俺はロンリーウルフ。砂漠のヤムチャ。

ピラフ一味の野望はウーロンによって阻止され、そのまま大猿となった悟空によってピラフ一味は壊滅した。

俺は結婚というものに憧れていたが、悟空が武天老師様の元に行くと聞いたとき、武闘家としての血がうずいてしまった。

土下座しなくてもやらせてくれそうなブルマの誘惑を断ち切り、武天老師様の所に向かおうとしていた悟空に頼み込む事にした。

悟空「じゃあ、オラ亀仙人のじっちゃんの所に行くな!」

ヤムチャ「悟空!!待ってくれ!」

悟空「なんだ?」



ヤムチャ「頼む!オレも連れて行ってくれ!」

悟空「えー… おめぇ筋斗雲に乗れねえだろうしなぁ」

ブルマ「そうよ!無理して行かずに、一緒に都にきなさいよ」

俺は土下座した。

ヤムチャ「頼む!!この通りだ!」

プーアル「悟空さん!僕からもお願いします!!ヤムチャさんを連れて行ってあげてください」

悟空「でもなぁ……」

ウーロン「プーアルが敷物に変身して筋斗雲に乗って、その上にヤムチャが乗ればいいじゃないか」

プーアル「ウーロン!?」

ウーロン「……これで幼稚園の時にイジメたのはチャラだからな」

プーアル「ウーロン……ありがとー!!」

悟空「まぁ、それならいいか!」

そんな流れで、俺たちは武天老師様の所に向かった。

ブルマ「ピー、ピー、ピー」

ウーロン「うぎゃー!!何するんだよ!」

ブルマ「あんたのせいでステキな彼氏がお預けになったじゃない!!」

俺達は後できたクリリンという奴とともに武天老師様の弟子になった。

その過程で、ランチという二重人格の怖い美人さんとも合流し、武天老師様の家で一緒に暮らすこととなった。

お蔭で、女性に対する苦手意識はだいぶ改善された。

武天老師様の修行といえば、走り込みや土掘り等の基礎筋力の強化が中心だった。

たまに挫けそうになったが、その度にプーアルが、

「ヤムチャ様頑張ってください!僕も併走して飛びますから!」

「ヤムチャ様!挫けないでください!!僕も一緒に畑を耕しますから!!」

「ヤムチャ様!僕も牛乳を運びますから!ヤムチャ様なら絶対にできますよ!!」

そんな感じで励ましたり、発破をかけてくれたおかげで乗り切れた。

そんなある日のこと、武天老師様は俺達を天下一武道会に出すことにした。

武道会にはブルマもきていた。暫く見ないうちにまた一段と魅力的になっていた。

予選は俺達全員が突破できた。

本選は、

バクテリアン VS クリリン
ヤムチャ VS ジャッキーチュン
ナム VS ランファン
悟空 VS ギラン

このような組み合わせだった。

クリリンはバクテリアンの悪臭に苦戦しつつも勝利した。

俺はというと……

悟空「ヤムチャ!すげぇ勝負だったな!!」

ヤムチャ「一回戦負けかぁ……」

クリリン「しかし、すげー爺さんだったな…… 次は俺があの爺さんと戦うのかぁ…」

ヤムチャ「クリリン!あの爺さんの本当の実力はあんなもんじゃないぞ!初めから飛ばして行けよ!」

クリリン「うへぇ……あれで全力じゃなかったのか…」

悟空「いいなぁ〜 オラも早くあの爺さんと戦いてぇぞ!」

そんな感じだった。

その後ナムがランファンを下し、悟空も勝ち上がった。悟空の尻尾が再生してしまったのが気がかりだ。

準決勝は、クリリンもあの爺さんに負けてしまった。一方で悟空も決勝に上がった。

クリリン「悟空!俺達の仇を討ってくれよな!」

悟空「ああ!任せろ!!」

決勝戦は終始ジャッキーチュンが優勢だった。

ところが満月を見た悟空が大猿となってしまった。

ジャッキーチュンは、体力のほとんど使った、かめはめ波で月を破壊した。

この為、勝負は一気に五分のものとなった。

ジャッキーチュンは、オレやクリリンとの戦いで体力を消耗していたため、わずかな差で負けた。

優勝は悟空だった。

賞金は祝勝会で使い果たしてしまったようだ。

悟空「いやー!何故か、途中であのじいちゃんの動きが悪くなってさ!オラ実力では負けてたと思う」

悟空は驕ると言うことを知らないようだ。俺だったらもう修行を怠けただろう。

ブルマ「何故か……ってあんた全然憶えてないの!?」

悟空「なにをだ?」

ブルマ「……まぁ、いいわ!はい、これ!」

ブルマはそう言ってドラゴンボールレーダーを悟空に渡した。

悟空「なんだ?ああ!!じっちゃんを探さねぇといけなかったな!」

ブルマ「なに言ってるのよ!その前に私のステキな彼氏でしょ?集めてきて!」

悟空「えー……オラは亀仙人のじっちゃんの所で修行しねぇと……」

亀仙人「悟空。行ってくるがよい。おぬしにはもう教えることはない。存分に見聞を広げてくるがよい」

悟空「そうかぁ?そんじゃ、オラ行ってくる」

ヤムチャ「待ってください!!俺も悟空と一緒に行かせてください!」

亀仙人「なに!?」

ヤムチャ「このままじゃ、悟空との差が開く一方だと思うのです!お願いします」

亀仙人「……師匠を前によう言うのう。まぁ、それも一つの考えじゃろう。行ってくるがよい」

ヤムチャ「ありがとうございます!!」

悟空「オラも別にいいけど、ヤムチャは筋斗雲に乗れねぇし、どうするんだ?」

プーアル「あ!僕が何とかするんで大丈夫です!」

ヤムチャ「プーアル……悪いな」

悟空「それなら問題ないな!行こうぜ!!」

こうして俺たちは新たな冒険に出た。

一つ目のドラゴンボールは簡単に見つかったが、どうやらレッドリボン軍も探しているようだ。

このままだとレッドリボン軍と競い合いになるだろう。腕が鳴るぜ!

また、この時に筋斗雲を破壊されてしまった。

悟空「筋斗雲がなくなっちまったし、どうしよう?」

プーアル「悟空さんも僕が変身する空飛ぶじゅうたんに乗ったらいいんですよ」

悟空「ウーロンの変身した乗り物は全然ダメだったけど、おめえのは大丈夫なんか?」

プーアル「はい!たぶん大丈夫だと思います。さっきも、筋斗雲とは別に飛んでたから爆発に巻き込まれませんでしたし」

悟空「へぇ〜!すげぇな!」

ヤムチャ「プーアルも武天老師様の所で修行したからな」

そんな感じで無事に旅を継続できることとなった。

ところが二つ目のドラゴンボールは遥か北にあり、
防寒着や飛行機----流石にプーアルでは気候的に厳しい----等を調達することとなった。

その間に手短な場所にあるドラゴンボールを取りに行った。

ここにもレッドリボン軍がきていた。

一組の親子が襲撃を受けていた。

この父親は強く、なんなくレッドリボン軍を撃退していた。

その親子は、ボラとウパと自己紹介した。

レッドリボン軍は親子の持つドラゴンボールを目当てにきていたようだ。

ボラによれば、ここは聖地カリンというらしい。

もしかしたら、ここは伝説の武術の神カリン様がいる場所なのかもしれない。

俺は思った。ここでカリン様の修行を受ければ強くなれるんじゃないだろうか?

