友「最近、彼女できたっていってたけど、どうなん?」
男「うーん……地雷女だったよ」

友「マジか……どのあたりが?」

男「今はこのあたりにいるかな」スッ

友「へ?」

女「ドッカーンッ!!!」ボゴォッ

友「うわぁぁぁぁぁっ! 地面から女の子が!」



女「どう? 驚いた? 驚いた?」

男「ああ、驚いたよ」

友「……!」

女「やったーっ!」ピョンピョン

男「な?」

友「地雷ってこういう地雷かよ……」

……

男「……」スタスタ

男「!」ピクッ

男(今日はあの辺に埋まってるな……)

男「……」スタスタ

女「ボッカーンッ!!!」ボゴォッ

女「どうだった? ビックリした?」

男「ああ、ビックリしたよ」

女「やったーっ! 地雷大成功!」

男「じゃ、メシでも食いに行こうか」

女「うんっ!」

男「なに食べる?」

女「お芋!」

男「やっぱり地面に埋まってる食い物が好きなんだな」

……

男(今日はあの辺だな……)

男(あと三歩、二歩、一歩……)

女「ドッゴーンッ!!!」ボゴォッ

男「……」

女「今日はどうだった? 驚いた?」

男「うん、驚いた」

女「ウソだぁ、驚いてないでしょ」

男「ん……まあな。さすがに慣れてきたよ」

女「ぐぬぬ……あたしもまだまだ地雷としての修行が足りないか……」ズブズブ…

男「地面掘るのはいいけど、地盤沈下させないようにな」

女「分かってるって!」ズモモモ…

……

女「じゃ、今日も地中を掘ってくるね」

男「行ってらっしゃい」

女「いくぞーっ!」ザクザクッ

男「……」

男(出かける彼女を見送るって光景はそう珍しくもないだろうけど)

男(地中に潜っていく彼女を見送るって光景はそうないだろうな)

