女僧侶(9)「あ、あの勇者様・・・」

女僧侶「本当に、わたしたち馬車で遊んでていいんですか?」

勇者「ああ、俺一人で十分だ」

女魔法使い「・・・」

女僧侶「でも・・・」

勇者「まぁもし怪我したらそっからホイミでもかけてくれや」



女僧侶「分かりました、でも無茶はしないでくださいね?」

勇者「こんな雑魚しかいないとこで怪我なんかするかよ」

女魔法使い「おに・・・ちゃ」

勇者「ん?」

女魔法使い「わたしも・・・心配して」

勇者「大丈夫だって、お前は僧侶ちゃんと仲良く馬車にいな」

女魔法使い「ん・・・」


―――ルイーダの酒場―――

勇者「ここで仲間を得られると聞いたのですが」

店員「え……」

勇者「魔王を倒すために屈強な兵士、或いは術師が欲しいのですが」

店員「え……」

勇者「いや……3人ほどで構いませんから」

「ちょっとー、それわたしのつえなんだけどー」

「いいでしょー、すこしかしてよー」

勇者(奥から子どもの声が……)

店員「あの……すいません。今はその……誰もいなくて……」

勇者「いない?そんなバカな」

店員「すいませんお引き取り―――」

「あ!ゆうしゃさまだー」

「あ、ほんとだー!」

勇者「なんだ?奥から女の子が……」

女戦士(12)「すげー!本物だー」

勇者「お、おい……」

女武道家(10)「かっこいいー♪」

女魔法使い(9)「おにいちゃん、みてみてー……メラ!―――すごいでしょ?」

勇者「あ、ああ……」

女僧侶(9)「……かっこいい……」

女商人(5)「ふーん……ふーん……!!」

勇者「な、なにをもってきたんだ?重そうに引き摺っているが……」

女商人「やくそう、10こ!」

勇者「……」

女遊び人(4)「……(ニコニコ」

女盗賊(9)「そーっと……そーっと……」

勇者「なんですか、これは?」

店員「それが……昨日の夜、突然みんなが幼女化してしまって……」

勇者「は?」

盗賊「せいやっ!」

勇者「こら」

盗賊「あーん!」

勇者「人のお金を盗ろうとするな」

盗賊「うぅ……べーっだ!」

勇者「可愛げないな……」

店員「どうやら魔王の仕業みたいで」

勇者「魔王の?」

店員「はい。恐らく、勇者様の味方となるものを呪いかなにかで……」

勇者「おのれ……魔王……!!」

戦士「あ!わたしの剣、かえしてよー!」

武道家「ちょっとだけー」

僧侶「えい、えい」

魔法使い「それわたしのつえー!」

勇者「…………卑劣な」

店員「どうされますか?」

勇者「彼女たちを連れていっても仕方ないですね。独りでいきます」

店員「そうですか。すいません」

勇者「いや。貴方が気にすることではない」

店員「ご武運を……」

勇者「ありがとう」

勇者(早速、大変なことになったな……)

遊び人「……(ニコニコ」

商人「おかねがいちまーい、にまーい……えっと……いちまーい……あれ?」

勇者(だが何故魔王は私ではなく、他の者を子どもに……?)

勇者(何かあるのか……)

勇者(はっ!――そうか。俺と一対一で勝負がしたい。そういうわけだな)

勇者(いいだろう、魔王。その挑戦、受けてやるぞ)

