冬になると思いだす、現在40代半ばの自分が子供の頃の話。
近所の嫁さんが男と逃げた。
たぶん当時20代。
そこんちのおばさんと息子が「嫁が若い男と逃げた!行方を探してる!」と近所に言いまわって、わら半紙に印刷したガリ版刷りみたいなチラシを必死に配っていた。
当時俺は子供で「男と逃げた」という意味がよくわかっておらず
運動会の二人三脚的なものを想像していた。
うちに帰って
「あそこんちの嫁さん男と逃げたん?」
と親に聞いて母親に
「そんなん言うな!」
と怒られ
なにやら淫靡な意味であるとようやく理解した。
嫁さんの親が謝りに来てたとかなんとか噂で聞いた。
俺の田舎は超豪雪地帯で、当時は一階がすっぽり埋まるくらい降るのが当たり前だった。
春になって雪が融けたら、逃げたはずの嫁さんが半凍り半融けで出てきた。
新聞配達の人が発見したらしい。
しらばっくれてたおばさんが白状して、嫁いびりで嫁一人で屋根の雪おろしをさせ、落ちたのは薄々わかってたが
放置したんだと判明した。
雪国以外の人のため説明すると、雪おろしは基本二人一組でやる。
一人でやると、屋根から落ちても誰も助けを呼べないから。
地元の女ならまだしも、嫁さんは他県出身の人だったから女一人でやらすのはまずありえない。
というわけで殺意アリアリだったが、おばさんは裁判にならず帰ってきた。
でも嫁さんの遺族に訴えられて、慰謝料を払うため家を売って引っ越していった。
そこんちの嫁さんはけっこうキレイな人だったが、半凍り半融けの死体はヒドかったらしい。
直接見たわけじゃないのに噂がすごくて、しばらく夢に見た。
そこんちの息子(嫁さんの夫)の記憶がまったくないんだが、彼はどんな心境だったんだろうか。
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