女商人「さてアレフガルドに向かいますか」

〜アッサラーム周辺〜

魔「ヒャダルコ!」

魔物の群れを倒した!

僧「大丈夫ですか?べホイミ」

魔「ありがとう。うーん、私たちも大分強くなってきたんじゃない?」

僧「そうですねーこれも商人さんのおかげですねー」

魔「そうね…まだまだあっちの二人にはかなわないけど」

武「捷星魔光弾!」

商「ヒャッハー!!魔物の腸から5ゴールドゲットー!」

僧(やっぱり怖い)

〜宿屋〜

僧「それにしても、ほんとに商人さんって強いですよねー」

魔「そうよね、並の戦士や武闘家じゃ歯が立たないと思う」

武「確かにな。あれは並の鍛え方じゃないぜ。ただの商人じゃあないな…そう言えば、その商人は?」

魔「なんか、用事があるってどっかいっちゃったけど」

僧「よくいなくなりますよね…ミステリアスな人です」

魔「…魔物に対しては容赦なさ過ぎてちょっと怖いけど」

武「…まあな。でもアレで結構優しいところもあるんだぜ?こないだだって…」

…………

武「…とまあ、いい女だと思うわけよ、俺は…どうした?ニヤニヤして」

僧「いや〜ひょっとして、武闘家さん、商人さんのこと…」

武「…まあな。正直惚れてる」

僧「キャー!やっぱり!」

武「この旅が終わったら、あいつに…」

魔「…まずはご主人様と奴隷みたいな関係を解除しないとね」

武「う…そ、そうだな…」

僧「まあまあ!とりあえず飲みましょう!」

〜アッサラーム〜

商「さて、アッサラームにつきました」

魔「初めてきたけど、すごい活気だねー」

武「色んな店があって面白い町だぜ」

商「私はちょっと仕入れがあるので、一旦自由行動にしましょう。あっちの方はあんまり治安がよくないので
 近寄らないように。特に僧侶さん」

僧「はーい」

商「武闘家、ついてきなさい。荷物持ちが必要です」

武「はい!」

商「では、後ほど宿屋に集合で」

武器屋「いらっしゃい!…おお!あんたか」

商「お久しぶりです」

武器屋「頼まれてたもの、入ったぜ」

商「さすがに仕事が早いですね」

武器屋「まず、裁きの杖が10本に、いかずちの杖が3本、眠りの杖に魔封じの杖が一本ずつ、毒針が10本、
    毒蛾の粉が10セット。それに、このオーダーメイドの盾、これでよかったかな?」

商「ええ、ありがとうございます…いい出来ですね」

武器屋「苦労したぜ? まあ俺様に揃えられないもんはないけどよ…と言いたいところだが、
    例のアレはさすがに無理だったぜ…とはいえ、情報は手に入ったぜ」

商「本当ですか?」

武器屋「ああ、どうやら、今度のオークションに出る可能性があるらしい…参加してみる価値はあると思うぜ」

商「わかりました。ありがとうございます。お代です」

武器屋「まいどあり」

武闘家「例のアレってなんですか?」

商「質問を許可した覚えはありませんよ?」

武「はい!」

僧「うわー、ほんとに色んなお店がありますねーうわー」

魔「ちょっと!そっちは行っちゃダメだって言われたでしょ!」

モヒカン「ヒャッハー!ここは通さねえぜ〜」
モヒカン2「命が惜しけりゃちょっと付き合ってもらおうか!」

僧「え?え?」

魔「言ったそばから…」

女賢者「バシルーラ!」

モヒカン「うおおお!?」

僧「え?え?」

賢「大丈夫?だめよ、この辺は変なの多いから気をつけないと」

僧「あ、ありがとうございます」

賢「あ、私も帰らないと…ルーラ!」

魔「…なんだったんだろう」

〜アレフガルド〜

女戦士「はい勇者、あーん♪」

勇者「…いや、自分で食べれるんだが」

戦「あ〜ん、いいじゃない、ほら、あーん」

女賢者「ただいまー、頼まれたもの買ってきたわよ…って何ベタベタしてんのよあんた!」

戦「チッ!邪魔者が帰ってきやがったか…」

賢「邪魔者はあんたでしょ!私と勇者がいれば世界は回るのよ!」

戦「うるせー魔法バカ!」

賢「筋肉バカに言われたくないわよ!」

勇「…フフ」

賢「何笑ってるのよ勇者!」

戦「そうだ!勇者はどっちに飯食わせてもらいたいんだよ!」

勇「いや、だから自分で食うけど」

戦「つれない!でもそこがステキ!」

…………

勇「…………ふぅ」

賢「どうしたの、勇者?ため息なんかついて」

勇「いや…ここに、彼女もいれば、と思ってさ……」

賢「……」

戦「…ああ」

勇「…さて、賢者も帰ってきたことだしそろそろ行くか」

〜アッサラーム〜

商「さて、そろそろ出発しますか。次の目的地はピラミッドです」

僧「ピラミッドって、あの砂漠にある奴ですか?」

商「そうです。そこにある黄金の爪を取りに行きます」

魔「黄金の爪っていうと、確か武闘家用の武器…」

武「ご主人様…!」

商「ええ。まあそれはどうでもいいんですけど、高値で売れるので」

武「ですよねー」

〜ピラミッド〜

魔「…死ぬかと思った…」

僧「敵の数半端じゃなかったですね…」

商「全員無事ですね。さて、それでは売りにいきましょう」

魔「なんてタフなの…商人さん…」

〜アッサラーム地下オークション〜

僧「こ、ここは…?」

商「一般人は入れないオークションです。普通の店では扱えない品物やお宝が流通してるので中々面白いですよ」

魔「…うわー、いかにも呪われてそうな剣や鎧が…」

僧「あの宝石の王様みたいなヤツはいくらくらいするんでしょうか…」

武「…あのモンスターも売り物なのか?」

商「ええ、ここで売れないものはないと言われてるほどです…ふむ、そう言えば、あなたたちもいい値段が付きそうですね…」

僧「ヒィ!?」

商「冗談ですよ、冗談」

魔(目がマジだった)

