最近真相を知って地味に衝撃を受けたことがある
中学・高校時代の友人にヴァイオリンの音を聞くと体調が悪くなる子(以下、A子)がいた。
別に彼女が自分から言い出したわけではないのだけど、音楽の授業とか芸術鑑賞会等の行事でヴァイオリンの音やヴァイオリンの演奏が含まれる曲を聞くとどんどん顔色が悪くなって、変な汗をかき始める。
皆で心配して
「どうしたの?」
と尋ねたら凄く辛そうに
「昔、ヴァイオリンを習ってたことがあって…その時、嫌なことがあって…未だにヴァイオリンの音を聞くとちょっと気持ち悪くなるんだよね」
と答えた。
演技とかではなく本当に苦しそうだったので、皆で
「そうなんだ」
「なるべく意識逸らすようにしようか」
と心配していた。
詳しい事情を聞いたら悪い気がして、A子にそれ以上聞くことはなかったんだけど、友人たちの間では
「A子は昔、ヴァイオリンの先生にスパルタ教育され過ぎてトラウマになってしまったのだろう」
という結論になっていた。
というのも、一応通ってた学校がいわゆるお嬢様学校だったこともあってか、自分も含めて幼少期にバレエ、ピアノ、日舞とかガッツリ習い事をさせられていた子が多かった。
この手の習い事って何故か、年数を重ねると別にプロを目指すわけでもないのに、やたらと指導が厳しくなりがちだから、A子もそれで苦しんだのだろうと。
友人達となるべくA子がトラウマで苦しまないようにフォローしてあげようねと誓い合った。
それからA子含めた友人達とは卒業、就職、結婚等を経てもずっと仲が良くて定期的に集まっていた。
そして、この間久々にみんなで集まった時に話題が子供の習い事の話になった。
その時、誰かが
「ほらA子もヴァイオリン習ってたでしょ?」
とA子に尋ねると
A子はきょとんとして、
「え、ヴァイオリンほぼやってないよ?」
と答えた。
みんなびっくりして、
「え、だってヴァイオリンの音がトラウマって言ってたじゃん!?レッスンがトラウマだったんじゃないの!?」
と言ったら、
「え、トラウマあるけど全然違う理由だよ〜」
と笑って話し出した。
小学生の頃、A子は自分からヴァイオリンを習いたいと両親にせがんで、近所のヴァイオリン教室に通うことになったという。
ところが、A子は2回行っただけで飽きてしまい、全然行かなくなってしまったらしい。
自営業で家にいることが多かったA子父が度々咎めるも無視。
ヴァイオリンのレッスンの時間はずっと家でゲームとかして過ごしていたらしい。
それが何回か続いたある日、堪忍袋の緒が切れたA子父は怒鳴ってA子が手に持っていた携帯ゲーム機を取り上げ、何と金属バットでたたき割ったのだという。
「その時のお父さんがものすごく怖くて…それからヴァイオリンの音がトラウマなんだよね…」
それを聞いた時、自分を含めて皆
「…??え…??」
となった。
思わず
「え、それってお父さんがトラウマになったりしなかったの?男の人の怒鳴り声がダメになったとか」
と聞いたら
「いや、特にないかな?お父さん大好きだし」
とのこと。
(A子は若干ファザコンの気がある位に父親と仲が良い)
「携帯ゲーム機を見るとその時のことを思い出して辛くなったりとかは?」→「いや、全然。すぐに買い直してもらったし」
「金属バットがダメとかは?」→「全然。野球見るの好きだし」
「え、ヴァイオリン…」→「ダメだねー。今でも音を聞くと、あの怒られたときの心臓バクバクする感じが戻ってきて気持ちが悪くなるの」
なんで父親に怒られたときに鳴り響いていたわけでもないヴァイオリンの音がダメになったのか、A子自身もおかしいと感じているらしいけど、とりあえず、
ヴァイオリンの音→嫌な記憶という風になってしまったらしい。
ものすごく驚いたというか拍子抜けしたというか…何とも言えないけど、人間の心理・脳って不思議だね。
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