ヤムチャ「悟空……俺はここで修行をしていきたいんだが………」

悟空「そうかぁ〜 でもヤムチャが抜けるとプーアルも居なくなるんだろ?筋斗雲も殺されちったし、どうすっかなぁ〜」

ヤムチャ「ああ、それはプーアルにブルマの所にまで……」
ボラ「筋斗雲が殺された?」

悟空「なんだ?おっちゃん筋斗雲を知ってるのか?」

ボラ「ああ……ここはカリン様は巨大な筋斗雲をお持ちとの噂だ。簡単に殺されるとは思えん。呼んでみるといいだろう」

悟空「筋斗雲や〜〜い!!」

筋斗雲が飛んできた。

悟空「お!ホントだ!!おっちゃんサンキュー」

悟空はそういうと、筋斗雲に飛び乗った。

悟空「それじゃ、ブルマの所に行ってくるな!ヤムチャ、またなー!!」

悟空はこちらを一顧だにせずに飛び去って行った。

ボラ「この球はお前たちが探していたものじゃないのか?」

ヤムチャ「あ……あいつ忘れて行っちゃいましたね」

ボラ「ふむ……また来るまで預かっておこう」

ヤムチャ「……すみません」

ボラ「……お前は塔に挑戦するのか?途中で落ちたら死ぬぞ?」

ヤムチャ「はい!ここで落ちて死ぬくらいなら、そこまでの男だったってことですよ!」

ボラ「そうか、途中まで投げてやろう。頑張るがよい」

こうして俺はカリン塔に挑戦する事となった。

カリン塔は俺が思っていたのより遥かにしんどかった。

だが、一緒に居てくれたプーアルがことあるごとに励ましてくれたから、心は折れなかった。

プーアルは励ましだけじゃない。度々下の方に降りて行き、食べ物や飲み物を調達してきてくれた。

恥ずかしながら、それに伴う排泄の世話もだ。

また、握力が持たなくなり三回ほど手を離してしまったが、それを全部受け止めてくれた。

お蔭で落ちずに済んだ。

一度、寝てしまった。その時は、プーアルが変身した空飛ぶ絨毯の上で目が覚めた。

塔を半分過ぎた頃には、プーアルは度々上へと飛んで行き、残りの距離を教えてくれた。

上には人が住んでいるようで、変な豆を貰ってきてくれた。不思議と満腹になった。やはりカリン様はいる。

ある時には、「カリン様が大事に持って回ってた水です!」と言って壺に入った水を飲ませてくれた。

そうこうして、なんとかカリン塔の頂上に到達した。

俺が塔を登り切り、呼吸も整わないうちに、悟空も登ってきた。

ヤムチャ「ハァ…ハァ…よう…」

悟空「お!ヤムチャじゃねぇか!」

ヤムチャ「なんだ?もうドラゴンボール集めは終わったのか?」

悟空「それどころじゃねぇんだ!」

悟空が言うには、桃白白っていうもの凄く強い奴に襲われ、九死に一生を得たものの、
ボラは殺され、ドラゴンボールも一個を除いて奪われてしまったらしい。

悟空「で、ここのなんとかって奴に修行を付けて貰おうと思ってきたんだ」

この塔の主はカリンという名の仙猫だった。

だからプーアルと通じるものがあって、不思議な豆や水を融通してくれたのだろう。

事情が事情だけに、悟空の修行を優先してもらった。

っていうより、全身が疲労しており、二、三日は休まないと碌に動けそうもない。

修行は、カリン様の持つ壺を奪うものだった。

気が付いたら寝ており、その時には、悟空は修行を終えて塔から去っていた。

カリン「随分と疲れ切っていた様じゃな。じゃが、修行はこれからじゃよ」

修行の途中で空が暗くなった。ドラゴンボールを使ったんだろう。

おそらくボラが生き返ったはずだ。

ブルマの願いはまた一年先送りだ。ご愁傷様。

カリン「これ!何をボーッとしておる!」

杖で叩かれた。

カリン様から水を奪えたのはそれから二年近く経った日だった。

これが悟空との才能の違いかと愕然となったが、カリン様によれば、

「二年かからんとは大したものじゃ!おぬしの師匠ですら三年かかったのじゃからな」

とのことらしい。

その間にもう一度空が暗くなった。またドラゴンボールだろう。

今度こそブルマにステキな彼氏はできたのだろうか?

また、プーアルは『散歩』と言って、カリン塔よりも上の方に度々、時として泊りがけで出かけていた。

飛べるのが羨ましいと思った瞬間だった。

カリン様の修行を終えた俺は、とりあえず、以前に聞いていたブルマの家に向かった。

理由は二つ。

一つ目は、ドラゴンボールを使ったのがブルマかどうかという確認だ。

二つ目は、悟空がじいちゃん----四星球----を見つける為にドラゴンボールレーダーを借りにくると予想してだ。

プーアルが変身した空飛ぶ絨毯にのってブルマの家に到着した。

とても広い家だった。

プーアル「凄い家ですね……もしかしてとてつもないお嬢様だったのでは?」

ヤムチャ「う…うむ、だがうろたえてはいかんぞ!田舎者と思われて足元を見られる!」

プーアル「は、はい!ヤムチャ様!」

インターホンを押したらメイドが出てきた。驚いたし、あがって……どもってしまった。

逆玉を逃したなどと後悔はしてないぞ!うん!きっと……くそっ!

メイドに案内されて、久しぶりにブルマに会った。付近に二人いる。一人はウーロンだ。

ウーロンもブルマの世話になっていたようだ。

もう一人は見慣れぬ小男だ。

この男をよくよく観察する。

まず、背は低い。タイツの様な服の上に、ゴムでできた様な感じの鎧っぽい何かを着ている。
その鎧は肩パットの部分が長く動かしにくそうだ。
顔については、眼光は鋭く、眉は太い。全体的に獰猛…というより凶暴そうだ。
毛はそれなりに長く逆立っている。おでこは広く、もはやM字ハゲの部類だろう。
体つきは、もはや肉だるまと言ってよく、俺から見ても鍛えぬいている感じだ。

「てめえ!何をジロジロ見てやがる!!」

おまけに、口振りは乱暴で、性格も短気なようだ。

ブルマ「ちょっと!ベジータ止めなさいよ!」

この小男はベジータというらしい。

ブルマの説明によれば、『ステキな彼氏』をドラゴンボールに頼んだらこの男がきたらしい。

ブルマ「こいつのどこがステキなんだか……」

ベジータ「ふん!下品な女に言われたくないぜ」

ブルマ「チビだし、乱暴者だし、ハゲだし、働かないし、無駄に大飯喰らいだしの五光のあんたに言われたくないわよ!」

ベジータ「くっ……」

結構仲良くやっているようだ。意外とお似合いかもしれない。

ブルマに悟空の行き先を聞いたところ、知らないとのことだった。

悟空がレッドリボン軍を壊滅させた後に、武天老師様の言いつけで筋斗雲をも使わない旅に出たという。

レッドリボン軍を壊滅させるとは、流石は悟空といった感じだった。

四星球に関しては、二回目の願いを叶えた後に、武天老師様がそれを確保したらしい。

まだドラゴンボールに変化していない、丸い石の球を見せてもらった。悟空に会ったら渡すという話だ。

さらに、天下一武道会が五年に一回から、三年に一回に変わったために近々悟空とも会えるという話を聞いた。

ブルマの勧めもあり、それまでの間は、ブルマの家に住まわせてもらうことになった。

ブルマの家での居候期間で驚いたのは、このベジータという男だ。

一日中トレーニングをしている。

俺も人生の大部分を武道に捧げていたつもりだったが、その比ではない。これは大きな刺激となった。

さらに、この男がブルマの父----ブリーフ博士----に作ってもらった重力装置にも驚いた。

なんでも、『この星の重力が軽すぎるせいで碌なトレーニングができないから作らせた』と言う話だ。

その発想すら、俺には無かった。カリン塔の薄い空気のみで満足していた自分が恥ずかしい。

ベジータが使っているこの重力装置の重力には俺は耐えきれなかった。

一度試してみたものの、歩くことも出来ず、そのまま潰れて死ぬところだった。

この時は、同行したプーアルが部屋中央の電源を落としてくれたおかげで助かった。

ベジータはカリン様の修行を終えた俺よりも遥かに強靭な膂力を持っているようだ。

慢心していた俺の鼻っ柱を折ってくれた。

ブリーフ博士に頼んで俺用の重力室も作ってもらった。

ベジータの膂力に追いつくために俺にとってはギリギリの重力をかけ続けた。

心が折れそうになった時には傍らにいるプーアルが、

「あと少し!ガンバです!」

と、励ましてくれた。

限界を見誤り、重力に押しつぶされそうになった時には、常にそばにいたプーアルが助けてくれた。

そんな感じで、天下一武道会までには10倍の重力でも普通に稽古が出来るように鍛え上げた。

……ベジータの利用してる重力に関しては気にしないことにした。

天下一武闘会が開催された。

ベジータは参加しないらしい。耳に装着した装置をいじりながら言った。

「レべルが低すぎて話にならない。もっとも……」と嘯いていた。

プーアルを一瞥した気がするが気のせいだろう。

悟空の到着が遅れた。曰く、『ヤッホイ』から泳いできたらしい。地球の裏側だぞ!?

