高校時代にやった復讐が修羅場だった。

昔俺はクラスで男子三人からいじめを受けていて、毎日学校に行くのが嫌だった。
通常席順も芸術授業席順もテスト席順(番号順)も全部そいつらの隣前後の席になるから、授業中は物を奪われ隠され、ゴミを投げられ、後ろからペンで背中を刺されたりと、四六時中嫌がらせされるのが凄くストレスで、授業も点を落としまくった。

いつかこいつらに報復してやりたいと思い続けていたころ、テレビや映画でライアーゲームが流行った。

結託してた敵役の奴らが仲間割れを起こして醜く言い争う様がとても痛快で面白かった。
毎日嫌がらせを受けながらも毎週放送されるそれを楽しみにしていたら、いつの間にか俺を主人公の姿に重ねて、
「勝つにはあいつらを倒さなければならない」
「復讐なくして俺の平穏は訪れない」
と考えるようになった。

しかし喧嘩なんかしたことない俺は力もないし数で負けるから拳に訴えることは出来ない。
毎週食い入るように見ていたライアーゲームの影響を受けていた俺は、いろんな策を使ってあいつらを分裂させようと考えた。

主犯は三人ABC。
この三人は大抵行動を共にしている。
これをバラバラにするのが最短で最善だろう。
その為には全員をターゲットにするんじゃなく、Aを除く二人に徹底的に嫌がらせをしまくる。

まず1日目。
昼休み中、昇降口に人目がないのを見計らってAの下駄箱にwordで打ち込んだ偽ラブレターを入れ、"放課後、一人で三階と四階の間の階段踊り場に来るように"と呼び出す。
もちろんそこにはA以外は誰も来ない。
部活で残る生徒も来ないからずーっと待つ羽目になるんだが、その間に仕込み。
教室の廊下にはクラス全員分のロッカーがある。
先に帰ったBCのロッカーには漫画や菓子が入っているのを横目で見て知っていたので、漫画だけを盗み、足早に下校。

翌日、BCが漫画が全部なくなっていることに気付いて

「漫画ねえんだけど知らねえ?」

「知らねえ」

「俺も知らねえ」

「…おい、俺、お前何か知ってんだろ?」

席に座っていた俺に問い詰めてきたが

「え。何の事」
「知らない」
「なに?」

そうとぼけ続けたら

「チッ…行こうぜ」

と言って諦め去っていった。

週明け、3日目。
俺はあえて学校を休んだ。
両親が共働きなので俺が電話して欠席の連絡をしたんだが、
4時間目の体育の時間を見計らってこっそりと登校。
教室に置いてあるBCの財布から有り金を全部盗み、そのまま帰宅。
誰かとすれ違ってもごまかせるように制服で行ったけど、授業中だったから本当に誰一人すれ違わなかった。

4日目。
登校してきたら三人から絡まれるが、どことなく違和感。
いつもならABC三人は言い方は変だけど息の合った嫌がらせをしてくるんだ。
でもそれがぎこちない。
連携が取れてない。
BC二人の連携は合ってるのに対してAがやや噛み合ってないように感じた。

5日目。
放課後誰もいなくなったのを見計らって、新しく補充されたまた別の漫画をBCのロッカーから盗んだ。
ついでに菓子やちょっとしたアクセサリーなんかも入ってたんでそれも盗んでおいた。

6日目。
登校してくるや否や

「おい!二人から聞いたぞ!お前なんかやってんだろ!」

とAに食って掛かられた。
BCからロッカーの中の物がなくなっていることを聞いたAに朝から怒鳴られる。
もちろん

「知らない」

ととぼけるが、

「何シラ切ってんだお前、ふざけんなよ!見たやつがいるんだよ!」

と胸ぐらを掴まれた。
BCは数歩後ろから俺とAを見ていた。
見たやつがいたと言っていたが、俺がロッカーから盗み出す時、周囲に誰もいないことは何度も確認した。
昨日に限らず、全部。
誰かに見られちゃいけない。
見られてるはずがない。
かなり慎重にやったんだから。

これはハッタリだ。
カマかけだ。
状況証拠だけで詰めてるけど確証はない。
とぼければ切り抜けられる。
何があっても認めるわけにはいかないので、胸ぐらを掴まれても、二発腹パンされても、俺は本当に何も知らないような顔と声で

