就職したばかりの時、メールがまだ普及していなかったので、朝9時の始業とともに、取引先からじゃんじゃん電話がかかってきた。
私は新人なので、電話にはできる限り出ること、そうすれば取引先の名前も早く覚えられる、という上司の指導で、鳴った電話はワンコールが終わる前に飛びついていた。
ほとんどの、というか1件だけを除いて、私が
「お早うございます、××(社名)でございます」
と出れば、
「○○の件で、△△課の□□さんをお願いします」
という当たり前のやり取りだったのだが、1件というか1人だけ、
「あー?(↑語尾を上げる調子で)、男の人に代わって〜(↓ダルそうに)」
「はい?」
「だ・か・ら、オ・ト・コ・の社員に代わって。女のあんたじゃわかんないでしょ」
という、会社員とは思えない失礼な言い方をする取引先(声からして中年のおっさん)がいた。
この取引先の、弊社の担当者は決まっていたので、最初からその人を指名すればいいものを、電話をかけてくるたびにこれをやる。
何度かこの電話を受けた後、いい加減ムカついたので、相手が
「あー?」
と始めた途端に、思いきり息を吸い込んで、
「(取引先)の※※様ですね!いつもお世話になります!」
と、腹式呼吸の大声でかぶせてやった。
学生時代は合唱団だったからね、私の大声がアナログ電話の向こうでバリバリ割れるのがわかった。
相手はギクッとした様子で
「怒鳴らなくても聞こえるよ!?」
「すみません回線の調子が悪くてっ!それで(担当者)におつなぎしますかっ!」
相手は
「だから怒らなくても聞こえてるよ………」
と急に勢いがなくなった。
私は送話口をわざと手でふさがないで
「(担当者)さぁんっ!(取引先)の※※様から外線2番っ!」
次回の電話から、この取引先も普通に
「(担当者)さんをお願いします」
と言うようになった。
なめられたら強く出なきゃダメだということを学んだ。
というか、女の大声くらいでビビるなよおっさん。
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