戦士「ゆうしゃー、なにひとりでガッツポーズしてんのー?」

盗賊「きもーい」


―――街―――

勇者「さてと、出発するか」

馬「バヒヒン」

勇者「王から立派な馬車を頂いたが、無駄になってしまったな」

馬「ヒヒン」

勇者「ああ、そうだ。色々と買い出しに行かなくてはな」

魔法使い「うまー」

僧侶「ひひん♪ひひん♪」

武道家「しっぽかわいいー」

商人「うんしょ……うんしょ……ふう、やくそう10こ、はこべたよ!」

遊び人「……(ニコニコ」

盗賊「わたし、こことったー!」

戦士「けっこうひろいなー」

僧侶「うん。みんなでおひるねもできるね♪」

勇者「――よし。準備も万全だ。いくか」

馬「ヒヒーン!!」

勇者「出発だ」

馬「バヒヒーン!!」

戦士「おおお!?」

魔法使い「ゆれてるー!!」

僧侶「あわわわわ……こ、こわいよー」

武道家「ねえねえ、どれだけ立ってられるかきょーそーしようよー」

商人「ぐぅ……ぐぅ……」

遊び人「……(ニコニコ」

盗賊「すっごーい!街からはなれてくよー!!」

戦士「わたし、そとってはじめてー」

魔法使い「ドキドキ……」


―――街道―――

勇者「……?」

勇者「馬車の中から声がしたような……?」

勇者「気の所為か……?」

戦士「えー、ではわたしがリーダーです」

盗賊「いきなりー」

魔法使い「なんでー?」

戦士「だって、一番おねえちゃんなんだもん」

僧侶「うんうん」

武道家「べつにどうでもいいけどー」

遊び人「……(ニコニコ」

商人「むにゃむにゃ……ぐぅ……」

戦士「じゃあ、戦闘になったらわたしのしじにしたがってね」

「「はーい」」

スライム「キュピー!!」

勇者「スライムか……は!!」

スライム「―――ギュピ……!?」

勇者「この辺りの魔物は弱くて助かるが……進めば進むほど辛くなるだろうな」

勇者「道中で仲間を得られればいいのだが……」

戦士「あ、せんとうだー!!」

武道家「よっしゃー」

戦士「わたしと僧侶ちゃんでいくぞー」

僧侶「は、はい!!」

戦士・僧侶「わー」

スライム「……キュピ……」

戦士「あれ?もう倒してる」

僧侶「かわいそう……」

戦士「よし、手当しよ。馬車の中にはやくはやく」

僧侶「は、はい」

勇者「ん!?」

勇者「―――気の所為か」

勇者「……なんだか人の気配がするんだが……」

勇者「誰かいるのか?」

馬「?」

勇者「馬に訊いても仕方ないか……進もう」

僧侶「ホイミ」

商人「やくそうを……こうやって……」

スライム「キュピィ……」

戦士「お、きがついた」

魔法使い「よかったね」

盗賊「この子、どうする?」

戦士「んー……飼う!!」

武道家「じゃあ、名前決めよう、名前」

僧侶「かっこいい名前がいいですよね」

勇者「―――はぁ!!」

おおがらす「ぐええ……!!」

勇者「よし」

盗賊「かいしゅー」

遊び人「……(ニコニコ」

魔法使い「えっほ、えっほ……」

戦士「ふう、結構溜まってきたね」

スライム「きゅぴー♪」

バブルスライム「ブルブルー♪」

フロッガー「ゲコゲコ♪」

まほうつかい「……」

武道家「これだけいれば大丈夫だね」

商人「うんうん」

僧侶「勇者様もきっとおおよろこびです」

おおがらす「くえくえ」

勇者「……こ、これは!」

馬「ヒヒン……」

魔物の群れ「グルルルルルル………!!!」

勇者「ちっ……一人では厳しいな……」

勇者「だが、負けるわけにはいかない!!」

「ゆうしゃのピンチだー。みんなとつげきー!!」

「「わー」」

勇者「?!」

魔物の群れ「!?」

ワラワラ……」

戦士「さあ、こい!」

武道家「おれが相手だ!」

魔法使い「メラ!メラ!」

僧侶「ホイミ!ホイミ!」

モンスター達「ガォォォ!!」

魔物「(逃げようぜ……)」

魔物「(ああ、数が違いすぎる……)」

魔物「(退却だ〜!!)」

勇者「あ……逃げた」

戦士「おとといきやがれー」

遊び人「……(ニコニコ」

盗賊「いえーい、だいしょーりー!」

スライム「ピキー♪」

僧侶「ああん!カッキー、頭にのらないでー」

おおがらす「ガー♪」

魔法使い「うわっぷ……もうゲコゲコ、顔は舐めないでっていったでしょ、め」

フロッガー「ゲコ……」

勇者「………」

僧侶「勇者様、お役に立てましたか?」

商人「どうだった?ねね?どうだった?」


―――街―――

兵士「魔物を連れて街の中にはいられては困ります」

勇者「ですよね」

戦士「えー!?」

勇者「ほら、みんなを帰すんだ」

武道家「でもぉ」

勇者「ダメだ」

盗賊「いじわる」

勇者「そんな顔をしても許さない」

商人「バイバイ……まほーちゃん」

まほうつかい「……(コクッ」

僧侶「ごべんねー!!みんなー!!」

遊び人「……(ニコニコ」

勇者「はぁ……」

兵士「随分と子沢山ですね。どうして旅を?」


―――宿屋―――

勇者「……集合」

「「はーい」」

勇者「どうして付いてきたんだ?」

戦士「ゆうしゃ一人じゃさびしいと思って」

武道家「うんうん」

魔法使い「ねー?」

盗賊「ねー?」

遊び人「……(ニコニコ」

商人「ぐぅ……ぐぅ……」

僧侶「……(ウトウト」

勇者「君達、この旅がどれだけ危険なのか分かっているのか!?」

戦士「へ?」

勇者「周辺の魔物がまだ大人しいから良かったものの、下手をしたら死んでいたかもしれないんだぞ!?」

魔法使い「そ、そんなにおこら、ないでよぉ……」

勇者「死んでいたらどうするんだ!!」

僧侶「ひゃ!?!……なんですか!?ねてませんよ?!」

武道家「……」

勇者「今すぐ、帰るんだ」

戦士「……」

勇者「キメラの翼を渡すから、みんなで帰るんだ。いいな?」

盗賊「なんだよー!!べつにいいじゃん!!」

勇者「よくない」

戦士「わ、わたしたち、めいわくかけないから!!」

勇者「もう十分にかかっている」

魔法使い「そ、そんな……」

僧侶「勇者様……す、すてないで……」

勇者「う……いや、ダメだ。君たちを危険な目に―――」

「勇者のくせに子ども数人も守れないとか、とんだ腰ぬけですねー」

勇者「!?」

戦士「え……?」

勇者「誰だ……?」

遊び人「……(ニコニコ」

勇者「……」

遊び人「……(ニコニコ」

勇者「君か?」

遊び人「……(ふるふる」

勇者「じゃあ、誰が?」

遊び人「……(こっちこっち」

商人「ぐぅ……」

勇者「商人が……?」

遊び人「……(コクッ」

勇者「……本当か?」

遊び人「……(ニコニコ」

勇者(なんだこの子……すごい威圧感を感じる……)

勇者「はぁ……まあ、いい。とにかくだ。みんな帰るんだ」

「ふざけんな、このインポやろう。連れてけカス」

勇者「?!!」

遊び人「……(ニコニコ」

戦士「お願い!ゆうしゃ!!つれていって!!」

武道家「おねがい!おねがい!!」

勇者「だから……」

「勇者なのに守る自信がないのですかー。これは末代までの恥じゃないですかねー?」

勇者「!!?」

遊び人「……(ニコニコ」

勇者「……」

魔法使い「わたしたちがんばるから!ちゃんとお勉強もして呪文も覚えるからー」

僧侶「すてないで!勇者様!すてないでー!!」

勇者「しかし……」

「この屑。はやく決断してくださいよー。そんな根性じゃあ、魔王にケツ穴掘られてしんじゃいますよー?」

勇者「……!!」

遊び人「……(ニコニコ」

盗賊「ゆうしゃー!たのむよー!!」

武道家「おれもがんばるからー!薪割りを素手でできるようになるからー」

「インポで甲斐性なしが勇者なんて務まるんですか?甚だ疑問ですね」

勇者「……!!」

遊び人「……(ニコニコ」

勇者「………」

「早くしてくださいよ。それに私達の裸も拝み放題じゃないですかー。いいでしょー?」

勇者「………いや」

「はい、間があった。口Oコーン」

勇者「君だろ!!!」

遊び人「……(ニコニコ」

勇者「全部、君が言ってるんだろ!!?」

遊び人「……(ニコニコ」

勇者「……はあ。もういい。みんな帰りたくないんだな?」

僧侶「は、はい!」

勇者「わかった。一緒に行こう」

戦士「やったー!」

武道家「やっほー!」

商人「ぐぅ……ぐぅ……」

遊び人「……(ニコニコ」

勇者(考えてみれば魔王の呪いをかけられているんだったな……ということは呪いさえとければ……)

盗賊「レミラーマ!!」

魔法使い「わ!……なんか帽子が光った」

盗賊「……そこになんかあるの?」

魔法使い「な、なにもないよ!!」

勇者(呪いが解けたとき、すごい戦力になるんじゃないか……?)

勇者(そうだな。前向きに考えよう。まずは呪いを解く。そして魔王を倒せば!!)

戦士「ゆうしゃー、なに一人でガッツポーズしてんの?」


―――魔王城―――

側近「わーい♪」

幼ドラゴン「ぎゃおーん♪」

魔王「ふむ……」

キメラ「魔王さまー」

魔王「おかえり」

キメラ「魔王さまの計画通り、勇者の仲間はみな女の子になりました」

魔王「そうか……」

キメラ「勇者は幼女化させなくてよかったので?」

魔王「ああ。私の計画に勇者は必要不可欠だ」

キメラ「そうですか」

幼ドラゴン「とりだー♪」

キメラ「ぎゃあ!!餌じゃないって!!!」

魔王(ここまでたどり着けたその暁には……私は勇者を認めよう……そして……)

魔王「むふふふ……理想郷を築くのだ……むふふふ……」


―――街道―――

僧侶「え……私たちは馬車の中にいてもいいんですか?」

勇者「ああ。俺一人で十分だ」

魔法使い「いいの?」

勇者「危なくなったらそこから呪文で援護してくれればいい」

僧侶「わ、分かりました」

戦士「でも、なにかあったらすぐに出ていくから!!」

勇者「ああ、頼む」

商人「ぐぅ……ぐぅ……」

盗賊「おきろー」

遊び人「……(ニコニコ」

勇者「じゃあ、出発だ」

「「おー」」

勇者(これでなんとか彼女たちを守れるな)

勇者(はぁ……魔王……余計なことをしてくれたな……!!)


―――村―――

「うわー!!!魔王が攻めてきたぁぁ!!!」

「逃げろぉぉぉぉ!!!!」

魔王「ふははははは!!!逃げ惑え、人間ども!!」

幼ドラゴン「きゃおーん♪」

子ども「かわいいー」

幼ドラゴン「ペロペロ」

子ども「きゃ、くすぐったーい」

魔王「回収」

子ども「え?」

父「か、かえしてください!!子どもだけは……!!!」

魔王「やかましい!!―――でい!!!」

父「あががががっが!!!!」

子ども「おとうさーん!!!」

魔王「ふははははは!!!!汚れた人間ども……私が清めてやるぞ!!ふははははは!!むふふふふ!!!」

お父さんまで幼女になってしまったらいったい誰がお父さんをしたらいいんだ!!


―――数日後 街 宿屋―――

勇者「買い出しに行ってくる」

僧侶「お供します!」

戦士「わたしもー」

魔法使い「わたしもいくいくー」

盗賊「いってらっしゃーい」

武道家「は!は!はっは!!」

遊び人「この筋肉バカうるせえなぁ……(ニコニコ」

商人「……!?」

遊び人「……(ニコニコ」

勇者「じゃあ、留守番よろしくな」

盗賊「あ、ゆうしゃー」

勇者「なんだ?」

盗賊「アイスクリーム、よろしくー♪」

勇者「はいはい……」 

魔法使い「勇者ー♪」

勇者「……歩きにくいだろ。腕から離れろ」

魔法使い「やだー」

戦士「へへー」

僧侶「うぅ……えい」

勇者「腰にしがみつくのはやめてくれ」

僧侶「あ、す、すいません……」

勇者「……」

「おい、聞いたか?」

「ああ。あの話だろ?」

勇者「ん?」

「魔王のせいであの村は……」

「はぁ……対岸の火事じゃねえよな」

「全くだ」

勇者「あの、すいません。その話、詳しく聞かせてくれませんか?」


―――商店―――

魔法使い「あ、呪文の書‐初級‐編だ!勇者、これ買ってー」

戦士「ゆうしゃー、この鋼の剣、おもくてもてないんだけどー」

僧侶「勇者様……ア、アイス……いいですか?」

勇者「呪文の書な。はい、これで買ってこい」

魔法使い「あんがと!」

勇者「すいません。鋼のナイフにできませんか?」

店主「え、ええ。わかりました」

戦士「さすがー!」

勇者「バニラでいいのか?」

僧侶「は、はい!」

勇者「――はい」

僧侶「勇者様、これ家宝にしますね!」

勇者「溶けるから食べてくれ」

勇者(魔王に滅ぼされた村か……行ってみないとな……)


