約10数年に渡る話。
十数年前に嫁が浮気、当時5歳の娘と離婚届を置いて浮気相手と逃げた。
八方手を尽くした挙句、浮気相手と海外にトンズラした事が分かった。
娘もなんとなく察したようで、元嫁に対する未練や文句を一切言わず、俺と俺両親の生活を覚悟したのもこの時。
夜中に布団の中で声を押し殺して泣いてる姿を何度か見ているが、自責の念で気が狂いそうだった。
元嫁親からは当初養育費という名目の慰謝料を貰っていたが、娘が小学校入学と同時に辞退。
元嫁に関わる一切と絶縁する覚悟をしたから。
娘と写っている以外の写真も全て焼却した。
俺は仕事を辞め、自営を始めた。
無論娘との時間を増やす為。
片親の子だから学校でいじめられないだろうか、心に影を持った子にならないだろうか、心配は尽きなかった。
でも親が考える程子は弱くなかったんだ。
娘は明るくスクスクと育ってくれた。
友達にも恵まれたと思うが、1年、2年の学校の先生との出会いが大きかったと思う。
娘はとにかく思いやりのある優しい子に育ってくれたんだ。
俺の小学生の時にはあり得ない話だが、月に一度か二度位は学校の色々な友達からお礼の手紙が届くほど。
内容は全てムスメに助けられて感謝している、みたいなものばかり。
後で思うと、元嫁にされた史上最悪の仕打ちの裏返しだったのかもしれない。
人にとことん優しくする事で娘は自分も幸せになれると言っていた。
この時まだ10歳。
小学校卒業する頃、娘に夢を宣言された。
看護師になる!と、俺と俺両親の前で声高らかに宣言。
娘らしいと思ったよ。
中学に入ると夢へ向けて勉強するのと同時に、スポーツ係の部活にも打ち込み始めた。
朝練や夜遅くなる事も多かったが、俺と両親とでとことんバックアップ。
この頃の俺たち家族の夢はイコール娘の夢だった。
毎日深夜まで勉強したおかげで、娘は県下一の進学校に入学。
そして相変わらずの勉強と部活の日々。
部活の方は県で一番になる事もあり、寧ろ勉強よりもこちらの方で地元では徐々に有名になっていった。
が、高三になる前に退部。周りの説得虚しく、彼女はあっさり辞めてしまったんだ。
理由は、学力が思いの外上がっていなかったから。
娘の中では看護師になるのが全てに優先していた。
高三の秋。
寒さが日1日と厳しくなり、この年初めて出したコタツの中で家族四人温まりながら夕食後のテレビを見ていた時の事。
娘がふと呟いた。
「看護師になって、お爺ちゃんお婆ちゃん、お父さんを一生面倒見てあげるからね」
思わず泣きそうになったが、ギリギリのところで堪えた。
と思ったら、お婆ちゃんが泣き出した。
私たちの事はいいから、将来は結婚して旦那さんと幸せな家庭を築きなさい、と言ったんだけど、頑なに拒否する娘。
結婚なんか絶対にしない、と言い切った娘の顔を見て、俺は複雑な気持ちになった。
そして俺のそんな表情を察知して娘が言った言葉。
「別にお母さんの事があったからじゃないよ。単に育ててくれたお礼だよ」
階段を上って行く娘の後ろ姿を見ながら、もう涙を止めることは出来なかった。
娘が「お母さん」という言葉を口にしたのは実に10年ぶり。
母親のいない家庭で暮らしていくと決めた日以来。
いや、当時は娘はまだ元嫁の事をママと呼んでいたから、
正確には「お母さん」という単語はこの時が初めてだった。
この時の俺たちは、もう元嫁に対する怒りや憎しみなんかは無くなっていた。
スクスクと育つ娘を見ているだけで心が穏やかになっていったのかもしれない。
逆にこんなに優しい娘を産んでくれたことに感謝する事も一度や二度位はあったと思う。
娘は猛勉強の末、何と医学部に合格してしまった。
しかもかなり偏差値の高い国立大学の。
娘の中で絶対的な夢であった看護師への憧れは、いつしか医者にまで昇華していたんだ。
