うちの会社の上司はクソなんだ。
自分から飲みに誘っては割り勘
自分の業務も部下に押し付けて自分は定時退勤
などなど
みんなその上司に不満を持ってたんだが、本人に改善の兆しは無し。
そんな状態だった所へ、新人を取るという話が出たんだ。
うちみたいな零細企業は広告費なんて無いからハロワで募集をかけたらしい。
人事部も無いから社長が直々に担当してた。
その結果、とんでもない逸材が採用された。
身バレされると困るからこいつの年齢でもフェイクにするか
25歳 男
身長大き目の ややぽっちゃりとした だが爽やかな笑顔のやつだ
新卒を逃して大学卒業後、やりたい事も無くフラフラしていたという。
まあハロワだしな 採用した社長をはじめ、みんな期待はしていない。
人手は足りないからスキルは気にしないと社長は当初から言っていたが、ずっとフリーターだったそいつはPCも基本は出来るがMOSレベルではない
ほんと何のスキルもないやつだった
なんにも出来ないそいつは、証明書の無いスキルを全て持っていた
いつも笑顔で話しを聞き、朝一番に出社して掃除をして花を花瓶に入れ、3日もしないうちに会社近所の全ての商店と、近隣住民と良好な関係を築いた。
たいしたもんだと思っていたら、それは序の口だった
甘え上手だったのだ
簡単な業務内容な我が社で 新人がそれなりに仕事を覚えてきた頃、上司が発動させた。
そう、自分の業務を押し付けて残業させるやつだ
ちなみに俺ら従業員はだいたい仕事が片付き、定時で上がれると安心していた頃合だった。
上「○君、これやっといてくれるかな」
新「いいですよぉ」
上「ありがとう。じゃあおつかれ」
新「えっ上司さん帰っちゃうんですか!じゃあ僕上司さんともっとお話したいから一緒に帰ります!」
俺らみんな「えっ」ってなった
上「いやいや!だって君はそれあるでしょ」
新「でも上司さんってめっちゃ教養あるし、タメになる話しいっぱい聞けるんで、もっとお話したいんです
あ、じゃあ僕この入力作業しながら、上司さんとお話しましょう!会社で一緒にコーヒー飲みましょう!」
俺らは上司の事大嫌いだったから、一緒に話したいなんて思ったことすらなかった
結果、上司はしょうがねぇなあ とか言いながら一緒に残ってた
俺らは先に帰った
ある日、昼休み、新人が上司お昼ご飯を誘ってた
新人は俺らの話しから、上司はおごってくれない事も知っていた。
新「上司さん、お昼ですよ!一緒に行きましょう何食べます?
あ、悪いので奢っていただかなくてけっこうです。
でも僕お金ないんで、僕も払える店にしましょうね!」
上「じゃあ松屋でも行くかぁ」
上司の顔を見たらめっちゃデレデレしてた 自分から誘ってくる部下なんていなかったから嬉しいのかもな
俺らもお昼食べて、会社でのんびりしてたら、二人が帰ってきた
すると新人がすごいことを言っていた
新「すいません、ごちそうになっちゃって」
えええええ! みんな声には出さないけど眼をひん剥いて驚いてた
上「いいって、あんぐらいの値段なら奢ってやれるって。腹いっぱいになったか?」
新「はい!ちょっと物足りないです!でも悪いので今度から食べ放題に連れてっていただけたら僕も気兼ねなく、上司さんの懐気にせずおかわりできます!」
上「じゃあ今度は食べ放題だな よし、連れてってやる」
新「ありがとうございます!」
確かに今まで飲み会だったから上司は奢れる値段ではなかったのかもしれん。
ちょっと感心した
どんな風に会話してるのか見てみたくて、彼らが食べ放題行くときに俺らもついてった
新人以外は自腹だ。
一通り皿によそって席について食べ始めてみると、もうね感心した
食べ方が超うまそうに食べるの。ガツガツ食べる割に、汚くならないし、なにより声に出す
新「これめっちゃうまいっすよ、上司さん 上司さんの分も今持ってきますね」
と、更にマメなんだ。
上司もすごいニコニコして一緒に食べてる。
こんなにうまそうに食ってくれたら奢るだけの価値があると思った
新人のことをじっくり観察してわかったのが、相手の顔を立てつつ自分の要求は通すという技術だ
確かに発言も振り返ってみると、例えば>>31に書いた発言も、次回も奢る事が確定しているのがうま〜く隠されてる でも悪いからとか食べ放題ならおかわりが追加料金ないから気兼ねせずにとかで
相手に気をつかっている
こういう点がすごいんだな
まあこいつが入ってから上司も一緒に残業したり、ランチはおごってくれたりなど、上司が丸くなった
お前な!食べ放題っていくら安くても1000円くらいはするやないか!!!!
