-居酒屋

のび太「小学校の同窓会か」

のび太「みんな元気かな」

スネ夫「のび太!こっちだ!」

ジャイ「おーのび太!」

ジャイ「元気だったか?」

のび太「やあ」

のび太「10年ぶりくらいかな?」

ジャイ「そうだな」

スネ夫「中学校入ってからすっかり会わなくなったもんな」

のび太「みんなクラスもばらばらになったしね」


のび太「しずちゃんは来てないの?」

スネ夫「誘ったんだけどな」

ジャイ「なんか乗り気じゃなかったんだよ」

のび太「そっか・・・」

スネ夫「昔はなんだかんだ将来お前ら付き合うと思ってたんだけどな」

のび太「はは、僕じゃつり合わないよ」

のび太(中学生になった辺りから、段々相手にしてもらえなくなったんだよな)

のび太(まあ、今でも好きなんだけどね)

ジャイ「お前、いま彼女とかいるのか?」

のび太「いるわけないよ・・・」

ジャイ「ジャイ子のヤツ、今フリーだぞ」

のび太「い、いや、遠慮しておくよ」

のび太「二人は?」

ジャイ「俺はもう結婚してるぞ?」

スネ夫「僕も婚約者がいる」

のび太「」


ジャイ「そういえばお前いま何やってんだ?」

のび太「まだ大学にいるよ」

のび太「もう少しで博士号をとれそうなんだ」

スネ夫「あののび太が博士号ねえ」

ジャイ「おまえも頑張ってるんだな」

スネ夫「なんの研究してるんだ?」

のび太「物理だよ」

のび太「タイムマシンにつながる基礎研究をしてるんだ」

ジャイ「タイムマシン??」

スネ夫「そりゃすごいや」

のび太「まだまだ先がみえないけどね」

スネ夫「しかし、そんなもん本当にできるのか?」

ジャイ「そうだな、想像できねえや」

のび太(…?)

のび太「まあ、今までの常識が通用しない分野ではあるけど・・・」

のび太「なんとか僕の手でやってみたいと思っているんだ」

ジャイ「へえ、あののび太がねえ」

スネ夫「しかしなんでまたタイムマシンなんか作りたいって思ったんだ?」

のび太「え?」

ジャイ「そうだよな」

ジャイ「そんなできるかどうかもわからないようなもん」

のび太(…??)

のび太(…なんかおかしいぞ?)

スネ夫「むかしなにかで読んだけど、タイムマシンって不可能なんじゃなかったっけ?」

ジャイ「俺も聞いたことあるぞ!」

ジャイ「未来には行けるけど、過去は無理だとかなんとか」

スネ夫「そうそう」

スネ夫「光の速さがどうのこうのって」

のび太(やっぱりおかしい!)

スネ夫「なあのび太、ほんとにそんなもんできるのか?」

ジャイ「難しい話はわかんねえけど、今まで誰もできなかったんだろ?」

のび太「なに言ってんだよ二人とも!?」

のび太「小学校のとき、あれだけタイムマシンに乗って冒険したじゃないか!!」


スネ夫「」
ジャイ「」

のび太(え?)

ジャイ「…なに言ってんだお前?」

スネ夫「…もう酔いが回ったのか?」

のび太「え、いや、だからさ…」

のび太「ぼ、僕の部屋で生まれた恐竜のピースケを白亜紀に連れて行ったり…」

のび太「みんなで家出しようって7万年前の日本に行ったりさ…」

スネ夫「」
ジャイ「」

のび太「そ、そうやって久しぶりだからって僕をからかってんだろ」

のび太「だいたい、ドラえもんだってタイムマシンに乗って未来からやってきたじゃないか」


スネ夫「ドラえもん…?」

ジャイ「スネ夫、お前知ってるか?」

スネ夫「いや、なんだそれ?人の名前か?」

のび太(…!!)

のび太「い、いい加減にしてよ!!」

のび太「ドラえもんはドラえもんじゃないか!」

のび太「そりゃあ僕らが中学校にあがるときに未来の国に帰っちゃったけど」

のび太「僕ら、友達だったじゃないか!!!」


ジャイ「のび太、お前…」

スネ夫「…マンガの読みすぎじゃないか?」

ジャイアン「それともアニメか?」

のび太(!)

のび太「まだ言うの!?」

のび太「それとも本当にわすれちゃったのか!?」

ジャイ「忘れたも何も…」

のび太「僕は、あいつが帰っちゃったのが悲しくて寂しくて」

のび太「それでも、いつかまた会いたいって!」

のび太「今度はこっちから会いに行ってやろうって!」

のび太「だから、必死で勉強して、今もタイムマシンの研究をしてるんだぞ!!」

スネ夫「」
ジャイ「」

のび太「あいつが生まれる22世紀まで、僕は生きられないから」

のび太「タイムマシンに乗ってあいつに会いに行くって!」

のび太「そして、22世紀のあいつが無事に小学生の僕に会えるように!」

のび太「過去と未来の僕がちゃんとドラえもんに会えるように!」

のび太「僕はそれをめざして頑張ってるんだ!」


ジャイ「スネ夫、こいつ大丈夫かな?(コソコソ)」

スネ夫「さっきから意味がわからないことばっかりいってるね(コソコソ)」

のび太(…!!!)

のび太「もういいよ!」

のび太「ドラえもんのこと忘れるなんて…」

のび太「二人がそんなやつだとは思わなかった!!」

のび太「もう帰る!」

のび太「今日もこのあと大学に戻って研究の続きが有るんだ!」

ジャイ「お、おいのび太…」

スネ夫「あいつ、勉強のしすぎで頭おかしくなったんじゃないか?(コソコソ)」



-居酒屋の前

のび太「まったく、あいつら…」

のび太「まさかドラえもんのこと忘れるなんて」

のび太「それともやっぱりからかってんのかな?」

?「…あら」

?「もしかして」

?「野比くん?」

のび太「えっ」

のび太「もしかして」

のび太「し…みなもとさん?」

しずか「あ、やっぱり」

のび太「久しぶりだね」

しずか「そうね」

のび太(本当に久しぶりだな)

のび太(すっごい美人になっちゃって)

のび太「こ、こんなところでどうしたの?」

しずか「どうしたのって、今日同窓会でしょ?」

しずか「おそくなっちゃったけど、参加しようと思って」

しずか「野比くんは?」

のび太「あ、ぼ、僕は参加して、もう帰りなんだ…」

しずか「そ、そうなの」

のび太「」
しずか「」

のび太(なんか気まずい)

のび太「そ、それじゃ」

しずか「…えっ?」

しずか「ちょっと待って!」

のび太「え、な、なに?」

しずか「久しぶりに会ったんだし、ちょっとだけ話さない?」

のび太(え、えーっ!?)