―――深夜 宿―――

勇者「……みんは寝ているな」

勇者「よし」

遊び人「……?」

盗賊「……」


―――宿屋前―――

勇者(ここからそう遠くもない。朝までには帰ってこれるだろう)

勇者(魔王によって壊滅したとなれば、どんなことがあるか分からない)

勇者(そんな危険な場所へ彼女たちを連れていくわけにはいかない)

勇者「……すまないな。頼むぞ?」

馬「ヒヒン!」

勇者「よし、いこうか」

馬「ヒヒーン!!」

勇者「はっ!!」


―――村―――

勇者「……なんて有様だ」

勇者「とにかく生存者がいるかどうか……」

盗賊「よっと」

遊び人「……(ニコニコ」

勇者「な!?」

盗賊「勇者、みずくさいぞー」

勇者「ど、どうして付いてきたんだ!?」

盗賊「クンクン……クンクン……こっちからいい匂いがするー。なにかあるっぽい」

勇者「あ、勝手に動くな!!」

遊び人「……(ニコニコ」


―――民家―――

盗賊「やったー、タンスから10Gみっけ!」

勇者「こら、なに他人の家からお金を―――」

「だ、だれぇ?」

勇者「え?」

幼女「……」

勇者「君は、ここの生存者か?」

幼女「あ、あなたは……?」

勇者「俺は勇者だ。安心してくれ」

幼女「勇者様……?」

盗賊「壷から薬草はっけーん」

遊び人「……(ニコニコ」

勇者「あれはちゃんと返すから」

幼女「あ、はい……」

勇者「魔王に襲撃されたと聞いたが」

幼女「はい……恐ろしかった……」

勇者「多くの人が犠牲になったのか?」

幼女「はい……みんな、魔王によって……子どもにされてしまったんです」

勇者「それは気の毒に……え?」

盗賊「遊び人、向こうの家にもなんかあるっぽい。行こう!!」

遊び人「……(ニコニコ」

勇者「あ、おい!!―――まあいい。子どもにされたって……」

幼女「私も元は一児の父親だったのですが……魔王の呪いによってこのような姿に……」

勇者「なんだって……!?」


―――民家―――

盗賊「クンクン……ここだぁー♪」

遊び人「……」

盗賊「やったぜぇ!布の服だ!みてみて、遊び人……ん?どうかした?」

遊び人「何か、いる」

盗賊「え?」

ボストロール「ぐへへへへ」

盗賊「な……!?!」

ボストロール「なんだ、この村にはもう本物のガキはいないと思っていたのに、まだこんな上玉がいるじゃねーか」

遊び人「……」

ボストロール「魔王様の言いつけどおり、探しに来てよかったぜ」

盗賊「な……なんだよ……やるかぁ……!!」

ボストロール「ぐへへへ、かわいいあんよがふるえてるぞぉ……」

遊び人「何か?」

ボストロール「今、魔王様は世界中の子どもを回収し、15歳以上の人間は12歳以下にしているんだよぉ」

遊び人「何のためにそんなことを……?」

ボストロール「理想郷のためだよ。ぐへへへへ」

盗賊「り……りそうきょう……?」

ボストロール「さあ、一緒に来てもうぜぇ」

遊び人「……!?」


―――民家―――

幼女「それより勇者様、先ほどのお子さんを追ってください」

勇者「え……?」

幼女「この村には今、魔王の手下が……!!」

勇者「な……!!―――やばい!!」

ボストロール「ぐへへへへ!!」

遊び人「……く」

盗賊「ゆうしゃー!!ゆうしゃー!!!!」

勇者「貴様!!その子たちを離せ!!!」

ボストロール「おお?勇者様か」

勇者「……」

ボストロール「そう睨むな。別に魔王様は危害を加えるわけじゃねーんだからよ」

勇者「その言葉を信じろというのか?」

盗賊「たすけてー!!!ゆうしゃー!!!うわーん!!!」

遊び人「……」

勇者「今、助けるぞ!!―――うおぉぉぉ!!!」

ボストロール「やべえ」

勇者「でやぁぁぁぁ!!!」

魔王「―――そこまでだ」

勇者「……!?」

ボストロール「魔王様!」

魔王「その子たちを城へ」

ボストロール「はい!!」

勇者「逃がすか!!」

魔王「ふん!!」

勇者「が……!?からだ、が……うごかない……?!」

盗賊「ゆうしゃー!!たすけてよー!!ゆうしゃー!!!」

遊び人「……」

魔王「連れて行け」

ボストロール「はい!」

勇者「まて……!!まって、くれ……!!」

盗賊「ゆうしゃー!!!ゆうしゃぁぁぁぁ………―――――」

勇者「あ……そ、そんな……」

魔王「……ではな。城で待っているぞ」

勇者「くそぉ……くそぉぉぉぉ!!!!魔王ぉぉぉ!!!!」


―――魔王城―――

魔王「……はぁ」

盗賊「ひっく……ひっく……ゆうしゃぁ……ごめん、ごめんなさい……ひっく……」

遊び人「……泣かないで」

魔王「……」

ボストロール「魔王様、この子たちはどうしますか?」

魔王「いつもの部屋へ。丁重にな」

ボストロール「ははー。さあ、こっちですよー」

盗賊「ひっく……ぐすっ……」

遊び人「……」

魔王(勇者……怒ってたな……)

魔王(ここまで来る理由を強めようと思っただけなのだが……)

魔王(嫌われたかな……嫌われては少々、困るしなぁ……まあ、計画に支障が出るほどではないが)

魔王「なんとかなるか」

遊び人「……」


―――翌日 宿屋―――

勇者「……すまない。俺の力が及ばず、二人を……」

魔法使い「顔を上げて……」

僧侶「勇者様は何も悪くありません」

戦士「そうだそうだ。全部、魔王が悪い!」

武道家「俺もそう思う」

商人「ぐぅ……ぐぅ……」

勇者「だが……」

魔法使い「勇者、見て。―――ベギラマ!!」

勇者「おぉ……」

魔法使い「みんな強くなってるから……だから、きっと助けられるよ」

勇者「……そうか」

戦士「ゆうしゃが弱気じゃあだめだって!」

僧侶「勇者様、みんなで二人を助けましょう」

勇者「ああ……そうだ。助けないと……必ず……!!」


―――森―――

勇者「足元に気を付けるんだ。少しぬかるんでるからな」

馬「ヒヒーン」

勇者「む……!?」

魔物の群れ「ギャォォォォォォン!!!」

勇者「数が多いな……みんな!!出番だ!!」

「「わー」」

戦士「いくぞー!!」

ツルッ

戦士「うわぁぁ!!!」

僧侶「戦士さんだいじょ―――きゃふん!?」

魔法使い「みんなどんくさいなぁ……なんでそんなころんで―――きゃわ!?」

武道家「足腰を鍛えないから足をとられ―――ぶっ!?」

商人「ふわぁぁぁ、おはようご―――きゃ!?」

勇者「……みんな、転んだ……くそ!!俺がなんとかしなくては!!!」

戦士「うえぇ……ドロドロ……」

魔法使い「うわぁ……パンツまでしみこんできちゃったよぉ……」

僧侶「きもちわるいですね……」

武道家「あーん……泥がぁ……」

商人「でも、ひんやりしててきもちいいよ♪」

戦士「そうかなぁ」

馬「ヒヒン」

魔物「ギャァァァン!!!」

勇者「くそ!!―――ベギラマ!!」

魔物「ギャーッス!!」

勇者「メラミ!!」

魔物「グワァァァン!!!」

勇者「バギマ!!!」

勇者(魔法使いから借りた呪文の書‐初級‐編が役に立ったな……)

勇者「トドメだ!!でええい!!」

勇者「はぁ……はぁ……」

戦士「おつかれー」

魔法使い「大丈夫?」

勇者「なんとか……お前たちも泥だらけじゃないか」

僧侶「体を洗いたいです……」

勇者「そうだな……」

武道家「勇者、川とかないかなー?」

商人「きゃっきゃっ♪」

勇者「川か……そうだ」

馬「?」


―――川―――

馬「ヒヒーン!!」

勇者「流石は動物。やはり水の匂いも分かるんだな。偉いぞ」

馬「ブルルル」

戦士「やったー!!さっそく洗おうっと!!」

勇者「……」

戦士「……」

武道家「……」

勇者「え?なんだ?」

戦士「ゆうしゃは向こうむいてて!!」

勇者「あ、ああ。ごめん」

魔法使い「服も洗おうよ」

僧侶「そうですね」

商人「わーい!!」

勇者「戦士、深いところにはいくなよー!!」

戦士「わかってるよー!」

武道家「うーん。冷たくてきもちいー♪」

戦士「だねー」

勇者(火でもおこしておくか)

