魔王「クックック……」

姫「!」ビクッ

魔王「何をしていたのだ?」

姫「もちろん……勇者様の無事を祈ってたのよ」

魔王「勇者はここへはたどり着けんよ。もう諦めろ。諦めて余のものとなれ」

姫「触らないで!」パシッ

ボキッ



姫「……あら?」

グニャリ…

姫(魔王の首が曲がって……)

姫「もしもし? もしもーし?」ユサユサ

姫(起きない……)

姫(どうしよう……)

姫(私、魔王を殺しちゃった……?)

姫「どうしましょ、どうしましょ!」

ドクンドクン…

姫「あっ、魔王の心臓はまだ動いてる! 心臓マッサージをすれば……!」グッ

グチュッ

シーン…

姫「いやあああっ! 潰しちゃった!」

「魔王様、どうなされました?」

姫「!」ハッ

姫(魔王の側近が来た! もし魔王を殺したことがバレたら殺人罪に問われちゃうかも……!)

「入りますよ」

姫(こうなったら、私が魔王の死体を動かすしかない!)グイッ

側近「失礼します」

姫(魔王の死体を担いで……私が声を……)

魔王『う、うむ』カクカク

側近「何をしてらしたのですか」

魔王『さらった人間の姫をからかって……遊んでおったのだ』ガクガク

側近「そうですか。しかし我々の目的は打倒勇者であり、人類を支配下に置くことです」

側近「くれぐれも程々に……」

魔王『分かっておるわ!』ギクシャク

魔王『とっとと下がれ!』

側近「は……」

魔王『ああ、あと、しばらく余の部屋に入るでないぞ』

側近「なぜです?」

魔王『決まっておろう! 姫とあれこれするためだ! よいな!』

側近「……かしこまりました」

バタン…

姫「ふぅー、なんとかなったわ」

姫(これでしばらく時間を稼げる……なんとかして魔王を蘇らせないと……)

数時間後――

姫「ダメだわ! 何やっても生き返らない!」

プーン…

姫「ん?」

姫「……臭い!」

姫「どうしよ! 早くも腐ってきちゃった! 魔族って腐るのが早いのかしら!」

姫「ひいい、もう魔王を生き返らすのは無理だわ!」

姫(もし、このまま勇者様がやってきたら――)

勇者『あれ、魔王は?』

姫『私が……倒してしまいました』

勇者『うわっ、なんて野蛮な! 君のことは嫌いになったよ!』

姫『そんな……!』

姫「きっとこうなってしまう!」

姫「こうなったらなんとしても魔王には復活してもらわなくては!」

姫「あのー」

側近「! なぜ出歩いている!?」

姫「魔王様が自由時間をくださったの」

側近(また勝手なことを……!)

側近「それで?」

姫「このお城って図書室あるかしら?」

側近「図書室? 書庫だったらあそこを曲がってすぐだ」

姫「ありがとうございます!」

側近「……?」

姫「ここが魔王城の書庫……さすがにすごい量だわ」

姫(ここを漁れば、きっと魔王を蘇らせる方法も見つかるはず!)

姫「えーっと……」

ペラペラ…

姫「これでもない……この本も違う……」

ペラペラ…

姫「――あった!」

姫「“死んだ魔族をアンデッドとして蘇らせる術”……これでいいわ!」

姫「魔力を膨大に使うのと、そこまで使わないのがあるのか……使わない方でいっか」

姫「やり方は……ふむふむ……」

姫「……」

姫「……」

姫「よし、いよいよ魔王復活だわ!」

姫(魔王の死体を魔法陣の中に置いて、と)

姫「ドッデンア……ドッデンア……」

姫「ビーンゾ、ビーンゾ……イタシタッサク……」

姫「よみがーえーれー!!!」ボアァァァァァ…

魔王「……」ピクッ

姫(動いた!?)