流石悟空と感心している間に、武天老師様が登録を済ませた。ブルマは悟空に四星球を渡していた。

悟空が来るまでに、亀仙流のライバルである鶴仙流の二人と鶴仙人と出会った。

鶴仙流の二人が天下一武道会に参加するらしい。『餃子』って方は兎に角、『天津飯』って言う方は凄まじい達人だ。

底が知れないベジータは別格として、俺が最後に会った悟空よりも圧倒的に強いだろう。

とりあえず、俺達は予選会場に向かった。

「ヤムチャ様ーー!!頑張ってくださいね!!!」

プーアルは俺の姿が見えなくなるまで声をかけてくれた。

ウーロン「なぁ、プーアル?お前がしてる、そのリストバンドとか、変な靴みたいなのとか、服はなんなんだ?」

プーアル「え!?これは神様……じゃなかった、ヤムチャ様が頑張ってるから、僕も心がけだけは負けない様に普段からしてるんです」

予選会場には、あのジャッキーチュンもきていた。

幸い俺達はかち合うことなく全員予選を突破できた。

幸運は重なるもので、本選でも俺たちは一回戦でぶつかる事はなかった。

抽選結果は、次の通りだった。

ヤムチャ VS 天津飯
ジャッキーチュン VS 男狼
クリリン VS 餃子
悟空 VS パンプット

俺はいきなり鶴仙流の達人と戦うことになった。

思っていた以上の達人だったが、終始余裕を持って戦うことが出来た。

観客席では、ベジータとブルマが揉めていた。

「時間の無駄だな。帰ってトレーニングをしてくる」

「ちょっと!友達の応援くらいしなさいよ!!」

「友達になったつもりはない」

実際にベジータは飛んで帰ってしまった。

鶴仙流の舞空術をベジータが使えたのには驚いた。

そんな感じで、観客席の様子を見るくらい余裕のある戦いで終始優勢、圧倒と言ってもよい試合運びが出来ていた。

ところが、急に腹痛に襲われた。

もはや戦うどころではなく、一方的に叩きのめされてしまった。

こうして、俺の今回の天下一は幕は下りた。

腹痛に襲われなければ勝てていた自信はあったが、体調管理も実力のうちだ。

要するに、俺の実力が足りなかったということだ。

ジャッキーチュン・クリリン・悟空は順当に勝ち上がった。

クリリンとの試合中に明らかになったが、以前悟空と戦ったという桃白白は鶴仙人の弟だったようだ。

天津飯は桃白白を倒した悟空に対して殺意のこもった視線を送っていた。

ジャッキーチュンと天津飯の戦いは、暫く戦ったのち、ジャッキーチュンが降参した。

悠々と引き揚げるジャッキーチュンと迷いの表情を浮かべる天津飯が対照的だった。

クリリン対悟空は、悟空の圧倒的勝利に終わった。尻尾が弱点だったがそれも克服していた。

決勝戦は悟空対天津飯だった。

激しい闘いだった。

途中悟空も腹痛に襲われていたようだ。もしかしたら、ここ武道寺の食べ物が腐っていたのかもしれない。

暑い地方だからそんなこともあるだろう。武道家にとっての敵は対戦相手じゃないという一例だと思う。

腹痛を克服した悟空は天津飯に対して優位に試合を運んだ。

もっとも、天津飯も負けておらず、ジャッキーチュン戦に引き続き使用した太陽拳こそ悟空に破られたものの、

四妖拳、排球拳と多彩な技で悟空を翻弄した。

中でも圧巻だったのは、武舞台を吹き飛ばした気功砲だ。俺との戦いは全力ではなかったようだ。

もう一度、今度は万全な体調で全力の天津飯と戦いたいものだ。

試合自体は悟空の勝ちだった。俺との戦いで天津飯が消耗していたようだ。

その影響で悟空はかなりの余裕を最後に残せていた。

武舞台消滅後、かめはめ波でかなりの滞空時間を稼げたのだ。

天下一武道会は悟空の二連覇で終わった。

悟空は『オラは運が良かっただけだ』と言ってたが、運も実力のうちだ。

悟空は本当に凄い奴だ。

大会終了後、俺達は天津飯たちと和解した。

クリリンが疲労困ぱいの悟空を気遣って、悟空の荷物を控室に取りに行った時に事件が起きた。

『ぎゃあああ〜〜〜〜〜!!』

クリリンが向かった先から叫び声が聞こえた。

そこには、地に伏したクリリンと腰を抜かしたアナウンサーがいた。

悟空によれば、クリリンは死んでいるらしい。

アナウンサーが言うには、化け物がクリリンを殺害後、悟空の荷物と天下一武闘会の参加者名簿を奪ったらしい。
 

激情に駆られた悟空はブルマから半ば奪う形でドラゴンボールレーダーを手に入れた。

悟空は、筋斗雲を呼ぶと武天老師様の制止を無視して化け物を追いかけていった。

武天老師様が言うには、相手は魔族。伝説のピッコロ大魔王の一味と言う話だった。

半日ほど待ったが悟空は帰ってこなかった。

武天老師様の発案でドラゴンボールを集めてピッコロ大魔王を倒してもらうことになった。

クリリンは可哀想だが、その次の願い事で生き返らせるという話だ。

新しいドラゴンボールレーダーやクリリンの遺体を冷凍保存する装置の為に一旦ブルマの家に向かった。

天津飯と餃子も同行した。

ブルマの家で見たテレビでは、武道家連続殺人事件を報道していた。

名簿の目的は、魔封波というピッコロ大魔王を封印した技の使い手となるであろう武道家の殺害だった様だ。

新しいドラゴンボールレーダーを入手するとともに、ベジータも合流することになった。

ベジータは、

「いきなりこんな雑魚ばかりの星に飛ばされて退屈だったんだ。本当に強いんだろうな?」

と、少し嬉しそうだった。

拠点をカメハウスに移した。そこを中心にドラゴンボールを順調に集めた。

残りは、ピッコロ大魔王の持つ二個である。

武天老師様の作戦では隙を見て奪い、願い事を叶えるらしいが……

ピッコロ大魔王はドラゴンボールを飲み込んでしまい、計画は破たんした。

決戦を覚悟した俺と天津飯だったが、武天老師様の薬品でダウンしてしまった。

一人で挑むおつもりらしい。……いや、おそらく魔封波を使うつもりなんだろう。

見逃してなるものかと、辛うじて意識を保ち武天老師様を見続ける。

おそらく、天津飯もそうしているだろう。

武天老師様はピッコロ大魔王にドラゴンボールを見せ挑発した。

それに応じてピッコロ大魔王は飛行船から降りてきた。

対峙した二人の間に割って入る人影があった。

「どれほどのものかと期待したがこの程度か……がっかりだぜ」

ベジータだった。ベジータはそのままピッコロに質問した。

「おい!こいつと同じ球はお前の胃袋の中か?」

ピッコロ大魔王は鷹揚と答える。

「ほぅ?見えていたか。その通り、コソ泥に……」

ピッコロを遮りベジータが冷酷な笑みを浮かべながら言った。

「ふん。それだけ解れば十分だ」

発言が終わる時には、ベジータの手は既にピッコロ大魔王の腹部に刺さっていた。

それから数秒、ベジータはピッコロ大魔王の体内から二つのドラゴンボールを取り出した。

ベジータは「こんな球で何ができるんだ?」と言って、武天老師様に投げ渡した。

直後、ピッコロ大魔王が口から何かを遥か彼方に吐き出した。そして何かを呟き爆発した。

「汚ねぇ花火だ」

爆風に巻き込まれたベジータは平然としたものだった。

「くだらん。がっかりだぜ!ブルマには先に帰ってトレーニングをしてると伝えておけ!」

ベジータは、そう言うと飛び去って行った。

ともあれ、ピッコロは居なくなったので、神龍には『ピッコロ一味に殺された者を生き返らせて欲しい』と願った。

これで、悟空もクリリンもその他の犠牲者も生き返ったはずだ。

クリリンも生き返り、ベジータを除く一同がカメハウスで昼食をとってるとプーアルが入ってきた。

プーアルは途中で「仙豆をわけてもらってきます」と言ってカリン塔に行ってたのだ。

「ヤムチャ様〜ただいま帰りました!カリン塔に悟空さんが運ばれてきてましたよ!!」

「何じゃと!?悟空は生きておったのか!」

そう驚くのは武天老師様だった。俺も少し驚いたが、心のどこかで死んでない予感がしてたので、それほどではなかった。

「それだけじゃないんですよ!悟空さんは神様の所で修行するそうなんですよ!!」

プーアルが言うには、神様が超神水とやらで大パワーアップを遂げた悟空に目を付けたらしい。
なんで、そんな事をするかと言うと、ピッコロ大魔王は滅んではいないからだという話だ。
来るべきピッコロ大魔王との決戦の為に悟空を鍛えようと使者をカリン塔に送ってきたらしい。

ヤムチャ「悟空は神様の所で修行か……ベジータも凄いけど、悟空にもドンドン差を付けられていくな」

天津飯「戦った感じだと、ヤムチャも悟空にそこまで劣っていないぞ」

ヤムチャ「万年1回戦敗退と二連覇だぜ?しかも、大パワーアップの上に神様の稽古だぜ」

クリリン「僕たちも負けないように修行しましょう!」

天津飯「ああ……今度こそ勝たないとな!!」

ヤムチャ「……でも神様かぁ〜」

プーアル「ヤムチャ様も神様の所で修行したいんですか?」

ヤムチャ「ああ!!そりゃ神様って言うくらいだからな!」

翌日、目を覚ましたら神殿にいた。プーアルがベッドに変化していて、寝ている間に運んだらしい。

悟空「ヤムチャもきたんか!?」

ヤムチャ「きたというか……目が覚めたらいたというか………」

ポポ「勝手にくる。ダメ」

ヤムチャ「ですよね……」

ポポ「でもお前も強そう。神様に聞いてくる」

結論から言うとOKがでた。

空気は薄いし、気配を探って戦う等色々参考になった。

プーアルは初めは不満そうだったが、何日かしたらホイポイカプセルを持ってきた。

「ヤムチャ様〜!ブルマさんに頼んで重力室をホイポイカプセルにしてもらいました!」

移動式だから性能は落ちるらしい。

神様----というより、ポポが訓練の担当者----の流儀に従いたかったのだが、
プーアルやブルマの好意を無碍にする訳にも行かないので重力室も使って修行することにした。