ボコッ

女「ただいま!」

男「お帰り」

女「こんなの見つけちゃった!」ジャラッ

男「なにそれ」

女「壺の中に……小判がいっぱい入ってるんだけど」

男「うーん、徳川の埋蔵金ってやつかもな」

女「どうしよ?」

男「交番に届けよっか」

ボコッ

女「ただいま!」

男「お帰り」

女「今度はこんなの見つけちゃった!」ゴトッ

男「なにこれ」

女「不発弾!」

男「マジで? 爆発するんじゃ……」

女「大丈夫、自分で信管は抜いたから!」

男「そういうのは自衛隊の人に任せようや」

ボコッ

女「ただいま!」

男「お帰り」

女「地中で変わった人と知り合ったから、連れてきちゃった!」

地底人「ドーモ」

男「あらら……」

男「俺の彼女が粗相しまして、どうもすみません」

地底人「イエイエ」

……

男「前から聞きたかったんだけど」

女「んー?」

男「どうして地雷になりたがるんだ?」

女「うーん……なんでだろ」

女「きっかけは……あれは小学校の頃だったかなぁ」

男「結構さかのぼるんだな」

女「子供の頃、テレビで地雷特集みたいな番組がやってて」

男「うん」

女「地雷で足をなくした人や、地雷を掘る作業をしてる人をインタビューしてて……」

女「当然、あたしも地雷ってひどい兵器だなー、悪い兵器だなーって思ったんだけど」

男「たしか、今は条約とかで禁止されてるしな」

女「だけど、ここでふと思ったの」

女「たしかに地雷はひどい兵器だけど、悪いのは作ったり埋めたりした人なわけで」

女「地雷自体は“踏まれたら爆発する”って役割を全うしてるだけでしょ」

男「まぁな」

女「地雷の立場になってみたら、地面に埋められてさ、あとは踏まれるのを延々と待つだけだなんて」

女「バカらしくてやってらんないよなーって」

男「土の中で七年過ごすっていう、セミより過酷かもな」

女「だから、あたし……地雷の気持ちになってみたいと思って、地面に潜る猛特訓を始めたの」

男「そういうことだったのか」

男「……」

女「どう? もしかして引いちゃった?」

男「いや、思ったよりずっとシリアスな動機だったから、ちょっと面食らったけど」

男「そういうことなら、思う存分地雷をやってみればいいんじゃないかな」

男「今のところ、地中もしっかり処理してて、誰かに迷惑かけてるわけでもないし」

女「ホント? ありがとう!」

……

ザァァァァァ…

男「今日は雨が強いな」

女「ね、こんな土砂降り久しぶりだよ」

男「この地域は山もあるし、この雨量だと土砂崩れが心配だな」

女「うん……」

TV『ここで緊急ニュースです』

TV『○×地区で土砂崩れが発生し、ふもとの民家が巻き込まれ……』

男「……うわっ、近所じゃん! 大丈夫かな……」

女「……!」

TV『現在、重機で懸命の救出作業が続いていますが……』

男「何とか助かればいいが……」

女「あたしが行く!」

男「えっ!?」

ワイワイガヤガヤ…

作業員A「どうだ?」

作業員B「ダメだ! 全然家が出てこねえ!」

作業員A「二次被害も恐ろしいから、作業がはかどらんな……」

女「あのっ!」

作業員A「なんだ君は? 危ないから下がって!」

女「埋まってる人は……あたしが救助します!」

作業員AB「へ……!?」

ミシミシ… メリメリ…

父「家全体が土砂に埋もれて……空気が薄くなってきた……」

父「家もまもなく潰れるだろう……」

父「私は……お前たちと一緒で幸せだったよ……」

母「私もよ……」

子供「パパ……!」

ズモモモモモ…

父「ん?」

女「ジャーン!」ボコッ

父「うわっ!? なんだ!?」

女「ひい、ふう、みい……三人とも生きてるね、よかった!」

母「あなたは誰……?」

女「説明は後! この穴に入って! 早く!」

子供「うん!」

モコモコモコモコ…

ボコォッ!

女「はいっ! 三人とも助けたよ!」

作業員A「おおっ! こんなに早く!」

作業員B「あんたは穴掘りの天才だな!」

男「よし、あとはお前が脱出すれば――」

ズズズズズ…

男「……なんだ?」

ドバァァァァァッ……!!!

女「!?」

女「きゃあああああああっ!!!」

シーン…

男「……ッ!」

作業員A「な、なんてことだ!」

作業員B「あの子が埋まっちまったぞ!」

父「そんな……!」

母「私たちを助けたばっかりに……」

子供「うぇ〜〜〜〜ん!」

男「……」

男(いや……あいつは地雷だ……こんなことで死ぬはずない!)

男(きっと土砂に埋もれながらも、自分の身は守ったはず……!)

男(まだ間に合うッ!)タタタッ

作業員A「おい、危ないぞ!」

男「おーいっ!」

男「俺はここだぞーっ!」

男「いつもみたいにドカーンって出てきてくれーっ!」

シーン…

男(反応がない……!)

男(だったら……俺があいつを探知してやる!)

ザッザッザッ… ザッザッザッ…

男(感じ取ってくれ……俺の足!)

男(俺の愛する彼女(じらい)を!)

男「……」ピクッ

男(ここだ……!)

男「ここを掘って下さい! くれぐれも慎重に!」

作業員A「な……!?」

作業員B「素人の判断で掘れるわけが……」

作業員A「いや……やってみよう! 彼を信じよう!」

男「ありがとうございます!」

ザク… ザク…

女「うう……」

作業員A「いたぞ!」

作業員B「生きてる!」

女「う……ん……」

男(やっぱり……普通の人より遥かに地中に適応していたんだ!)

女「んん……」

女「あ……!」

男「よかった……!」

ギュッ…

男「よかったぁぁぁ……本当によかったぁぁぁぁぁ……!」

男「もう埋もれたまま見つからないかと……! うっ、うっ、うっ……」

女「心配かけちゃって、ごめん……」

男「うっ、ううっ……」

女「もうあたし……地雷は引退する……」

女「だって……爆発する前に、掘り出してもらえたんだから……」

その後――

友「結婚するんだって? おめでとう!」

男「ありがとう」

女「式にはぜひ来てね」

男「でさ、子供ももうすぐ産まれるんだ」

友「マジかよ! やることやってたんだな〜」

女「……ふふっ」

友「子供が産まれたら……やっぱり穴掘りを教えるの?」

女「ううん、あたしもう地雷はやめたから……」

友「あ、そうなんだ」

男「休みの日は子供と一緒にゲームをする、そんな家庭にしたいと思ってるよ」

女「ゲームもいいけど、勉強もね」

男「たしかに」

アハハハ…

…………

……

……

……

男「こことここと……あとここ!」カチカチッ

男「よし、クリアだ!」

娘「わーっ、お父さんはやーい!」

男「昔からこのゲームは得意なんだよ。失敗したことないしね」

娘「すごーい!」

女「あらあら、二人でゲームして楽しそうね」

娘「うん、お父さんすごいんだよ! さっきから全然失敗しないの!」

娘「運任せになっても当てちゃうし!」

男「フフッ……」

女「なんてゲームをしてるの?」

娘「マインスイーパってゲーム!」

おわり 
 
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この記事のコメント一覧
1 . @  ID:WfRCVZu00編集削除
ジョーカー
2 . 名無しさん  ID:W.lcyL0f0編集削除
なんか昔の漫画でダッチワイフ型地雷の地雷ちゃんってあったような

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