バイヤー「さてお次の品物は!なんとあの王家の秘宝!黄金の爪!10万ゴールドからスタート!」

商「おっと、出ましたね。頑張って釣りあげますか」

…………

商「黄金の爪、120万ゴールドですか…まあまあですね…とりあえず、これだけあれば落とせるでしょう」

魔「すごい高値で売れましたね…」

商「まあ、ちょっとしたコツです。さて、私はまだ用事がありますので、あなたたちは先に帰っていてください」

僧「えー? 私ももっと色々見たいですー」

商「…ここから先は、興味半分で見て良い世界ではないですよ?」

僧「…え?」

武「おい…なんか向こうの方から聞いたことのない唸り声がするんだが…」

商「…次の商品が来たみたいですね」

魔「…確かに、帰ったほうがいいみたいね」

僧「わ、わかりました!商人さんも気をつけてくださいね!?」

バイヤー「さて!お次の商品は!伝説の魔獣……」

商「さて…本気でいきますか」

バイヤー「続いての商品は、あの伝説の剣……」

……………

商「ひとまず、目的の物は手に入りましたか。戻るとしましょう」

客「あの商人…すげえな…魔王でも倒しに行くのか?」

客2「半端じゃない買いっぷりだったな…」

〜宿屋〜

武「うーん…」

僧「どうしたんですか、武闘家さん。珍しく真面目な顔して」

武「いや、ちょっと気になってることがあるんだけどよ。なんで魔物っているんだ?」

魔「なんでいるかって言われても…」

武「あ、いや、そもそもの話じゃなくてだな。魔王バラモスは倒されたんだよな?」

僧「ええ、勇者様が討ち倒したという話ですよね」

武「なのになんで魔物はまだうじゃうじゃいるんだ?」

魔「残党、ってことじゃないの?」

武「…俺も昔、戦に参加したことがあってよ。残党狩りもやったことあるが…そりゃあ悲惨なもんだぞ?
  なんつーか、魔物どもには残党の悲惨さがないんだよな…まあ、人間と一緒に考えるのも無理があるけどよ。
  それで、もうひとつ気になってるんだけどよ」

僧「なんですか?」

武「肝心の勇者様はどこに行っちまったんだ?」

魔「…そう言えば、アリアハンに凱旋したと思ったらすぐに姿が見えなくなったらしいね」

僧「うーん。言われてみれば不思議ですね…」

武「まあ考えてもしょうがないことなんだけどよ、なーんか気になっちまってさ」

僧「うーん。商人さんなら何か知ってるかも」

武「あー…今度ヒマな時にでも聞いてみるか」

〜草原〜

魔「イオラ!」

僧「おお!」

魔「できた!」

僧「すごいです!わ、わたしも!バギマ!」

魔「おお…!」

僧「やったあ!」

武「…ん?なにやってんだ?」

僧「あ、武闘家さん、私たちまた新しい魔法覚えたんですよ!」

武「おお、二人とも随分成長したな」

僧「ありがとうございます!これも武闘家さん達のおかげです!」

魔「あんたは何やってんの?」

武「俺か?あと3万ゴールド貯めたらご主人様が手握ってくれるっていうから魔物狩りの途中だよ」

魔「…そう、頑張ってね」

僧「…契約内容が凄いことになってますね」

魔「…なんかちょっとやつれてるし…大丈夫かな、あの人」

〜一週間後〜

魔「ベギラゴン!」

僧「おお!」

魔「できた!」

僧「私もいきます!ベホマ!」

魔「…うん!スゴイ回復した!」

僧「やったあ!」

武「……」ガサッ

僧「あ、武闘家さん!」

武「ブツブツ…あと5万ゴールドで名前を呼んでいただける…ブツブツ…」

僧「……」

魔「ボッタクリってレベルじゃねーぞ」

〜草原〜

魔「バイキルト!」

武「よっしゃ!破ァ!」

僧「バギクロスー!」

魔物の群れを倒した!