神様といえば、ピッコロ大魔王にそっくりでビックリした。それもそのはず、神様から生まれたらしい。

神様によれば、ピッコロの生まれ変わりが何故か三年後の天下一武道会に参加するつもりだという。

「何故かって……突飛すぎるでしょう?」

俺の質問に対して、神様は、

「ピッコロを倒したあのベジータと言う青年を武道家と勘違いしておる。天下一武道会で殺す気なんじゃろう」

悟空が突飛な声をあげて話に参加してきた。

「どっひゃー!あのピッコロ大魔王は、そのベジータって奴に倒されたんか!?オラ、見てみてえぞ!」

悟空は気が付いていなかったようだ。

「天下一武道会の受付で悟空と再開した時に、ブルマの横にいた男だよ」

「あら〜……オラ気が付かなかったぞ。でもよ、そんなに強えー奴なら、神様はそいつを鍛えればいいんじゃねぇか?」

「あやつは少々邪悪でな。流石にここに呼んで修行を受けさせるわけにはいかんのじゃよ」

「ふ〜ん……まぁ、オラは修行を受けれるし、どうでもいいか!」

こうして三年が経った。再び天下一武道会だ。

悟空はこの三年で凄く背が伸びた。

「それだけ背が伸びたら、みんな悟空って解らないんじゃないか?」

「そうか?オラ自分じゃよく解んねぇだよな〜」

そんな会話をしながら、悟空は筋斗雲。俺はプーアルが変化した空飛ぶ絨毯で会場に向かった。

会場である武道寺の受付には武天老師様やランチさんやブルマやウーロン、意外なことにベジータもいた。

クリリンや天津飯、餃子もいたが、固まっていた。悟空に気が付いて、驚いてるのだろう。

クリリンはこちらに気が付きひっくり返ったような声を出して、こちらにやってきた。

「ヤ、ヤムチャさん!!」

「よう!クリリン、久しぶりだな。横にいるのが誰か解るか?」

「いや!それどころじゃないんです!!こっちにきてください!」

クリリンに手を引かれて、武天老師様の居る一団へと連れてこられた。

「あ、あれ……」

俺が武天老師様へ挨拶しようとするのを無視して、クリリンが何かを指さした。

そこにはブルマがいた。

赤ん坊を抱いていた。

ベビーシッターのバイトでも始めたのだろうか?金持ちのやる事はよくわからない。

赤ん坊はブルマとベジータとの間の子だった。トランクスというらしい。

まぁ、本人達は喧嘩してる感じだったがお似合いだったしな。

流石は神龍だ。見事なステキな彼氏を見つけてきたものだ。

悟空の身長などどこ吹く風で予選会場に向かっていった。

ピッコロらしき奴が予選会場をキョロキョロしてる。

今回もベジータは不参加だ。残念だったな。どんなに探そうともここには居ない。

予選はうまいことばらけ、俺達が当たる事はなかった。

ただ、餃子は残念ながら桃白白に敗北してしまった。

予選は全部終了した。

抽選の結果、次のような組み合わせになった。

悟空 VS 匿名希望
天津飯 VS 桃白白
ヤムチャ VS シェン
クリリン VS マジュニア

ピッコロはマジュニアと名乗っているようだ。

まだキョロキョロしている。ベジータが居なくて挙動不審だ。

アナウンサーにも、「どうかしましたか?」と聞かれていた。

どもりながら、「い、いや!別に、な、何でもないぞ?」と返事していた。

大魔王の意外な側面を見た気がした。

一回戦の悟空の相手は匿名希望のチチさんだった。

勿論悟空の勝ちだった。

チチは教科書に載るほどの悪党、牛魔王の娘だ。

昔に結婚の約束をしていたようで、悟空が勝った後に結婚していた。

幾ら悟空でもそう軽々と結婚するとは思えなかった。

ブルマ達の影響があったと個人的には思っている。

天津飯は桃白白を一蹴した。餃子を傷つけたことが許せなかったようだ。

俺の対戦相手はシェンだ。クリリンは侮っていたが、この人は只者ではないと思った。

もし隙を見せれば、足元がお留守などと言って足払いをくらいそうだが、勿論俺にそんな隙は無い。

数回にわたる牽制打の後に俺は気が付いた。

これは神様だ。思わず取っ組み合いの振りをして小声で聞いてしまった。

「あの〜……なんで参加してるんですか?」

「もうバレてしまったか……」

「そりゃ…まぁ」

「修行はポポに任せておったから、おぬしがどこまでの実力かわからんかったが、ここまでとは思わんかったぞ」

「あ、ありがとうございます」

実は後半はプーアルに誘われるままに、一緒に重力室で遊んでたなんてことは言えなかった。

「バレたついでに一つ頼まれてくれんか?」

「あの……なにをでしょう?」

「おぬしが思ったよりも強くて、かなり消耗してしまいそうなんじゃ。そこで降参してくれんか?」

「なっ!?」

「次の相手のピッコロの相手はわしがしないといけないと思っておる。おぬしには本当に申し訳ないのじゃが……」

「…………解りました……神様の頼みですからね!」

顔で笑って心で泣いてる俺の心情を知ってか知らずかアナウンサーが茶々を入れてくる。

「取っ組みあったまま、二人が耳元で囁き合って動かなくなってしまいました。愛をささやいているのでしょうか!」

俺は組合を解き、アナウンサーに向かて「まいった!俺の負けだ」といった。

俺の一回戦敗退が決まった。落ち着いて周りを見回す。

観客席の一部が非常に騒がしい。そちらに目をやる。

ピッコロが観客席のベジータを発見して揉めていた。

「貴様!!なんで出てないんだ!」

「知るか。こんなお祭りに興味はない。ところでお前は誰だ?」

「ふざけるな!!殺した相手すら覚えていないのか!!!」

「当り前だろう?何を言ってるんだ?」

「くっ……貴様!!そのガキは貴様のガキか?」

ピッコロがブルマが抱いている赤ん坊を指さす。

「ああ。俺様に似て恰好がいいだろう?」

「貴様もそのガキも観客も俺様の爆力魔波でふっとばし……あべし!!」

ピッコロが尻餅をついていた。ベジータがピッコロの顔面を殴った様だ。

「うるさい。ようやく大人しく寝たんだ。今度はお前を寝んねさせてやろうか?」

アナウンサーが止めに入った。

「お客さん!!選手に暴力はやめてください!!」

「……腕自慢が集まる大会なんだろう?観客のパンチの一発や二発は景気づけみたいなもんだろ?」

アナウンサーは言葉に詰まった。

「い……いや、まぁそうなんですけど………」

ベジータがピッコロに向き直って話しかけた。

「スカウターによればお前の戦闘力は300くらいだ」

「……戦闘力?」

「ちなみに俺の戦闘力はこの星に飛ばされる前で1万4000だ。今はもっと高いだろうな」

「ば……ばかな!?」

「ブルマがこの大会を楽しみにしてたんだ。大会の邪魔はしない。優勝したら遊んでやろう。優しいだろう?」

ピッコロは「くそっ!」っと悪態をつきながらノロノロと立ち上がった。

アナウンサーがピッコロに問いかけた。

「あのー次はマジュニアさんの試合ですが、出れますか?なんなら試合順をずらしますが……」

ピッコロがアナウンサーを怒鳴りつけた。

「うるさい!!俺様を馬鹿にするな!!この程度のダメージなどなんともないわ!さっさと試合をするぞ」

ダメージはあったようだ。クリリンは思わずチャンスを掴んだな。

鼻血を拭きながらクリリンと対峙したピッコロだったが流石大魔王。

クリリンに圧勝した。逆にクリリンはチャンスを活かせなかったようだ。

準決勝の面子が決まった。

悟空 VS 天津飯

シェン VS マジュニア

俺はと言うと、折角、神様の所に押しかけて修行をしたのに、神様の所為で一回戦負けだった。

悟空対天津飯は悟空の完全勝利だった。

悟空は全然本気ではなかったが、神様から貰った重い胴着を脱いだ。

あれを脱がさせた天津飯を褒めるべきだろう。

シェン対マジュニアは、公式にはマジュニアの失踪でシェンの勝ちになった。

事実はというと、神様の魔封波でピッコロが小瓶に封印された。

神様を見かけない時は、もしかしたら武天老師様のところに行って魔封波を習ってたのかもしれない。

見れば単純な技だった。

ピッコロも不意打ちであったろう初回だけでなく、もう一度きちんと見ておけば、対策ができたかもしれない。

ただ、勝負は非常だ。たらればは存在しない。ピッコロは封印された。それが事実だ。

決勝戦は悟空があっさりと勝利して終わった。

悟空は、

「神様が全然本気を出してくれねぇんだもんなぁ〜」

と、不満を隠さずに怒っていた。

神様は、

「借り物の体じゃ。傷をつけるわけにもいかんじゃろうて」

と応じていた。

意外な所では、こんな感じでベジータが感心していた。

「お前らは戦闘力を自在に動かすことができるんだな」

なにはともあれ、天下一武道会は悟空の三連覇で幕を閉じた。

それから五年ほどの月日が流れた。

悟空はチチさんとともに田舎に引っこみ。

俺はプーアルと共にブルマの好意に甘えて、ブルマの家の厄介になっている。

神様の所でも良かったのだが、プーアルが

「ヤムチャ様〜ブルマさんの家の方がいいですよ〜」

と頑なに主張したので、ブルマの家にした。

実際神様の所での修行も後半は重力室だったわけだし、そうなると本格的な設備のあるブルマの家の方が良い。

そして今日、五年ぶりにカメハウスに一同が集まることになった。

俺はプーアルを連れて、ブルマ一家と共にカメハウスに向かった。

カメハウスに遅れてやってきた悟空は子供----悟飯----を連れてきた。

俺も結婚して子供が欲しくなった。

ベジータは悟飯の尻尾に興味を抱いて、

「満月の日に大猿になったりしないのか?」

と、冗談交じりに聞いていた。

悟空が実際大猿になるから困ったものだが、普通はやっぱり冗談の世界だよな。

同じく尻尾を持ってるベジータが冗談にしているくらいだし。

ちなみに月は神様が再生させた。

代わりに悟空の尻尾は二度と再生しないようにしたらしい。

その少し前のことである。郊外に空から二つの球体が落ちてきた。

球体から二人の男性が降りた。

ナッパ「ふぅ……ここにお前の弟が居るんだろうな?」

ラディッツ「ああ、少し鍛えてやれば、それなりの戦力にはなるだろう」

ナッパ「全く……ベジータが急に居なくなるから、ついにはお前の弟まで探すことになるとはな」

ラディッツ「そう言うなって!ベジータのパワーボールも無しにここまでよくやってこれたと思うぜ」

ナッパ「そりゃそうだ!……さてと…カカロットを探すかな?」

ナッパはスカウターを操作する。

ナッパ「なんだと!!戦闘力18000!?」

ラディッツ「なに!?スカウターの故障じゃないのか?」

ナッパ「お前も見てみるといい!」

ラディッツ「……バ…バカな!?」

ナッパ「一応満月の日にきて良かったぜ!」

ラディッツ「あ…ああ。そうだな、俺達には大猿化があるからな」

ナッパ「故障の可能性もある。その18000の戦闘力の持ち主を見に行くぞ」

ラディッツ「危なくないか?」

ナッパ「どのみち、満月になったら襲撃をかけるんだ、近くに潜む必要があるだろう?」

ラディッツ「ま、まぁ……そうか」

ナッパとラディッツは戦闘力18000の持ち主の元に向かった。

ナッパ「島か……隠れにくいな」