勇者(にしても……子どもとはいえ……出るとでてるな……戦士とか僧侶は……)

戦士「ちょっとおよごっかなー!」

武道家「俺もー」

僧侶「あの……裸であまり動きまわらないほうが……」

戦士「いいじゃないの。誰もいないし」

魔法使い「ほら、ちゃんと洗おうね」

商人「んにゅ……くすぐったい……」

僧侶「もう……ん……」

魔法使い「……だれもみてないし。しちゃえば?」

僧侶「で、でも……はしたない……」

魔法使い「我慢しておもらしするほうがはしたないって」

僧侶「……で、では……よいしょ……」

勇者「……ん?僧侶のやつ、座り込んで何を……」

僧侶「ん……♪」

勇者(あ……おしっこ……)

勇者(なんだ……この気持ち……は……?胸が苦しい……)

戦士「はぁーきもちよかったぁ♪」

僧侶「勇者様、タオルをもえらますか?」

勇者「あ、ああ……あそこに置いてある」

武道家「ありがとー」

勇者「……」

商人「どうかした?」

勇者「うわ……は、はやく拭いて……」

商人「勇者がふいてー♪」

勇者「い、いいのか……?」

商人「うん!」

勇者「じゃあ……」

商人「えへへ」

勇者(小さい体だけど……女の子なんだよな……)

勇者(綺麗……かもしれない……)

商人「ん?勇者、顔あかいよ?どこかわるいの?」

戦士「下着が乾くまで鎧を直につけとくしかないかなー?」

武道家「俺は布の服をきとく。大人用だから全部隠れるし」

魔法使い「そうですね。そうしましょう」

僧侶「へっくしゅん」

勇者「……」

商人「勇者、服ー」

勇者「あ、ああ。そうだな」

僧侶「あ、勇者様、火をおこしてくれたんですね」

勇者「ああ、早く温まったほうがいい」

戦士「はーい」

勇者「……」

武道家「な、なに……?」

勇者「あ、いや、なんでも……」

勇者(変だな……思わず見つめてしまう……)

勇者(どういうことだ……?)


―――魔王城―――

側近「まおー、おやつー」

魔王「そうかそうか。もうそんな時間だったな」

遊び人「……」

魔王「ん?どうかしたか?」

遊び人「……理想郷ってなに?」

魔王「何故知りたい?」

遊び人「アナタなんでしょう?私をこんな姿にしたのは」

魔王「その通りだ」

遊び人「どうして?」

魔王「人間は汚らわしい……だが、子ども……その中でもメスはどんな生物においても清い存在」

遊び人「……」

魔王「―――私は地上を清浄なる大地に変える。全てを少女以下にすることでな!むふふふふ!!!!」

遊び人「……きもい」


―――数日後 城下町―――

勇者「今日はここで一泊だな」

戦士「はぁ……疲れた」

武道家「早くやすみたい……」

勇者「そうだな。宿に向かおう」


―――宿屋―――

店主「ここに泊るのはやめたほうがいいですよ?」

勇者「え……?」

僧侶「どうしてですか?」

店主「……王の様子が変なんです」

勇者「王が?」

店主「人が変わったようになってしまって……もし少しでも王に盾突こうものなら……死刑になってしまうんです」

勇者「それは……」

魔法使い「こわ……」

商人「……(ウトウト」


―――宿 寝室―――

勇者「よし」

戦士「いくの?」

魔法使い「やめた方が……」

勇者「胸騒ぎがするんだ。……確かめてみないと」

僧侶「勇者様……」

商人「ぐぅ……ぐぅ……」

戦士「わ、わたし、一緒にいく!!」

勇者「危険だぞ?」

戦士「これでも少しは戦えるようになったんだ。大丈夫」

勇者「わかった。みんなはここにいてくれ。もし、朝になっても俺たちが戻ってこなかったら、すぐに故郷へ戻って王に報告してほしい」

魔法使い「う、うん……」

僧侶「お気をつけて……」

勇者「ああ。……いくぞ」

戦士「あいよ」


―――城内―――

兵士「何者だ!!」

勇者「我は勇者!!ここの王と謁見がしたい!!」

戦士「したい!」

兵士「許可がなければ謁見することはできん」

勇者「……どうすれば許可を得られる?」

兵士「正式な手続きを行え。早ければ1カ月で謁見ができる」

勇者「それでは遅い」

兵士「ならばできん。帰れ!!」

勇者「くっ……」


―――城門 前―――

勇者「どうするか……」

戦士「ゆうしゃ、こっちこっち」

勇者「え……?」

戦士「裏口がある。入れるんじゃないかな?」


―――城内―――

勇者「見張りがいないとは……」

戦士「しめしめ……」

勇者「こっちか」


―――謁見の間―――

王「ふははははは!!!」

幼女「王様ぁ」

王「ふはは、苦しゅうない。もっと近くにこい」

幼女「はぁい……」

勇者「(傍らに数十人の幼女を……!?)」

戦士「(変態ってやつか……許せない)」

勇者「(ああ、年端のいかぬ少女達をなんだと思っている……!!)」

戦士「(いこう、ゆうしゃ!)」

勇者「(ああ、あの蛮行をとめるぞ!!)」

勇者(なんて羨ま、いや下劣なことを……ゆるせん!!)

勇者「王よ!!それが民を統べる者がすることかぁ!!」

戦士「することかぁ!!」

王「ん?誰だ?」

勇者「我は勇者!!貴様の愚行をここで止める者だ!!」

王「ほぉ……我に盾突くか」

勇者「……!!」

戦士「くるならこい!!」

王「その隣の少女を我に献上するなら、許してやるぞ?」

勇者「するわけないだろ!!!」

戦士「そーだ!」

王「ふん。ならば……無理矢理にでも奪うまでだ!!―――捕えろ!!」

幼女の群れ「「わー!!」」

勇者「な!?」

戦士「ゆうしゃー!!!」

王「ふははははは!!!その者を地下牢に入れておけ!!死刑は明日、執り行う!!」


―――地下牢―――

勇者「くそ……油断した……」

勇者「戦士……」

勇者「……だが、幼女に取り囲まれた時……不思議と嫌な感じはしなかった……何故だ……?」


―――王の自室―――

王「ぐふふふ……」

戦士「や、やめて……近づかないで……!!」

王「安心しろ。我はロリコンだ」

戦士「は……?」

王「真のロリコンは少女に手を出すことはないのだよ……ぐふふふ」

戦士(ゆうしゃ……たすけてぇ……)


―――宿屋―――

魔法使い「……遅いね」

僧侶「勇者様……あの、私達にもなにかできることはないでしょうか?」

商人「ぐぅ……ぐぅ……」

魔法使い「できることか……王様の情報でも集めてみる?」

僧侶「ええ。そうしましょう」

魔法使い「商人、おきて。いくよ」

商人「ん……はい……?」


―――街―――

「王か……本当に変わられてしまったよ」

僧侶「どういうふうにでしょうか?」

「昔は本当に優しい方だった……だけど数ヶ月前から人が変わったんだよ」

魔法使い「そんなに急に?しかも分かりやすく?」

「ああ。一部の住民は魔物が化けたんじゃないかって噂しているぐらいだ」

僧侶「魔物が……」

「でも、それを証明する方法なんてないからな……俺たちはどうしたらいいかわからない……」

商人「あるよ!」

「え?」

商人「魔物が化けているかどうか確かめる方法、あるよ!私、知ってる!」


―――地下牢―――

勇者(そう言えば旅立ってから独りになるのは初めてだな)

勇者(いつも傍らに彼女たちがいたんだな……)

勇者(こうして瞼を閉じると……みんなの……裸が……)

勇者「はっ!?なにをしているんだ!!―――振り払え!!振り払え!!!」

勇者(瞼を閉じれば……みんなの笑顔が……僧侶のおしっこ……)

勇者「違う!!!そうじゃない!!!!」

「―――だ、だれか隣にいるのですか……?」

勇者「え……!?は、はい!!います!!」

「おぉ……話を聞いてください……」

勇者「なんでしょう?」

「王は魔物です……それも魔王の右腕とされる者なのです……」

勇者「なんですって!?」

「その魔物は魔王が目指している理想郷をこの街で試作しているのです……」

勇者「理想郷……?」


―――洞窟―――

商人「噂ではこの洞窟にラーの鏡があるはず……」

僧侶「そうなんですか」

魔法使い「その鏡さえあれば、正体が分かるって本当なの?」

商人「うん。間違いないよ」

僧侶「それを王に向ければ」

魔法使い「うん。化けの皮がはがせる」

商人「さー探そう!!」


―――王の自室―――

王「ふぅ……すっきりした」

戦士「……」

王「さてと、風呂にはいるか。わははははは!!!」

戦士「……うぅ……ぐす……ゆうしゃぁ……もうやだよぉ……」

戦士「うぅ……ひっく……もう、あんなのみたくないよぉ……」

戦士「たすけてぇ……ゆうしゃぁ……」


―――地下牢―――

勇者「全世界の人間、動物を幼女化……!?」

勇者(あの村の者が子どもにされていたのはそういうことだったのか……!!)

