけられない)
おでん代と治部煮代は、なぜか父のポケットマネーから補填された。
カレーを捨てた姑が鍋でぶん殴られたという記事を見て思い出した話。
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