しずか「そこの公園行きましょうよ!」



-公園

のび太(な、なんだこの展開…)

しずか「野比くん、今なにやっているの?」

のび太(またこのはなしか…)

のび太「まだ大学に残ってるよ」

のび太「大学院の博士課程さ」

しずか「すごいじゃない!」

しずか「なんの研究してるの?」

のび太「タイムマシンに繋がる基礎研究だよ」

のび太(しずちゃんはどんな反応するだろ…)

しずか「タイムマシン…」

しずか「そういえば、昔、よく…」

のび太(!!)

のび太「そ、そうだよ!」

しずか「…」

しずか「昔よく、そんな想像してたわよね」

しずか「わたしと野比くんと剛田くんと骨川くんとで!」

のび太「えっ」

しずか「ほら、あの時代に行ってみたいとか」

しずか「あの時に戻りたいとか」

しずか「未来をみてみたいとか」

しずか「…みんなまだ小学生だったものね!」

しずか「マンガとかアニメとか」

しずか「私なんか、もう小説とかも読んでたけど」

しずか「そういったものを真に受けちゃって」

しずか「純粋だったのよね」

しずか「実際にはありえないことなんだけど」

しずか「なんか自分の周りでもおこりそうで」

しずか「いつの間にか、大人になって」

しずか「そんなことおこるわけないって気付いてきて」

しずか「なんか冷めていっちゃって」


のび太(…)

しずか「野比くん、ごめんなさいね」

のび太「え、な、何が?」

しずか「中学生になったあたりから冷たくあたっちゃったでしょ」

しずか「なんか、あの頃、さっきも言ったけどいろいろと冷めちゃってたのよね」

しずか「思春期だったというか」

しずか「小学校の頃のこととかバカらしくなっちゃって」

しずか「そのせいで、野比くんたちと話すのもちょっと…」

しずか「特におとこのこは…」

しずか「今思えば、みんな大切な友達だったのにね…」

しずか「とっても後悔してるの」

しずか「今日は久しぶりに話せて嬉しかったわ」

のび太「そ、そんな!」

のび太「僕の方こそ!」

のび太(僕はあんまりちゃんと話せなかったし!)

しずか「ふふふ」

しずか「じゃあ、遅くなったけど私も同窓会の方に顔を出していくわ」

しずか「また、ね」

のび太(…!!)

のび太「み、みなもとさん!」

しずか「なあに?」

のび太「ド、ドラえもんって覚えてる!?」

しずか「ドラえもん…?」

しずか「なにかの登場人物かしら…?」



-大学への道

のび太「…」

のび太「結局、誰もドラえもんのことを覚えていなかった」

のび太「そういえば、パパとママからもドラえもんの名前が出たことはないな」

のび太「僕に気を使ってくれているんだと思っていたけど…」

のび太「もしかしたら…」

のび太「やだな、確認するのが怖いや」


のび太「ドラえもんは、帰るときに私物は全部持って帰った」

のび太「下手に歴史を変えてしまうのは危険だからとか」

のび太「その前に一度帰ったときは道具を一つ置いていったくせに…」

のび太「だから、あいつが過去にいた証拠はなんにも無いんだ…」

のび太「でも!」

のび太「僕は覚えてる!」

のび太「遠い宇宙の果てに行ったり」

のび太「海底に地底に雲の上」

のび太「そしてタイムマシンで…」

のび太「僕は、覚えているんだ…」



-大学

教授「お、野比くん」

のび太「あ、先生」

のび太「まだいらっしゃったんですか」

教授「いやー、論文を書かにゃならんからな」

のび太「いよいよですものね」

教授「ああ」

教授「この発表でタイムマシンへの道筋が作れるかもしれん」

のび太「先生は長年この研究を続けてきたんですから」

のび太「やっと世間に認められる日が来たんですよ」

教授「君が入ってくれてからとんとん拍子に研究が進んだからね」

教授「今までを思うと、怖いくらいだ」

のび太「そ、そんな、冗談ですよね」

教授「これまでの進歩具合から考えると、私の退官まで」

教授「いや、あと100年は進歩がないと思っていたくらいだ」

教授「君が研究室に入ってから、この数年の君の努力と閃きがなければここまでこれなかった」

教授「私は君に感謝しているんだよ」

のび太「教授…」

のび太「そんなことないですよ…」

のび太「それに、タイムマシンは22世紀までには必ず発明されるはずですし…あっ」

教授「…」

教授「君は前にもそんなことを言っていたね?」

のび太「そ、それは…」

教授「良い機会だ、話してみてくれないか?」


教授「未来から来たロボットか…」

のび太「はい」

教授「いくつか疑問点がある」

教授「君は、そのロボットに君の未来を見せてもらったんだな?」

のび太「はい」

教授「その未来と今は一致しているのか?」

のび太「いいえ」

のび太「ドラえもんが来なかった場合に迎えるはずの未来」

のび太「ドラえもんが来た結果迎えるはずの未来」

のび太「どちらとも違っています」

教授「…その、ドラえもんとやらが来た結果としての未来は」

教授「君にとって、どんな未来だった?」

のび太「どんなっていうと…」

のび太「ひとことで言ってしまえば…」

のび太「…理想の未来、ですかね」

のび太「小学校のとき、好きな子がいたんです」

のび太(今でも好きですけど…)

