セルゲームにて──
悟空「今までの戦いで分かった!」
悟空「これからオラが指名するヤツなら、絶対におめえを倒せる!」
セル「ほう……?」
セル「なら聞かせてもらおうか。次に私と戦う者の名を……」
悟空「おめえの出番だぞ──」
天津飯「俺にやらせてくれ!」
悟空「い!?」
悟空「なにいってんだ、天津飯!」
悟空「あのセルはハッキリいって、おめえがかなう相手じゃねえ!」
天津飯「孫……頼む!」
天津飯「俺はこの数日間で、セルに対抗する秘策を編み出した!」
天津飯「この勝負、俺にやらせてくれ!」
悟空「無理だ! おめえが命をかけてフルパワーの気功砲をぶつけたとしても」
悟空「セルにはまったく通用しねえ!」
クリリン「そ、そうだぜ、天津飯……」
クリリン「ここは悟空が指名するヤツに運命をかけるしかないぜ……!」
クリリン「一度死んだヤツはもう生き返れないんだしさ……」
ヤムチャ「そのとおりだ……。お前が死んだら、チャオズはどうなる?」
天津飯「…………」
天津飯「俺は、あの天下一武道会でお前たちと出会ってから──」
天津飯「ずっと孫の強さを追いかけてきた……」
天津飯「しかし、その差は開くばかり……」
天津飯「それどころか、戦いのレベルにすらついていけないありさまになっていた……」
天津飯「だが! それでも修業は重ねてきた……!」
天津飯「そして……俺が編み出した秘策がもし決まれば」
天津飯「孫でさえ敵わなかったセルに、一矢報いられるかもしれんのだ!」
天津飯「頼む……武道家としての意地だ! 俺にやらせてくれ!」
悟空「天津飯……。だけどよ……」
ベジータ「やらせてやればいいだろう」
悟空「ベジータ!」
ベジータ「くたばったら、そいつが力の差も分からんマヌケだったってだけの話だ」
トランクス「と、父さん! なんてことを!」
ベジータ「天津飯とかいったな……」
ベジータ「セルが待ちくたびれているぞ、とっとと行けっ!」
ベジータ「そして……ぶざまに殺されてこい」
天津飯「恩に着るぜ……ベジータ」ボウッ
バシュッ!
悟空「あっ、天津飯! く、くそっ……!」
ピッコロ(おそらく、ベジータは天津飯の気持ちが分かったんだろう。痛いほどに……)
ピッコロ(だからあんなことを……)
ピッコロ(しかし、俺の目から見ても、天津飯に勝ち目があるとは思えんが……)
スタッ!
天津飯「セル……俺が相手だ!」バッ
セル「ほう……。まさか、天津飯のお出ましとは……」
セル「キサマ如きでは、私を楽しませることなど到底できんだろうが……」
セル「そういえばキサマには、完全体になるジャマをされたことがあるな」
セル「よかろう、相手をしてやろう」サッ
セル「孫悟空が指名する真打ちとやらの前座には、ちょうどよかろう」
シ〜ン……
セル「……どうした? 来ないのか?」
セル「えんりょせんでいいぞ」
セル「気功砲でも、どどん波でも、好きな技を出すといい」
セル「私は受けて立ってやる」
セル「もっとも……私に通用するはずもないがね」
天津飯(やはり、油断している)
天津飯(よし、これなら俺の秘策が通用するかもしれん!)
バシュッ!
セル(上へ……? なるほど、気功砲か)
ヤムチャ「天津飯が上空へ飛んでいくぞ!」
クリリン「ってことは、気功砲か!?」
悟空「天津飯、ムチャすんなーっ!」
悟飯「天津飯さん……」
トランクス(気功砲……。話には聞いたことあるが、いったいどんな技なんだ?)