僧「いえーい!私たちいい感じじゃないですか?」

武「ああ、連携もバッチリだしな!」

魔「結構いいパーティだと思うわ。ね、商人さん」

商「そうですね。これなら…」

魔「ん?」

商「いえ、なんでもありません」

商「ふむ、あの二人がここまで伸びるとは予想外でしたね…そろそろ行きますか」

〜宿屋〜

商「さて、大分資金も出来たところで、ここらで大きな商売をしたいと思います」

僧「おお?どこに行くんですか?」

商「まずはロマリアにいきます」

魔「ロマリアかー。活気のある港町らしいね。港といえば貿易ですかね」

商「いえ、将を射んとすればまず馬ごと一刀両断。相手は王様です」

武「お、王様?相手してくれるのか?」

商「大丈夫です」

〜ロマリア〜

衛兵「では、こちらでお待ちください」

商「はい」

武「すげーな…顔パスかよ…」

ロマリア王「おお!よくぞ来たな商人よ!」

商「お久しぶりです」

ロ「今日は…おお!これはわし好みの女と男じゃな!買った!」

僧「ええ!?」

武「俺もかよ!好みって!」

商「お望みとあらば売りたいのですが…」

魔「ええ!?」

商「あいにく、今日の商品はこちらです」ドンッ
ロ「おお!そ、それは黒コショウ!しかも樽一杯!買った!」

商「100万ゴールドでいかがでしょう」

ロ「よし!買った!」

僧「さすが王様…」

商「ありがとうございます」

ロ「ところでどうじゃ、商人、ちっとカードでもしていかんか?」

商「よろしいですよ」

ロ「よし!今日こそは身ぐるみはいでやるわい!レートはいつものでよいな」

商「はい」

僧「王様とカードですか…どんな勝負なんですか?」

商「単純なポーカーですよ。一勝負、勝てば10万ゴールド」

僧「へー…って10万!?」

………………

商「…私の勝ちですね。しめて100万ゴールド。とりあえず今日のところは王冠でも頂いていきましょうか」

武「王様相手でも容赦ねえな」

商「では、また」

魔「すごい商売と勝負でしたね…」

武「ぶっ飛んだ王様だったな…大丈夫かこの国」

商「まだまだこれからですよ。次は…そうですね、イシスに向かいましょう」

〜イシス〜

衛兵「では、こちらに…」

魔「やっぱり顔パスなんだ…」

イシス女王「よく参られました」

商「お久しぶりです」

僧「うわあ…凄くキレイな人ですね…」

イ「今日は…ふむ、女官のための男娼ですか?あまり感心しませんが…」

武「え?俺ってそんなに男娼ヅラしてんの?」

魔「……」

僧「……」

武「黙るなよ」

商「お望みとあらば売りたいところですが…」

武「ええ?」

商「今日はこちらをお持ちしました。ロマリアのおいしい水です」

イ「おお、これは…!」

商「50万ゴールドでいかがでしょう」

イ「頂きましょう」

僧「やっぱり王様ってすごいですね…」

魔「すごいですね、なんていうか別世界で…」

僧「そんなに稼いでどうするんですか?」

商「まあ、色々と欲しいものがありまして…ふむ、そろそろいいですかね」

武「ゴールドが重てえ…」

商「早くしなさい男娼ヅラ」

武「ヒドイ!でも嫌じゃない…」

魔「ほんとに男娼みたいになってやがる」

〜宿屋〜

商「さて、次の目的地ですが」

僧「はーい。次はどこですか?」

商「アレフガルドに向かいます」

僧「アレフ…?」

魔「…実在するんですか?」

僧「な、なんですか、それ?」

商「アレフガルド。この世界の地下にある、伝説の大地です。そして、そこに勇者一行がいます」

武「マジかよ…?」

商「本当です。勇者一行は魔王バラモスを倒した後に現れた、大魔王ゾーマを倒すために地下世界アレフガルドにいます」

魔「だ、大魔王…!?」

武「そんなヤツがいたのかよ…」

僧「でもなんで商人さんはそんなことを知ってるんですか?」

商「それは…秘密ですが、確かな筋からの情報です」

僧「す、すごいですね、ついに私たちも伝説に…!」

武「腕が鳴るぜ!」

商「では、明日の朝出発しますので、今日はゆっくり休んでください」

僧「すごいなー地下世界ですって…!」

魔「実在したなんてね…そういえば、ちょっと調べてみたんだけどね、私たちの今まで通ってきたルートって、
  勇者一行の通ったのとほとんど同じルートみたいよ」

僧「そうなんですか?…勇者様一行の足取りも知ってたし、ひょっとして、商人さんって…」

魔「勇者のパーティの一員…かもしれないわね…タダものじゃないのは確かだし」

僧「すごい…!救世の勇者様一行の一員だなんて…!…でもなんで今は一緒じゃないんでしょう?」

魔「…うーん、色々事情があるんじゃないの?そう言えば、よく姿が見えなくなるし、町で色々やってるみたいだし。
  極秘任務とか。なんたって世界を救うような旅をしてるわけだし」

僧「そうですね、とにかく今日は寝ましょうか。明日は新世界ですし…でも地下ってどうやっていくんだろう…」

〜ギアガの大穴〜

商「はい、では飛び降りてください」

僧&魔「無理無理無理!」

商「どうしました?」

僧「ど、どうしましたって!こんなの飛び降り自殺と同じじゃないですか!」

商「大丈夫ですよ、地下世界につながってますから」

魔「いや、そう言われても…」

見張り番「命は大事にしなさい…」

僧「ほら!見張りの人もああ言ってますよ!」

商「しょうがないですね、武闘家、いきなさい」

武「はい!」

僧「あ!ほんとにいっちゃった!」

商「さあ、あなた方もどうぞ」

魔「いやいやいや」

商「しょうがないですね…じゃあいっしょにいきましょう。それっ」

僧&魔「キャアアアアアアアア!!!!」

〜アレフガルド〜

商「ふう…どうやら無事についたようですね」

僧&魔「…………………」

商「二人とも、起きてください、つきましたよ」

僧「…………生きてる…」

魔「…ほんとに来たの…?」

商「どうやら武闘家がクッションになってくれたようです」

武「……………」

僧「うわあ!?武闘家さん!?」

商「返事がない。ただのしかばねのようだ」

僧「縁起でもないこと言わないでください!ベホマ!」

武「うお!?」

魔「大丈夫?」

武「夢か…雨を避けて走れる技を会得したと思ったんだが…」

魔「大丈夫?みたいね…」

僧「ふぅ…ここが、アレフガルド…?」

魔「…見た感じ、私たちのいた世界と変わらないような…」

商「普通に人もいますし、町やお城もありますよ。ただ、モンスターは手強くなってますから気をつけてください」

武「さっそくお出ましだぜ」

魔物の群れがあらわれた!」

…………

魔物の群れを倒した!

