30歳の二人の後輩社員のうち、どちらを昇進させて俺の部下にするって話になってたんだが
候補の1人は女で、なんちゅーか、独特の世界観を持ってるし、立場関係なく、間違ってると思ったことはストレートにぶつける
かといって意固地なわけではなく、理由がわかればすんなり納得する
自分は間違ってないと思うと、口ではハイ、ハイ、といいながらテコでも謝らないところがある
コミュ障
もう一人の候補は男で、女の真逆というか、日和見主義なところがある
促されると意見を言うが、自分からは上の立場の人間に意見は言わない
そのかわり細かく仕事内容の確認はしてくる
甘え上手なタイプでコミュ力はある
二人共経歴が同じだから、どちらも条件は満たしてる
で、俺はどちらを推すか意見を聞かれて、女の方を推した
決定的だったのは、二人がこの部署に配属になり、俺が仕事を教えていたときに、俺の親が事故にまきこまれて亡くなったと連絡があったこと
俺は二人に、俺が抜けた後の仕事の指示をメールで出した
それに対するメールの返信
男は単に了解の一言だったんだが、女の方はお悔やみの言葉を冒頭に入れていた
また、お通夜、葬式と忙しくしている間でも、男からは纏められるだろうと突っ込みたくなるほど細かい仕事のお伺いメールが何通も届いていた
対して女の方は
「この時間にメールがきても迷惑だろう」と判断して、わざわざ時間指定をして、お伺いではなく、報告メールをよこした
「この仕事は高処理した。これで通して良いかどうかの返事だけくれ、ダメなら他の仕事を処理し、上司が戻ってから指示を受けてやり直す」
みたいなこちらの負担を極力避ける形のメールだった
また、女の方は俺が月〜金までまるまる抜けてる間、「あの人は週始めと週末はこうしてた」と俺がやっていた備品管理などの仕事もこなしていた
俺が抜けた分のごみ捨て当番も当たり前のように女がやっていた
女は確かにコミュ障なところがあるが、それはこちらが女の意思をうまく理解できないだけで、女はこちらの意思を読み取っていたし、若い女性に使う言葉ではないかもしれないが、背中で語るタイプなんだろうと思う
気遣いもできる、黙っていても周りの動きをよく観察している、俺が一緒に仕事をしたいとしたら、女の方だ
だから俺は女の方を昇進させるべきだと推した
しかし、会議の結果、男の昇進が決まった
上の言い分はこうだ
「男より女の方を先に昇進させてしまうのは格好が悪い
男に足りない気遣いや判断力はこれから身に着けさせれば良い
女の方は一昨年結婚もしたし、いつ妊娠しても不思議ではない
女はなるべくいつでも切れる位置においておきたい
40にもなれば、女も昇進させる」
女の方は支社の方に配属となり、男の方は俺の部下となり、出世街道に乗る
共に仕事をするなら女の方が信頼が置けた
人材は何よりも貴重な宝だが、頭のお硬い上のせいで貴重な人材が漏れていく
女の方に支店配属の話をしたら、
「既にその話は伺いました。『女性なら家庭を大切に』と言われたので覚悟はできてました。だけど、個人の家庭のこと、迷惑もかけてないのにどうして会社が口出しするんですか」
と諦めた目で言っていた
俺の予想だけど、多分この会社を辞めて他へ行くんだろう
仕事は好きだが、ここまで育成してきた部下を上からの命令で他に流されると脱力する
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