※人間が飲むと死ぬので真似しないでね。
大臣「陛下」
皇帝「なんだ、その飲み物は」
大臣「水銀でございます。お召し上がり下さい」
皇帝「いただきまーす!」
皇帝「……」ゴキュゴキュゴキュ
皇帝「水銀うんめぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
大臣「えええ……」
皇帝「おかわり! もう一杯!」
大臣「さあ、どうぞ」
皇帝「……」ゴキュゴキュ
大臣「もういっちょ」
皇帝「……」ゴキュゴキュ
大臣「どんどん」
皇帝「……」ゴキュゴキュ
大臣(ええい、チマチマ飲ませててもダメだ!)
大臣「だったらバケツ一杯の水銀ドーン!」
大臣「さあ、飲めるもんなら飲んでみろ!」
皇帝「いただきまーす!」
ゴキュゴキュゴキュゴキュゴキュゴキュ…
大臣「……!」
皇帝「ごちそうさまー! うまかったぁ〜!」
大臣(他の手を考えなくては……!)
ガタゴトガタゴト…
皇帝「大臣と二人で、馬車で小旅行というのもいいものだな」
大臣「ええ、いい景色ですなぁ」
皇帝「それにしても、大臣の御者っぷりもなかなかではないか」
大臣「この日のために準備してきましたから」
ガタゴトガタゴト…
大臣「では、さようなら」
皇帝「え?」
大臣「今から馬と車を切り離し、私は馬に飛び乗ります」
大臣「そうしたら、あなたの乗ってる車は崖の下に真っ逆さまというわけです」
皇帝「なんだと!?」
ガチャンッ サッ
ガタゴトガタゴト…
皇帝「うっ、うわあああああああああっ!!!」
ドガシャァンッ
大臣「この高さでは助かるまい……」ニィッ
大臣「ただいまー!」
馬「ヒヒィーン!」
兵士「お帰りなさいませ!」
大臣「ふふふ、よくやってくれた。ほら、ニンジンだ」
馬「ヒヒィーン!」ムシャムシャ
大臣(二度と陛下が帰ってくることはない……)
皇帝「ただいまー!」
兵士「お帰りなさいませ!」
大臣「なにィィィィィ!?」
大臣「新しく城に飾る巨大オブジェでございます。いかがです?」
皇帝「ほう、これは素晴らしい」
グラグラ…
皇帝「しかし……やけにバランスが悪いのが気になるな。今にも倒れそうだ」
大臣「それはそうでしょう」
皇帝「なぜだ?」
大臣「なぜならこのオブジェは――」
大臣「こうするためのものですから」ゲシッ
グラグラグラ…
皇帝「!」
グラァ…
皇帝「わっ、こっちに倒れてくる――」
ズシィンッ!
大臣「フハハハハ! やったーっ! 陛下がペシャンコだーっ! これぞ究極の芸術ゥ!」
モゾモゾ…
大臣「え?」
皇帝「うんしょ、うんしょ」モゾモゾ
大臣(這い出してきた!?)
皇帝「ふむ……」
皇帝「もっとバランスのいいオブジェにした方がよいな」
大臣「か、かしこまりましたーっ!」
夜更け――
皇帝「う〜……こんな夜中にトイレに行きたくなるとは……早く行かないと……」タタタッ
ザザザッ
皇帝「……ん?」
刺客A「……」
刺客B「……」
刺客C「……」
皇帝「君たちは……どこのどなたかな?」
刺客A「皇帝陛下……死んで頂きます」ジャキンッ
皇帝「むむっ!?」
刺客A「お覚悟ッ!」ダッ
グサササッ
皇帝「う……ぐ……!」
大臣「クックック、さすが刺客三兄弟。息の合った見事なコンビネーションだった」
大臣「腕の立つ刺客三人に刺されては、いくら陛下といえど……」
皇帝「よいしょ、と」ムクッ
大臣「なぬっ!?」
皇帝「あ〜、漏らしてしまった……」
大臣「うわああああっ! 誰かーっ! モップ持ってきてぇぇぇぇぇ!」
大臣「こうなったら……私自ら……」ジャコッ
大臣(私はこう見えて、射撃が結構得意なのだ!)
皇帝「……」スタスタ
大臣(中庭を一人で散歩している……これはチャンス!)
大臣(よーく狙って……)
バキューンッ!
ビシッ!
皇帝「あうっ!」
大臣「やったッ! ナイスショットォ! ドタマブチ抜きィィィィィ!」
大臣「どれどれ、死体を確認……」
皇帝「いたたた……」ムクッ
大臣「えっ!」
皇帝「おはよう、大臣」
大臣「おはようございます、陛下ァ!」
皇帝「ライフルなど持って、狩りでもするのかね?」
大臣「それが……この国一番の大物を狙ったんですが、失敗しちゃいました。アハハハ……」
大臣「よいしょ、よいしょ」
兵士「大臣、何を運んでらっしゃるんですか?」
大臣「内緒だ」
兵士「ははーん、さてはエッチな本ですな?」
大臣「んなわけあるか!」
大臣(爆薬だよ!)
大臣「陛下!」
皇帝「ん?」
大臣「あっちに向かって歩いてくれませんか?」
皇帝「なんで?」
大臣「いいからお願いします! 陛下の命に関わることなんです!」
皇帝「分かった分かった」スタスタ
大臣「今だッ!」カチッ
ドゴォォォォォォォンッ!!!
大臣「やったぞ……もろに喰らった!」
大臣「これで陛下もオシマイだぁぁぁぁぁ!!!」
モクモクモク…
皇帝「いやー……今のはすごかった」
皇帝「見ろ、髪の毛がアフロになってしまったぞ」
大臣「あの大爆発で被害それだけぇ!?」
大臣「ハンマーで殴るッ!」ガツンッ
皇帝「あいてっ!」
大臣「硫酸をジョッキで!」
皇帝「ほぉ〜、なかなか刺激的な味だ」ゴキュゴキュゴキュ
大臣「グレートデリシャスミニスターパーンチッ!」バキッ!
皇帝「ぐへえっ! 今までで一番痛かったかも!」
……
……
大臣「陛下……」
皇帝「大臣よ……」
大臣「どうやら……私は……ここまでの、ようです……」
大臣「ここまで老いてしまっては……もはや大臣の座を譲る他ないでしょう……」
皇帝「いいや、そんな高齢になるまでよく務めてくれた」
大臣「歴代大臣に課せられた裏の使命――“皇帝陛下の暗殺”」
大臣「自信はあったのですが……結局、私も果たせませんでした……申し訳ありません……」
皇帝「そんなことはないぞ……いい働きぶりであった」
大臣「次こそ……次代を担うお前こそ、なんとかこの使命、果たしてくれ……」
次代大臣「はっ、108代目大臣となるこの私が、必ずや陛下を生の苦しみから解き放ってみせます!」
皇帝「余が不老不死の薬などを飲んでしまったばかりに、苦労をかける……」
完
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