「このままではいつか街は少女と幼女だけになってしまいます」

勇者「全ての者が幼女……幼女……?」

「お願いです……もし逃げ出せるのでしたら、ここから逃げてください。そして、魔物の野望をとめてください!!」

勇者「そ、そんな……すばら、いや、りそうの、いや、恐ろしい計画を……」

「はい……城の者は大半が幼女になってしまいました……」

勇者「……なんとかして抜け出せればいいのですが」

兵士「……」

勇者「む……?誰だ?」

兵士「これは私がうっかり扉の鍵をあけてしまっただけだ。それとこれは独り言だ。―――奥の牢に外へ抜ける通路がある」

勇者「……ありがとう」

兵士「お願いします……幼女になんてなりたくない……」

勇者「わかりました……俺が……必ず……その、野望を、とめ……ます、よ……多分……」


―――洞窟―――

商人「これだ!!間違いない!!商人の道具100選って本に載ってたのと同じ!!」

僧侶「では、地上に戻りましょう」

魔法使い「おっけー。―――リレミト!!」


―――街道―――

商人「馬さん、かえろ♪」

馬「ヒヒン!!」

僧侶「早く戻って勇者様と合流しなくては」

魔法使い「うん!急ごう!!」


―――城下町―――

勇者「……ここは墓地か」

勇者(さて、これからどうするか……野望をとめてほしいと言われてしまったしな……)

勇者(だが……止めてどうする……それは俺の……ひいては人間側のエゴじゃないか……?)

勇者(己の正義を相手に押し付けているだけじゃないのか……?)

商人「―――あ、勇者ー!!」

勇者「お前達!?」

商人「みてみてー!!」

勇者「それは……?」

僧侶「ラーの鏡という代物です」

勇者「ラーの鏡?」

魔法使い「それは真実を映し出す鏡なんだって」

商人「これがあれば王様が魔物かどうかすぐにわかるよ!!」

勇者「お前達……わざわざ危険を冒して……」

僧侶「ごめんなさい。でも、この街を救いたいんです!!」

魔法使い「うん……みんな本当に苦しそうだから……」

勇者「お前達……」

勇者(そうだ……俺は何を迷っていたんだ……!!)

勇者(魔物の野望を打ち砕いてこその勇者じゃないか!!)

勇者「よし、みんな行こう!!戦士が捕まっているんだ、助けよう!!」

「「おー!!」」


―――城内 王の自室―――

王「げへへへへ……」

戦士「いや……もう、やだ……」

王「嫌なら見なければいいだろぉ?げへへへへへ」

戦士「くっ……!!」

王「そうやって見てしまうというのは、お前が淫猥少女だからだ……げへへへへ」

戦士「やめて……お願いだから……やめてぇ……」

王「ほれほれ……」

戦士「いやぁ……ゆうしゃ……ゆうしゃぁ……」

勇者「―――そこまでだ!!!」

王「ぬぬ!?」

戦士「あ……♪」

勇者「それ以上、戦士にその卑猥なものを見せてみろ。根元から切断してやる!!」

王「こ、こわいこというんじゃねえ……!!」

戦士「ゆうしゃー!!!たすけてー!!!」

商人「おうさまー」

王「おお、めんこいな。なんだい♪」

商人「これみてー」

王「お?」

勇者「―――やはり、魔物か」

王「ちっ、ばれちまっちゃあ、仕方ねえ!!」

僧侶「!?」

ダークトロル「ぐへへへ!!魔王様の右腕、ダークトロルとは俺様のことよ!!!」

勇者「魔王の理想郷が出来るかどうか、この街で試していたそうだな」

ダークトロル「その通りよ!!俺様はその変態ぶりから魔王様に高く評価されててな!!」

勇者「どういうことだ?」

ダークトロル「紳士は少女や幼女に欲情しても手を出してはいけない。それが守れる奴じゃないと理想郷の試作など任せてもらえるわけないだろ?」

勇者「……な、んだと?手を出しては……??」

魔法使い「勇者?」

商人「どうしたのー?」

ダークトロル「ロリコンは少女のことを第一に考えるもんだ。手を出して不幸にさせたら本末転倒だろうが!!」

勇者「だが、互いに愛があればいいのでないのか!?」

僧侶「勇者様?」

戦士「ど、どうした?」

ダークトロル「何を言うか。年端もいかぬ少女は『愛』という概念を理解できん。少女に芽吹くのは幻の愛かもしれんのだぞ?」

勇者「……!?」

ダークトロル「本当の愛とはなにか、きちんと理解できるまで我々は少女に説き続けなければならない」

魔法使い「な、なにいってるの……?」

ダークトロル「そして少女たちがその愛を理解する頃には、我々の手から巣立っていく。そして、また次の幼女に愛を説く」

勇者「ま、まて……それだと永遠に……」

ダークトロル「だからだ!!我々ロリコンは少女や幼女に手を出すことなど、未来永劫ありえはしない!!!」

勇者「バ、バカな……手を出さないのに……全世界を幼女化するというのか……?」

ダークトロル「清浄なる世界のためだ。それぐらいの苦渋は舐めてみせよう」

勇者「……そ、そこまでの覚悟があったのか……!!」

戦士「ゆうしゃー、はやくたすけてよー」

勇者「……なるほど……」

ダークトロル「分かったか。我々は決して間違ってなどいないんだよぉ!!」

勇者「―――やはり、お前たちは相容れぬようだな」

ダークトロル「勇者……!!」

勇者「みんな、援護を頼むぞ!!」

僧侶「は、はい!!」

魔法使い「新呪文もためしちゃうよ!!」

商人「……(ウトウト」

戦士「はやくー!!」

ダークトロル「勇者……貴様には素質がある。魔王様はそれを見抜いてらっしゃるぞ?」

勇者「……苦しいだけだ。全てが幼女になってしまうなんて。苦しいだけじゃないか!!!」

僧侶「そ、そうです!!幼女化した人のことも考えてください!!」

ダークトロル「残念だ、勇者……。ならば、ここで殺してくれるわぁぁ!!!!」

勇者「くるぞ!!」

商人「ぐぅ……ぐぅ……」

ダークトロル「魔王……さま、に……栄光あれ……!!―――ぐふ!?」

勇者「はぁ……はぁ……勝った……」

僧侶「戦士さん、お怪我は!?」

戦士「大丈夫……なんともないから」

勇者「……ラーの鏡か」

勇者(これ、みんなに向けたらどうなるんだ?)

魔法使い「商人、ほら起きて!!」

勇者「……」

戦士「勇者?」

勇者「あ、いや。さあ、戻ろう」

魔法使い「うん。武道家も待ってるし」

僧侶「ですね」

勇者(後ろから……向けてみれば……)

勇者「……!?!?」

勇者(こ、これが彼女たちの本当の姿……!?あ、ありえない……ありえないぃ!!)


―――宿屋―――

武道家「あ、お帰り」

魔法使い「お留守番、ごめんね」

武道家「いーっていっーって」

勇者「……」

武道家「勇者?」

僧侶「どうかされましたか?」

勇者「ごめん……少し夜風に当たってくる……」

魔法使い「うん……」

戦士「どうしたんだろう……?」

商人「ぐぅ……ぐぅ……」


―――宿屋 屋上―――

勇者「……はぁ……」

勇者(彼女たちは……そうだよ……呪いで姿が変わっていただけで……本当の子どもじゃなかったんだ……)

勇者(なのに……俺は……俺は……!!!)