魔「…確かに手強かったわね」

僧「でも、なんとかなりましたね」
>>104 でも自殺志願者が到達しちゃうギアガの不思議
〜ラダトーム〜

僧「立派なお城ですねー」

魔「ほんとに、私たちのいた世界とあんまり変わらないね」

僧「今度、孤児院の皆連れて来てあげようよ。地下世界見学ツア〜」

魔「あ、それいいかも」

商「…仲がいいんですね」

僧「ええ、そりゃもう、孤児院の皆が私たちの家族ですから!」

商「…そうですか。さて、私はちょっと用事がありますので、先に宿屋に行っていてください」

魔「はーい」

〜ラダトーム路地裏〜

密偵「勇者一行は、大魔王の討伐に成功した模様です。今はラダトームに帰ってくる途中、とのことです」

商「ご苦労様…取っておきなさい」

密「それから…これが、例の物です…すごい代物ですね…」

商「ふむ…大枚はたいた甲斐がありました。約束の金です。取っておきなさい」

密「は!ありがとうございます…こちらは、いつでも大丈夫ですぜ」

商「わかりました…追って連絡します」

商「…ついに、ここまで来ましたか」

商「…しかし、彼女たちはどうするべきか…」

〜宿屋〜

商「武闘家」

武「はい!」

商「普通にしゃべって良いですよ。一つ聞きたいことがあります」

武「あ、ああ…なんだ?」

商「…あなたは、帰る場所がありますか?」

武「なんだ、いきなり…帰る場所か…俺が10才の時に、住んでた村は野盗に襲われて全滅しちまったからな…
  悔しくって、必死に修業して、15の時にそいつら全滅させて、それから流れの傭兵稼業だ。
  だから、特に帰る場所は…と、そういえば」

武「この旅が始まる前に、アリアハンで昔の俺みたいなガキと会ってよ…帰ったらそいつに
  武術を教えてやるって約束したんだ…なんだか、死んだ俺の弟に似てて、目が離せねえ感じなんだ。
 …強いて挙げるなら、それくらいかな」

商「…そうですか。わかりました」

武「…どうした?」

商「いえ…なんでもありません」

商「家族…弟…か……」

商「何を迷うことがあるのですか。利用できるものは全て利用するのが私たちのやり方でしょう…」

商「…………迷うくらいなら、最初から…しかし、これはやはり私の問題……」

商「…やはり、ここから先は一人…ですかね」

〜翌日〜

商「全員揃ってますね」

僧「あ、商人さん。大事な話ってなんですか?」

商「…これを」

魔「…うわ、すごいゴールド」

商「この旅の報酬です。皆さん、私の期待以上に頑張ってくれましたからね」

武「ちょっと待った。この旅の報酬って…」

商「ええ。パーティはここで解散です。後は私一人でいきます」

僧「えー!?ここで終わりなんですか!?」

商「…はい。この先に、私の目的である勇者一行がいます。ですから、ここで解散です。
  皆さんのおかげで大分助かりました」

魔「やっぱり…!」

僧「やっぱり!商人さんは勇者様の仲間だったんですね!すごい!」

武「タダものじゃあないとは思ってたが…」

僧「私も勇者様に一目あってみたいです!商人さん、連れてってくださいよー」

商「…何か勘違いしているようなので、言っておきますが」

僧「…え?」

商「私の目的は、勇者を殺すことです」

武「…何?」

商「ついてきたりしたら、ただでは済みません…では、話は以上です。さようなら」バタン

僧「あ!商人さん!」ダッ

魔「勇者を殺すって…どういうこと?」

武「わからねえ…とにかく話を聞くぞ」

僧「商人さん!商人さーん!」ドンドンッ

武「どいてろ…破ァッ!」ドガッ

僧「そんな…武闘家さんの蹴りでもビクともしないなんて…なんなんですかこのドア!?」

魔「…ちょっと、このドア、結界が張られてるわよ」

武「…どうやら、本気みたいだな」

僧「そ、そんな…勇者様を殺すだなんて…」

武「…仕方ねえ。明日、商人が出てきたら話を聞こう。場合によっちゃあ力づくでも止める。
  あいつを力づくで止めるとなったら骨だからな…お前らはひとまずしっかり休んでおけ。
  ここは俺が見張っておく」