仕事の日のランチに1000円やぞ!!!??
全然安くないやないか!!!!!!!!!!
この新人めっちゃ食うぞ 松屋で定食を三つ分くらい食べるぞ
ありゃ食べ放題のが安いわ
後日発覚した新人がやったこと
朝5時には来て、朝の掃除をしてる近所のおばあちゃんと一時間ほど話し込む
出勤途中のおじいさん会社員に話しかけられ、話し込んでたら契約取る
会社の誰も参加していなかった町内会行事に一人で参加し、会社の評判鰻上り
社長の孫が欲しがってたものを見事に見抜いて社長自宅に送りつける
これ全部入社から一年もたってないんだぜwww
社長は80代だぞ 子供の流行なんてなんも知らないんだよ
さらに孫は小学生の女の子だ 既に服やアクセサリーの流行り廃りがあるんだよ
社長と上司と、平は四人。
たまに派遣で経理の女性がくるくらい
バイトが二人
他の店より利率を諦めることで安売りして数売ってる会社
社長が定年で退職した時に、元部下だった上司が詳しい業界の通販やるから会社たててくれって頼んだそうな
こないだ俺も風邪気味だったんだけどさ 咳は出ないやつだったんだけど
朝新人が俺の顔見るなり
「熱あるんじゃないすか?俺市販のやつなら風邪薬あるんであげますよ」
って言い出してすごいと思った
どうして何も言ってないのにわかるの?って聞いたことあるんだけど、
新「おかあさんがそうやってくれるんで、僕も真似してるだけです」
って
確かに彼の気の利かせ方は母親っぽいわ
前に社長から聞いた事あるんだけど、
「定年してもやることないからつまらん」
って元部下である上司氏に愚痴ったら
「じゃあ一緒に会社やりません?手堅い業界あるんで」
って言って起こしたそうな
あと昨日の出来事
増税の時に問屋が追々値段を上げると言ってきたのよ
それが昨日電話きて
「やっぱいいわ。うちが頑張るから。素晴らしい新人君取ったね」
だって
いつ手懐けたんだよ新人こええええwww
結果
上司が残業、奢りをするようになった
社長の孫娘がガチで新人君を狙いはじめた
新人君に肩書きがついた(彼のためだけに新設された部署)
俺らは給料が一万上がった(新人が老人層の顧客を増やしたため)
あ、肩書きの件だけど、社長に直談判して付けてもらったそうだ
「自分は同級生に遅れをとっている、早く取り戻したい。社長のことがすごく好きだから早く役に立ちたい
一足飛びに役職がほしいけど先輩達に悪いから自分だけの部署で肩書きだけの役職でいいから欲しい」
って言ったそうな
社長はよっしゃよっしゃって販売推進課を作ってその課長に。
やることは今までと変わってないんだけどね
先週プレゼントに大喜びした社長の孫娘が遊びにきたよ
あれは…なんていうか 女だわ
新人君にお礼を言って、プレゼントを身につけて見せてたよ
ずっと新人君にまとわりついてちょこちょこスキンシップしてた
その後二人でランチ食べにいってたわ
人受けはいいけど、仕事の能力は極めて低い
でも人受けがいいから人と関わる能力がすごい高い
うちの社員達は誰も新人くんを潰そうなんて考えてません。
嫌な上司がまともになってきたので大変感謝してます。
彼を怖いと変に勘ぐってるのはここの人だけなんで大丈夫ですよ
今日新人君と二人でランチして「今まで何してたのか」聞いてみました。
なんか今まで聞けなかったのよね
すげえなあと思ったから必死で全部メモしてきたよw
曰く、「自分は甘ったれで天邪鬼だから」だそうで。
「やりたくないことはやりたくないが、やりたいことも無かった」
「尊敬出来る人にしか仕えたくない」
「すごい事はすごいと褒めてニコニコ仕事したい」
「人生是精進。だが強要される努力はしたくない」
「人の為にならない事もしたくないし、要らない物をノせて売る事もしたくない」
「自分の正義や道徳感に反する事もしたくないし、そもそも上がそうだったなら気にせず言ってしまう。
後輩部下だから黙って従えなんて無理。悪いものは悪い」
「そもそも金も嫌い。ノルマとか報酬とか気持ち悪い」
こういう事で就職出来なかったそうだ。
一般的な会社じゃ無理だわな。
福祉関係が天職だったかもね。
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