のび太「その子と結婚して」

のび太「子供がいて」

のび太「小学校の頃の友達とそのまま仲が良くて」

のび太「あと、よく覚えていないですけど、環境保護局の調査員だった様な…」

のび太「僕、小学校の頃は本当に勉強ができなくて」

のび太「でも、学校の裏山とか自然が好きで」

のび太「あと、いろいろ動物も好きで」

のび太「そういうのを護れたらって思ってましたから」

教授「…なるほど」

教授「…」


教授「野比くん、これはあくまでわたしのことなんだが」

教授「私がなぜタイムマシンの研究を始めたか話そうと思う」

教授「まあ、そんなに大それたもんじゃない」

教授「子供達がタイムマシンがあったらいいなと思っているのとそんなに変わる物ではないからな」

教授「あまり威張れることじゃないが、私は小さい頃からマンガが好きでね」

教授「その頃に流行ったマンガがあったんだ」

教授「70年代のはなしだ」

教授「まあ、有名なマンガだから君たちも知ってるとは思うがな」

教授「私は夢中になって読んだよ」

教授「そして空想にふけった」

教授「恐竜がいる時代」

教授「まだ人間が文明を持つ前の時代」

教授「ロボットが友達として社会に溶け込んでいる時代」

教授「人類が滅びようとしている時代」

教授「過去の自分」

教授「未来の自分」

教授「タイムマシンがあれば…」

教授「最初のきっかけなんて、そんなもんだよ」

教授「そして、考えるんだ」

教授「タイムマシンに乗って、未来の自分を見に行こう」

教授「自分がこうなっていたらいいな」

教授「いや、きっと自分はこうなっているはずだ!」

教授「それはもう、ある意味現実だった」

教授「妄想でしかないはずの私の未来像は、絶対にそうなるはずの未来だったんだね」

教授「子供の頃の私にとっては」

教授「タイムマシンがあれば、それを確認できるんだ」

教授「でも、あいにく私の周りにはタイムマシンがなくてね」

教授「それなら自分で作るしかない」

教授「そうやって、気が付けばこの年だよ」

教授「あの頃の未来は来なかった」

教授「まあ、ただの子供の空想だがね」

教授「ああ、勘違いしないでくれよ」

教授「今でもタイムマシンに対する情熱だけは変わらないんだ」

教授「ただ、大人になったってことだけだよ」

教授「子供の頃に想像してた自分でなかったってだけだよ」



-のび太の部屋

のび太(教授は何が言いたかったのだろう…)

のび太(いや、わかってる)

のび太(子供の頃の想像…)

のび太(要は…)

のび太「ドラえもんは、僕の想像上の人物なのではってことか…」

のび太「そんなわけないじゃないか!」

のび太「そんなわけ…」


のび太(その机の引き出しがタイムマシンの入り口になっていて)

のび太(お正月にそこから僕の孫の孫と一緒にやってきて)

のび太(未来を変えてあげるって)

のび太(いろいろ冒険して)

のび太(いつもの5人でさ)

のび太(…でもあの3人は覚えていない)

のび太(あいつがいた証拠もなにもない)

のび太(あいつに見せてもらった未来も来なかった)

のび太「ドラえもん…」

のび太「…」

のび太「ぼく、やっぱり君がいないとダメなのかもしれないよ」

のび太「泣き虫のび太のまんまだよ…」

のび太「ウ、ウウウウウウ…」


?「大丈夫だよ、のび太くん」

のび太「!!!」

のび太(クルッ)

のび太「ドラえもん!!!?」

のび太「…?」

のび太「誰もいない…」

のび太「でも、いま確かに後ろから…」

のび太(…)

のび太(ニコッ)

のび太「ははっ」

のび太「あのね、ドラえもん」

のび太「みんな、君のこと覚えていないっていうんだ」

のび太「タイムマシンのことも、沢山した冒険のことも」

のび太「君がいた証拠はなーんにもないしね」

のび太「それにね、君に見せてもらった未来、全然違う感じになっちゃった」

のび太「しずちゃんと結婚もできてないしね」

のび太「…」

のび太「でもね」

のび太「やっぱり僕は君を覚えているんだ」

のび太「…」

のび太「だからさ」

のび太「絶対タイムマシン作るからさ」

のび太「また今度、会おうね」

のび太「あの3人も連れて行くよ」

のび太「ぼくたちほんとに友達なんだからさ」

のび太「いつもいつまでも友達だからね」

終わり


-居酒屋

のび太「小学校の同窓会か」

のび太「みんな元気かな」

スネ夫「のび太!こっちだ!」

ジャイ「おーのび太!」

ジャイ「元気だったか?」

のび太「やあ」

のび太「5年ぶりくらいかな?」

ジャイ「そうだな」

スネ夫「大学に入ってからすっかり会わなくなったもんな」

のび太「みんな進路もばらばらになったしね」


のび太「しずちゃんは来てないの?」

スネ夫「誘ったんだけどな」

ジャイ「なんか乗り気じゃなかったんだよ」

のび太「そっか・・・」

スネ夫「お前ら付き合ってたんじゃなかったのか?」

のび太「はは、高校のとき別れちゃってさ」

のび太(まあ、付き合えたのが奇跡だったんだけどね)

ジャイ「お前、いま彼女とかいるのか?」

のび太「いるわけないよ・・・」

ジャイ「ジャイ子のヤツ、今フリーだぞ」

のび太「い、いや、遠慮しておくよ」

のび太「二人は?」

ジャイ「俺はもう結婚してるぞ?」

スネ夫「僕も」

のび太「」


ジャイ「そういえばお前いま何やってんだ?」

のび太「まだ大学にいるよ」

のび太「もう少しで博士号をとれそうなんだ」

スネ夫「あののび太が博士号ねえ」

ジャイ「おまえも頑張ってるんだな」

スネ夫「なんの研究してるんだ?」

のび太「ロボット工学だよ」

のび太「人工知能を搭載した家庭用会話ロボットの研究をしているんだ」

ジャイ「人工知能??」

スネ夫「そりゃすごいや」

のび太「まだまだ先は長いけどね」

のび太「最終的には、人間と同レベルのものを作りたいんだ」

のび太「友達になれるくらいのね」

ジャイ「へえ」

スネ夫「しかし、そんなもん本当にできるのか?」

ジャイ「そうだな、ロボットと友達なんて想像できねえや」

のび太(…?)

のび太「まあ、従来通りでは達成できそうにない分野ではあるけど・・・」

のび太「なんとか僕の手でやってみたいと思っているんだ」

ジャイ「へえ、あののび太がねえ」

スネ夫「しかしなんでまた人工知能なんか作りたいって思ったんだ?」

のび太「え?」

ジャイ「そうだよな」

ジャイ「そんなのできても本当にロボットと仲良くなれるかわかんねえしな」

のび太(…??)