ナッパとラディッツの眼下にあるのはカメハウスだった。

ラディッツ「お!おい!!あれベジータじゃないか?」

ナッパ「本当だ!!なんでこんな星に居るんだ?」

ラディッツ「わからん……18000もベジータだな」

ナッパ「それなら納得だ。宇宙ポッドがなくて帰れなくて困ってたんじゃないのか?」

ナッパはそういうと降下していった。

ラディッツ「あの単細胞め……脱走してここに逃げてたとしたらどうするんだよ」

ラディッツは愚痴りながら追随した。

俺達が悟空と話していると、空からハゲ頭の大男が降りてきた。

続いて、ベジータの髪型をダイナミックにした感じの長髪の男も降りてきた。

二人に共通してるのは、ベジータ同様のゴムっぽい鎧を身にまとっていることだ。

「よう!ベジータひさしぶりだなぁ」

ハゲの方がベジータにフレンドリーに挨拶をした。

「ナ、ナッパか!?」

ベジータの方はとても驚きながら反応した。知り合いの様だ。ハゲはナッパというらしい。

「急に居なくなるから心配したぜぇ」

「あ、ああ。俺も急に飛ばされてな。帰る手段もなく途方に暮れていたんだ。お前らよくここがわかったな」

「俺達はカカロット迎えにきたんだが、ベジータが居るとは思わなかったぜ」

「カカロット!?ラディッツの弟のか?」

「ああ、ベジータが抜けた後も二人で頑張ってきたんだが、流石に苦しかったからな」

「この星に居るのか?」

「ああ!原住民も丸々生き残ってやがるし、あいつはどこで何をしてやがるんだ?」

ここで、長髪の奴が口を挟んだ。

「……そこで尻尾の生えたガキを抱えてるのがカカロットじゃないのか?親父の生き写しだぞ?」

ベジータは間抜けな顔をして、素っ頓狂な声をあげた。

「ああ!こいつがカカロットだったのか!?」

ナッパと呼ばれていたハゲは満足そうな顔をして言った。

「ベジータもカカロットも見つかったし、宇宙ポッドを呼ぼうぜ。その間に……」

ベジータはナッパを遮った。

「俺は帰らん。結婚もしたし、子供も出来たからな」

と言って、ブルマとトランクスを紹介した。

ナッパは驚いていた。

「へぇー!じゃあ、こいつが王孫ってことか!」

それを聞いてブルマがベジータに話しかけた。

「あんた本当に王子だったの!?そりゃ働かないわね」

ナッパは今度は困ったような顔をした。

「でもよぉ、俺達は戦力不足でラディッツの弟を迎えにきたんだぜ?帰ってきて欲しいんだがなぁ」

「俺は帰らんし、カカロットを連れて行くことも認めん」

ベジータはきっぱりと断言した。

ナッパの顔が急に険しくなった。

「ふざけんなよ!!俺達に任務を放棄しろって言ってるようなもんだぜ!」

ベジータは小馬鹿にしたような顔をしてナッパに告げる。

「ふん!それなら、お前らもこの星に留まれ」

ナッパは頭に青筋を浮かべて呟いた。

「ベジータぁ……。てめぇ…」

「おい、ラディッツ!俺の戦闘力は18000ってところか?」

ベジータはそれを意に介さずに長髪の男に聞いた。長髪の男はラディッツと言うらしい。

「あ、ああ、その通りだ」

長髪の男----ラディッツ----は急に話を振られた為に、慌てながら答えた。

「脅しのつもりか?俺達もてめえが居なくなってから、修羅場をくぐったんだ。そう簡単に殺されねぇぞ」

ナッパも負けていない。

「ああ…なんども死にかけるほどの修羅場だったんだろうな。お前たちの戦闘力を感じればわかる」

ベジータは冷静に言い放った。

「スカウターも付けてねぇのに解るはずねぇだろうが!!!」

ナッパの興奮は限界に達しているようだ。

「…俺はこの星にきて、戦闘力の探り方やコントロールの方法を身につけた。」

「なに!?」

ナッパに平常心が戻った感じだ。

「俺が言っているのは、それを身につけるまで滞在しろってことだ。」

ベジータは続ける。

「その後にこの星の連中を殺すって言うなら、俺が相手になるが……その頃には貴様らもそんな気は起こさないだろう」

「それまで戦いはお預けってことか?」

ナッパは苦虫を噛み潰した様な顔でベジータに問いかける。

「そうだ」

「ふざけんな!!俺は今すぐこの連中をぶっ殺すぞ!ずっと眠ってたんだからな!!!」

「俺の言うことが聞けんのか!!!!」

「……くっ…」

ベジータの一喝でナッパは治まった。

その後、この二人はカプセルコーポレーションで暮らすこととなった。

好戦的なエイリアンとの友好的な同居という奇妙なことになってから一年程度が過ぎた。

そして……それは訪れた。

とてつもなく大きな気が空から近づいてくる。しかもそれは非常に邪悪な気配を漂わせていた。

珍しくベジータが血相を変えて部屋に飛び込んできた。

「おい!ヤムチャ行くぞ!!」

たぶん、あの気の持ち主の所に向かうと言うことだろう。

「あ、ああ……だけど何なんだこいつは?」

「……フリーザだ」

「知り合いか?」

「この星は滅ぼされるかもしれんな……詳しい話は後だ!」

居合わせたブルマが口を挟んだ。

「滅ぼされる…って何よ!?」

俺はブルマを無視してベジータに聞いた。

「ナッパとラディッツは?」

「あいつらは……たぶんもう行ってるだろう」

俺達は、そのフリーザがやってくるであろう地点まで飛んで行った。

道中聞いた話によると、おそらくフリーザはナッパかラディッツが呼んだという話だ。

ナッパは地球に缶詰めにされて不満が貯まってたらしい。

そして、このフリーザはとてつもなく強いという。

しかも、星の原住民を皆殺しにして別荘にしているらしい。

フリーザの船が降りてくるであろう付近には、悟空や天津飯、餃子にクリリンもきていた。

もう少し先にはナッパとラディッツの気も感じる。ベジータの言う通りだったのだろう。

悟空が危機的状況にも関わらず陽気に声をかけてきた。

「よう!ヤムチャにベジータ!おめえらもきたんか?そりゃ、これだけ邪悪で強い気なら仕方ねぇよな」

俺はこいつらに重要な所だけを教えた。このフリーザは地球人を全滅させるだろうと言うことだけだ。

ベジータとの事を話しても揉めるだけなのは目に見えているからな。

クリリンが素朴な疑問を差し挟んだ。

「とてつもない気だけどさぁ……正直ベジータの方が強いんじゃないのか?」

ベジータが自嘲気味で喋った。

「よく感じてみるんだな。フリーザは力を隠してる。変身なのか戦闘力の解放かわからないが遥かに強くなるぞ」

悟空が若干緊張気味に聞いてきた。

「ベジータよりも強いんだったらさぁ……これどうなるんだ?」

「はっきり言ってやろうか?これでお終いだ。俺達もこの星も」

「どっひゃ〜〜〜!!」

……悟空ここでそのリアクションは違うだろう。。。

だが、俺の意見もベジータと同じだ。もうどうしようもない。

完。

〜〜〜〜フリーザ達の宇宙船の着陸予定地点〜〜〜〜

ラディッツ「良かったのか?」

ナッパ「良かったも悪かったもないだろう?もう連絡しちまったんだし」

ラディッツ「しかしなぁ……」

ナッパ「俺だって、この星の連中がここまで気の良い奴らって知ってればフリーザ様に連絡しなかったぜ?」

ラディッツ「まぁ、連絡したのは一年前だからなぁ」

ナッパ「全部ベジータの奴が悪いんだぜ?フリーザ様の所を無断で脱走した挙句に、間接的にはその妨害もしちまったんだしな」

ラディッツ「ナッパの場合は、後者の原因となった戦いを禁止されたから連絡したんだろ?」

ナッパ「……まぁな。そういうお前だって同じだろ?」

ラディッツ「ああ、俺も腐ってもサイヤ人の端くれだからな。戦いを放棄するなど考えられん」

ナッパ「フリーザ様の船のご到着だ」

ラディッツ「トランクスはどうするんだ?混血とはいえ王孫だぞ」

ナッパ「ベジータはサイヤ人の面汚しだが、俺はトランクスの命だけは助けて貰えるように頼むつもりだぜ」

ラディッツ「聞き入れられるといいな……」

ナッパ「ああ……」

到着した宇宙船からフリーザ一行が下船してきた。

フリーザ「ほっほっほ・・・これはナッパさんにラディッツさん出迎えお疲れ様です」

ラディッツ「はっ!有難きお言葉です」

フリーザ「なかなかいい星ですね。ここにベジータが逃げた訳ですか……ついでに別荘地にしましょう」

ナッパ「フリーザ様!お願いがあります!」

フリーザ「どうしました?」

ナッパ「この星にはベジータの子供がいるんでさぁ。そいつは生かして俺達に預けて欲しいんです」

フリーザ「あなたにとっては王の孫ということですか……前向きに考えておきましょう」

ナッパ「………」

宇宙船が着陸し始めた時、一機の飛行機がこちらにきた。

「おーい」

ブルマだった。プーアルとトランクスを連れてきていた。

「ヤムチャ様〜」

「パパー」

「なっ、なにしにきたんだらおまえら!!」

「あんたたちの様子じゃ、地球のどこに居ても殺されるんでしょ?それなら最後くらい近くで見送らせてよ」

「だ……だからと言ってもなぁ」

ベジータがどこか寂しそうな顔をしてトランクスに話しかけた。

「……お前を抱いてやったことがなかったな。抱かせてくれ」

ベジータはそう言ってトランクスを強引に抱き寄せた。

「やめてよパパ。恥ずかしいよ」

ベジータがとても小さな声で呟いたような気がした。

「なにに代えてもお前たちだけは守るからな」

悟空が空気を読まずに大声を張り上げた。

「おい!宇宙船からゾロゾロ出てきたぜ!早く行こうぜ!!」

まぁ、迅速に動かないといけないから正解と言えば正解なのだが……

俺達はフリーザの方に向かった。何かできるとは思えなかったが、一応な………

フリーザと思わしき奴がこちらを発見した。

「あなた方も私の出迎えですか?……おやおや!誰かと思ったらベジータさんも居るじゃないですか」

邪悪な気に似合わない口振りだ。とてもいくつもの星を皆殺しにしてきたとは思えない。話せばわかるかもしれない。

「自首のつもりですか?わざわざ私が出向いてあげたんです。ジワジワ嬲り殺してあげますよ」

前言を撤回しよう。

ベジータが重い口を開いた。

「……俺を許して欲しいとは言わない。だが……妻と息子だけでも見逃してくれないか?」

フリーザは冷酷に告げた。

「ほっほっほっ……この星は私の別荘にするのです。裏切り者の家族を特別扱いするわけがないでしょう?」

「な!?そりゃ約束が………」

ナッパが口を挟もうとしたが、フリーザが一瞥すると静かになった。

フリーザが少し逡巡した後に口を開いた。

「そうだ!もしあなたの息子さんが私の忠実な部下になるようならあなたの代わりに雇って差し上げましょう」

ベジータは苦しそうにフリーザに言った。

「ブルマ……妻やその親父は非常に優れた科学者だ。お前の部下にしたら役立つだろう」

ベジータは本当に何に代えて----自分だけでなく、他の人も差し置いて----もブルマ達だけは助ける気らしい。

「断ります。優秀な科学者のそれまでの研究結果が得られればそれで十分です」

ベジータが土下座した。

「頼む!!この通りだ!!!」

嘘だろ!?あのベジータが土下座って……なによりも誇りを大事にする男だと思っていた。

それが家族の命を助ける為とはいえ土下座だと!?

