魔王「くっく……、勇者一行の様子はどうだ…?」 側近「今、平均レベル975ですね」
ぐわしゃあああん
側近「あれ、どうしたんですか魔王様、急に王座からずっこけて」
魔王「ふぇ、ふぇええ…、じゃ、じゃって…え?今、何言った?勇者一行のレベルが何て?」
側近「あ、すいません聞えませんでした?今、勇者一行の平均レベルは975だって、そういったんですけど」
魔王「え、ええ……そ、そんなんおかしいやん、じゃってアイツらつい一か月前まではレベル10そこらで、ずっと序盤でくすぶってるだけのクズどもじゃったくせに…」
側近「いやそれがですねぇ……」
側近「どうも最近アイツら、幸せの草を生産することに成功したらしいんですよね」
魔王「し、幸せの草?それってあれじゃろ?確か、草食べただけでレベルアップするとかいう希少アイテム」
側近「ええ、めったにお目に抱えないアイテムだったはずなんですけど、アイツらは偶然みつけたそれを育ちやすいように品種改良しまくって……」
側近「とうとう最近、幸せの草の畑を作ることに成功したみたいなんです」
魔王「へ、へえ……、あったまいいのう、最近の若い子は……」
魔王「え?ってことは何かい?勇者たちは、その畑に生えた幸せの草を食べまくって、レベルを1000近くまで上げたってことなん?」
側近「ええ、まあそんな感じですかね、ここからは隠し撮りしてる悪魔の目玉の映像をお見せしてご説明しますと……」ピッ
………
幸せの草の畑地帯
勇者(レベル1012)「はあ、これだけの幸せの草が一面に敷き詰められてるのをみると爽快だな…」
武道家(レベル942)「まったくだ、この草を吸ってるおかげでレベルとか頭おかしくなるくらいあがったし」
魔法使い(レベル953)「モンスターもアリをつまむ感覚でぶち殺せる境地まで至ったわい、ふひひ」
戦士(レベル992)「ふひひ、オイラ…、オイラ、草、好き」
…………
魔王「ええ……」
魔王(レベル97)「え、ちょ、何こいつ等、だめじゃろ……レベルそんなあがってたら…しかもなんか目が充血して血走ってるけど大丈夫なんじゃろか?」
側近「ええ、なんかあぶない目つきしてますし、もしかしたら幸せの草吸いすぎの副作用かもですね」
魔王「それと、さっきから気になっとるんじゃけど…、幸せの草を吸うってどういうことなん?あれって、食べたり、煎じて飲むものじゃないん?」
側近「いや、どうも勇者たちは、よくわからない紙に草を包んだものに火をつけて吸うことで身体に摂取してますね、タバコみたいに」
側近「あ、見てください、噂をしていたら、勇者が今、リアルタイムで幸せの草を吸おうとしていますよっ」
魔王「え?どれ?」
………
勇者「ぷふぁ……、ああ〜〜、いいわこれ……、やっぱ、幸せの草は火つけて、身体に取り込むのが一番キモチいいわ……」
勇者「なんか…心落ち着くし、これいいわぁ…」
勇者「」チャラリラッタリー!