のび太(…なんかおかしいぞ?)

スネ夫「人工知能を持ったロボットが反乱を起こすってよくある話だろ?」

ジャイ「俺も聞いたことあるぞ!」

ジャイ「未来から来たロボットが過去の世界で暴れ回るって」

スネ夫「そうそう」

のび太(やっぱりおかしい!)

スネ夫「なあのび太、ほんとにそんなもんつくって大丈夫か?」

ジャイ「難しい話はわかんねえけど、やっぱり危ないもんなんだろ?」

のび太「なに言ってんだよ二人とも!?」

のび太「小学校のとき、そのロボットとあれだけ一緒に冒険したじゃないか!!」


スネ夫「」
ジャイ「」

のび太(え?)

ジャイ「…なに言ってんだお前?」

スネ夫「…もう酔いが回ったのか?」

のび太「え、いや、だからさ…」

のび太「ぼ、僕の部屋の押し入れに居候してさ…」

のび太「ポケットからいろんな未来の道具を出してくれてさ…」

スネ夫「」
ジャイ「」

のび太「そ、そうやって久しぶりだからって僕をからかってんだろ」

のび太「だいたい、その未来からやってきたロボットは」

のび太「ドラえもんとはいつも一緒に遊んでたじゃないか!」


スネ夫「ドラえもん…?」

ジャイ「スネ夫、お前知ってるか?」

スネ夫「いや、なんだそれ?人の名前か?」

のび太(…!!)

のび太「い、いい加減にしてよ!!」

のび太「ドラえもんはドラえもんじゃないか!」

のび太「そりゃあ僕らが中学校にあがるときに未来の国に帰っちゃったけど」

のび太「僕ら、友達だったじゃないか!!!」


ジャイ「のび太、お前…」

スネ夫「…マンガの読みすぎじゃないか?」

ジャイアン「それともアニメか?」

のび太(!)

のび太「まだ言うの!?」

のび太「それとも本当にわすれちゃったのか!?」

ジャイ「忘れたも何も…」

のび太「僕は、あいつが帰っちゃったのが悲しくて寂しくて」

のび太「それでも、なにかあいつのためにできることは無いかって!」

のび太「少しでもドラえもんが誕生する手伝いがしたいって!」

のび太「だから、必死で勉強して、今もロボット工学の研究をしてるんだぞ!!」

スネ夫「」
ジャイ「」

のび太「あいつが生まれる22世紀まで、僕は生きられないから」

のび太「タイムマシンはもう発明されたけど、やっぱり僕自身の手でやってやりたいから!」

のび太「そして、22世紀にあいつがちゃんと誕生できるように!」

のび太「あいつがちゃんと誕生して、タイムマシンで過去の僕に会えるように!」

のび太「僕はそれをめざして頑張ってるんだ!」


ジャイ「スネ夫、こいつ大丈夫かな?(コソコソ)」

スネ夫「さっきから意味がわからないことばっかりいってるね(コソコソ)」

ジャイ「何年か前にタイムマシンができてから、なんか妄想してんのか(コソコソ)」

のび太(…!!!)

のび太「もういいよ!」

のび太「ドラえもんのこと忘れるなんて…」

のび太「二人がそんなやつだとは思わなかった!!」

のび太「もう帰る!」

のび太「今日もこのあと大学に戻って研究の続きが有るんだ!」

ジャイ「お、おいのび太…」

スネ夫「あいつ、勉強のしすぎで頭おかしくなったんじゃないか?(コソコソ)」



-居酒屋の前

のび太「まったく、あいつら…」

のび太「まさかドラえもんのこと忘れるなんて」

のび太「それともやっぱりからかってんのかな?」

?「…あら」

?「もしかして」

?「のび太くん?」

のび太「えっ」

のび太「もしかして」

のび太「し…しずかさん?」

しずか「あ、やっぱり」

のび太「久しぶりだね」

しずか「そうね」

のび太(何年ぶりかな)

のび太(あれからまた美人になっちゃって)

のび太「こ、こんなところでどうしたの?」

しずか「どうしたのって、今日同窓会でしょ?」

しずか「おそくなっちゃったけど、参加しようと思って」

しずか「のび太くんは?」

のび太「あ、ぼ、僕は参加して、もう帰りなんだ…」

しずか「そ、そうなの」

のび太「」
しずか「」

のび太(なんか気まずい)

のび太「そ、それじゃ」

しずか「…えっ?」

しずか「ちょっと待って!」

のび太「え、な、なに?」

しずか「久しぶりに会ったんだし、ちょっとだけ話さない?」

のび太(え、えーっ!?)

しずか「そこの公園行きましょうよ!」



-公園

のび太(な、なんだこの展開…)

しずか「のび太くんは、まだ大学にいってるの?」

のび太「大学院の今は博士課程さ」

しずか「そう」

しずか「なんの研究してるの?」

のび太「ロボット工学の研究だよ」

のび太「人間と友達になれる人工知能を持ったロボットを研究しているんだ」

のび太(しずちゃんはどんな反応するだろ…)

しずか「友達になれるロボット…」

しずか「そういえば、昔、よく…」

のび太(!!)

のび太「そ、そうだよ!」

しずか「…」

しずか「昔よく、そんな話してたわね」

しずか「わたしとのび太くんがまだ付き合ってた頃!」

のび太「えっ」

しずか「ほら、中学と高校の頃」

しずか「僕は絶対に会話ができるロボットを造ってやるとか」

しずか「ロボットと友達になりたいとか」

しずか「…あの頃からのび太くん一生懸命だったものね!」

しずか「毎日必死に勉強して」

しずか「どんどん成績も上がっていって」

しずか「目標に向かって一直線って感じで」

しずか「なんか私、置いていかれそうな気がして」

しずか「だって、のび太くん、どんどん一人で先にいっちゃうんだもの」

しずか「なんとなく、そばにいずらくなって」

しずか「いつの間にか、疎遠になって」

しずか「気がついたら別れましょうっていっちゃって」

しずか「そして、そのうち会わなくなっちゃって」


のび太(…)

しずか「のび太くん、ごめんなさいね」

のび太「え、な、何が?」

しずか「本当は別れたいわけじゃなかったの」

しずか「なんか、あの頃、さっきも言ったけどいろいろと不安になって」

しずか「自分に自信がなかったというか」

しずか「劣等感もあったのかもしれない」

しずか「そのせいで、のび太くんに会うのが辛くなって…」

しずか「それをのび太くんのせいにして…」

しずか「今思えば、わたしが勝手に気にしてるだけだったのにね…」

しずか「とっても後悔してるの」

しずか「今日は久しぶりに話せて嬉しかったわ」

のび太「そ、そんな!」

のび太「僕の方こそ!」

のび太(僕は、今でも好きだし!)

