私の同期が私の目の前で自殺したんだけど、凄く自然に死ににいった。
私の勤め先のビルは5階建てで、屋上にも行けるようなつくりになっていた。
同期は営業、私は事務をやってた。
同期は中々成績が上がらなかったこともあり、部署内で浮いてたし、孤立してたように思う。
毎回誰かしらが同期の悪口を言ってたし、同期が困ってても上司もフォローしてあげてなかった。
ある時、同期抜きでの飲み会に誘われた。
別に同期がハブられたという訳ではなく、同期も一応誘われてはいた。
その時同期の御家族に突発的な不幸があったので来れなかっただけ。
同期の悪口大会みたいになったシーンがあり、私の部署の人達は不愉快でずっと黙ってた。
上司が
「同期の家族死んだんだっけ?ついでに同期も5階の屋上から飛び降りて死んでくれー!!」
と笑いながら叫んで、同期部署の人がみんな手を叩いて笑ってた。
数日後、うちの部署のベテラン女性が空気を読まずにみんなの前で昨日の飲み会で同期の悪口で盛り上がったことを「同期本人に」「録音したものを」聞かせた。
ベテラン女性としては、「こんなこと言われてたよw」くらいの軽い冗談のつもりだったらしい。
途中から録音してたんだそうだ。
流石に部署の人達が慌てて止めさせ、
「同期、流石に済まないことをいった。でもお前にも原因があるんだよ」
とみんなで説教し始めた。
ベテラン女性は
「えー、でもお、聞かれちゃまずいなら言わなきゃ良かったよねえ笑」
「お祭り騒ぎだ」
と、営業部署が大慌てになってるのを楽しそうに見てた。
それから1週間後、私は屋上の入口付近で休憩してた。
うちの上司と、同期の上司もその近くで、2人でタバコ吸ってた。
するとそこに同期が現れて、私に
「おつかれ」
とにっこり笑った。
私も
「おつかれ」
と言った。
上司達にも
「お疲れ様です」
といい、上司達は同期を一瞥して無視した。
そのまま同期は歩いていき、屋上の柵に手をかけて、勢いよく飛んだ。
そのまま、視界から消えていった。
一瞬だった。
上司達も見ていて、私達3人とも
「あっ!!!」
と叫んだ。
数秒後、ドン!!という音がした。
飛び降りた飛び降りた飛び降りた…と動悸がした。
上司が
「ヤバい、ヤバい、死ねって言ってたらほんとに死んじゃったよー」
「うわー死んでんのかなー、まじか。俺たちのせいですかね」
と焦りながら下に降りていった。
私も駆け下りて、
「同期さんが屋上から飛び降りた!救急車!」
と叫んだ。
営業の人達が野次馬しに私と一緒に降りてきた。
写真撮ってる人もいた。
同期は血は出ていたけど綺麗だった。(生きてる、絶対この子生きてる)と思った。
けれど同期は亡くなった。
あんなに綺麗だったけれど、多分全身を強く打ったんだと思う。
遺書があったのを見つけた営業担当が破り捨てたけど、家にも同じものがあったらしく、同期の父親の怒号が聞こえてきたこともあった。
上司はその度に
「あんな出来の悪い馬鹿娘しか育てられなかった自分を恨めよなー。あのお父さんが死ねば解決すると思わない?」
と虚勢を張っていたけど、流石に自殺した女性の悪口で盛り上がる人はいなかった。
社長はまともで、それなりの金を支払ったと聞いてる。
同期の上司は退職、録音をきかせたベテラン女性は
「私悪くないもーん」
と言ってたけど、周りの白い目に耐えきれなかったか、自主退職した。
同期、お母さんを亡くしたんだよね。
その数日後にあんなこと聞かされて、そりゃ死にたくなるだろう。
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