勇者はレベル1013になった
魔王「ええ、いかんいかん、若者がこんなことしちゃ……、目もうつろじゃん……、なんか怖いわ……」
側近「けど、実際、この幸せの草でパワーアップした勇者一行はもう強すぎて、現地の魔物じゃ手が付けられない状態でして」
側近「序盤の大陸を管轄してた四天王のマギラスさんなんか、この間勇者たちに粉みじんにされて死にましたし?」
魔王「え?ワシ、マギラスが死んだとか聞いてないけど?なんでお前そういう重要なことワシに報告しないん?そこ重要じゃろ……?ホウレンソウをじゃな……」
側近「あ、吸いません忘れてましたわ。じゃ、いまから見せますね、マギラスさんが勇者たちに敗北するシーンを映像に収めてますから」ピッ
マギラス『ふぁっふぁ、よく来たな勇者一行よ、俺は四天王の一人マギラス!お前たちを粉みじんに…っぷおっ!!!』ブシャアッ
………
側近「はい以上です」
魔王「え?ごめ、ちょ、わからんかったんじゃけど?今なんか勇者たちの前でマギラスがしゃべってた途中に急に粉々になった気がしたんじゃけど……?映像飛ばしてない?」
側近「いえ、そんなことしてません。勇者に一瞬のうちにものすごい回数で切られまくって粉々にされちゃったんですね、マギラスさん」
側近「ちなみに勇者が今の映像の間に、何回マギラスさんを切り刻んだか見えましたか、魔王様?」
魔王「え……?いや、15回くらいかな?」
側近「超スローモーションでみたら、ざっと2845回切られてました」
魔王「あ、ああそう……」
魔王「けどちょ、これほんと大ごとよ?勇者たちこんなレベルまで達してしまって……、正直、他の四天王も全然かなわんじゃろし……」
側近「ほんとですね、どうしましょうか」
魔王「え、ちょ……とりあえず、他の四天王、魔王城に呼んで?これ、大変なことじゃからね?みんなで会議して、対策練らんといかんわこれ」
側近「あ、はい、わかりましたぁ」
その翌日、魔王城に四天王(のこり3人)が集結した……
四天王
ゴリアテ(レベル35)「しっかり魔王様も慎重なお方だな。マギラスが倒されたくらいで我らを集結させるとは……
所詮やつは四天王の中でも最弱……、勇者一行なぞこの北の大陸の覇者、ゴリアテがひねりつぶしてやるわ、がはは」
レバニラ(レベル55)「ふっ、そういきり立つなゴリアテよ。魔王様も何か考えがあってのことだろう。
まあ、勇者一行なぞ、この西の大陸の覇者、レバニラの敵ではないが」
プイプイ(レベル78)「はっ、南の大陸からわざわざ来てやったのに、なんの話かと思えば……
うだつのあがらない雑魚四天王どもがピーピー五月蠅いわね。
ま、勇者なんて雑魚を倒すのはアンタたちの役割にお似合いだわ。私にはもっとやるべきことがあるんだから」
プイプイ「(そお……、勇者なんてどうでもいい。それより魔王よ、
あの老いた魔王の寝首をかき、…そして、次の魔王の座は私のものだわ……ふふふ)」
側近「あ、みなさんお集りいただいてありがとうございます。まずは
このマギラスVS勇者の戦いの映像をご覧いただけますか?」ピッ
ゴリアテ・レバニラ・プイプイ「え?」
ゴリアテ「え?なになに、マギラス…?え?なんか一瞬の間に粉々になって…え?ネタ?」
レバニラ「馬鹿が、何を言ってる…、魔王様の前で…、ネタなわけないだろ、CGに決まってるだろ」
プイプイ「え?CG……なの?え、あ、ああ!そ、そうなんだ、て、てっきり私本物の映像かと…」
側近「いえ、本物の映像ですよ」
ゴリアテ・レバニラ・プイプイ「!?」
側近「マギラスさんは、ものすごい勢いで勇者に切り刻まれたんです、ちなみに何回切られたかわかります?」
ゴリアテ「え?え?何それ?え?な、4回?とか」
レバニラ「ば、ばか…魔王様の前でそ、そんな馬鹿な回答を……、8回くらいだろうが…」
プイプイ「え?いや、おかしくない?そんな回数切られたくらいでマギラスがあんな細切れになるわけ……14回くらい、とか……」
魔王「2845回じゃ」
ゴリアテ・レバニラ・プイプイ「!!??」
魔王「愚かな部下たちじゃ……、今の映像をみてその程度しか見えてなかったとは…、ほんと愚か……、マギラスは一瞬の間に2000回以上、勇者に切られて葬られたんじゃ」
側近「え?けど、魔王様も『15回くらいかな?』とか言って……へぶあっ!」ドスッ
ゴリアテ「お、おい、どういうことだっ!!なにこれ!なんなんこれ!こ、この間までレベル10ちょっとだった勇者たちがなんでこんなことにっ!」
側近「実はかくかくしかじかで」
レバニラ「し、幸せの草だと……なんという暴挙を……、あ、ああ…」
プイプイ「そ、それで、勇者たちは!?今、勇者たちはどこにいるのよっ!」
側近「ええとそれは……あっ」
側近「なんかもう、魔王城の前まで来てますね」
一同「!!??」
魔王「な、なんじゃって!おい、そ、側近!映像みせろ!はよう!はようするんじゃ!」
側近「ああはいはい」ピッ
勇者(レベル1123)『あーあ!一気にここまできちゃったなー、すぱー」チャラリラッタリー!