しずか「ふふふ」

しずか「じゃあ、遅くなったけど私も同窓会の方に顔を出していくわ」

しずか「また、ね」

のび太(…!!)

のび太「し、しずかさん!」

しずか「なあに?」

のび太「ド、ドラえもんって覚えてる!?」

しずか「ドラえもん…?」

しずか「なにかの登場人物かしら…?」



-大学への道

のび太「…」

のび太「結局、誰もドラえもんのことを覚えていなかった」

のび太「そういえば、パパとママからもドラえもんの名前が出たことはないな」

のび太「僕に気を使ってくれているんだと思っていたけど…」

のび太「もしかしたら…」

のび太「やだな、確認するのが怖いや」


のび太「ドラえもんは、帰るときに私物は全部持って帰った」

のび太「未来の道具を置いていくのは危険だからとか」

のび太「その前に一度帰ったときは道具を一つ置いていったくせに…」

のび太「だから、あいつが未来から来た証拠はなんにも無いんだ…」

のび太「でも!」

のび太「僕は覚えてる!」

のび太「遠い宇宙の果てに行ったり」

のび太「海底に地底に雲の上」

のび太「過去や未来に行ったり」

のび太「22世紀のいろんな道具を使って…」

のび太「僕は、覚えているんだ…」



-大学

教授「お、野比くん」

のび太「あ、先生」

のび太「まだいらっしゃったんですか」

教授「いやー、論文を書かにゃならんからな」

のび太「いよいよですものね」

教授「ああ」

教授「この発表で人工知能に革命が起こるかもしれん」

のび太「先生は長年この研究を続けてきたんですから」

のび太「やっと世間に認められる日が来たんですよ」

教授「君が入ってくれてからとんとん拍子に研究が進んだからね」

教授「今までを思うと、怖いくらいだ」

のび太「そ、そんな、冗談ですよね」

教授「これまでの進歩具合から考えると、私の退官まで」

教授「いや、あと100年は進歩がないと思っていたくらいだ」

教授「君が研究室に入ってから、この数年の君の努力と閃きがなければここまでこれなかった」

教授「私は君に感謝しているんだよ」

のび太「教授…」

のび太「そんなことないですよ…」

のび太「それに、人工知能は22世紀までには必ず大きく発展するはず…あっ」

教授「…」

教授「君は前にもそんなことを言っていたね?」

のび太「そ、それは…」

教授「良い機会だ、話してみてくれないか?」


教授「タイムマシンに乗ってきたロボットか…」

のび太「はい」

教授「いくつか疑問点がある」

教授「そのロボットは未来から来たと言っていたんだね?」

のび太「はい」

教授「それはいつくらいかね?」

のび太「えっと」

のび太「僕の孫の孫の世代」

のび太「22世紀から来たと言っていました」

のび太「誕生したのは2112年だとも」

教授「…その、ドラえもんとやらが来た未来は」

教授「どんな未来だといっていた?」

のび太「どんなっていうと…」

のび太「ひとことで言ってしまえば…」

のび太「…ユートピアですかね」

のび太「科学万能の時代で」

のび太「デパートでは数えきれないくらいの便利な道具を売っていて」

のび太「ロボットと人間が共生していて」

のび太「ロボットにも権利があって」

のび太「…人間と友達のロボットが沢山いて」

のび太「あと、よく覚えていないですけど、ドラえもんによく似たロボットが沢山いて」

のび太「あ、ロボットの学校とか裁判所とかもあって」

のび太「…人間もロボットも幸せそうで」

のび太「ロボットと人間の理想の社会がそこにあるって感じでした…」

教授「…なるほど」

教授「…」


教授「野比くん、これはあくまでわたしが知りあいの教授から聞いたことなんだがね」

教授「数年前、突然タイムマシンが開発されたのは君も知っていると思う」

教授「まあ、世間も大騒ぎしていたがね」

教授「ただ、君も知っている通り、まだ一般人のタイムトラベルは許可されていない」

教授「限られた人間だけが、未来の世界に行くことができたんだ」

教授「その教授もその内の一人で」

教授「…ややこしくなるが、彼がこの世界でのタイムマシンの発明者になる」

教授「未来人の方から彼にコンタクトがあったんだよ」

教授「そして、未来人はこう言ったそうだ」

教授「『僕の時間軸では、タイムマシンの開発が遅すぎた』」

教授「『22世紀にタイムトラベルが一般的になるには、もっと早く発明されなければならなかった』」

教授「『だから、あなたにこの時代から数十年間の研究成果を渡しにきた』」

教授「『その内のいくつかは、これからのあなたの成果でもあるので、気にしないで欲しい』」

教授「『僕の望みは、22世紀のあいつのために、少しでも早くタイムマシンが開発されることです』」

教授「その教授は、長年タイムマシンの研究をしていたんだ」

教授「そして未来人からもらった研究資料を基に、タイムマシンが完成した」

教授「未来人が言っていた時代よりずっと早い、2008年にね」

教授「反則だと思うかもしれない」

教授「でも、その未来人の顔を見たら、なぜか断れなかったそうだ」

教授「その一生懸命な顔をみたらね」

教授「…」

教授「だいぶ話が遠回りしたが」

教授「その教授は、タイムマシンに乗って未来に行ってみたそうだよ」

教授「今から100年後、22世紀に」

教授「その時の話を私にしてくれた」

教授「22世紀は、今よりずっと科学も進んで、確かにロボットも世の中にあふれていたそうだ」

教授「…しかし、そのロボット達には」

教授「意思はなかったと言っていた」

教授「ロボットは、あくまで人間の命令に忠実であるように設計されていて」

教授「余計な考え、特に感情のようなものは持っていなかったそうだよ」

教授「正直、この分野の研究者としては落ち込んだがね」

教授「私もこいつらには、愛情に近いものをもっている」

教授「いつか、心を持たせてやりたいと思って、研究を続けてきた」

教授「…いつかね」

教授「ただ、君が研究室に来てから、また希望がもてるようになったんだよ」

教授「君は、歴史とか未来とか、そういったものを変えてくれるんじゃないかとね」

教授「さっき、君の話を聞いていて、その思いが強くなったんだ」

教授「君なら、もしかしたら」



-のび太の部屋

のび太(…)