勇者「くそ!!くそ!!!なんてことだ!!!なんてことを!!!うわぁぁぁぁぁ!!!!!」

武道家「勇者!!」

勇者「武道家……!?」

武道家「何があったんだよ……?手から血が出てるじゃないか……」

勇者「は、はなせ!!!」

武道家「え……?」

勇者「……独りにしてくれ……」

武道家「何があったんだよ……俺でよかったら……」

勇者「お前も……同じだ……」

武道家「な、なにが……?」

勇者「お前も……同じなんだろ……?」

武道家「なんのことだよ?」

勇者「この鏡で見れば……それがわかるんだよ!!!」

武道家「あ……」

勇者「これが……君の本当の……え……?」

勇者「……」

武道家「……なんか久しぶりだな。自分の姿を見るのは」

勇者「君は……?」

武道家「俺は15歳の女の子だったから、魔王の呪いで10歳になっちゃったんだ」

勇者「そ、そうなのか……」

武道家「でも、あんまり変わってなくて、ちょっとやだなぁ。特に胸とか。―――早く元の姿に戻りたいよ」

勇者「……君たちは幼女のふりをしていたのか?」

武道家「いいや。呪いの所為で精神年齢が退化しちゃった人もいるよ?俺はそんなにかわってないけど」

勇者「……そうだったのか」

武道家「どうかしたの?」

勇者「いや……もう大丈夫だ……すぐにもどるよ」

武道家「そっか。じゃあ、おやすみ」

勇者「ああ……」

勇者(俺は……どうすればいい)

勇者(確かに……醜い……この世界は幼女たちで溢れている方が美しいかもしれない……でも……俺は勇者……どうしたらいいんだ……!!)


―――魔王城―――

魔王「べろべろばー」

幼ドラゴン「きゃっきゃ!!」

遊び人「魔王」

魔王「ん、なんだい?」

遊び人「おやつは?」

魔王「そこの冷蔵庫に入ってるよ」

盗賊「あーおなかすいたー」

遊び人「魔王……私たちは元の姿に戻れるの?」

魔王「戻りたいのか?」

遊び人「当たり前でしょ?」

魔王「何を馬鹿な事を……そなたはその方が美しいぞ?」

盗賊「……そういえばお姉ちゃん、もっとかっこよかったもんね」

遊び人「貴方はそのままだもんね」

盗賊「うん。私は最年少でルイーダの酒場に登録したからね、えっへん」

魔王「ぐふふふ」

遊び人「なに?」

盗賊「こわいぞー」

魔王「いや……別に」

遊び人「どうせ、この子にも呪いをかけたんでしょ?」

魔王「当然だ。15歳未満の少女には成長しない呪いをかけている」

盗賊「え……じゃあ、私はこれ以上大きくならないの!?」

魔王「その通りだ」

盗賊「そんなぁ……」

魔王「そのままがいいのだよ」

遊び人「勇者をここに呼んで、どうするつもりなの?勇者も幼女化しちゃえばいいじゃない」

魔王「それではダメなのだよ……勇者は必要なのだ」

遊び人「何故?」

魔王「何故?そんなもの簡単だ。全ての人間を幼女化してしまえば誰が種をまくのだ?」

遊び人「……まさか!?」

魔王「ここまでたどり着けるとなれば相当な能力を備えた勇者であることが証明される」

盗賊「……?」

魔王「その高等な種を残し、増やすために勇者は勇者のままでいなくてはならん。我ではお前たちを孕ますことはできんからなぁ」

遊び人「……魔王……あなた……狂ってる……」

魔王「ははは……私は世界のことを常に考えているのだ」

盗賊「それって、つまり……わたしも勇者と結婚?」

魔王「そして幼女、少女から生まれた勇者の子孫が種をまき、新たな子孫を繁栄していく」

遊び人「……なんてこと」

魔王「そして残るのは幼女と少女、そして優性種族の勇者、そして選ばれし魔族のみ!!これが私の理想郷だ!!!」

遊び人「勇者がそんな計画に賛同するとでも……?」

魔王「するな。そのための伏線はちゃんと張ってある」

遊び人「まさか……私たちを小さくしたのは!?!」

魔王「その通り。幼女や少女に長期間囲まれた者が目覚めないわけがないからな」

遊び人「外道……!!!」

魔王「ふはははははは!!!!私の計画は完璧なのだよ!!!むふふふふふ!!!!」


―――翌日 宿屋―――

戦士「よし、んじゃ出発しよう」

僧侶「はい」

魔法使い「ふわぁぁぁ」

商人「ぐぅ……ぐぅ……」

武道家「起きろ。商人、起きろ」

勇者「……」

戦士「ゆうしゃ?」

僧侶「どうかしたのですか?」

勇者「なんでもない……行こうか」

魔法使い「うん……」

武道家「……」

勇者(迷うな……!!)

勇者(これは偽りの姿……!!)

勇者(魔王を倒せば……解けてしまうのか……?―――くそ!!どうしたらいいんだ!!!)


―――街道―――

戦士「ゆうしゃー♪」

勇者「うわぁぁ!!!!抱きつくな!!!」

戦士「え……?」

魔法使い「勇者?!」

勇者「あ、ご、ごめん……」

武道家「勇者、どうしちゃったんだ?」

勇者「な、なんでもないんだ……なんでも……」

武道家「凄い汗だ……ちょっと待て、ふいてやるから」

勇者「あ、ありがとう……」

戦士「どうしたんだろう……?」

魔法使い「わかんない」

僧侶「勇者様……」

商人「あれ?ここ、どこ?」

勇者「ほ、ほら。みんなは馬車の中に」

戦士「う、うん……」

僧侶「分かりました」

武道家「じゃあ――」

勇者「あ、武道家」

武道家「え?」

勇者「お、おまえは隣にいてくれ……」

武道家「な、なんで?」

勇者「お、お前が傍にいると……心が落ち着くんだ」

武道家「わ、わかった……」

勇者「ありがとう……はぁ」

武道家「どうしたんだよ、昨日から本当に変だぞ?」

勇者「ごめん……でも気にしないでくれ……いずれ整理するから」

武道家「なら、いいんだ……」

勇者(武道家とならこうして落ち着いて喋ることができる……どうしてだ……もしかして……俺は武道家のことが……?)


―――数日後 夜―――

勇者「みんなは馬車の中で寝ててくれ。俺が見張りをするから」

戦士「うん……おねがいぃ」

魔法使い「おやすみぃ……」

商人「おやしゅみ……」

僧侶「いつもすいません」

勇者「……」

僧侶「あ……はぁ……」

勇者(あれからみんなとはまともに会話してないな……)

勇者(もう魔王の城も近いというのに……こんなことじゃあ、いつか命を……)

武道家「勇者」

勇者「武道家……」

武道家「少し、いい?」

勇者「ああ。武道家なら大歓迎だ」

武道家「……ありがと」

勇者「で、どうしたんだ?」

武道家「いや……あの偽王を倒してからみんなとまともに話してないなぁって思って」

勇者「それは……」

武道家「俺とはこうして話してくれるのに……どうして?」

勇者「……ごめん。言えない」

武道家「勇者……」

勇者「みんなが嫌いになったとか、そういうんじゃない。信頼もしてる。みんな旅立ったときよりも数倍強くなったし」

武道家「うん……」

勇者「魔法使いも僧侶も扱える呪文が15以上もあるし……」

武道家「勇者……」

勇者「ごめん……」

武道家「帰る?」

勇者「え……?」

武道家「辛かったらやめてもいいんじゃないか?―――どうせ、勇者が負ければ世界は終わるんだし」

勇者「武道家……」

武道家「どこかで静かに……暮らしてもいいんじゃないか?」

勇者「……そのときは、一緒にきてくれるか?」

武道家「え……と……う、ん……いい、けど?」

勇者「臆病者の勇者に付き従ってくれるのか?」

武道家「少なくとも俺の前にいる勇者様は臆病じゃない。みんなをいつも守ってくれてるすごい人だ」

勇者「……」

武道家「だから……一緒に逃げても……」

勇者「……ごめん。君は元の姿に戻りたんだろ?」

武道家「あ……」

勇者「なら……ここで逃げるわけにはいかない」

武道家「勇者……」

勇者「好きな人の願いも叶えられないで……君と一緒になるなんておこがましいから」

武道家「勇者……うん……がんばろう」

勇者「ああ。必ず、君を元の姿に戻してみせる!!」

勇者(もう迷わない……俺は魔王を倒すんだ!!!)