武道家(レベル1000)『ああ、ここまでくるまでの間、倒してきた魔物がごみのようだったぜ』
魔法使い(レベル992)『しかし道中、残りの四天王はみかけなかったが……』
戦士(レベル1100)『ふひひ…、きっと、魔王城に集結してるんだ…ま、まま間違いないよ…ふひひ』
武道家『ふふ、そっかあ、みんな集結してるのか……!なあ、おれはあの四天王のゴリアテとかいう力自慢のやつが前々から気に入らなかったんだ……、アイツがいたら俺にやらせてくれ……、メコメコにしてやっから!はあ、はあ!』
勇者『そうか、それじゃ、アイツは武道家に任せるよっ!』
ゴリアテ「!!??あ、あががが…」ゴバア
レバニラ「え!?ゴリアテ、ちょ、おま……、盛大に漏らしてないか!?くっさ……ん?」
魔法使い『ひひ、それじゃあ…あのワシはあのレバニラとかいういけ好かないイケメンを魔法で蒸発させてしまおうかの……、嫌いなんじゃワシ、イケメン』
勇者『ああ、おれもイケメンは嫌いだっ!頼んだぞ魔法使いっ!』
レバニラ「!??…はああ……、ああああ」ブリビリビリ
プイプイ「アンタも漏らしてんじゃないの、しかも大のほうを!くっさ!四天王ともあろうやつが、この程度で……!!んっ?」
戦士「オイラ……、オイラ……、四天王のプイプイちゃん…、可愛くて好き……、オイラ、プイプイちゃんを…オモチャにしたい……!ふひっ!」
勇者『ああ、いいぞ戦士!けど、俺もちょっと混ぜてくれよなっ!』
プイプイ「ひいいいいいいいっ!!??」
プイプイ「うえええ…、ま、魔王さまっ、魔王様!わ、わたしどうしよっ、こ、このままじゃわたし、アイツらのオモチャにされて死んじゃう……!」
プイプイ「も、もう痴呆気味の魔王さまを隙をついて殺す、とか企らまないから
た、助けてぇえ……」
魔王「お、おお……、落ち着くのじゃプイプイ……、ていうかそんなこと想ってたんじゃ…
孫みたいに思ってたのに傷つくのう……」シュン
ゴリアテ「て、てか俺たちもどうしたら魔王様っ!おれ、失禁した状態で勇者たちに殺されるだなんていやだああ!」
レバニラ「わ、わたしとて脱糞した状態で命を絶たれるなど……!くっ……!ケツも痒くなってきた…!!魔王様っ!!」
側近「あと、2分ほどで勇者一行がここまでやってきます、魔王さま、指示を」
魔王「…………」
魔王「もうよい……、お前たち、とっとと逃げろ。勇者一行の相手はワシがする」
四天王「え!?」
ゴリアテ「そ、そんな…!魔王様だって、レベル90やそこらのはずだろっ!今の勇者たちにか、かてっこねえぜっ!」
プイプイ「に、逃げるならい、一緒に逃げようよっ!」
レバニラ「魔王様だめだ……!ぐっ……ケツが…!」イガイガ
魔王「むろん勝ち目はないが……、魔王ともあろうものが勇者を前にして逃げるわけにはいかん……、老いぼれたとはいえ、勇者と戦うことがこのワシの役割じゃからな……」
魔王「さあ、もういけ……、勇者たちがここに来るまであと1分とないぞ……」
四天王「…………」
ゴリアテ「わかりましたよ、魔王様、俺も残って勇者と戦います」
レバニラ「ふっ、同じく。わたしも共に戦いましょう」
プイプイ「私も戦うわっ!」
魔王「お、おぬしら……!し、しかし……!」
ゴリアテ「俺たち四天王は、なんだかんだアンタの世話になってるからなっ!いくらなんでもアンタを置いて逃げるわけにはいかねえぜ!」
レバニラ「滅ぶならともに滅びましょう!」
プイプイ「まあ………、ほんとはいろいろ野望あったけど……仕方ないわね……!」
魔王「お、おぬしら……!す、すまんのう…、こんな老いぼれの魔王のために…」
魔王「では……!さあこい、勇者よ!魔王+四天王3人の力をみせてやるぞっ!」
…………しいいい…ん
魔王「あれ……」
プイプイ「………?こないわね……勇者たち」
ゴリアテ「ちょ、お、おい……、側近、おまえちょっと、扉の外見て来いよ…」
