去年の夏、末弟が結婚した。
私は長女で末弟とは12歳離れている。
18歳の時進学を機に実家を出たので、末弟とは一緒に暮らした期間が短かく
こう言ってはなんだが弟というより親戚の子に近い感覚があった。
帰省のたびお菓子やおもちゃをお土産に買ってはいたが、姉弟感覚は薄かったと思う。
その末弟のお嫁さんになぜか私は敵視されていた。
挨拶しても無視、横を向いてボソっと
「…年寄りくさ」
「ババくさっ」
と小声で吐き捨てられること数回、通りすがりに足を踏まれること2回。
あまり人間関係に敏くないのほほんとしたうちの旦那ですら気づいたくらい、あからさまな悪意だった。
理由はわからないが嫌われているのはわかったので近寄らないことにしていた。
しかし末弟の見ている前だとやたらフレンドリーに話しかけてくる。
前述のとおり私と末弟はそれほど親しい姉弟ではないので、特に思い出話もなく
三人でいても盛りあがる話題もない。
末弟嫁がこちらを嫌っているのがわかるから尚更。
困った相手だが滅多に会うこともないからいいかと、普段は疎遠にしていた。
その末弟嫁に嫌われていた理由がやっとわかった。
末弟がなぜか、末弟嫁の料理にいちいち
「(※私の名を仮に加代子とします)加代ねえちゃんはこんな味付けじゃない」
「加代ねえちゃんはこんな物は作らなかった」
と文句をつけるらしい。
先月の連休、祖母の見舞いで顔を合わせた時に
末弟嫁に
「私だって頑張ってるのにーウワァー!」
と泣かれてビンタされて発覚した。
私はポカーン。
だって末弟に「加代ねえちゃん」なんて呼ばれたことはない。
面と向かって「お姉ちゃん」と呼ばれた記憶も数えるほどしかない。
帰省した時たまに夕飯は作ったが、年に1〜2回程度。
第一私は料理自慢ではく、メシマズではないがフツメシ中のフツメシ。
末弟嫁が言うには
「素手で握るおにぎりや、コロッケ、ハンバーグは加代ねえちゃんのでないと生理的に無理」
と言われたのが一番いやだったそうな。
コロッケなんて作ってあげたことあったっけなあ…いや私の作るの以外が無理なら、私がいない時ずっと
末弟はコロッケハンバーグおにぎり我慢してたってこと?いやそんなわけがない。
と結論。
すぐ下の弟(長男)と私と、うちの旦那と、末弟夫婦で話し合った結果
末弟が、嘘八百とまでは言わなくても相当大げさな話を嫁さんに言ってたことがあきらかになった。
(すぐ下の弟によると私は実際にハンバーグやおにぎりを何度か弟たちに作って食べさせたことがあるらしい。私は覚えてないが)
私は
「18で家を出ていること、それまでは部活で帰りが遅く、弟妹たちをあまりかまってやれていなかったこと、
末弟に料理はほんの数回しか作ってあげていないこと」
を末弟嫁に説明し、すぐ下の弟にそれを保証してもらい、夫にも証言してもらった。
末弟は現実の私でなく、脳内で理想化した架空の姉像をお嫁さんに語っていたらしい。
「こうだったらいいなと思って話した」
ということは認めたが
「なんでそんなことしたの?」
と訊くと
「そのほうがいいかと思って」
「今後の夫婦のためによかれと思って」
とあいまいなことしか答えない。
らちがあかないので
「あとは夫婦の問題みたいだから二人で話し合って」
と帰ってきた。
なんだかわけがわからないし、徒労感がすごい。
昨日旦那が「お疲れ」とユンケル買ってきてくれて、初めて飲んだ。
胃がカーッと熱くなって、一瞬で「効く!」という感じでこっちも衝撃だった。
|
|
(9)