魔「そうね…」

僧「商人さん…」

武「どういうことだよ…」

武「……そろそろ夜明けか…商人…何考えてんだよ…ちゃんと話してくれりゃ俺は…
 …ん?なん…だ…これ………zzz」

魔「zzz…」

僧「zzzzzz…」

商「…眠りの杖、うまく利いたようですね」

商「さて…いきますか。これで最後です」

〜ラダトーム付近〜

賢「さーて、ゾーマも倒したことだし、そろそろアリアハンに戻りましょうよ」

勇「そうだな…やらなきゃならないこともあるしな」

戦「そうねー私と勇者の新居も探さなきゃならないしー」

賢「戦士は過酷な闘いで悪い頭がさらに悪くなったみたいね」

戦「なんだとぉ?」

勇「…そこまでだ。何か来るぞ」

賢「え?」

〜宿屋〜

武「おい!お前ら起きろ!商人がいねえ!」

僧「へ!?」

魔「!もう昼近いじゃない!」

武「何かアイテムを使われたみたいだ…!とにかく追うぞ!支度出来たらついてこい!」

〜ラダトーム付近〜

盗賊団「ヒャッハー!!勇者御一行とお見受けする!あんたに恨みはねえが金のため!死んでもらうぜ!」

盗賊団2「待った待ったぁ!勇者を殺るのはこの俺たちよぉ!!」

盗賊団3「おっとぉ!俺たちを忘れてもらっちゃ困るぜ!!」

勇「…なんだ、こいつらは」

戦「大方、勇者を倒して名をあげようってチンピラだろ。身の程知らずが」

賢「数だけは多いですね…300はいるかな」

戦「1人100人か。おもしれえ」

勇「いや、10人でいい。あとは俺がやる」

賢「さすが勇者様。頼もしい」

勇「なんなら休んでてもいいぞ」

盗賊「ヒャッハー!かかれー!」

勇「ギガデイン」

盗賊1〜50「ギャアアアアアアア!!!!」

盗賊51「一瞬で仲間が…!?アリアハンの勇者は化け物か!?」

勇「魔法を使うまでもないか」

盗賊51〜100「ギャア!!」

盗賊「剣の一振りで…!?」

…………

勇「これで終わりか」

盗賊「あ、あれだけの人数があっという間に…」

勇「さて、お前に聞きたいことがある」

盗「ヒ!ヒイ!」

勇「金のため、と言っていたな。誰かに頼まれたのか?」

盗「は、はい!恐ろしく冷たい目をした、女に…」

勇「…誰だ、それは」

商「私ですよ」

勇「…お前が黒幕か」

商「300人を一蹴ですか…少しは削れると思ったんですが…甘かったですかね」

商「勇者ですね。お命頂戴します」

勇「恨みを買った覚えはない、とは言わないが…」

戦「一人で出てきた度胸は認めるけどね。勝ち目ないぜ?」

賢「そうよ、私がいる限り、勇者には指一本触れさせないわ」

商「…女に守られて、いい身分ですね、勇者様。そうやって私の姉も誑かしたんですか?」

勇「…姉?…!もしかして、君は…!」

商「いきますよ」

戦「おっと。まずは私が相手だぜ?」

勇「戦士!」

戦「わかってる。…手加減する」

商「ナメられたものです…いきますよ」バッ

賢「…あれは、裁きの杖?」

戦「ハッ!そんな貧弱な装備でどうしようってんだ」

商「これだから物の価値のわからない人は…商人の闘い方を見せてあげましょう」ブン

戦「フン、こんなそよ風…な、なんだ?体が…!?」

商「どうしました?隙だらけですよ」ドカッ

戦「ぐっ!」

賢「キアリク!」

勇「裁きの杖で起こした風で毒蛾の粉を飛ばしたのか…」

戦「助かったぜ賢者…」

賢「こういう相手なら私がいくわ。メラゾーマ!」

商「甘いですね」

賢「キャアア!」

商「魔法が使えないと思って甘く見ましたか?」

勇「さざなみの杖…いつの間に」

商「道具を使いこなしてこその商人ですからね…例えば、こんな風に」

戦「さざなみの杖二本…?マホカンタ二重にかけても無意味だろ」

商「まどうしの杖」ブン

商「このメラ程度の火の玉をさざなみの杖の間で往復させていくと…」

戦「…おいおい、とんでもねえ速さになったぞ」

商「くらいなさい」

戦「うおおおお!?」

賢「次から次へと…まるで手品師ね」

商「言ったでしょう?道具を使いこなしてこその商人だと…では、あなた方は?お嬢さん。
  剣を振りまわすだけで戦士ですか? 派手な魔法が使えるだけで賢者ですか?
  楽な職業ですね。私も明日から大戦士か大賢者とでも名乗りましょうか」