「まさか受かるとは思わなかった」
と謙遜していたが、確かに当時の成績ではほぼ奇跡に近かった。
そして娘は再び部活に入り、忙しい毎日を送ることになる。
通学に一時間以上かかるので、本意ではないが一人暮らしを進めたのだが、これも頑なに断られた。
そればかりか、就職しても一生この家から出て行かないと言っていた。
それをきいてまた泣くお婆ちゃん・・・
大学二年の時に娘が全国で3位に入る好成績を残した瞬間から周りが変化しだした。
地元のテレビ曲や新聞社からの取材。
地元で一躍有名人になってしまったんだ。
現金なもので、殆ど話した事もない級友達が、さも昔からの親友であるかのように近付いてきたり、中学生の頃娘と付き合っていた等の噂話が一人歩きするようになり、俺としては歯がゆい思いをしていたのだが、娘の
「放っておけばいいじゃん、悪口言われてるわけでもないし」
という言葉で収めていた。
実際、顔も覚えていない昔のクラスメートが家に訪ねてきても、娘は嫌な顔一つしていなかった。
この時点で俺は精神年齢で追い越されていたのかもしれない・・・・・
医学部って凄く大変なんだよな。
専門過程?とかに入る前なのに勉強の量が凄くてさ。
高校の時に中途半端になっていたから部活は最後までやり遂げるって言ってたし、兎に角受験勉強時代みたいに忙しくなっていった。
もうお爺ちゃんお婆ちゃんも年だから、あんま臨機応変に出来なくて。
寧ろ娘の世話になることの方が多くなっていったような気がする。
それでも本当に仲の良い四人家族だった。
娘のおかげで楽しい生活だったんだ。
だけどそんなある日、悪夢が突然起こってしまったんだ。
俺の自営の周年パーティーを事務所でやっていた時の話。
近所の人達や親戚、友人等俺の事務所に集めてささやかに催していた、確か土曜日の事。
自慢の娘も皆の前で紹介したかったんだけど、部活でドタキャン。
まあ昼前から飲めや歌えやの大騒ぎ。
実際歌は無かったけど。
俺も結構酔って気分良くなってた時に、近所のおばちゃんから
「お客さんだよ」
と声がかかった。
なのんきなしに事務所の入り口に向かうと、そこに元嫁が立っていた。
雰囲気はだいぶ変わっていたけど、俺は一目で元嫁と分かった。
元嫁は伏せ目がちに立っていたけど血色も良くて着ているものもいい感じだった。
普通に幸せな主婦って感じ。
一瞬頭の中が真っ白になった。
酔っていたからなのか、
心臓の鼓動が耳元で響いて妙に耳障りだったと覚えている。
元嫁は何かを言っていた。
「久し振り」なのかもしれない。
「元気だった?」なのかもしれない。
でもそんな事はどうでも良かった。
無心であっけにとられていたはずの俺なのに、次の瞬間襲った激情。
激情だよ。
今思うと全くコントロール出来ていなかった。
俺は元嫁の手を引いて皆の前の壇上に立って大声で言ったんだ。
紹介します!てな。
「紹介します、私の元嫁です!◯◯(娘の名前)の親です!
若い男を作って◯◯と俺を捨てて逃げていった元嫁でーす!」
凍り付く事務所。
元嫁は深く深くお辞儀をすると、顔をハンカチで押さえながら慌てて出て行ったよ。
そのあと少しの間、記憶がない。
親しいご近所に苦笑いされながら
「あれはちょっとキツイよ」
と言われてから正気に戻った感じ。
その場はお爺ちゃん(つまり俺の父親)がうまくとりなしてくれて行事はなんとか終了。
皆帰った後に親父に横っ面殴られながら言われた。
「今日お前がしたこと、娘に言えるのか?」
てね。
憎いなんて感情、もう無くなっていたと思ったのに。
自分が情けないやらで訳分からなくなった。
涙が滝のように出てきて、母親に慰められていた。
夕方、娘が帰ってくるのが恐かった。
娘は何て言うだろうか?