のび太(教授はああ言ってくれてるけど…)

のび太(未来の世界には…)

のび太(22世紀にはドラえもんはいなかった…)

のび太(こんなこと、考えたくない…)

のび太(だけど、考えたくないけど…)

のび太「ドラえもんは、僕の想像上の人物なのではって…」

のび太「そんなわけないじゃないか!」

のび太「そんなわけ…」


のび太(その机の引き出しがタイムマシンの入り口になっていて)

のび太(お正月にそこから僕の孫の孫と一緒にやってきて)

のび太(22世紀から)

のび太(未来の道具を使って)

のび太(いつもの5人でさ)

のび太(…でもあの3人は覚えていない)

のび太(タイムマシンは発明されたけど)

のび太(あいつがいた未来に、あいつはいなかった)

のび太「ドラえもん…」

のび太「…」

のび太「ぼく、やっぱり君がいないとダメなのかもしれないよ」

のび太「泣き虫のび太のまんまだよ…」

のび太「ウ、ウウウウウウ…」


?「君ならできるよ、のび太くん」

のび太「!!!」

のび太(クルッ)

のび太「ドラえもん!!!?」

のび太「…?」

のび太「誰もいない…」

のび太「でも、いま確かに後ろから…」

のび太(…)

のび太(ニコッ)

のび太「ははっ」

のび太「あのね、ドラえもん」

のび太「みんな、君のこと覚えていないっていうんだ」

のび太「未来の道具のことも、みんなで毎日遊んだことも」

のび太「君がいた証拠はなーんにもないしね」

のび太「それにね、22世紀には、君はいないんだって」

のび太「ロボットたちも、あんまり考えないみたい」

のび太「…」

のび太「でもね」

のび太「やっぱり僕、君が居て欲しいんだ」

のび太「小学校の頃、君と会って一緒に笑ったり泣いたり」

のび太「ケンカしたり仲直りしたり」

のび太「それは、大切な思い出だから」

のび太「…」

のび太「だからさ」

のび太「絶対、心を持ったロボットをつくるからさ」

のび太「お願いだから、誕生してよね」

のび太「それで、またタイムマシンであの頃に行ったらさ」

のび太「また、あの5人で遊んでね」

のび太「ぼくたちほんとに友達なんだからさ」

のび太「いつもいつまでも友達だからね」

終わり


-居酒屋

のび太「小学校の同窓会か」

のび太「みんな元気かな」

スネ夫「のび太!こっちだ!」

ジャイ「おーのび太!」

ジャイ「元気だったか?」

のび太「やあ」

のび太「っていってもこないだ会ったばかりだけどね?」

ジャイ「そうだな」

スネ夫「僕たち、腐れ縁ってやつだしな」

のび太「なんだかんだ、良く会うしね」


ジャイ「しずかちゃんは来てないのか?」

のび太「ちょっと用事があって、遅れてくるって」

スネ夫「そっか」

ジャイ「しかしうらやましいぜ」

ジャイ「あのしずかちゃんとのび太がなあ」

のび太「はは、本当にありがたいよ」

のび太(まあ、なんとか見捨てられないようにいろいろ頑張ってるけどね)

のび太「二人の方こそ、結婚生活どう?」

ジャイ「まあ、なんとかやってるぜ」

スネ夫「嫁さんがあんなに怖くなるとは思わなかったけどな」

のび太「ハハハ…」

のび太(どこの夫婦も同じか…)

のび太「そういえば、ジャイ子ちゃんは?」

ジャイ「ああ、あいつもやっと婚約したらしい」

スネ夫「あの子と結婚かあ、ある意味すごい男だよな」

ジャイ「どういう意味だよ!」

スネ夫「い、いや、深い意味は!」

のび太(…ちょっと複雑だな)

ジャイ「スネ夫!このヤロー!」

「ハハハ…」


ジャイ「そういえばお前仕事の方はどうなんだ?」

のび太「まあ、まだ勉強することが多いよ」

のび太「ただ、もう少しで見習い卒業ってところかな」

スネ夫「あののび太がねえ」

ジャイ「おまえも頑張ってきたもんなあ…」

スネ夫「環境保護局の調査員か…」

のび太「まあ、僕は元が出来が悪いからね」

のび太「人一倍がんばらなくちゃ」

ジャイ「お前は偉い!」

スネ夫「もう、のび太のくせになんていえなくなったなあ」

のび太「そんな、二人だって頑張ってきたじゃないか」

のび太「ジャイアンはスーパーの経営」

のび太「スネ夫は貿易会社の社長だろ?」

ジャイ「まあな」

スネ夫「忙しいけど、やりがいはある仕事だな」

のび太「僕も、今の仕事はやりがいがあるね」

のび太「昔から、こういう仕事ができたらなって思ってたから」

ジャイ「そうだな」

スネ夫「しかし、小学校のおわりくらいだっけ?」

スネ夫「お前がその仕事やりたいって言い始めたのは」

ジャイ「ああ、確かそのくらいだった気がする」

のび太(…よく覚えてくれてるな)

のび太「まあ、そうだね」

のび太「中学、高校、大学とずっと今の仕事を目指してきたから」

のび太「今はより一層、一生懸命やってみたいと思っているんだ」

ジャイ「あののび太がねえ」

スネ夫「しかしなんでまた小学校のときに環境保護の仕事を?」

のび太「え?」

ジャイ「そうだよな」

ジャイ「いっちゃ悪いけど、お前相当頭悪かったしな」

のび太「…ハハハ」

のび太(…まあ、そうだけどね)

スネ夫「あの時はお前が大学まで卒業できるなんて思ってなかったな」

ジャイ「俺もだ!」

ジャイ「でも、中学校入った辺りから、お前凄い勉強したもんな」

スネ夫「そうそう」

スネ夫「まさに一生懸命だったな」

のび太(やっぱり、二人とも良い友達だなあ…)

スネ夫「なあのび太、なんであんなに勉強しはじめたんだ?」

ジャイ「言っちゃ悪いけど、小学校の時はおれたちより頭わるかっただろ?」

のび太「なに言ってんだよ二人とも?」

のび太「そんなの、全部ドラえもんのおかげに決まってるだろ」


ジャイ「…」

スネ夫「…」

のび太(え?)