「知らないよ。本当に知らない」

とAの目を見て訴えた。

7日目。
BCのロッカーには鍵が付いた。
盗まれ続けたらそれもそうだ。
二人のロッカーには手が出せなくなった。
三人からはいつも通り嫌がらせされるが、やや身が入っていないような、軽い内容に落ち着いた。

それまで連日やり過ぎて三人から疑いの目を向けられていたのと、やや警戒されるようになったので
ほとぼりが冷めるのを待ち、二週間のインターバルを空けた。

三週間後の週明け、8日目。
3日目と同様、ずる休みして4時間目の体育の時間を見計らって忍び込む。
季節は夏。
授業はプールだ。
細心の注意を払いながら今回は女子更衣室に忍び込み、脱いだ服を漁って女子のパンツやブラを二人分盗んでおく。
セーラーの内側には名前が書かれていて、ABCが前から可愛いよなと話していたXちゃんYちゃんのものをこっそり確保。
ちょっと興奮したけど、これは俺が持ち帰ってはいけない。
それらをCのスクールバッグの底の黒いプラ板の裏に、少しだけ端っこが見えるように詰め込んだ。

9日目。
登校するとABCが欠席していた。
朝のHR中、クラス全体の雰囲気が重く暗い。

何があったのかをクラスメイトに聞くと、このように説明された。

「昨日のプール中XとYの下着がなくなって全員持ち物検査したら、Cのカバンから出てきたんだよ。
 Cはやってないって言ってたけど、XもYも泣いて昼飯どころじゃなくなったんだ。
 先生も来て急に裁判みたいになってさ。そこでCがいきなりAに「お前だろ?」って言いだしたんだ。
 Aは「何言ってんの?」みたいな感じだったんだけど、Cがなんか騒いで、そこから殴り合いだよ。
 Bも途中から「最近物無くなったのお前のせいだったのか」とか言って加勢するし。
 ヒートアップして2組3組の先生まで止めに来るくらいすんげえ喧嘩になったんだぜ。そのせいでACは今停学中だよ」

と。

Bは停学じゃないけどその辺りが理由で今日欠席してるんだろう。

予想するに、俺が狙った通り、BCが毎日のように物がなくなっていたのがAの仕業だと誤解して今回のような騒ぎになったって事みたいだ。
ABC全員にやってたら全員が被害者として連帯しちゃうけど、一人だけ被害を受けてないとなれば注意がかなり強くAに向く。
それが見事に噛み合って、A対BCの構図になって、しかも乱闘騒ぎまで起こしてくれた。

結果的にACは窃盗容疑で退学。
Bは悪友を失って孤立。
欠席が目立つようになり、後を追うように退学。
俺に嫌がらせしてた三人はそっくり高校から去り、俺はようやく平穏な高校生活を手に入れた。

翌年、高校の文化祭終わりにAとその友達に校門前で遭遇した時、

「おう久しぶり。A友、こいつ(俺)、俺の友達なんだよ」

とA友にどや顔で言ってたけど。

お前なんか友達じゃないよ。
もう俺の人生にお前らなんか要らねえから。
二度と関わってくるな。
乱闘騒ぎで退学になった中退野郎。

と、心の中で言って、その場はにこやかに去った。

今まで誰にも言えなかったけど、俺が青春時代を勝ち取ったのは戦った結果だと思ってる。
いじめをやるやつには徹底的に抗うべきだと思う。
それは力でなくてもいい。
それを教えてくれたのはライアーゲームだった。
ありがとうライアーゲーム。
ありがとう秋山さん。 
 
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この記事のコメント一覧
1 . 名無しさん  ID:oAtEJ.jO0編集削除
一つ 人世の生き血を啜り
二つ 不埒な悪行三昧
三つ 醜い浮世の鬼を 退治てくれよう 正解は 越後侍!
2 . @  ID:g.gHFGzF0編集削除
ジョーカー
3 . 名無しさん  ID:wKtjeiMs0編集削除
ABC-窃盗
4 . 嘘松  ID:x2Q.autI0編集削除
さわやか
5 . 名無しさん  ID:..VjXwW.0編集削除
冷静且つ慎重に
ジョーカーの頭じゃ
これは出来ない
6 . 名無しさん  ID:cu4pR.770編集削除
さわやかにも出来ん
7 . 名無しさん  ID:7p8z7YCs0編集削除
イキスギィ!
8 . 名無しさん  ID:F4y9tYxl0編集削除
XYが可哀想
BCから盗んだ金をAの財布に入れておくべきだったね

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