俺の事を軽蔑するに決まっている。
父親として失格。
もう口も聞いてくれないかもしれない。
真の意味で恐かった。
恐怖だよ。
大切なものを失う恐怖って、想像を絶するよ。
案の定、娘の怒り方は凄かった。
泣きながらなんでそんなひどい事言ったの!てさ。
その後部屋に閉じこもって一晩出て来なかったよ。
翌日、朝から娘と二人きりで話し合った。
娘、元嫁の事を何も覚えていないことがこの時分かった。
顔も覚えていないし、兎に角何も覚えていない。
もっと言うと、5歳以前のことは全く記憶がないんだと。
考えないようにした、忘れようとしていたら、本当に綺麗さっぱり当時の記憶が無くなったんだと。
また泣いたね。
5歳の女の子にどんなひどい仕打ちをしていたんだって。
嫁が、じゃなくて、俺がね。
父親として何か出来なかったのかなって。
片親だとしても両親がいたから比較的俺には余裕があったはずなのに、てさ。
娘から
「自分を産んでくれたお母さんには感謝している。
お父さんにとっては色々あるかもしれないけれど、私を産んでくれた事は事実だから」
そう言われてしみじみと前日ひどい事をしたと思ったよ。
娘がこんな風に考えていたなんて思わなかった。
俺と同じだと思ってたけど、子供だもんね、元嫁の。
親子だもんな。
「私はずっとずっとお父さんの子供だし、お爺ちゃんお婆ちゃんの孫だから」
だってさ。
これで十分だと思った。
今ここに娘がいる、それだけで俺の人生上出来だよ、てさ。
この話、実は結構最近の出来事。
あれから俺たち家族はいつも通りの毎日を送っている。
相変わらず娘は明るくて前向きで、爺婆に可愛がられてる。
しかも彼氏が出来たらしく、お婆ちゃんが一番喜んでいる。
元嫁の事は知らない。
けど、昨日母から父が元嫁の所在を知ったと聞いた。
だからと言ってどうもしないけど。
聞く気もない。
娘に怒られるかもしれないが、元嫁にあんな事を言ってしまったことを後悔はしていない。
けれど、心に棘が刺さったままのような、何ともすっきりしない感じはずっと残っている。
なんていうかな、何も抱えていない家族なんてこの世に存在しないんじゃないかと最近思っている。
重い軽いはあるにせよ、だ。
俺もそうやって一生背負っていくんだろうなと。
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30代ってそんなもん?
あと娘がいくらなんでも優秀過ぎて筆者の願望が出過ぎててリアリティーがない
少女漫画にはいっぱいいるよ?
親しくないってのは娘側の認識。
相手はこの娘に親切にされたり好きだったり存在感が大きかったんでしょ?
それがスポーツで活躍した記事を見てどうしても顔を見たくなった。
母親も同じ。
人が次々に寄ってくる。
優しくて正直な人の日常だよ。
他人に厳しく嘘の多い人は逆にドンドン人が引いていく。
その引きが得たいの知れない虚無感になる。
エネルギーのデフレスパイラル。
俺だ。友達もいない。
死にたい
黄色人種なんてそんなもんだよ
カネ持ってそうな奴がいればそれがどんな悪党でもゴマ擦り
社畜を見ていればそんなのは一目瞭然
そんなおかしなことか?
有名になれば自分の知らない自称友人・親戚が増えるよ。
宝くじ当たったときとか。
周りが無神経としか思えない。
使うときに役立ってくれれば問題ないよ。
俺なんていきそうになると強烈な頭痛に襲われる。俺はもうスローロリスみたいにしかできなくなっちまったよ。
30代男性
それはお前の周りが大した事ない屑の集まりだからだろ?


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