のび太(何だろうこの感じ…)

のび太(ドラえもんの名前を出しただけなのに…)

ジャイ「…なに言ってんだお前?」

スネ夫「…もう酔いが回ったのか?」

のび太「え、いや、だからさ…」

のび太(なんでこんな不安なんだ)

のび太「あ、あいつのおかげで僕は…」

のび太「それまでのグーたらだけしてた生活をやめられて…」

のび太「僕一人の力でも頑張れるようになろうって…」

ジャイ「…」

スネ夫「…」

のび太「そ、そうやってまた僕をからかってんだろ」

のび太「だいたい、あいつが来る前の僕は」

のび太「ドラえもんが来る前の僕は、怠け者のどうしようもないやつだったじゃないか!」

ジャイ「…」

スネ夫「…」

のび太「ドラえもんが来てくれたおかげで、僕は生まれ変われたんだよ!」


ジャイ「…」

スネ夫「…」

のび太(…)

のび太(…なんで、何も言わないんだ)

スネ夫「ドラえもん…かぁ」

ジャイ「ドラえもん…ねぇ」

のび太「い、いい加減にしてよ!!」

のび太「ドラえもんはドラえもんじゃないか!」

のび太「そりゃあ僕らが中学校にあがるときに未来の国に帰っちゃったけど」

のび太「僕ら、友達だったじゃないか!!!」

のび太(まさか…まさか…!)


ジャイ「のび太、お前…」

スネ夫「…お前が頑張れたのは、あいつだけのおかげだとでも思っているのか?」

ジャイアン「お前が頑張ってこれたのは、元々お前が頑張れるヤツだったからだろ?」

のび太(!)

ジャイ「根っからの怠け者があそこまで頑張れるわけねえよ」

スネ夫「そうそう、ドラえもんはただのきっかけだろ?」

のび太「あ、ふ、二人とも!?」

のび太「ドラえもんのこと忘れちゃったんじゃないんだね!?」

ジャイ「忘れるも何も…」

ジャイ「俺達があいつのこと忘れるわけねえだろ!」

ジャイ「俺達は、心の友なんだからな!」

スネ夫「そうだよ」

スネ夫「僕たちがあいつとの思い出を、忘れられるわけないだろ」

のび太(!!)

のび太「よ、良かった…」

のび太「本当に良かった(ボロボロ)」

ジャイ「お、お前、なに泣いてんだよ!?」

スネ夫「僕たちが泣かしたみたいじゃないか!」

のび太「ご、ごめん」

のび太「なんか、凄い安心しちゃって」

のび太「勝手に涙がでちゃった」


のび太「でもさ、僕が頑張れてるのは、やっぱりあいつのおかげだよ」

のび太「僕だけの力で、頑張っていけないと」

のび太「ドラえもんが安心できないからね」

のび太「そう思って、必死で勉強して、自分のやりたい仕事ができるようになったんだ」

スネ夫「…」
ジャイ「…」

のび太「あいつが生まれる22世紀まで、僕は生きられないから」

のび太「タイムマシンはもう発明されたし、確かに技術は凄い進歩してるけど」

のび太「もう、僕がアイツに会えるかはわからないから」

のび太「あいつが22世紀で安心して暮らせるように」

のび太「僕はそのために頑張ってるんだ」


ジャイ「スネ夫、やっぱりこいつ変わらねえな?」

スネ夫「さっきから昔とおんなじこと言ってるね」

ジャイ「だから、こいつのことほっとけないんだよな」

のび太(…!)

のび太「あ、ありがとう…」

のび太(だけど…)

のび太(できることなら…)

のび太(やっぱりもう一度会いたいよ)

のび太(ねえ、ドラえもん…)


?「…遅くなっちゃった」

?「あ、いたいた」

?「あなた?」

のび太「えっ、ああ」

のび太「し、しずちゃん」

のび太「遅かったね」

しずか「ちょっと手間取っちゃって」

のび太(こうしてみると、やっぱり美人だなあ)

ジャイ「おお、しずかちゃん!」

スネ夫「いつみてもキレイだねえ」

しずか「まあ、お上手ね」

しずか「ねえ、なんの話してたの?」

ジャイ「ああ、のび太がいかに頑張ってきたかってことと」

スネ夫「ドラえもんのことをね」


しずか「ドラちゃんか…」

しずか「懐かしいわね」

ジャイ「それが、こいつが自分が頑張れてきたのは全部あいつのおかげだっていうんだよ」

スネ夫「こいつ自信が一番がんばってるのにな」

しずか「そうねえ」

しずか「確かにドラちゃんのおかげっていうのも少しはあると思うけど」

しずか「あなたは自分の力で今まで頑張ってこれたのよ」

しずか「もっと威張ってもいいくらいだわ」

しずか「ふふふ」

しずか「まあ、そこがあなたの良いところでもあるんだけどね」

のび太(真っ赤)


しずか「ドラちゃんが帰ってから」

しずか「あなたは一生懸命がんばってたわ」

しずか「確かに最初はドラちゃんに安心してもらうためだったかもしれない」

しずか「でも、環境保護の仕事をしたいっていうあなたの純粋な思いと」

しずか「その夢に向かって必死に努力している姿は」

しずか「とってもすてきだったわ」

しずか「もちろん、夢をかなえた今もね!」


ジャイ「おい、のろけが始まったぞ(コソコソ)」

スネ夫「結婚してから、この二人がくるといつもこうだ(コソコソ)」

のび太(真っ赤)


