旦那は二人兄弟で、5歳上の義兄がいる。
義兄は神童とまで呼ばれた秀才児だったらしいけど、新卒で入った会社で人間関係につまずき退社。
そこから引きこもりになり15年に至るという経歴の人だった。
当時40代。
義母はとにかく義兄ラブで、「ちょっと人生の寄り道をしてるだけ」「充電期間が必要」と
ヒキニート義兄をかばい続け、義兄の希望通りのごはんを三食作り、お小遣いを与え…と
かいがいしくお世話していた。
旦那はそんな義母と義兄を嫌っていて、うち夫婦は疎遠だった。



ある年義母の母が亡くなり、私と旦那はお葬式に呼ばれた。
義兄はずーーーっと携帯電話でゲームをしていた。
音を消すことすらせずずっとピコピコ。
他の親戚が止めると「うー」と口をとがらせて唸り、止めようとした人の腕を手で払う。
まるで幼児だった。

私は「いつものように義母さん、『お兄ちゃんを放っておいてあげて!』って言うんだろうなあ」と思いながら、ななめ前の義母を見た。
義母は無表情で、うまく説明できないんだけど、ショックを受けすぎて顔に出せずに固まってドンビキ、という顔をしていた。
義母はそれまで義兄を疑似恋人のように愛してたんだけど、まさしく「百年の恋が一瞬にして冷めた」という顔つきだった。

数年経ってほとぼりが冷めた頃、そのときのことを義母に聞いたら

「お兄ちゃんは天才児なんだから、教えなくてもなんでもできる子だと思い込んでいた。
 それがまさかお葬式では静かにするもの、という常識すら知らないなんてショックで…。
 そりゃ確かに『お葬式では静かにしなさい』
 なんて口に出して教えたことはなかったけど、40歳を過ぎたら自然と悟るものだと思ってたから…」

義母はその瞬間スーっと頭が冷えて、「うちのお兄ちゃんは天才児」フィルターが目からパコっと外れて
ありのままの40代デブヒキニートモバゲ課金厨の義兄の姿が目に映ったんだそうな。

義母はその後、義兄へのご奉公みたいな尽くし方をやめた。
義兄は家の居心地が悪くなったからか二度家出して、その後バイトを見つけ、今はバイト+仕送りで一人暮らししている。
仕送りもらってるんじゃ社会復帰できてないじゃん!と言われそうだけど
一時期より全然マシだし、人間そんなに急に変われないから仕方ないと思っている。
義父母の死後、旦那はいっさい義兄に援助はしないと通告済み。
あの時の義母の「百年の恋が一瞬にして冷めた」という顔が忘れられなくて、たまに今でも夢に見る。

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この記事のコメント一覧
1 . 名無しさん  ID:0Uz6HBLN0編集削除
ニート脱出できたのはとてもじゃないが信じられん。
しかも自分から仕事見つけて働くとか。
2 . 名無しさん  ID:L0XN6zqZ0編集削除
40代(3翻)デブ(1翻)ヒキニート(4翻)モバゲ(1翻)課金厨(4翻)
数え役満じゃん、トビです

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