―――数週間後 魔王城―――

勇者「ここまで来たか……!!」

武道家「長かった……」

戦士「こわいな……」

魔法使い「ひぃぃ……」

僧侶「かみなりがぁ……」

商人「おしっこ……もれちゃった……」

戦士「うわぁぁぁ!!!!」

勇者「よし。みんなは馬車の中にいてくれ。俺が呼ぶまで絶対に出てきちゃだめだからな」

武道家「うん」

僧侶「お、おねがいします」

魔法使い「勇者、ふぁいとだー」

商人「おまた……きもちゅわるい……」

戦士「僧侶、ティッシュ!!」

勇者(魔王……待っていろ!!!)


―――魔王城内―――

側近「まおー!!」

魔王「わかっている……来たのだな……勇者が!!」

側近「ちがうー、おやつー」

魔王「おお、そうかそうか。ドーナツがテーブルの上にあるからなー」

側近「わーい♪」

魔王「ドラゴンちゃんとわけわけするんだぞー?」

側近「はーい」

魔王「……ふふふ。さあ、勇者よ。ここまで来て初めて貴様を優性種と認めてやろう……理想郷を実現させようではないか!!!」

盗賊「もぐもぐ……勇者きたのー?」

遊び人「みたい」

盗賊「がんばれー!!」

幼ドラゴン「もぎゅもぎゅ」

遊び人「あ!それ私のドーナツ!!返せ!!!」

魔王「こらこら、喧嘩はするな」


―――通路―――

勇者「でぁ!!!」

魔物「ぐおぉぉぉ!!!」

勇者「くらえ―――ギガデイン!!!!」

僧侶「きゃぁ!?かみなりー!!!!」

商人「ひゃ……!!」

戦士「ひぃ……すごいなぁ」

魔法使い「うん、勇者が使える最高の呪文だからね」

商人「あ……あぁ……」

武道家「勇者……」

勇者「よし……いくぞ」

馬「ヒヒン!!」

魔法使い「ん?なんか臭わない?」

戦士「かすかなアンモニア臭……うわぁぁ!!!また商人か!?」

商人「あぅ……びっくりしちゃった……ごめんなさい……」


―――謁見の間―――

勇者「―――魔王!!!」

魔王「―――来たか!!」

戦士「よっと……あ、あれが……」

武道家「おっきい……」

商人「こ、こわいよぉ……」

魔法使い「あ、あんなのに人間が勝てるの……?」

僧侶「勝たなくてはいけないんです……全人類のために!!」

盗賊「ゆうしゃー!!!ひさしぶりー!!!」

遊び人「……(ニコニコ」

勇者「二人を放せ!!!」

魔王「勇者……よくここまで来てくれたな」

勇者「……」

魔王「そう睨むな。―――勇者、私はお前の実力を認めた。故に私と手を組み、世界を理想郷へと変えようではないか」

勇者「―――断る!!貴様の野望はここで潰す!!」

魔王「何故だ?清浄なる世界を実現させようではないか」

勇者「全ての人間を幼女化する……確かにそれは美しい世界のあり方かもしれない」

魔王「そうだ。無垢な者たちがこの世を支配する。争いもない清き世界の誕生だ」

勇者「だが、多くの者はそんなこと願っていない!!」

魔王「それがどうした?お前は人類に世界を委ねられたのだろう?」

勇者「……!?」

魔王「ならば、貴様の決断に文句を言う者などいないはずだ」

勇者「そ、そんなことはない!!俺は全人類の願いを……平和を取り戻しにきたんだ!!」

魔王「ならば、尚更私と手を組め。我が理想郷は悠久の平和が約束されている」

勇者「多くの者が望まない平和など、平和ではない!!」

魔王「何を馬鹿な事を言っている?勇者よ、後ろの者たちを見ろ」

勇者「え……?」

魔王「そやつらも元は中年の男だったり、爺だったり、三十路の女だったりしたわけだ」

勇者「い、いうな!!!」

魔王「だが、そいつらは何か苦痛を訴えたか?それどころかその体で毎日を謳歌していたのではないか?」

戦士「……」

魔法使い「それは……」

武道家「勇者……」

商人「……(ウトウト」

勇者「だ、だが……」

魔王「勇者。お前は勘違いをしているな」

勇者「なんだと?」

魔王「私を倒すことで平和など訪れん。人間同士がまた下らぬ争いを始め、戦火に包まれることだろう」

勇者「……」

魔王「だが、全世界の人間が幼女になればどうだ!?幼女では武器も満足に扱えはしないだろう?」

勇者「あ……」

戦士「鋼の剣が持てなかった……」

魔王「争いが起こりようがないのだ。つまりそれは平和だ。違うか?」

勇者「それは……だが……俺は……」

魔王「勇者、お前は誰の為に私に刃向おうとしている?」

勇者「……」

武道家「……勇者」

魔王「なるほど……なるほど、なるほど……ふはははははは!!!!愛する者のためか!!!」

勇者「な、なにがおかしい!!」

魔王「勇者……その女は元は15歳の女のようだな」

勇者「そ、それがどうした?」

魔王「その姿に惚れたのだろう?」

勇者「ち、ちが……」

魔王「隠すな。だが、私を倒せばその者は元の姿に戻り、そしてやがては老いていく」

勇者「……!?!」

魔王「永遠の若さなど人間のままでは得られんよ。勇者、目を覚ませ。お前はただ欲しかっただけだろう?」

勇者「言うな……言うなぁぁ!!!」

武道家「勇者……?」

魔王「魔王を倒すだけの理由が。だが、そんなものはない。なぜなら、愛する者も永遠にその姿を維持し、世界からは争いがなくなるのだからな!!」

魔王「愛する者が私を倒せと望んだから、私を倒す。ちがうなぁ。自分を偽るな。お前は分かっていたはずだ。魔王を倒せば自分が損をすることにな!!」

勇者「……っ!!」

戦士「勇者……?」

魔法使い「魔王……それ以上、勇者を誑かさないで!!!」

魔王「誑かせているのは貴様たちだ。一欠けらの理性が勇者を偽善に押しとどめようとしている」

武道家「やめてぇ!!!」

魔王「勇者よ。お前は我が理想郷にはなくてはならぬ人物なのだ」

勇者「え……?」

魔王「お前という血統が新たな人類を誕生させる」

僧侶「血統……?」

魔王「この地からは15歳未満の幼女、少女だけとなり、男は勇者のみになる!!」

勇者「え……」

魔王「分かるか?お前だけが幼女に子供を、子孫を産ませることができるのだ」

勇者「……・そ、うなのか……?だが、少女や幼女には手を出しては……」

魔王「ははは!!この世に女は幼女と少女しかおらん。たった独りのアダムと幾億のイブなのだよ」

勇者「おぉ……そ、そうなのか……」

魔王「つまり、神だ」

勇者「神……」

盗賊「魔王!!やめてよ!!私だって、ナイスバディになりたんだ!!」

遊び人「魔王……!!」

魔王「さあ、勇者。何を迷う?世界の半分はお前の手の内だ」

勇者「世界の半分……」

魔王「そうだ……そして、世界の幼女はお前の、も、の、だ」

勇者「…………」

戦士「ゆうしゃ、目を覚ませ!!」

魔法使い「勇者、魔王の言葉にのせられちゃだめ!!」

僧侶「勇者様!!」

商人「ぐぅ……ぐぅ……」

魔王「さあ……勇者よ……何も迷わなくてよい。私と共に理想に生きようではないか」

勇者「理想に……」

魔王「そう……闘争も競争もない。花畑で戯れる蝶を眺めるだけの日々がお前を待っているのだぞ?」

勇者「ぬぅぅぅぅぅ………!!!!」

魔王「私を倒せば貴様が垣間見た後ろの者たちの醜態を見ることになるぞ?」

勇者「はぁ……はぁ……」

武道家「まさか……勇者……」

戦士「わたしたちの元の姿を……?」

僧侶「それで態度が……急に……」

魔王「元の生活に戻りたいと願う者もいるだろう。だが、人間として生きることが出来、そして勇者という優性種の種を分けてもらうことが出来る」

勇者「やめろ……やめてくれぇ……」

魔王「大多数の者は喜んでお前に抱かれることだろう」

勇者「はぁ……はぁ……世界の幼女が……俺に……?」

魔王「そうだ。ハーレムなどいう言葉では表現できん、浄土のような世界へと一変するのだ」

勇者「はぁ……はぁ……」

魔王「さあ、勇者。こちらへこい。共に理想へと歩んで行こう。お前とならすぐだ」

勇者「はぁ……はぁ……」

勇者「そ、そうだ……あんな醜い姿に戻るくらいなら……みんな、みんな幼女のままでいいじゃないか……」

盗賊「うそ!?ゆうしゃー!!!」

