姉の影響で始めたバスケで姉妹関係が拗れた。
姉と私は2歳違い。
姉は小学校に入ったくらいでミニバスのクラブに入った。
姉は運動神経が良くて、3年生になる頃にはベンチ入り、4年生の頃にはスターティングメンバーになっていた。
私は機敏に動く姉に憧れ2年生の頃にクラブに入った。
姉と比べると私は反射神経も鈍く、動きも緩慢、覚えも悪い。
ただ体だけはデカくて3年生の時点で155cm、4年生になると165cmあった
デカイことはそれだけで有利で、ミニバスはルールの都合上リング下に居座っても反則にならないので
リング下に鎮座、パスを受ける、反転してシュートと言うことをするだけで割と簡単に点が取れた。
ダブルダブルや相手によってはトリプルダブルが取れる試合もあった。
チームメイトや監督、親御さんたちに持て囃されて私も少々良い気になっていた。
この頃から姉の私に対する態度が変わってきた。
それまではどちらかと言えば、姉は私に対しては無関心だった。
それが一変して私に通常の練習以外での自主練を課すようになった。
具体的に言うと走り込み、フットワーク、ハンドリング練習など簡単に言うとキツイタイプの練習。
私はお姉ちゃん子でバスケを始めたのも姉の関心を買うためであった。
だから姉が私に練習を課すことは嬉しくもあった。
しかし同時に私には甘えた所が多分にあり、少しキツくなるだけで気を緩め、サボり、楽になろうとする悪癖がある。
最初こそ姉と接するのが嬉しくて練習も真面目にしていたが、次第にやる気をなくしていった。
それに加えて、私の(表面上の)成績はチームで1番だったと言う驕りもあって、私は姉に反感を持つようになった。
それがピークに達した時に私は
「私よりも活躍してない癖に偉そうなこと言うな」
と言った暴言を姉に吐いた。
姉はそれに
「そう」
とだけ呟き、それ以降自主練を課すこともなくなり以前の無関心に戻った。
それから直ぐ後に姉はクラブを辞めて、地元で強豪と言われるクラブに入った。
家の中では、家庭内別居のような感じ。
親の前以外ではお互いがお互いを居ないような素振りで生活し、特に私は姉を避けるようになった。
そんな生活が姉が一人暮らしするまで続いた。
姉のバスケ人生は華々しいものだった。
中学、高校で全国大会に出場。
大学では怪我の影響で途中で引退したものの、今はミニバスのコーチをしている。
私は中学でも相変わらず体はデカかったけれど、元々の身体能力の低さが露呈し始め木偶の坊のようなプレイヤーになった。
そこでバスケは終わった。
姉が結婚し、実家での荷造りに来た時に話し合った。
姉曰く
「私達が所属していたクラブはお遊び感覚の意識の低いチーム」
「いずれはそのクラブを離れ強豪クラブに移籍するつもりだった」
「活躍するあなたを見て、一緒に強豪クラブに入ろうと思った」
「ただ今の実力では機能しない。だから自主練を課した」
「あなたがバスケに本気で取り組んではいないと感じ、無理強いさせるのはと距離を空けた」
とのことだった。
それから
「私に対して遅れを取っているとか感じているならそれは間違い。
ただバスケにおいては私とあなたは熱量に違いがあっただけ。あなたにはあなたの良さがある」
と話した。
姉は人情の機微に鋭い人で、私の心の内を細かく読み取っていた。
十数年間、ろくに会話もしていなかったのに。
その言葉に私は泣いた。
漸く本気で笑ったり、泣いたり出来るようになったと思う。
十数年振りにお姉ちゃん子に戻って気付いたことは姉は私に無関心ではなく単にクールなだけだったこと。
姉は夫に対しても傍目から見るとそっけない態度をしているところを見て気付いた
一試合で得点、アシスト、スティール、リバウンド、ブロックの5項目の中で2つ二桁の記録をすることをダブルダブル
3つ記録することをトリプルダブル
アシストは簡単に言うとサッカーのセンタリングみたいなもの
スティールは相手のボールを奪うこと
リバウンドは外れたシュートを取ること
ブロックはシュートを防ぐこと
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