私がまだ中学生の頃、親戚に引き籠りになってしまった従兄がいた。
年が離れてた従兄で、当時でもう30歳近かったと思う。
親戚が集まる行事がある度に、その従兄(Aくんとする)の話題になり
これからどうするんだろうねぇ〜なんて言い合っていた。
Aくんの親も、子供の目にもやつれてしんどそうに見えたのを覚えている。
それがある年、伯父さんと伯母さんがすごく思い切った手段に出て
うちの両親もびっくりしていた。
伯父さん、定年を機に田舎の古民家を購入。
自宅を処分して、Aくんも連れてそこに移住した。
田舎の古民家とは言っても、ネット環境はちゃんと整えることが出来る地域だったから
それでAくんも了承したらしい。
伯父さんは近所の人や自治体から農業を教えてもらいながら
自給自足の生活をし、伯母さんは道の駅でバイトをしてたらしい。
移住してしばらくは、Aくんの生活はそれまでと変わらなかったらしいが
近所で生まれた犬を貰って飼い始めたのを機に、散歩に連れて行くようになり
そのうち、農作業を少しずつ手伝ってくれるようになったそうな。
あれからずいぶん経って、先日伯父さんが亡くなったんだが
Aくんがちゃんと喪主として葬式を取り計らっていたと参列した両親から聞いた。
伯父さんの思惑は、自分たちが死んだあと
自給自足さえ覚えてくれれば何とかなると思っての移住だったらしい。
結果は思惑以上で、Aくんには田舎暮らしが性に合ってたらしく
現在は伯母さんもなくなって一人暮らしなんだが、伯母の代わりに道の駅のバイトをし
老眼になりながらも晴耕雨ゲームな生活を数匹に増えた犬と共に楽しんでいるらしい。
まぁ、運よくいい方向に転がったってのはそうなんだろうけど
伯父さんたちの思い切った愛情の結果だよなぁと思った話。
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