戦「んだとテメエ…!」

勇「挑発だ。乗るんじゃない」

戦「賢者!同時にいくぞ!私が道具使うヒマを与えねえ。その間にキツイのをぶっ放してやれ!」

賢「了解!」

戦「オラア!!」

商「…!早い…!」

戦「どうしたぁ!?ご自慢のアイテムは品切れか!?」

商「…く!」

戦「今だ!賢者!やっちまえ!」

賢「いくわよ…!…イオナズン!」

商「…かかった」

戦「うああああああ!?」

賢「キャアアアアア!?」

勇「戦士!賢者!」

商「…よし」

勇「…!その盾…魔法を跳ね返すのか…!」

商「正確には3倍返しです…ふむ、大金を掛けて開発させただけのことはありましたね」

勇「さざなみの杖は囮か…」

商「杖にだけ気を取られていたおかげでうまくいきましたね」

商「…さあ、後はあなただけです。覚悟しなさい」

勇「…そっちも、あまりこちらを侮らないほうがいい」

商「…なに?」

戦「…………くっ…まだまだ!」

賢「この程度でやられる私たちじゃないわよ…!」

商「…まだ立ち上がりますか…きっちりとどめを差さなければならないようですね」

戦「勇者の片腕をナメるんじゃねえ!」

商「…!まだ、こんな力が!?」

商「これで…!裁きの杖×10!」

戦「うおおおおお!?」

賢「バギクロース!!」

商「…そっちもまだ元気ですか」

賢「この大賢者様をナメてもらっちゃ困るわね…」

勇「十本まとめてバギクロス並の風を起こすとは…」

商「どうやら、少しナメていたようですね…」

……………

戦「ハァ!」

商「くっ…!ま、まだ…!」

戦「…よくやったよ、あんた。でも、ここまでだ…!」

商「く…やはり、強い…!」

勇「戦士」

戦「わかってる。手加減はする。とりあえず、半日は足腰立たないようにしとくか」
商「ここまでか…仕方ない」

戦「覚悟しな」

商「…切り札を使うしかないようですね」

戦「なに?」

商「稲妻の剣と吹雪の剣…」

戦「…二刀流?おいおい、商人風情が剣の勝負で私に勝とうってか?ナメてんじゃねーぞ!」

商「ナメてるかどうか、試してみればいい」

戦「これで終わりだ!」

賢「…待って!戦士!危ない!」

商「食らいなさい」ブン

勇「二本同時に…!?」

戦「イオラとヒャダルコ程度だろ!今さらそんなショボイ呪文でこの私が…な、何!?うああああああ!!」

勇「!? 戦士!吹雪が爆発した…?なんだあれは…!?」

賢「ま、まさかあれは…!?伝説の…」

勇「知っているのか賢者?」

賢「…合体魔法。賢王と称された伝説の大賢者が編み出したとされる秘術よ。まさか、こんな方法で…」

商「さすがに博学ですね」

賢「普通に振れば、二本同時に振ったところで別々の効果しか出ないはず…それが、なぜ…?」

商「…これだから物の価値のわからない人たちは…物の声を聞き、物の持つ力を最大限に引き出してやればいい。
  一流の商人にはたやすいことですよ」

賢「…たやすく秘術使われたらたまらないわね…どうやら本当に、とんでもない商人みたいね、あなた」

商「お褒めにあずかり、光栄です…さあ!喰らいなさい!」

勇「マホカンタ!…何!?」

賢「ダメよ!あれはもう魔法であって、魔法でない。跳ね返せないわ!」

商「形勢逆転ですね。それ!」

勇「くっ…!」

商「終わりです!最大出力…!喰らいなさい!」

バキッ!

商「!? しまった…!剣が合体魔法に耐えられなかったか…!」

賢「今だ!戦士!ベホマ!」

戦「よし!今度こそ終わりだ!食らえ!」

商「くっ…!」

武「破ァ!!」

戦「ぐあ!」

賢「新手!?」

武「追いついたぜ…!成り行きとはいえ、こうなっちまったからにはやるしかねーな」

商「…ついてくるなと言ったはずです」

武「…ったく、あんたはほんとに…金の勘定は得意だけど人の気持ちがわかんねーな」

商「…人の…気持ち…?」

武「相手が勇者様だろうがなんだろうが、惚れた女が命を掛けるって時に、一緒にいかない男がいるかよ」

商「……」

勇「…惚れた女のために命を掛けるか…止めておけ。死ぬぞ?」

武「それが惚れるってことだろうがよ」

商「…武闘家…馬鹿ですね、あなたはほんとに…」

武「ああ、きっと死んでも治らねえ。だから」

武「付き合うぜ、地獄の果てまで」

戦「熱いね。…あっちの二人も仲間かい?」

僧「ハアハア…しょ、商人さん…!」

魔「…一触即発って感じ…やるしかないか」

賢「…あの二人…どこかで見たような」

商「…パーティは解散したはずです」

魔「だから、自分の意思できました」

僧「ええ…雇い主はいなくなっちゃったんですけど…私たちの恩人が無茶してるってきいて…助けようと…」

商「…勇者に弓を引いたなんてことが知れたら、お尋ね者どころの騒ぎじゃないですよ。
  孤児院に戻れなくなります」

僧「そうなったら、商人さんの弟子にしてもらって、影から孤児院を援助する足長おじさん的なのも悪くないかなーとか
  思ったり…へへ…それに!いくら勇者様だろうと、商人さんをいじめるなら私の敵です!」

魔「そういうこと」

僧「絶対にごめんなさいって言わせてみせます!」

魔「…そんな呑気な闘いじゃなさそうだけど…まあ」

魔「後のことは後で考えましょう」

商「…わかりました。いきましょう」

勇「…話をするにも、まずは大人しくなってもらうしかないか」

武「それじゃいくぜ!」

戦「おっと!あんたの相手はあたしだよ」

武「おもしれえ!」

戦「惚れた女に命を掛ける、か。馬鹿だね。でもそういうの、嫌いじゃないよ」

武「ありがとよ!」

戦「オラァ!」

賢「さて、それじゃあこっちはこっちで遊びましょうか」

魔「出来れば遠慮したいけどね…」

僧「こうなったらしょうがないですね…」

商「やりましょうか…」

勇「……」

商「毒針×10と裁きの杖×10で毒針の嵐!くらいなさい!」

勇「くっ…」

賢「急所に当たらなくてもヤバイわね…!バギクロス!」

商「まだまだ!いかずちの杖×3!」

賢「ベギラゴン!」

魔「ピオリム!」

僧「バギクロス!」

賢「マホカンタ!」

商「ボディがお留守ですよ!」

賢「くっ…!」

勇「強いな…やはり、彼女の…」

……………

……………

武「破ァ!」

戦「終わりだ!」

ドガッ!

武「…しくじった…」ドサッ

戦「…やるじゃ…ないか…」ガクッ

商「…勝機!いかずちの杖×3!」

賢「く!」

僧「武闘家さん!ベホマ!」

武「…ふう、助かったぜ」

賢「戦士!ベホマ!」

しかし魔法は封じられている!

賢「え!?いつの間に…?」

商「武闘家!」

武「おう!魔法の使えない賢者なんざ…!」ドカッ!

賢「キャア!!」ガクッ

勇「…さっきのいかずちの杖の中に魔封じの杖を紛れ込ませていたのか」

商「…4対1です。覚悟しなさい」

勇「…仕方ない」

武「悪いな、勇者様。いくぜ!」

魔「バイキルト!」

武「もらったぁ!」

ガシッ!!