しずか「あなた、ごめんなさいね」

のび太「え、な、何が?」

しずか「私、何回かあなたと別れたいって思ったことがあるの」

しずか「中学校の頃と高校の頃に…」

しずか「一度目は、なんか自分の周りのものが全て冷めて見えちゃって」

しずか「小学校の頃の友達とか、そういうのを含めて嫌になっちゃって」

しずか「でもね、毎日一生懸命なあなたを見てたらね」

しずか「そんな自分も、馬鹿みたいに思えちゃってね」

しずか「もう一度、あなたたちに話しかけてみたら」

しずか「とっても面白くて」

しずか「やっぱり、友達っていいなって思えて」

しずか「それでね、どんどんあなたが好きになっていってね」

しずか「もう一度は高校の時」

しずか「あなたは毎日必死に勉強して」

しずか「成績もどんどん上がっていって」

しずか「あなたがどんどん一人で先にいっちゃうんだから」

しずか「ちょっと劣等感を感じちゃってね』

しずか「それであなたに会うのが辛くなって」

しずか「だけどね」

しずか「夢に向かって必死なあなたをみていたら」

しずか「それでもそばにいたいって思ってね」

しずか「ねえのび太さん」

しずか「結婚してくれて、ありがとう」

のび太「ぼ、僕の方こそ!!」

のび太「僕みたいなヤツのお嫁さんになってくれて」

のび太「本当に、本当にありがとう!!」

のび太「絶対に幸せにするから!」


ジャイ「別れそうなことがあったていうのは初耳だけど」

スネ夫「結局二人の世界に入っちゃうのはいつも通りだね」

ジャイ「こいつら、年々仲よくなってねえか?」

スネ夫「そうだね、よく人前でこんなにべたべたできるな」



-帰り道

のび太「…」
しずか「…」

のび太「みんな、ドラえもんのことを覚えてくれてて良かった…」

しずか「そんな、当たり前じゃない」

のび太「だけど、なぜか不安だったんだ…」

のび太「この同窓会の日、ドラえもんを覚えていないみんな…」

のび太「そして、もしかしたらドラえもんは僕の想像上の人物なのではって、思っちゃう僕…」

のび太「そんなわけないのにね」

のび太「そんなわけ…」


しずか「大丈夫、私たちが覚えているわ」

しずか「ドラちゃんはちゃんと、あの時、わたしたちといっしょにいた」

しずか「ドラちゃんと一緒にいろんなところに行ったじゃない」

しずか「遠い宇宙の果てに行ったり」

しずか「海底に地底に雲の上」

しずか「過去や未来に行ったり」

しずか「22世紀のいろんな道具を使って…」

しずか「私たちは覚えているわ」


しずか「それに、世の中は確実にあの未来に近づいているわ」

しずか「あの22世紀に」

しずか「あの頃、ドラちゃんに見せてもらった道具、いくつかはもう発明されているわ」

しずか「ほら、タケコプターも!」

しずか「それに、この間、新型人工知能が開発されたって」

しずか「数世代先を行く革命的な発明だってニュースになってたわ」

しずか「これで将来は、ロボットに心を持たせることが可能になるかもしれないって」

しずか「あのタイムマシンだって、遂に未来に行って帰ってきたって!」

しずか「100年後」

しずか「22世紀の未来を見てきた人がもういるのよ!」

しずか「未来では、ロボットと人間が友達になってたって!!!」


のび太「…」

のび太「ドラえもん…」

のび太「ぼく、やっぱり泣き虫のび太のまんまだよ…」

のび太「ごめん、しずちゃん」

のび太「ちょっとだけ…」

のび太「ウ、ウウウウウウ…」


?「あいかわらず、泣き虫だね、のび太くん」

のび太「!!!」

のび太(クルッ)

のび太「ドラえもん!!!?」

ドラえもん「やあ」

ドラえもん「久しぶり」

ドラえもん「立派に、本当に立派になったね、のび太くん」

のび太「ド、ドラえもーーーん!!!」

のび太「わあああああぁ!!!」


のび太「もう、君には会えないかもって!」

のび太「でも僕、君が安心して未来で暮らせるように!」

のび太「一生懸命頑張って!」

のび太「でも、でもやっぱり!」

のび太「もう一度会いたいって!」

しずか「グスッ」

しずか(良かったわね、のび太さん…)


のび太「あのね、ドラえもん」

のび太「みんなちゃんと君のこと覚えていたよ」

のび太「君と一緒に毎日遊んだことも」

のび太「いろんな場所に行ったことも」

のび太「いろんな時代に行ったことも」

のび太「大切な、大切な思い出だよ」

のび太「今、また君に会えて本当に、本当に嬉しいよ」

のび太「君が居てくれたことが、嬉しいんだ」

のび太「ぼくたちほんとに友達なんだからさ」

のび太「いつもいつまでも友達だからね」


のび太「でも、どうしたの急に?」

ドラえもん「今日は、同窓会でしょ?」

ドラえもん「だから来たんじゃないか」

ドラえもん「だいぶ、遅刻しちゃったけどね!」

のび太「そっか…」

のび太「そうだね、同窓会だもんね!」

ドラえもん「でものび太くん、君は本当に凄いよ…」

ドラえもん「本当に頑張り屋で」

ドラえもん「ついに夢を叶えて」

ドラえもん「それに…」

ドラえもん(君にはわからないことだけど)

ドラえもん(タイムマシンをつくった君も)

ドラえもん(僕たちの心をつくった君も)

ドラえもん(どの君も一生懸命で)

ドラえもん(遂に僕は、また君に会いに来ることができたよ)

ドラえもん「ありがとう、のび太くん」

ドラえもん「いつもいつまでも友達だからね」

ドラえもん「友達だからね!」

本当の終わり
 
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この記事のコメント一覧
1 . 名無しさん  ID:fL9HYA8t0編集削除
青いたぬきの物語、完結?
2 . @  ID:OH18Jq9a0編集削除
ジョーカー
3 . 名無しさん  ID:j2YlK4Pd0編集削除
空飛ぶパトカー。
そう言えばKも青いロボットだったな。
4 . 嘘松  ID:mRyHY1ZZ0編集削除
長い
5 . 名無しさん  ID:14SIrMkq0編集削除
シン・ドラえもんってやつか
6 . 名無しさん  ID:2XBYU9qL0編集削除
宇宙が拡大中で地球も時間とともに移動中だから、タイムマシンは実現不可とか夢がないよね。

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