魔王「……」ムクッ

姫「立った! 魔王が立ったわ! やったーっ!」

魔王「……」ボロボロ…

姫「!」

魔王「ウ、ウガ……」

姫「あら?」

魔王「ウガァァァァァ……」

姫(体は崩れてるし、知能もまるでない! これじゃとても魔王とはいえないわ!)

姫「くっ……ケチらず、魔力をたくさん使う方の術にすべきだったわ……」

側近「失礼します」ガチャッ

魔王「……」

姫「!?」ビクッ

姫(なに!? なんでいきなり入ってくるの!?)

魔王「ウ、ウガ……」

姫(ヤバイ、私が魔王の声をやらないと!)

魔王『側近よ、なに勝手に入ってきておるか。いいところだったというのに』

側近「魔王様……」

魔王『なんだ』

側近「あんたの天下は今日で終わりだ!」

姫「へ!?」

側近「人類支配という目的も忘れ、人間の小娘などと遊び呆け……」

側近「あんたの身勝手な独裁には、昔から我慢ならなかったんだよ!」

姫(クーデター!?)

側近「喰らえッ! 爆破呪文!」

ボウンッ!

魔王「ウガァッ!」ボロッ…

姫(ゲーッ! 今の魔王は死んでるから、熱には弱いんだってば!)

側近「おおっ、私の呪文が通じる! やはり私が魔王軍最強だ!」

姫(不完全とはいえやっと蘇らせたのに、なんてことしてくれるのよ、このバカ!)

側近「トドメだ!」

ボガァァァァァン!!!

側近「や、やった……!」

側近「!?」

姫「痛い……」プスプス…

側近「な!? なぜ姫が!? 魔王の盾に!?」

姫「えーと……この小娘の体を操り、盾とさせてもらったのだ」

側近「くっ、なんという卑劣な! ならばもう一撃――」

姫「させるかァ!!!」バチンッ

側近「ぶっ!」ボキッ

ドサッ…

姫「ふぅ……やっつけたわ」

魔王「ウ、ウガ……」

姫「――って、こいつがクーデター起こすならそのままこいつに魔王になってもらってもよかったか!」

姫「あー、失敗したー……」

姫「ま、いっか! やっぱり魔王は魔王がやらなくちゃね!」

姫「魔王!」

魔王「ウガ?」

姫「それじゃ改めてあんたを殺して、今度は魔力をたっぷり使う術で蘇らせてあげるからね!」

姫「そしたら、ちゃんと魔王として勇者様を迎え撃ってね!」

魔王「ウガァ……」コクッ

姫「せーのっ……」

バキィッ!

…………

……

……

勇者「ついに、ついに……ここまでたどり着いたぞ」

勇者「出てこい、魔王!」

魔王「フハハハハハ、来たか、勇者よ!」

勇者「姫は!? 姫はどこにいる!」

魔王「奥の部屋で大人しくしてもらっておるよ……クックック」

勇者「今こそ貴様を倒し、姫と平和を取り戻す!」

魔王「青二才めが……余の力の前にひれ伏すがいい!」

勇者「いくぞーっ!!!」ダッ

ザシュッ!

魔王「ぐはっ……! 余を倒す、とは……!」ドサッ…

勇者「ハァ、ハァ……やった……!」

勇者「姫!!!」

姫「勇者様!」

勇者「よかった、無事だったんだね!」

姫「はい……!」

姫「苦しい旅だったでしょう」

勇者「うん……」

勇者「しかし、こうして手強い魔王と戦い、この手で倒すことができたのは、諦めなかったおかげだ」

勇者「君を助けることができて本当によかった……」

姫「私も……諦めないでよかったです……!」

― 完 ―
 
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この記事のコメント一覧
1 . 名無しさん  ID:dlqRTXE.0編集削除
嘘松
2 . @  ID:Sgo3wIR60編集削除
ジョーカー
3 . 名無しさん  ID:vf1NQdJY0編集削除
この2人の子供が王になれば国も安泰だな(白目)

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