ベジータ「…………」
ピッコロ「い、いや待て! あの技は──」
天津飯「四身の拳!」フッ…
ピッコロ「あれは天下一武道会で、悟空にやった技だ!」
トランクス「す、すごい……! 天津飯さんが四人になった!」
悟空「でもダメだ! あの技には弱点があるんだ!」
セル「ほう……まさか四身の拳とはな」
セル「しかし、キサマが四人になったところで、どうしようもあるまい」
セル「ひとりひとりのパワーは、やはり四分の一になっているしな」
セル「さっきまでの方が、まだマシだったかもしれんぞ」
天津飯「まだだ!」フッ…
天津飯2「ここからさらに四人で──」フッ…
天津飯3「四身の拳を」フッ…
天津飯4「行う!」フッ…
ヤムチャ「なんだとっ!?」
悟飯「天津飯さんが16人になった……!」
クリリン「だ、だけど、ひとりひとりの気はますます落ちてる……!」
セル「数が増えれば私を倒せるという計算か? 血迷いおって……」
セル「よかろう、待っておいてやる。好きなだけ分身するといい」
天津飯(三回目!)フッ…
天津飯(四回目!)フッ…
天津飯(五回目!)フッ…
天津飯(六回目!)フッ…
天津飯(七回目!)フッ…
天津飯(八回目!)フッ…
天津飯(九回目!)フッ…
天津飯(十回目!)フッ…
……
…………
………………
天津飯(二十回目!)フッ…
セル(あまりにバカバカしいので、わざわざ見てる気にもなれなかったが)
セル(そろそろ100人ぐらいにはなったか──)チラッ
セル「な!?」
セル「なんだこれは!? 空一面を天津飯が覆い尽くしているだと!?」
ウジャウジャ…… ウジャウジャ……
悟空「す、すげえ……!」
クリリン「空が天津飯でいっぱいだ……」
ヤムチャ「なんて光景だよ……めまいがしてきた」
トランクス「こ、こんなことができるなんて……!」
ピッコロ「いったい……何人ぐらいいるんだ!?」
悟飯「えぇ〜と、たしか天津飯さんは20回あの技を使ったので……」
悟飯「4の20乗ですね」
"悟飯「つまり……1,099,511,627,776人です!」"
ベジータ「バカな……。い、一兆人だと……!?」
セル「ふん……。まさか、この短時間でここまでの数になろうとは……」
セル「だが、数が増えるほど天津飯ひとりひとりの気も減っている」
セル「仮に一兆の天津飯全員が私に気功砲を当てたとしても」
セル「結局は一人分の威力でしかない。ようするに、なんの意味もない分身だ」
セル「私のかめはめ波でまとめて消してやる!」バッ
天津飯「たしかにな……」
天津飯「今の俺たちは気功砲どころか、こうして浮いているだけで精一杯だ」
天津飯「おそらくあと一発、なにか技を使えば死んでしまうだろう」
セル「か……め……」
天津飯「だがセルよ、最後にいいことを教えてやる」
天津飯「たしかに四身の拳はパワーもスピードも分身するほど分かれてしまうが──」
セル「は……め……」ズゴゴゴ…
天津飯「体重は減らんっ!」
天津飯「太陽拳!」
カッ!!!
セル「ちいっ! 目がっ……!」
セル(まさか、太陽拳とは……!)
セル「だが、やはりまぶしさは普通だし、太陽拳などでは私は殺せんぞ!」
ボトッ…… ボトボトボトッ!
セル(ん? なんだ、大量のなにかが空から降ってきた……!?)
セル「…………!」
セル「こ、これは……太陽拳で力尽きた天津飯たちの死体!?」
天津飯『たしかに四身の拳はパワーもスピードも分身するほど分かれてしまうが──』
天津飯『体重は減らんっ!』
セル「うっ、うわぁぁぁぁぁっ!!!」
ボトボトボトボトボトッ……
セル(一兆もの天津飯の死体が、全て私に降り注いでくるだとぉ!?)
セル「こ、こんなもの……」ググッ…
セル「こっ、こんなものぉっ……」ググッ…
セル(そうだ! 超能力で操って、気で消滅させれば──)ググッ…
カッ!
セル「また太陽拳……!? くっ、生きている天津飯を残していたか!」
セル「はっ! しまっ──」
セル「おっ、押され……! ち、ちくしょおおおおお……!」
グチャァッ!!!
ピッコロ「セルの気が完全に消えた……」
ピッコロ「セルは俺の再生能力を持つが、天津飯の死体に核ごと押し潰されたようだ……」
ピッコロ「しかも天津飯の奴、地球や俺たちのためにちゃんと範囲を絞っていた……」
ヤムチャ「やったぁ!」
トランクス「すごい……! どうしようもない強さだった、あのセルを……!」
ベジータ「や、やりやがった……!」ワナワナ…
悟空「どうやらオラ、天津飯のことを見くびってたみてえだな……」
悟飯「だけど、セルを倒すのと引きかえに、天津飯さんの命も……!」
クリリン「天津飯……」
クリリン「!」ハッ
クリリン「あれ!? 天津飯の死体がどんどん消えていくぞ!」
クリリン「も、もしかして……!」
天津飯「ふうっ……」
クリリン「や、やっぱりだ! 死体を合体させて、天津飯が一人に戻った!」
クリリン「アイツ、一兆人のうち、何人かは生き残らせてたんだ!」
ヤムチャ「そうか、一人でも天津飯が生きていれば、天津飯は死なずに済む!」
悟空「すげえや!」
悟飯「だけど……気がほとんどゼロに近いですよ!」
クリリン「待ってろ、すぐ仙豆で回復させてやるからな!」バシュッ
悟空「まさか本当にセルを倒しちまうなんて、オラ驚いちまったぞ!」
ヤムチャ「お前の武道家としての執念……見せてもらったぜ!」
クリリン「18号のカタキをとってくれて、ありがとな!」
トランクス「勉強になりました、天津飯さん!」
ピッコロ「あの技に、まさかあんな使い方があったとはな……」
悟飯「天津飯さん、すごかったです!」
天津飯「ありがとう……みんな!」
ベジータ(俺はもう……戦わん)
ナレーション『こうして、天津飯がみごとセルを倒し、世界に平和が戻った』
ナレーション『決して諦めることなく、悟空を追い続けた天津飯の修業の日々が』
ナレーション『実を結んだ瞬間であった』
〜 END 〜
どうにか天津飯の雨から逃れた世界チャンピオンの一言
サタン「ト、トリックだ!」
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