遊び人「このインポ野郎!!!何をしようとしてるのかわかってるの!?」

勇者「黙れ!!!」

戦士「……っ!?」

勇者「決めた……俺は……魔王と手を組む!!」

武道家「勇者……!!」

魔王「ふはははははは!!!!!それでいい!!!勇者、そうだ!!何もお前は間違ってなどいない!!!」

勇者「みんなだって醜い姿になるよりも、可愛い姿でいたほうがいいって思ってるだろ!?」

僧侶「……!?」

戦士「そ、れは……」

勇者「そうだ……そうだよ……元の生活が奪われるから……元の自分を失うから……そんなの嘘だ。誤魔化しだ!!」

魔王「そうだ!!永遠の若さを欲しぬ者などいない!!」

勇者「なら……みんなで幸せになろうじゃないか……!!!」

武道家「勇者……嘘……だろ?」

勇者「みんな幼女になればいい……そうしたら……みんな幸せじゃないか……そうだろ!?」

戦士「……」

魔法使い「……くそ……何かが違うのに……何も言葉が……」

僧侶「……うぅ……」

商人「ぐぅ……ぐぅ……」

盗賊「くっそー!!!」

遊び人「魔王……!!!」

勇者「魔王……俺はどうしたらいいんだ?」

魔王「ふふ……お前は気が向いたときだけ好きな女を抱いていればよい。衣食住、その他諸々全て保障しよう」

勇者「そうか……分かった」

魔王「さあ、新たな世界の幕開けだ!!!ふはははははは!!!!!」

勇者「ああ……そうだ……これで―――」

武道家「―――勇者!!!」

勇者「え……」

武道家「俺は……永遠の若さなんていらない……!!」

勇者「……なにを言ってるんだ?」

武道家「……いらないよ……勇者」

勇者「武道家……?」

魔王「耳を傾けるな、勇者。戯言だ」

武道家「確かにみんなはきっと永遠の若さが欲しいって思ってる……だけど……その……」

魔王「ふん。主張するならもっと自分の意思を明確にするのだな。いくぞ、勇者」

勇者「……」

武道家「でも……成長はしたい」

勇者「武道家……?」

魔王「小娘、黙れ」

武道家「子どものままじゃ、分からないことだってあるし、知らないままで終わることもある」

勇者「……」

武道家「みんなを見てよ。―――いい歳したひとが精神年齢を退化させて、物の道理すらよくわかんなくなってるんだぞ?」

魔王「黙れ!!」

武道家「……それじゃあ、きっと勇者のこと本当に……愛せない。――俺は勇者のことを本当に愛したい」

勇者「武道家……!!」

魔法使い「そ、そうだ……ダークトロルだって言ってじゃない!!」

僧侶「愛を説くことが大事だって言ってました!!それは少女のままじゃ分からないって!!」

勇者「あ……」

魔王「黙れ!!貴様ら!!何が愛だ!!!そんなもの永遠の若さに比べれば!!!」

武道家「違う……!!違う!!」

魔王「下らぬ競争で無駄な死人を重ね、まだ愛が必要だとぬかすか!!!」

武道家「そうだ!!!」

魔王「……?!」

勇者「武道家……」

武道家「戦うから分かることもある。相手のことを知らないまま、何もしないままただ時を過ぎるのを待つなんて、俺は絶対に嫌だ!!」

魔王「下らん!!ただの自己満足だ!!」

武道家「構わない……俺は……それでも勇者を本当に愛したい」

魔王「その愛が世界を滅ぼすのだ!!!」

勇者「……」

武道家「勇者……俺、頭悪いからこれぐらいしか言えない……俺は勇者のことをもっと愛せるようになりたい……だから、戻ってきて」

魔王「勇者……聡明なお前のことだ。よもや情に流されることはあるまいな?」

勇者「ああ。そんなことはないよ」

武道家「勇者……」

戦士「そ、んな……」

僧侶「……でも、魔王のいうことも……」

商人「ぐぅ……ぐぅ……んあ?……あれ?どうしたの?」

魔王「そうだ、勇者。それでいい」

勇者「……魔王、一つ訊きたい」

魔王「なんだ?」

勇者「気が向いたときにだけ女を抱けばいいっていったな?」

魔王「ああ、そうだ。主導権は全て勇者にある」

勇者「でも、何人か孕ませないといけないんだろ?」

魔王「それはそうだ。お前の子を繁栄させねばならん」

勇者「―――じゃあ、いいや。俺、そんなに体力もたないし」

魔王「勇者……!?!」

勇者「一人の女性を抱ければ、それでいいかなって思えた」

魔王「勇者……!!!おのれ!!!」

商人「ゆうしゃー、どうしたのー」

武道家「ああ、商人、それをもってどこにいくんだ!?」

勇者「悪いな、魔王。その理想郷は、俺が疲れるだけだ」

魔王「悠久の平和を手放すのか?」

勇者「……ダークトロルが言ってた。愛を説き終わると、少女は大人になるって」

魔王「勇者……!!」

勇者「愛もしらない女の子を抱けるほど……俺は鬼畜になれないんだ。ごめん」

魔王「勇者!!おのれ!!」

勇者「……ここで、倒す!!」

魔王「ならば貴様も幼女にしてくれるわ!!!!―――でええい!!!!」

勇者「くっ……!!」

商人「ゆうしゃー、みてみてー、ラーの鏡ー」

勇者「商人、あぶな―――」

魔王「な、呪文が鏡に反射して―――」

商人「きゃ!?」

魔王「あががっがががががっががががが!!!!!!!」

勇者「な?!!」

戦士「あ……!?」

魔法使い「これは……!!」

魔王(8)「―――あれ?」

勇者「魔王が……幼女に……!?」

魔王「うわー!!!なんじゃこりゃー!!」

盗賊「うわぁ……どうするの?」

勇者「……」

魔王「な、なんだー、やるかー?」

武道家「勇者……倒すの?」

勇者「……無理だろ。こんな姿の魔王を倒すなんて……」

武道家「……じゃあ……もしかして……このまま……?」


―――数日後 王城 謁見の間―――

王「おお!!勇者よ、よくぞ戻ってきたな!!」

勇者「は……」

王「辛い旅だったであろう」

勇者「ええ……はい」

王「魔王も消えたことだし、うむ。あっぱれじゃ!!」

勇者「……そうですね」

王「浮かない顔だな?どうかしたのか?」

勇者「いえ……なんでもありません」

王「では、十分な褒美を取らせる」

勇者「は……」

勇者(これから……また新しい旅が始まるな……)

勇者(次はいつ終わるか分からない)

勇者(ゆっくりと準備しよう)


―――ルイーダの酒場―――

戦士「あー、結局このままかぁ」

僧侶「もう元の体がどんなのだったか分からなくなってきましたね」

魔法使い「うん」

盗賊「早くナイスバディになりたいのに……」

遊び人「当分は無理でしょうね」

武道家「お前の所為だぞ」

魔王「私は悪くない!!そこの小娘がしゃしゃり出てくるからだ!!」

商人「……(ウトウト」

勇者「みんな、そろってるな」

武道家「勇者!!」

魔王「これから、どうするつもりだ!!?」

勇者「旅に出よう。魔王を殺さずに呪いを解く方法を探す旅に」

魔王「そんなのあるのか……?」

勇者「だから探すんだろ?ほら、外に馬車を用意した。みんな乗れ」


―――街道―――

戦士「では、私がリーダーです」

魔王「まて、実年齢なら800歳以上の私だ!!」

遊び人「下らない……」

商人「ぐぅ……ぐぅ……」

勇者「―――中は騒がしいみたいだな」

武道家「うん」

勇者「……悪いな付き合ってもらって」

武道家「ううん。いいよ。俺は勇者と一緒に居たかったし」

勇者「そうか」

武道家「もし……呪いが解けなくても……一緒に居てくれるよな?」

勇者「勿論だ」

武道家「ふふ……嬉しい……」

勇者(ああ。このままでずっと……一緒にいよう)

勇者(呪いなんて……解けなくても……いいから……ずっと……ずっと……)

END
 
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この記事のコメント一覧
1 . 名無しさん  ID:Wolh5.hM0編集削除
ゎぁょぅ ι゙っょぃ
2 . 名無しさん  ID:Wolh5.hM0編集削除
>>1 間違いた(´・ω・ `)

ゎぁょぅ ι゙ょっょぃ
3 . @  ID:K7jqCR.B0編集削除
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