側近「あ、はい………、あれ、あー、死んでますね、勇者たち」
魔王「え?」
勇者一行「」
ゴリアテ「うわあ……、めっちゃ苦しそうな顔して死んでるけど…」
側近「おそらく、幸せの草を短期間で多量に摂取したことあ原因でしょう……、なんか常に吸ってて中毒みたいになってたし、どんどん顔とか言動もヤバい感じになってましたし……」
レバニラ「幸せの草の力を頼り、不幸になるとは……愚かな…」
ゴリアテ「トイレ行ってケツふいてきたら?くっそ臭いけど」
プイプイ「なんにせよ、勇者一行が死んでくれて、ラッキーだわ!これで人間界を征服するなんてたやすいものよね、魔王様っ!」
魔王「う、うーん、まあ、それじゃ人間界みんなでいってみようか」
数か月後……人間界
プイプイ「え、なにこれ……人間界にあった国がめちゃくちゃ滅びまくってる…」
ゴリアテ「え、いつのまに……もしかして地上にいた魔物がやったのか?」
レバニラ「いや、そんな情報は聞いてないぞ…何があったんだ」
側近「あー、情報によりますと、あれから勇者一行が全滅したって噂は、人間界に瞬く間に広まったみたいで」
側近「勇者がアテにならないとわかった各国は、こぞって、われわれ魔王軍から身を守るための力を身につけようと、勇者が栽培した幸せの草の苗を奪い合っているみたいですね」
魔王「つまり、幸せの草をめぐって、人間同士が争いを始めたわけか……、我々そっちのけで」
側近「あー、そういうことになりますね」
魔王「………」
プイプイ「よ、よかったじゃない!人間同士が争ってくれて勝手に滅んでくれたらあとは漁夫の利で……」
魔王「もうよい」
プイプイ「え?」
魔王「なんの努力もせず、妙な近道をして無理な力を得ようとし、あまつさえ、その力をめぐって争いを始めるとは、きわめて愚かな連中じゃ……、こんな連中、我らの支配下に置くまでもない」
魔王「さあ、我々はもう、魔界に戻るとしよう。人間界の制圧はいつの日か、この世界の連中がもう少しまっとうになってから、進めればよい」
こうして魔王一行は、幸せの草をめぐり、激しい争いを続ける人間界を後にし、
魔界へと帰って行った……。
………
魔法使い「その後、幸せの草を巡った争いは100年以上続き、この世界にあった主要な国々は一度、滅んだとされています。およそ3000年前の出来事と言われています」
魔法使い「そして、ここの牧草地帯一体に、争いの源となった例の畑………、そう、かつての勇者たちが栽培した幸せの草の畑があったとされています、……って、ここの看板に書いてますね」
勇者「ふーん……、まあ、よく聞く神話の話だな。ここが発祥だったんだな。まあ、ただの草原にしかみえないけど」
武道家「俺も本で読んだことあるぜ、幸せの草伝説。まあ、所詮は作り話だろうがな」
勇者「まあ幸せの草自体、実際に目でみたこともない架空のアイテムだろうしな。だいたい、そんなアイテムで楽してレベルアップできるなんてうまい話あるわけないし」
勇者「さ、そろそろ行こうぜ」
戦士「はあ、はあ、ま、待ってくれよ、みんな……、」
武道家「おせーぞ、戦士。先行ってるからな」
勇者「そんなペースじゃいつまでたっても魔王のとこまでたどりつかないぞ」
魔法使い「はやく追いついてきてくださいよ、先いってますから」
………
戦士「はあ、はあ……」
戦士「はあ、はあ…、……なんでこんなにみんなと体力に差があるんだ…、やっぱ、
オイラだけレベルが低いからかな……」
戦士「はあ、けどもう限界だ……、水はもうないし……腹も減った……、うう」
戦士「く……せ、せめて、空腹だけでもごまかしたいぜ……うう
背に腹は代えられない……、こ、この辺の適当な草を食べ………」ムシャ
戦士「………」ムシャムシャ
戦士「」チャラリラッタリー!
………
完
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