自分の神経が分からん話なんだけど
自分は三十路手前の独身男なんだけど、仕事の帰りが遅いときは疲れて自炊する気力なんて沸かず、家の近くのコンビニで適当な弁当とワンカップ酒を買って、家で酒を飲んで、くう〜と言いながらダラダラ飯を食べる癖があった。
これを新卒の頃から何年も続けてた。
そして、2年ほど前に会社が入っているビルにコンビニが入った。
近所にあるコンビニと同じ大手のコンビニでかなり品揃えも良かった。
今までオフィス周辺にコンビニが無かったから、ちょっとしたものを買うのにかなり便利になって、俺を含め皆、大喜びした。
それからしばらく経ったある日、仕事でちょっとしたトラブルがあって、課のメンバー皆で徹夜&泊まり込み覚悟で残ることになった。
皆でヘロヘロになりながら何とか頑張った結果、終わりが見えてきて、課長が『これで夜食買ってこい』と一人1000円小遣いをくれて、順番にコンビニに買いに行った。
今まではこういうことがあると、課長がちょっと離れたコンビニまでオニギリとかコーヒーを買い出しに行って、皆に配ってたんだけど、せっかく下にコンビニが出来たんだから各自好きなものを買って来いって。
だから、最後にコンビニに行った俺も疲れた頭で適当に弁当とか買って、オフィスに戻って。
弁当食べながらワンカップ酒開けて『くう〜』と言いながら飲んで。
課長に頭叩かれた。
『お前!何堂々と職場で酒飲んでんだ!?仕事終わってないだろ!』
言われて初めて、自分が職場で日本酒飲んでることに気付いた。
疲れすぎてて、何か自分の家の近所のコンビニで買い物した錯覚に陥ってて、いつもみたいに日本酒買って開けてしまっていた。
課長は怒ってるというより、ビックリしてて、先輩や同僚は疲れたテンションのせいか、爆笑。
後輩達は凄く怯えた目でこちらを見ていた。
思わず
『違うんです!違うんです!』
と叫んだが、
『何が違うんだ!言ってみろ!』
と皆に言われ、
『家と間違えちゃって…』
と項垂れるしかなかった。
結局その後は日本酒飲んだ酔っぱらいに仕事は任せられないと一人だけ家に帰らせられた。
何か罰や処分が下されるんじゃないかとビクビクしたが、
『まあ、真面目なお前が職場で日本酒開けるなんて、本当に疲れてたんだな』
と課長も許してくれ、特にお咎めはなかった。
でも、その後も皆からは『ワンカップ男』、『課長の金でワンカップ酒を買った男』『オフィス飲酒野郎』も散々からかわれ続けている。
これは緊急事態宣言直前の出来事で、今はリモートワーク中心なのだけど、時折いきなり課長や先輩から
『ワンカップ飲んでないだろうな!』
と突然電話やビデオ通話が掛かってくるのが悲しい。
俺が悪いんだけどね…。
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