大臣「……報告が入りました」

王「おおっ、ついに勇者が魔王を倒したのか!?」

大臣「いえ……勇者一行は全滅いたしました……」

王「な、なんと!」

大臣「もはや我が国に打つ手はありません……」

王「くうう……誰か魔王を倒せる者はおらぬのか……!」

虫使い「私にお任せ下さい」



王「なんだ、おぬしは?」

虫使い「私は虫使いと申します」

王「虫使い……?」

虫使い「この私が魔王軍など、たちまち蹴散らしてみせましょう」

大臣「バカな、虫使いなどに何ができるというのだ! 相手は屈強な魔族なのだぞ!」

虫使い「これを使います」カサカサ ピョンッ

王「この虫は……バッタ……?」

虫使い「ええ、バッタです」

大臣「バッタなど、ただ飛んだり跳ねたりするだけではないか!」

虫使い「そんなことはありません」

虫使い「バッタは魔王をも倒す可能性を秘めた昆虫なのですよ」

王「聞かせてもらおうか」

虫使い「ある種のバッタは、密集した状態で過ごすと、ある変化が生じます」

虫使い「色は黒ずみ、体は長くなり、より長距離飛行できる形態になっていき……」

虫使い「そして……より獰猛になるのです。こうなったバッタを“群生相”と呼びます」

虫使い「この性質は子にも受け継がれていき、彼らがひとたび群れをなした時の破壊力は」

虫使い「まさに“災害級”といわれています」

王&大臣「!」

虫使い「私は独自の研究と品種改良で、この群生相のバッタを増やし、制御することに成功しました」

虫使い「このバッタ達を魔王軍にけしかければ、たちまち壊滅させることでしょう」

王「……」

大臣「陛下……!」

王「今のままでは我らは魔族に支配される。よかろう、やってみせよ」

虫使い「ありがとうございます」

ウジャウジャウジャウジャウジャウジャ…

虫使い「これが私の育てたバッタたちです」

大臣「ひえええっ……」

王「いったい何匹いるのだ……」

虫使い「私が号令をかければ、彼らは魔王軍に突進します」

王「では、頼む」

虫使い「ゆけっ! バッタ達よ! 魔王軍を蹂躙するのだ!」

スライム「勇者どもが倒されたんだってさ」

オーク「ついに俺たちの天下がやってくるな!」

ゴブリン「ああ、魔族の勝利だ! 我らが人間を支配するんだ!」

ブワァァァァァァァァァァ…

スライム「ん?」

ブワァァァァァァ…

スライム「なんだこれ!? 虫!? ……バッタ!?」

オーク「うわっ、体にまとわりついてくる! なんだこりゃ!?」バッバッ

ゴブリン「ひいいいっ、噛みついてくるぞ! いでえ!」

ワサワサワサワサワサ…

うぎゃあぁぁぁ……!

魔術師「……バッタ?」

魔術師「ふん、そんなもの魔王軍一の術士である私が造り上げたゴーレムが粉砕してくれるわ!」

ゴーレム「グオオオオオオッ!」

ブワァァァァァ…

魔術師「ククク、来たか」

ブワァァァァァァァァ… ブワァァァァァァァァ…

魔術師「ちょっ、こんなにいるのか!?」

ゴーレム「グオッ!?」

ワサワサワサワサワサ… ガサガサガサガサガサ…

魔術師「うおっ、やめっ……!」

ゴーレム「グオオオオッ……!」

リザードマン「ドラゴン様! バッタの大群が迫っております!」

ドラゴン「ぐははは、恐れることはない!」

ドラゴン「たかがバッタ風情、我が灼熱の炎でまとめて焼き尽くしてやる!」

リザードマン「おおっ……さすがドラゴン様!」

ブワァァァァァ…

ドラゴン「来たか、ムシケラども!」

ドラゴン「喰らえィ、灼熱吐息(ファイアブレス)を!」

ゴォワァァァァァッ!!!

メラメラメラメラメラ…

ドラゴン「ぐはははは、全部燃え尽きたわ!」

リザードマン「お見事です、ドラゴン様!」

ブワァァァァァ… メラメラメラ…

ドラゴン「へ」

ブワァァァァァァ… ゴォワァァァァァァ…

ドラゴン「ひいいいっ! 火をまとったまま突っ込んでくる!」

リザードマン「助けてぇぇぇぇぇっ!」

ブワァァァァァ… ブワァァァァァ…

上級魔族A「なんなんだ、こいつらは!?」

上級魔族B「いくら潰しても減らない!」

上級魔族C「魔王様、お許しをぉぉぉぉ……!」

ブワァァァァァァァァァァァァ…

側近「魔王様!」

魔王「なんだ、騒々しい」

側近「それが、バッタの大群に襲われ、部下が次々に……!」

側近「あのドラゴンさえ骨だけにされてしまったようです!」

魔王「不甲斐ない部下どもだ」

魔王「ではワシが直々にバッタ退治をしてくれよう!」

側近「お願い致します……!」

ブワァァァァァァァァ…

魔王「来たか」

側近「な、なんて数だ!」

魔王「ふん、いくら集まろうとしょせん虫ケラよ。我が闇の魔力でまとめて葬ってやる。カアアアッ!」

ボウッ!!!

ブワァァァァァァ…

魔王「な、なんだと!? まだいるのか!?」

魔王「ええい、今度こそ!」

ズオッ!!!

魔王「何千何万と消し飛んでるはずなのに……減らない……!」

ブオォォォォォォォォォォ…

魔王「わっ、まとわりついてきた!」

モゾモゾモゾ…

魔王「もごっ、口の中に……や、やめっ……」

モゾモゾモゾモゾモゾ… ウゾウゾウゾウゾウゾウゾ… ガサガサガサガサガサ…

魔王「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」

魔王(体の外と、内から食い散らかされ……!)

魔王(側近……! ワシを助けろ……!)

シーン…

魔王(とっくに骨になっておる……!)

魔王「お、おのれっ……!」

魔王「おのれバッタァァァァァッ!」

ああああぁぁぁぁ……!

ブワァァァァァァァァァ…

虫使い「戻ってきました。終わったようですね」

王「おお……!」

大臣「本当にバッタが魔王軍を根絶やしに……!」

虫使い「あとは私の号令で彼らを静め、誰もいないところに放逐してしまえば全ては片付きます」

王「よくやってくれた。おぬしは世界の救世主だ」

虫使い「では……静まれ!」

ブワァァァァァ…

虫使い「ん? ……静まれ!」

ブワァァァァァァァァァァ…

虫使い「な、なんで!?」

虫使い(あのバッタ達、色がさらにどす黒くなっている……!)

虫使い「まさか、魔族どもを大量に食ったせいでさらに変異してしまったのか!?」

王「変異だと……?」

大臣「ということは、どうなるんだ!?」

虫使い「彼らは別の虫になった、といっても過言ではありません……」

虫使い「もはや私にも……制御できません……」

王&大臣「な、なんだとおおおおお!?」

ブワァァァァァァァァ…

大臣「おい、どうするんだ! 何とかしろっ! もうそこまで迫ってるぞ!」

虫使い「もう……どうしようも……」

王「おお……人も魔族も、バッタによって滅ぶのか……」

うぎゃぁぁぁぁぁ……!!!
 
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この記事のコメント一覧
1 . 名無しさん  ID:U57mxUBh0編集削除
ばったばったと倒されたのですか?
2 . 名無しさん  ID:U57mxUBh0編集削除
すみません、1ケ゛ット言うの忘れてました(ネット老人会所属)

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