フリーザは落胆したような声をだした。

「折角あなたを処刑するために私がきてあげたのに、それでは拍子抜けですね」

そして何かを思いついたかのような顔をした。

「そうだ!こうしましょう!!ベジータさんは戦闘力のコントロールを身につけたそうですよね?」

「あ…ああ……」

「私の見立てでは、新型スカウターも即時に壊れる力を持っていると思っています」

「……」

「そこで、あなたが私を私を楽しませれば、あなたのご家族は見逃しますよ!」

「本当か!!」

ベジータが一縷の望みを得たかの様な顔をした。

「ええ!」

対するフリーザは邪気満点の笑顔で応じていた。

それでもその希望に賭けたベジータはフリーザに猛攻を仕掛けた。

ベジータが勝つかと思ったが、ベジータの当初の見立て通り、フリーザは変身した。

……それも三度変身した。その度に圧倒的に強くなり、俺達は誰一人向かっていくことが出来なかった。

フリーザは尻尾でベジータを吊し上げ、それを殴って嬲っている。

「僕をここまで変身させたのは褒めてあげるけど……やっぱりつまらなかったね。やっぱり君の息子も殺そう」

「く……くそっ……きさま………」

フリーザはベジータが悔しがる様を楽しんだ後にこちらを見て話しかけてきた。

「キミ達も見てないでかかってきていいんだよ?どのみち殺されるんだし」

それでも動けなかった。

「そうだね、ベジータが死んだら部下たちに命じて皆殺しを開始する予定なんだよ」

フリーザは嬉しそうに笑った。恥ずかしい事に俺達は一声も出すことができなかった。……一名を除いて。

「何をしてる!!離せ!!!」

「おやおや……ようやく元気が良いお馬鹿さんがきましたか……っとお子様ですか?」

そこに居たのはトランクスだった。いつの間にかここにきていたようだ。

「パパが本気を出したらお前なんか一撃なんだぞ!!」

「くっくっくっ……ベジータさん、聞きましたか?随分と息子さんに慕われてらっしゃるようですね」

「ト……トランクス………逃げろ…」

「折角なので、ベジータさんの前に息子さんから殺して差し上げますよ」

フリーザはベジータを離し、トランクスに歩み寄る。

「なんで変身しないのさ!!変身すればこんな奴簡単に倒せるだろ!!」

「おお!そういえばサイヤ人は大猿になれましたね。もっともあんな愚鈍な変身は尻尾を切ってお終いですけどね」

トランクスは妙な顔をした。

「大猿?何を言ってるんだ?こういう奴だよ!」

トランクスがそういうと、金髪に変わり、毛が逆立ち、全身から光を発するようになった。

「な……バカな!?サイヤ人は大猿にしか変わらないはずだぞ!?」

珍しくフリーザが慌てている。

ベジータが地面に伏したままトランクスに質問した。

「な……なんだそれは!?………いつからそうなれるようになった?」

「え!?何時だろう?プーアルと遊んでたらいつの間にかなれるようになってたんだ」

空気を読んだトランクスが発言する。

「あ…あれっ?もしかして……パパは…なれない?」

「…………」

無言で肯定するベジータを見てトランクスは気合を入れなおした。

「じゃあ、後でパパにも教えてあげるよ!!」

それを聞いたフリーザは、「貴様らはここで死ぬんだ!!『後で』なんかないぞ!!」と激昂してた。

今までと全然違う態度だが、もしかして子供嫌いなんだろうか?それにしても異常な興奮だった。

トランクスとフリーザの戦いは別次元だった。さっきまでのも別次元だったが、本格的に別次元だ。

俺なりに頑張ったつもりだが、ここら辺が人類と宇宙人との差なんだろう。

俺がそう達観してるとプーアルがやってきた。

「ヤムチャ様〜!!仙豆を貰ってきました!」

プーアルが貰ってきた仙豆をベジータに食べさせて回復させた。

トランクスとフリーザは五分の戦いを繰り広げていた。

もっとも、途中でプーアルがトランクスに仙豆を食べさせたので形勢は決まった。

やけになったフリーザが地球を破壊しようとしたが、これはベジータが放ったエネルギー波によって弾道を変えられて失敗した。

敗北が決定したフリーザであったが、未だに諦めていないようだった。

俺もたまには出番が欲しかったから、トランクスを止めてフリーザに声をかけた。

「フリーザが宇宙一だよ」

「……貴様…なにをいう!」

「子供に負けるなんてありえないない。そうだろ?」

「当り前だ!!」

「ああ、フリーザは子供になんかに負けてない」

「なにを言ってる?」

「宇宙一のフリーザ様が子供なんかと戦うはずはないし、そもそも逃げた奴を追うようなチンケな真似もしていない」

「………」

「なんの用事もないから、こんな星にもきてない。違うかい?」

「……解ったよ…」

フリーザは渋々引き上げた。

俺がなにもしなくてもトランクスが勝っただろうけど、フリーザは死ぬまで戦っただろう。

あんな子供の頃から殺しなんかさせるものじゃない。ベジータみたいに捻るか、悟空みたいに何かが欠けて育ってしまう。

フリーザ達の襲来は俺達に様々な影響を残した。

悟空やベジータもスーパーサイヤ人になれるようになったと聞いた。

悟空はトランクスの活躍に感動して、チチさんの反対を押し切り、悟飯を鍛えはじめた。

悟空のことだから、差し詰め、悟飯を鍛えて自分の対戦相手に育てるつもりなんだろう

俺はと言えば、種族の壁を感じていた。悟空達を虎だとすると所詮俺はロンリーウルフ。荒野の一匹狼だったのだ。

実際の実力差は虎とイエネコ以上に離れてる気がするがな。

そんな俺でも自分なりには鍛えているつもりだ。プーアルに引っ張り回されてる感じもするが……

こうして五年の月日が流れた。

人造人間が暴れるということもなく、世の中は平和だ。

今日も今日とて、修行のつもりがプーアルに誘われて、悟飯と遊んでしまった。

トランクスも大きくなり、最近はプーアルとは遊ぶ機会が減ったようだ。

自然とプーアルは遊びにきた悟飯と遊ぶ事が多くなり、俺もプーアルに誘われるまま悟飯と遊んでいる。

保父さんにでもなろうかと悩む今日この頃だ。……保育室が重力室なのはご愛嬌だ。

こんな平和な世の中でも事件と言うものはあるもので、最近の話題は市町村単位での失踪事件だ。

テレビでは緑色の化け物が犯人だと報道していたが、そんな馬鹿なことがあるはずがない。

死体とかを一人処分しているっていうのか?町ごと吹き飛ばせばともかく、そんなのはベジータでもできない。

俺はカルト教団か、第二のレッドリボン軍的な何かが育っているのではないかと思っている。

……そう思ってた時期が僕にもありました。

一息ついて、テレビをつける。映し出されたスタジオはパニックになっていた。

若干興味はあったが、俺は大絶賛と噂の『バイキング』を視るためにチャンネルを変えた。

緊急放送をやっていた。どんな番組なのか楽しみだったのに仕方がない。縁とはこんなものだろう。

この番組によれば、失踪事件の犯人を自称するセルと名乗った化け物がテレビ局を襲撃したらしい。

セルが何しにテレビ局を襲撃したかと言うと、単なるイベント告知だったようだ。

要約すると、

「完全体になったのを記念して、十日後にセルゲーム開催します♪参加者が全員負けたら、人間を皆殺しにしちゃうゾ?」

ということらしい。

はいはい……とスルーするつもりだったが、皆殺しにされるとあっては気が気でない。

プーアルが部屋に駆け込んできた。

「ヤムチャ様〜〜!!大変です!!テレビは見ましたか?」

「あ、ああ。あれって本気なのかな?」

「そうだと思います。悟空さんがセルを見に行ったそうです」

「おいおい……そんな危ない奴を見に行って大丈夫なのか?」

「こんなゲームを開く奴ですし、大丈夫だと思います。なにせゲームのメインでしょうしね」

「ああ……悟空は天下一武道会を三連覇してるしな」

「なに言ってるんですか!悟空さんは六連覇中の王者ですよ!」

「悟空はあの後も出場してたのか?」

「ええ!他の武術大会も制覇してますよ」

「そ……そうか」

「そんなことより、ベジータさんを連れてカメハウスに行ってください。僕は天津飯さんを探してから行きます」

カメハウスに一同が集結した。

一番初めに口を開いたのはベジータだった。

「それで、そのセルって野郎はどんな感じだったんだ?」

「解んねぇ。色んな気が混じってて不思議だけど、とてつもなくすげぇ奴だと思う」

トランクスが覚えたての単語を言う機会を得たかの様に質問した。

「色んな気ですか?」

「ああ……オラやヤムチャ、ベジータやフリーザ、それにトランクス、おめえの気も混じってたぞ」

「げぇ……僕の気があんな化け物からですか…」

心底気持ち悪そうなトランクスを横にベジータが悪態をついた。

「ふん!そんな事が解ってもしかたがるあるまい。見に行った意味が無い奴だ」

「……底が見えねぇけど、全員でかかっても一分以内に皆殺しにあう。それだけは断言できっぞ」

