私が2歳の頃、父が交通事故で死に、私が幼稚園の頃、母は再婚しました。
相手も奥さんと死別したコブ付き。
そのコブが私と同い年、ただし、男の子。
私の方が6ヶ月ほど年上でしたが、向こうが背も高かったので、弟という感じもしません。
なので、弟(仮)とします。
母と私が、新しい父の元へ引っ越す形で同居が始まりました。
小学校で面倒臭かったのは、同級生たちに姉弟と説明すること。
弟(仮)は
「父が再婚してキョーダイになった」
とアッケラカンと言えたようですが、
私の方は再婚と言いづらく
「うん、まあ、親戚みたいな感じ」
と曖昧に答えたせいで、混乱の原因に……
私は丸顔で一重の細い目の純日本人顔のチビ、運動オンチで読書が趣味。
弟(仮)は色黒で二重まぶたの目ぱっちりで背が高く、運動神経が良く、テニススクールに通い、小学生ながらギターが趣味。
当然、弟(仮)はモテモテなわけで、私は地味でモテるわけもなく。
すると、小学校低学年の頃は、同級生女子が
「弟(仮)クンと親戚だからって、一緒に登下校なんて生意気」
とやっかまれる。
小学校高学年になるにつれ、弟(仮)は先輩女子にまでモテるようになって、やっかみは倍に。
私はますます暗く地味な世界へ閉じこもり、この頃は弟(仮)が大嫌いでした。
中学入学して「このままじゃいけない!」と私はテニス部へ。
弟(仮)は、そんな私に遠慮したのかどうか、軽音楽部へ。
生まれ変わるつもりだった私は、弟(仮)に
「変な遠慮しないで! そういうのはもっとムカつく!」
と言うと、彼は
「俺、自分より下手な先輩に威張られたくないんだよ。
テニスはテニスクラブで高校生相手に硬式でやるからそれでいい」
と。
実際、弟(仮)のテニスの実力は相当で、小学5年の時にテニススクールの中3と互角に戦っていたので半分は本音なんでしょう。
とりあえず、私は鈍臭いなりにテニスに打ち込みました。
そして、弟(仮)は軽音楽部でギター弾いてよりモテモテに。
問題は私達が中1の秋。
うちのテニス部は女子が圧倒的に多く、男子が少ない&幽霊部員ばかりで団体戦ギリギリの人数しかいません。
ある日、OBが顔を出してきて、私を見て
「あれ? 弟(仮)くんのお姉さんだよね? なんで、弟(仮)くんはテニス部じゃないの?」
このOBさん、弟(仮)と同じテニススクールだったので、私のことも弟(仮)のことも知ってたんです。
(私も父と弟について、たまにテニススクールの単発セミナーに行ってましたので)
「えー? 弟(仮)くんって、テニスも出来るんですか?」
と部員たち。
「弟(仮)くんは、今は硬式やってるけど、小学生の頃は軟式で中学生相手に戦って勝ってたんだよ。
なんで、テニス部入らないのかな」
その日のうちに、私は顧問・OB・部長・副部長に囲まれて
「なんとしてでも、弟(仮)くんがテニス部に入部するよう、お姉さんである君から説得してくれ」
「私が困る。顧問や先輩から絶対に入部させろって言われてるんだから」
「俺も軽音楽部の練習抜けるわけにはいかない。
3年生を送る会の発表に向けて忙しいんだ。それに軟式のグリップなんかもう忘れた」
「たった一年でグリップ忘れるわけないでしょ!」
と、ワーワー言い合いをしているところに、父と母が帰宅。
事情を聞いた父が一言。
「弟(仮)がテニス部顧問に『練習には出ないが、試合には出る。その条件でどうですか?』と聞いてみろ。
そんなふざけた条件なら断られるから」
次の日、職員室に弟が行って、父に言われたとおりにやったら、なんと顧問は
「それでもいいから入部してくれ」
怒ったのはテニス部男子部員
「そんな生意気なこと言うなんて、どれだけ強いんだ!」
と。(当然ですね)
その怒りの矛先は私にやってきて、先輩たちから吊し上げ……
そして、私は軽音楽部と合唱部にも呼ばれて吊し上げ……
弟(仮)の入ってた軽音楽部は実質フォークソング部で、定期発表会や文化祭などでは合唱部と合同発表とかやっていたため。
しかも、うちの合唱部は関東大会常勝の強豪で、女性だけで40人以上在籍。
モテモテの弟(仮)は、軽音楽部と合唱部のアイドル的存在でしたから、テニス部にとられてなるものか、と。
テニス部の男子テニス部5人の吊し上げもなかなかでしたが、女子総数50人以上からの吊し上げは凄まじかった… ナニを言っても通じない…
「なんで、弟(仮)くんの意志を尊重しない! 姉だからと横暴だ!」
「それは、私も顧問と先輩から……」
「ワーワーギャーギャー! ふざけんな! 弱小テニス部のくせに!」×50人以上の女子。
これの繰り返し……
なんとか泣かないように頑張りましたが、30分やられたら、さすがに泣いてしまいました。
そして、私、登校拒否になりました。
朝、学校に行こうと制服を着ると、お腹が痛くなってきて動けない。
無理して家を出ると、玄関前で吐いてしまう。
結局、1週間以上、学校を休みました。
ある日の夜、弟(仮)が私の部屋に来て、
「はなし、つけといたから、いい加減学校に来いよ。受験に響くぞ」
と。
で、久々に一緒に学校へ登校すると、通学路で何人もから
「あ、お姉さん、先日はどうもすみませんでした。ごめんなさい」
と謝られる。
学校へ着くと、合唱部+軽音楽部の女子50人以上が待ち受けていて、
「先日はすみませんでした!」
の大合唱。
(合唱部だけあって、謝罪まで声がぴったり揃っていたw)
放課後、着替えてテニスコートへ行くと、男子テニス部員が
「こないだは悪かったな、許してくれよ」
とやってくる。
弟(仮)が、私を吊るしあげた合唱部+軽音楽部の部員を説得してくれてたそうです。
それも、わざわざ音楽準備室なんて密室に一人一人呼び出して。
そりゃあ、みんな弟(彼)ファンですから大喜びで説得されて謝罪するよなあ……
その後、テニス部にも顔を出して
「俺の実力見たい奴、全員来いよ。勝負しようぜ」
とやってくれたそうで。
審判をやったテニス部女子によると、まず、最初にコーチして来ていた大学生OBと試合して勝利、その後、部長と副部長に圧勝。
次の日、勝負を希望したその他男子部員3人と試合して全試合圧勝。
全試合1セットも落とさなかったそうで。
その上で
「俺が強いのは、テニススクールでレッスンプロから7年以上も教えてもらってるから当たり前。
だから、先輩たちや顧問に指導を受けるつもりはない。みんなと同じ練習をする気も一切ない。
大会にだけは団体戦選手として協力します。それが不満なら、テニス部に協力はできません。
ただ、それは姉(仮)には一切関係ないことです。どうしますか?」
手も足も出なかった男子部員たちは、改めて弟(仮)に
「協力お願いします」
と。
私は、そこからは快適な中学生活を遅れましたが、弟(仮)はここから修羅場でしたでしょうねえ。
毎年、区大会の二回戦負けだったのが、弟(仮)の活躍で東京都大会まで出場することになっちゃったんですから。
そして、テニス部の名も売れて、入部希望者が男女ともに倍増。
弟が3年生に進級する頃には、他の中学の女子ファンがテニスコートまで見学するようになってましたからw
先週、中学テニス部OB会があって、久々にこのことで盛り上がったので、思い出しました。
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