武「な!?俺の拳を掴んだだと…!?」

勇「いい拳だ。だが、まだまだ鍛錬が足りないな」

武「グハ!!」ドサ

僧「ぶ、武闘家さんが一撃で…」

魔「メラゾーマ!!」

僧「バギクロスー!!」

勇「甘い」

僧「キャアア!!」

魔「剣風で魔法を跳ね返…!キャアアア!!!」

商「…化け物」

勇「…かもな。1対1、だな。そしてこれで…」

勇者は賢者の石を使った!

戦「ふう、すまない、勇者」

賢「助かりました…」

勇「3対1だ」

商「…どうやら、本当に、アレを使うしかないようですね」

戦「まだ何かあるのかよ!?」

商「安心してください…正真正銘最後の切り札ですよ…雷神の剣」

戦「!? 私のと同じ…!二本あったのか!?」

商「偉大なりしはゴールドの力と言ったところですかね…驚くのはまだ早いですよ」

商「…王者の剣」

勇「…!? なん…だと…!?」

商「調達に苦労しましたよ…いきます」

賢「…伝説の武器二刀流とはいえ、武器が同じなら力量が上の者が勝つ。
  あなたに勝ち目は…!ま、まさか…!?」

商「そのまさかですよ」

賢「最上位魔法同士の合体…!下手をすればあなたも仲間も消し飛ぶわよ!?」

商「…覚悟の上ですよ」

勇「まずいな…!」

商「終わりにします…!」ブン

戦「く…!……?な、なんだ?剣が唸ってる…?なんだか知らねえけどヤバそうだぞおい!」

商「つ、剣が…!?」

賢「失敗!? こ、このままじゃ全員…!」

勇「く…!間に合え!!」

暴走した魔力が爆発を起こす!

……………………
 
……………………
  
……………………
戦「…!う…なんとか生きてるか…ゆ、勇者は…?…!勇者!」

勇「………………………………く………」

賢「勇者!う…!ベホマ!ベホマ!ベホマ!」

勇「……な、なんとか…間に合ったか…」

商「…なぜ…なぜ、私をかばったんですか…」

勇「それは……う…」

賢「ベホマ!」

勇「も、もう大丈夫だ…」

商「…………なぜ…」

勇「…一つ、聞きたいことがある。君はやはり…彼女の妹なのか?」

商「…ええ、そうです。あなたに唆されて馬鹿な夢を見て死んだ…馬鹿な商人の妹ですよ。
  あなたが町を作れなんて言わなければ、姉さんは…!」

勇「…やはり、そうか…君に、見せたいものがある。これだ」

商「手紙…?…!その封印と筆跡は、姉さんの…!」

勇「彼女が手に入れてくれたイエローオーブと俺たちに宛てた手紙の他に、もう一通。
  妹に宛てた手紙が残されていた。これから探しにいくところだったんだが…君に渡そう」

商「…………」

勇「…ここで俺が、いくら言葉を尽くしても、君には届かないだろう。まずは、その手紙を読んでくれ。
  何が書かれているのかは俺も知らない。それを読んで、どうするかは君が決めろ」

商「…………」

勇「ベホマズン」

武「う…」

僧「あ、あれ…?私たち、どうなって…?」

魔「…生きてる」

勇「…できれば、次は敵ではなく会いたいものだ」

〜宿屋〜

魔「商人さんは…?」

僧「…しばらく一人にしてほしいって…」

魔「そう…」

武「…あいつがどういう答えを出すのかわからねーが…どんな答えだろうと俺はついていくつもりだ。
  お前らはどうするんだ?帰るんなら今のウチじゃねーか?」

僧「見損なわないでくださいよ!商人さんを見捨てていったりしませんよ!私だってついていきます!」

魔「右に同じ。…まあ、勇者一行とまた闘うことになったら今度こそヤバいけど」

商「…姉さんの手紙…」パラ

親愛なる妹へ

あなたがこの手紙を読んでいるということは、おそらく私はもうこの世にいないのでしょう。
多分、知っているとは思いますが、私は今、自分の作った町の牢獄でこれを書いています。
あなたに伝えておくことが二つあります。
まず、私はこうなったことを後悔していません。あなたも商人ならわかると思いますが、
自分の商売で町が発展していく姿を見るのは、商人冥利に尽きるというものです。
結果、こうなってしまいましたが、私は後悔していません。

そして、二つ目。
私は勇者のことを恨んだりしてはいません。
あなたは私が勇者に唆されてこうなったと思っているかもしれませんが、そんなことはありません。
最初にこの話が来た時、勇者は私を止めようとしました。しかし私は自ら望んでここに残りました。
その後、私が利に走り、町の人の声を無視した施政をし出した時も、勇者は何度も私を止めようと説得にきました。

それでも私は耳を貸さず、ただ町を発展させることだけを考えていました。馬鹿な女です。

今にして思えば、私が本当に充実した時間を過ごせていたのは、勇者と共にいた時だったと思います。
彼と共に居た時は、本当に日々が充実していました。商人としても。女としても。

こんなことになって、初めて気付くとは、本当に馬鹿な女です。
この気持ちを伝えられなかったことだけが、心残りと言えば心残りです。

勇者に宛てた手紙にも書きましたが、出来れば、あなたの口からも、私が感謝していたということを
彼に伝えてくれないでしょうか。

最後に。私はいつでも貴方を見守っています。あなたの行く道が、幸せなものであるように祈っています。
どうか、あなたの未来に幸多からんことを                                       姉より  
商「……姉…さん……」