クリリンが疲れ切った表情で呟いた。

「フリーザの後はセルかぁ〜 とことん滅びそうな星だよな。地球って……」

武天老師様は諦めたような声を出した。

「……残り十日でその実力差じゃ仕方がないの」

悟空は相変わらずの明るい声で言った。

「いや!これからオラたちは二年間修行する。それでダメなら仕方がねぇけどさ」

クリリンがビックリしてしている。

「いや、悟空!十日しかないんだって!!」

俺は悟空の発言の意味を知っている。俺も神様の所で修行したんだって所をみせようとした。

「精………」
「一日で一年分の修行が出来る場所があるんだ!神様の家にあんだけどさ」

俺にも喋らせてください。悟空さん。

「な!そんな場所が!?」

とは、天津飯。

そして、一同は神殿に移動した。

悟空がこの場を仕切った。

「この部屋は精神と時の部屋って言うんだ。一日で一年の時間が経過する。」

他にも重力が重かったり、気候が厳しかったり、何もなくて精神的に苛酷だと説明してた。

実は、俺は悟空や神様やポポから聞くだけで、入ったことがなかった。

「オラは悟飯と一緒に入る」

クリリンが質問した。

「みんなで一緒に入ればいいんじゃねぇか?」

「それは無理だ、一度に二人しか入れねぇ」

ベジータが文句を言う。

「それなら、全部オレとトランクスに寄越しやがれ。あんな化け物は簡単に退治してやるぜ」

「それも無理だ。精神と時の部屋はこちらで二日。二年間しか中にいられねぇ」

クリリンが諦めた様な口振りで言った。

「もう俺達地球人が二年鍛えたからと言ってどうなる話じゃないな。俺は辞退させてくれ」

「そうか……天津飯はどうする?」

「俺は……自分が出来る限界に挑戦してみたい。是非、餃子と挑戦させてくれ」

ベジータはその発言をあざ笑うかのように言った。

「まさに時間の無駄だな。精々邪魔にならない様に空いた時間でも利用してくれ」

「くっ……」

天津飯は屈辱に耐えるような顔をしているが、俺はクリリンと同意見だ。俺達が出る幕はない。

そう思っていたら、プーアルが発言した。

「クリリンさんも武天老師様と参加してみた方がいいですよ!自分の才能に見切りをつけるには早いと思います」

「ああ!オラもそう思う。幸い空き日もあるんだ。試してみろよ!」

「そうかぁ?じゃあ……邪魔にならない日にでも……」

「ヤムチャはプーアルと入るんだろ?これで、丁度五組。最終組は尻切れだし、疲労も残っちまうな」

何故かいつの間にか入る事になっていた。

「ああ、最後の方は俺達地球人組にしといてくれ。ヤムチャさんは別格だけどな」

クリリンは俺を高く評価しているようだが、宇宙人組に入れないで欲しい。自分が惨めになる。

ベジータは満足げな笑みを浮かべて、

「当たり前の判断だな」

と評価していた。その判断には、俺に対する評価は入っていないことだろう。

「それじゃあ、入る順番だけど、ベジータは一番がいいんだろう?」

「当り前だ」

悟空はちょっと考えた後に日程を発表した。

1 ベジータ・トランクス組
2 悟空・悟飯組
3 ベジータ・トランクス組
4 ヤムチャ
5 悟空・悟飯組
6 天津飯
7 ヤムチャ
8 クリリン
9 天津飯
10クリリン

「こんなもんでどうだ?」

「餃子の名前がないようだが?」

と、天津飯が不満気に言った。

「ああ、セルとの戦いで戦力に組み込めない名前は省いた。修行のパートナーだな」

ベジータが少し怪訝な顔をした気がした。

だがそれを疑問に思う前に、プーアルが意見を言った。

「ヤムチャ様はもっと後ろでも良いと思います。最近修行してませんし、流石にサイヤ人の邪魔をするのも…」

流石プーアルだ。俺のことを誰よりもわかっている。

「そうなのかぁ?」

悟空はちょっと不満そうだ。

「僕はこんな感じでいいと思います。」

プーアルが新たな日程を提示する。

1 ベジータ・トランクス組
2 悟空・悟飯組
3 ベジータ・トランクス組
4 天津飯
5 悟空・悟飯組
6 天津飯
7 クリリン
8 ヤムチャ
9 ヤムチャ
10クリリン

………流石プーアルだ。天下一武道会で毎回初戦敗退する俺のことを誰よりも正確に評価している。

悟空が「それだとヤムチャの疲れが抜けねぇぞ?」とか言っていたがプーアルがこの日程で押し切った。

俺はまだ日程に余裕があったので、一旦ブルマの家に戻った。

プーアルはブルマやブリーフ博士に色々と頼んでいた。

二日後、ブルマに頼まれて、フリーザ達が着ていた戦闘服のレプリカを届けに行った。

丁度、悟空達が出てきた所だ。

悟飯もスーパーサイヤ人になれたようだ。

「折角戦闘服を持ってきたのに悟空達の修行に間に合わなかったな」

「まぁ、オラは修行の目標が達成できたから問題ないけどな」

悟飯を見る。ちょっと見ないあいだに大きくなった。一年経った証だろう。

悟飯が俺に挨拶をしてきた。

「ヤムチャさんご無沙汰してます。あ!ヤムチャさんにとってはこの間会ったばっかりでしたね」

「随分と大きくなったなぁ」

「そんな!まだまだですよ。これが終わったら、またプーアルと一緒に遊んでくださいね」

良かった。変わらずに良い子なようだ。生意気キャラのトランクスとは大違いだ。

トランクスは、あれはあれで良い子なんだけれども。

悟空は俺達をみて言ってきた。

「オラ達はもう『精神と時の部屋』は使わねぇ。悟飯はそれまで遊んで、体を休めておけ」

「貴様!やる気がるのか!!」

と、半ば怒声を飛ばすのはベジータだ。

「いや、あの部屋はオラ達には厳しい。何も辛いだけが修行じゃねぇ。体も休めたいしな」

飽きれるベジータを尻目に悟空は俺に言ってきた。

「そう言うわけで、オラ達の二回目の番はヤムチャだな。繰り上げて天津飯って訳にもいかねぇだろうし」

プーアルが答える。

「あ!ヤムチャ様はそのままでいいので、最終日のクリリンさんをそこに入れてあげてください」

プーアルはどこまでも冷静に俺を評価してる。

悟飯が遊びにきたので、修行の事を色々聞いた。

悟空と悟飯は普段からスーパーサイヤ人になっておくことで、
スーパーサイヤ人本来の力を100%出せるような修行をしたようだ。

スーパーサイヤ人は、慣れないと凶暴になったりで冷静さを失ったりするという。

サイヤ人にはサイヤ人の悩みがあるんだな。地球人の悩みの方向とは全く違うが……

プーアルも熱心に聞いていた。精神と時の部屋の温度や湿度、重力具合、床の感じ等々である。

プーアルもついてくるつもりのようだから、やっぱり、住環境としての精神と時の部屋が気になるのだろう。

修行や結果が気になる俺とは全く違う。

プーアルは悟飯から一通り聞き取り、それをメモに取るといそいそ部屋を出ていった。

最近忙しそうだ。やっぱり落ち着かないのだろう。

悟飯が帰る際にまた部屋の環境について聞いていた。

俺の順番が来るまで、悟飯が度々遊びにきていたが、その度にプーアルは部屋について質問していた。

時としては、質問し忘れたといって追いかけて聞きに行ったこともあった。

やっぱり不安なんだろう。おいて行く方がいいのだろうか?

ついに俺の番が回ってきた。

俺としてはこれからなんだが、他の連中は明後日の事で頭がいっぱいだったようだ。

「あ、ああ……行ってこい」

そんな感じの見送りだった。

精神と時の部屋は悟空や悟飯の言っていた通りの空間だった。

地平線までなにもない。気候は悪く、重力も地球よりも強い。

「こんな場所で二年も耐えられるのか?」

俺は思わず呟いた。

プーアルは満面の笑顔で答えた。

「ヤムチャ様なら大丈夫ですよ!!」

根拠を聞きたいところだったが、プーアルは背負ってた風呂敷を広げながら、

「ヤムチャ様応援グッズも一杯持ってきてました!」

風呂敷の中には大量のホイポイカプセルが入っていた。

「まずは、修行のメイン!!」

そう言って投げたホイポイカプセルは何時かの移動式の重力室だった。

「この前のよりも大分性能がいいらしいですよ!ここの過酷な環境にも耐えられるようにして貰いました」

悟飯にここの環境の事を熱心に聞いていたのはその為だろう。

「他のも全部ここの環境に対応しているはずです!」

プーアルが持ち込んだカプセルのお蔭で、エアコンのついた部屋のフカフカなベッドで寝れたり、
話とは違う豪華で栄養にも配慮した食事にありつけた。

他にも栽培プラントも持ってきているとかで、そのうちに新鮮な野菜も食べられるという話だ。

肉は、依然滞在したサイヤ人が持ってた培養キットでなんとかなるそうだ。

どんな生き物か気になったが、それは[禁則事項です]となっていて見せられないという。

一度、その生き物が逃げた。俺が確認する前に抱きつかれて自爆した。

俺を見かけると抱きついて自爆する習性があるという話だ。どんな習性だよ!俺がもっと弱かったら死んでたぞ?

