私がこれまで生きてきて、初めて出会った<人でなし>の話。
結婚して5年目に夫が義妹に毎月5万円援助してることが発覚した。
うちは子供がいなくて共働きしてて、夫と私は同い年で年収も同じぐらい。
お互いに収入の中から定額を生活費用の口座に入れて、あとはそれぞれが管理することになってたので
その自己管理分の中から援助するなら私が口出しすることじゃないと思い、黙認していた。
援助の理由は単なる生活苦。
義妹の旦那さんは非正規雇用で結婚後何度か転職している。
義妹は専業主婦。
子供2人。
一時内職してたらしいけど、あまりに報酬が割に合わないと言ってすぐやめた模様。
夫の実家は子供に援助できるほど裕福ではなく、自分たちの老後の準備で精一杯だった。
それで夫が義妹に泣きつかれて援助してたようだが、私と義妹とはちょっとした確執があったので
できれば内緒にしておきたかったみたい。
確執の理由は、義妹の子供たちへの一方通行のお年玉やお祝い、プレゼント等に対し
それを当たり前のことのように徐々に礼すら言わなくなり、
一度クリスマスのプレゼントをスルーしたら「小梨の嫉妬乙」的なことを言われたから。
夫も結構怒っていたが、それでも妹は妹のようで兄として見捨てられなかった様子。
その夫が会社の健康診断で癌が見つかった。
見つかりにくい位置、進行も早くて余命宣告を受けてしまった。
夫自身が告知を受けて、私は夫からそれを知らされた。
夫は即入院、私は義父母と、何年振りかで義妹と会い、3人に夫の病気の話をした。
真っ青になった義父母と対照的に義妹は
「そんな・・・困る」
と。
まさかと思うけど、援助のことを心配してるのか?と思いながらもその言葉はスルーした。
ある日病床の夫から、義妹のことで不愉快な思いをさせてすまんと謝られた。
「そんなことはどうでもいいから病気治せ」
と言ったら、すごく真面目な顔で
自分が死んだら回忌法要とかしなくていいって。
葬式もできるだけ簡素にって。
既婚の妹に援助なんて馬鹿なことしてる夫のこと黙認してくれてありがとう。
こんな病気になるんだったら、ちゃんとそのぶん私子に遺してあげたらよかった。
迷惑ばっかりかけた。
夫らしいことなんもしてあげられなかった。
ごめん。
ごめん。
そんなことを、言った。
これ書いてて思い出すと涙がでる。
義妹が見舞いに来た時、「兄ちゃん死んだらどうすればいいのか」と生活の心配ばかりしてたそうだ。
援助などすべきじゃなかった。鬼と言われても拒否するべきだった。
兄としてやらなきゃいけなかったのは妹に自分の足で立たせることだったと言っていた。
で、夫が亡くなったわけだけど。
相続の時に、義父母が3分の1、私に3分の2。
当然義妹に権利などない。
もともとそんなに大した額の貯金はなかった。
それは義妹を援助してたからなのに、
義妹「やけに少ないね」
と。
その言葉に義父が義妹の頬を叩いた。
義父母からは相続を放棄したいと言ってきたけど、説得して受け取ってもらった。
当然の権利なんだから。
本音を言うと、義父母の相続分は200万ぐらいで、それは大金ではあるけど
あとでもしゴタゴタするようなことがあったら、そっちの方が嫌だったから。
話がついて解散する時に、再び義妹が口を開いた。
「私さん、兄ちゃんが死んだって奥さんは奥さんなんだから、今後は兄ちゃんに代わってお金くれるよね?」
(うろ覚えだけどほぼ間違ってないと思う)
義父が
「おまえはまだ言うかっ!」
としばき倒して、義母は泣いてた。
あんなに助けてくれた兄の死をこの人は一体どう受け止めてるんだろう。
兄=金としか思ってなかったんだろうな。
夫があんたへの援助は間違いだったと言ってたことを最後に告げて、以来会っていない。
ちなみに葬式は簡素にと望まれたけど、ごく普通のレベルで執り行った。
夫には友達が多かったし、職場の人もずいぶん心配してくれたし
共通の友人夫婦とかもいたから、ちゃんと見送ってあげて欲しかったから。
それに夫のあの言葉はおそらく私に対する遠慮だと思ったから。
法要は七回忌まで私と両親と義父母だけで簡単に済ませた。
30代で未亡人になった私だけど、40代になっても一向に再婚する気になれない。
亡き夫の事を思ってと言うより義妹の印象が強すぎて
ワケのわからん人と縁続きになるのがもう嫌。
|
|
(5)