〜翌日〜

武「…朝か」

僧「…うあ、おはようございます…」

魔「おはよう…机で寝ちゃったわね…」

商「……おはようございます」

魔「商人さん!」

武「…もういいのか?」

商「ええ…皆さんにはご迷惑をおかけしました」

僧「商人さ〜ん!心配したんですよ〜」

商「ごめんなさい…」

武「俺たちが聞きたいのは謝罪じゃないぜ」

魔「そうそう、まず、商人さんと勇者様の間に何があったのか聞きたいんだけど…」

商「…お話します」

……………

商「…つまり、すべて私の勘違いでした」

僧「…そういうことだったんですか」

商「あなた達を巻き込んだ事は本当に申し訳ないと思っています。許してくれとは言いません
  私のことは好きにしてくれて結構です」

武「……そう言われても、なあ?」

魔「ねえ?私たちが勝手についていっただけだし…今にして思えばとんでもないことしたわね…」

僧「そうですよ。仲間を助けにいくのは当然のことです」

商「……仲間」

僧「そうです。仲間に助けてもらったら、ごめんなさい、とか許してくれ、とか言ってたら変ですよ」

商「……ありがとう、みんな」

僧「そうです。よくできましたー」

魔「フフ…」

武「それで、これからどうするんだ?」

商「…もう一度、勇者さんに会いに行きます。今度は、謝罪とお礼に…本当は、わかっていたんですけどね…
  姉さんが死んだのは、彼のせいではない、なんてことは…それでも、何か、理由をつけないと、とても…」

僧「行きましょう!私も一緒に謝りますよ!」

武「そうだな、行こうぜ」

〜アリアハン〜

商「勇者さん」

勇「君か…」

戦「おっと。リベンジかい?」

賢「そんな雰囲気じゃないわね」

商「すべて…私の勘違いでした…本当に、申し訳ありません」

僧&魔&武「すいませんでした!」

勇「…いや、いいんだ。彼女のことは、俺にも責任がある」

商「…いえ、姉さんは、あなたに本当に感謝しているとのことでした」

勇「…そうか」

戦「…すげー頼りになったぜ、あんたの姉ちゃん」

賢「そうそう。頼れるおねーさんだったわ。そういえばアッサラームで…」

戦「ロマリアでも…」

……………

勇「君に、見てもらいたいものがあるんだ」

商「なんですか?」

商「これは…」

勇「不死鳥ラーミア。君の姉さんが俺たちに残してくれた翼だ」

僧「でっかい鳥さんですね!」

勇「乗ってくれ」

魔「す、すごいね…」

武「五人らくらく乗っちまったぜ…」

勇「行くぞ」

〜上空〜

僧「うわー!すごいすごい!高い!早い!気持ち良い!」

魔「落ち着きなさいよ」

武「あんまりはしゃいでると落ちるぞ」

商「これが…姉さんの残した翼…」

勇「ああ。彼女がいなければ、俺たちは魔王を倒せなかった…そろそろだな」

〜商人の町〜

商「ここは…もしかして…」

勇「…ああ、君の姉さんが作った町だ」

商「…………」

勇「…君にとっては、憎しみの対象かもしれないが…それでも、君に見てもらいたかった」

商「…姉さんの町……」

僧「すごい活気ですねー」

勇「アッサラームを抜こうかというところまで来ているという話だ。
   …複雑かもしれないが、この町には活気が漲っている。
  色々と、問題はあるかもしれないが、君の姉さんが愛した町だ」

商「姉さん…」

商「…決めました」

勇「ん?」

商「この町に負けない…いえ、姉さんを超える、世界一の商業都市を私の手で作ってみせます」

勇「そうか…」

商「勇者さん。ありがとうございました」

勇「いや、礼には及ばない…そうだな、そういうことなら、ラーミアを君に託そう」

商「え?」

勇「世界を股にかけるのなら、必要だろう?…旅の予定の無い俺たちと一緒に居ても、ラーミアも退屈だろうしな」

商「…そういうことなら、遠慮なく。ありがとうございます」

武「よっしゃ!それでこそ俺の商人だ!」

僧「元気になってきましたね!」

武「世界を股にかけるなら、用心棒が必要だな!今度はほんとに無賃でいいぜ!」

僧「今なら無料薬草もついてきますよ!」

魔「無料キメラの翼もいるよ」

商「皆さん…」

勇「いいパーティーだな」

商「ええ…」

………………

商「勇者さん、戦士さん、賢者さん。本当にご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。
  そして、心から、ありがとうございます」

勇「達者でな…姉さんの分まで、幸せになってくれ」

戦「おう、今度はいっしょにメシでも食いにいこうぜ」

賢「何か困ったことがあったらいつでも言ってね。あなたの姉さんには本当に世話になったから」

商「…ありがとうございます」

商「では!行きましょう!世界をこの手に!」

武「魔王かよ」

僧「商人さんなら魔王にだってなれますよ!」

魔「あんまりシャレになってないと思うけど」

商「見ていてください…姉さん」

――その後、商王と呼ばれた女商人とその仲間たちが、世界一の商業都市を作りあげるのだが――

――それはまた、別のお話――

おしまい 

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この記事のコメント一覧
1 . 名無無木さん  ID:0..IY8py0編集削除
↓読む価値があるか書いてくれると嬉しいです。
2 . 名無しさん  ID:XX9opR7F0編集削除
なし。
毎回、「この手のやつはやめてくれないかな。」と思ってる。
3 . 名無しさん  ID:BZAjYfye0編集削除
つーか生活板まとめじゃないのここ?
いつからSSまとめサイトになったんだ
4 . 名無しさん  ID:AuVAE8wJ0編集削除
ヒャダインまでは読んだ

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