定時制高校に通っていた。
同級生のA子は私より1つ年上で当時16歳だったがびっくりするくらい常識がなかった。
定時制なのでいろんな年齢の人がいるのだが、A子は入学式の日に30代の生徒に
「おじちゃん!」
と声をかけてトラブルになり、先生に
「失礼だから他の生徒さんのことは●●さんと呼びましょうね」
と注意されていた。
授業中に喋らない、食べ物を食べない、勝手にトイレに行かない、人の持ち物に勝手に触らない、使わないなど基本的なルールも注意されないと分からなくて何かあるのかなと思っていた。
もちろん、注意されたら二度とやらなかった。
学校なんて通ったことないのかなというくらいメチャメチャだった。
しかし、本当に学校が初めてだったのだ。
A子は高齢出産の母、祖父くらい高齢の父に大事にされながら育った。
父は5歳の時に亡くなるのだが、母は娘を幼稚園にも小中学校にも通わせなかった。
小学校はランドセルを買ってもらい入学式だけ行ったらしい。
A子は担任の先生に
「明日から元気に学校に来てくださいね!」
と言われたので学校には毎日通うものだと思ったそうだがお母さんに
「行かなくていいよ。」
「小学校に行ったらお母さんに会えなくなるよ」
と言われてそれ以来行かなかったらしい。
A子は家でお母さんとおもちゃで遊んだり、土日には動物園や遊園地に行って過ごしていた。
(お母さんは遺産で暮らしていた模様)
A子と関わる人も母親、叔母夫婦と母方祖父母のみで同年代の友達は当然出来ず。
大人=無条件で優しくしてくれる人と思っていたようで定時制高校では先生や年上の同級生に対して距離感が全然なかった。
逆に同年代に対してはよそよそしかった。
なぜA子が定時制とはいえ、高校に行かせてもらえたかというと小中学校は行かなくても卒業できるが
高校は行かないと卒業できないから「高校と大学には行きなさい」と言われたからだという。
A子は地元の高校を受けたが当然不合格。
二次募集がある偏差値が低い高校ですら落ちた。
誰かに定時制なら誰でも受かるよと言われて1年遅れで入学したという。
そのA子母も高校3年の時に癌で亡くなった。
A子はお母さんが死んだことがショックだったらしく、見てわかるくらい憔悴していた。
A子はちゃんと高校を卒業できたが卒業式の日に「小学校も中学校も通えば良かった」とポツリと漏らしたことが忘れられない。
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