俺好みの味に調整したら、この習性までついて、それを直す時間がなかったという話だが納得できん。

兎に角、その生き物の事は気にしないことにした。ちなみにこの培養キット自体の生産プラントも持ってきているらしい。

燃料がどうなっているのか疑問だが、

「数百年は持つと思いますよ」

との話だった。ここには二年しか居られないのに完全に無駄だろう。

プーアルが最後尾にしてくれたお蔭で、快適な精神と時の部屋ライフを過ごすことができた。

俺たちなりの対セル作戦も練ることができた。

そして二年の時が過ぎようとした時に、突如プーアルが切り出した。

「ヤムチャ様!この精神と時の部屋は規定時間を過ぎて滞在すると脱出できなくなるそうです」

流石プーアルだ。よく調べてある。

「でも、おそらくセルはここにこないと思います。ですから、脱出を放棄すればヤムチャ様は安全です」

プーアルは何を言いたいんだ?

「幸いここにはヤムチャ様が天寿を全うするまでに十二分な食料と施設があります」

プーアルは続ける。

「もし、他に碌な生物がいなくて退屈だと言うのなら、持ってきたプラントを弄れば、ここに対応した生き物も作れるます」

「差し詰め新世界の創造主。新世界の神として観察者になれますよ」

「プーアルは俺に仲間を見捨ててここで過ごせと言いたいのか?」

「いえ、ヤムチャ様に一つの選択肢を示しただけです」

「愚問だな!俺に出来ることはないかもしれない。だが、友を見捨てて逃げるなら死んだ方がマシだ。」

まぁ、実際に悟空達がセルに負けたら殺されるわけなんだが……

「流石ヤムチャ様ですね!僕もお供します!」

プーアルは非常に嬉しそうだった。

施設を片付け、部屋を出た。いよいよセルとの決戦だ。

俺達は翌日セルゲームに臨むこととなった。

表に出てから知ったが、国がセルに対して軍隊を差し向けたが返り討ちにあって全滅したらしい。

その為、当日のテレビは全局お通夜ムードだった。一方で、ただ一つの希望として取り上げられてる人物が居た。

そう。『孫悟空』だ。数々の武術大会を余裕で優勝して天下一武道会を連覇中の公式には無敗の絶対のチャンピオンだ。

というより、俺自身も悟空が負けたところは見たことがない。

本人の弁や憶測を含めても、負けたのは桃白白と魔族の時くらいじゃないのか?

何が言いたいかと言うと、子供の時の悟空に勝てそうだったのに、水入りで引き分けになった俺は実はすごいということだ。

そんなことで、セルゲームの会場には悟空目当てにテレビ局がきていた。

悟空もなれたもので、マイクパフォーマンスをしていた。

悟空の意外な一面をみた。

セルゲームの開幕と共にセルが聞いてきた。

「さて……誰からくるのかな?」

「オラが行く!」

いきなり悟空が行くようだ。

セルも意外だったようだ。

「いきなりメインディッシュか……御馳走は最後に楽しみたかったのだがな」

テレビのレポーターも盛り上がっているようだ。

しかし、いまやベジータを追い抜いているであろう悟空の実力を見抜くセルは大したものだ。

暫く激闘を続けた。悟空は全力だろう。しかし、セルは余力を残している。

それでも悟空は押されている。悟空は勝てない。どうするんだよこれ。

悟空は体力をかなり損耗した。セルも少しは疲れたようだ。

ここで悟空が宣言した。

「参った。オラの負けだ」

「なんの冗談だ?闘いはこれからだろう?」

セルが苛立ちを隠さない表情で悟空に聞いている。

「オラはとてもじゃないけど、おめぇには勝てねぇ」

「本気か?」

「ああ……」

「戦う奴が居なくなったら人間が滅ぶんだぞ?」

「別に戦える奴が居なくなった訳じゃねぇだろう?」

「他に誰が居るというんだ?ベジータやトランクスはお前よりも弱い。ヤムチャがお前に比肩できたのも昔の話だぞ」

「オラがこれからそいつ指名するけど、いいよな?」

「くっ……本気なのか……いいだろう。言ってみるがいい。その存在しない者の名を」

セルの言う通りだ。どうする気なんだ?

レポーター連中も「我らの孫悟空が降参してしまいました」等と騒いでる。うるさい連中だ

「……………おめぇの出番だぞ!!プーアル!!!」

悟空が正気とは思えない。

テレビクルーは、『休憩して、お茶の時間にするようです!』等と言って落ち着き始めてるが、こっちは逆だ。

プーアルは非戦闘員だぞ?いわば俺と一緒にいるマスコットキャラだ。悟空は何を考えているんだ?

セルも同じ思いを持ったのか悟空に文句を言っている。

「ふざけるな!!よりによってなんでプーアルなんだ!!せめて悟飯とか言え!」

「プーアルはおめえが思っているよりもずっとすげぇ奴なんだぞ!!」

「マスコットだろうが!!!戦闘記録など一個も無いぞ!!」

「へっ!おめえがそう思っていただけだろ。とにかく、プーアルは常識では測れねぇくれぇ凄い奴なんだ」

「くっ……そこまで言うのならいいだろう。相手してやる。お前の所為でマスコットキャラが死ぬんだからな」

「おめえ出来るとは思えないがな」

「くそっ!ちょっと可愛い動物だからってここまで反発してしまうとは……ヤムチャの細胞の影響かもしれんな」

悟空が俺達の所に帰ってきた。

「……プーアル…行けるな?」

代わりに俺が答える。

「ふざけるな!よりによって何でプーアルなんだ!!それなら俺が行く!」

「ヤムチャ……プーアルはおめぇが思ってるよりずっと凄い奴なんだ」

「いや、悟空の思考回路の方が凄いよ」

「思い出しても見ろ。オラ達がガキの頃から飛び回れて、しかも二人乗せて筋斗雲並の速さだったんだぜ?」

「……それは、プーアルの得意技だから………それなら筋斗雲も強いってことになるぜ?」

後ろからプーアルが声をかけてきた。

「……ヤムチャ様…ボク…行きます」

「おい!プーアル!!」

「悟空さんのお蔭でセルは絶対ヤムチャ様の細胞を意識してるはずです。あの作戦を実行するにはそっちの方が有利ですよ」

「いや……だからと言って…………」

「ボクだってかめはめ波くらいは撃てる気がするんですよ!……試したことはないんですけど」

ここで、退屈になったセルがこちらに叫び始めた。

「さっさとしろ!!こちらは不本意な戦いを強いられてるんだ!なんなら今から人間を皆殺しにしてやろうか!!!」

プーアルは慌ててセルの方に向かって行きながら、俺に言い残した。

「手筈通りに。ヤムチャ様とボクの役割が入れ替わっただけです。大丈夫!ヤムチャ様とボクが考えた作戦は無敵ですよ!!」

俺はセルにも聞こえるよう大声でクリリンに仙豆を要求した。

「なぁクリリン!!仙豆を持ってきてたよな?一個くれないか?」

「あ…あぁ、別に良いけどどうするんだ?」

クリリンは俺に一個投げて寄越した。悟空はそれをみて回復を思い出したのかクリリンから仙豆を貰っていた。

「おい!セル!!」

俺がそう言って投げた物をセルは受け止めた。

「なんの真似だ?」

「勝負はフェアじゃないとな!!」

「プーアルと戦う為に仙豆を食べろと?」

悟空が口を挟む。

「おい!ヤムチャ!何してんだよ!オラが与えたダメージも回復しちまうじゃねぇえか!!」

俺は悟空に構わずにセルに呼びかける。

「ああ!食べない方がいい訳できるからな!ダメージが残ってて負けましたーって」

セルは苛立ちを隠せない表情で、『いいだろう』と言ってそれを食べた。

「ほぅ!?これは……なかなか……甘くて疲れた体には丁度いいな…」

「さて、回復もした。もういいだろう?それでは、あっさり殺してやろう。恨むのなら孫悟空を恨むんだな」

セルはそう言って構えた。

それをプーアルが制止した。

「待て!!お前はスーパーサイヤ人と言うのを知っているか?」

余りに急な質問だった為にセルの構えが崩れる。

「なんだ?急に?」

「知ってるかどうか聞いてるんだ!」

「あ、ああ……金髪碧眼になって毛が逆立って、全身が発光するあれだろ?ついでに気も爆発的に増える……」

「ああ!よく知ってるな!実はボクもあれになれる。」

「ふざけるな!あれはサイヤ人だからなれるんだ!!」

「ボクの場合は差し詰めスーパープーアルってところかな?」

「ほざけ!」

そう言ってセルは構えなおした。

「今からなってやる!よく見ておけよ!!ハッ!!!!」

プーアルは胸を張り気合を入れる

「………なにも変わらんが…」

「よく見ろ!ここの毛がちょっと逆立っただろ!」

「…………言いたいことはそれだけか?」

セルは呆れ返っている。

「……もう一つある」

「なんだ?どうせ下らないことなんだろう?」

「悟空さんはボクに戦えと言ったけど、セル、お前は僕と戦う前に自己崩壊を起こしている」

「なに?」

「戦い以前に消滅の危機だと言ってもいいぞ」

プーアルは胸を張り、エヘンとしてる。

「ふん!話にならんな。」

セルが攻撃を仕掛けようとした瞬間、俺は音高くピーピーと言った。

セルが苦悶の表情を浮かべた。

ピーピー言ってから優しく微笑ほほえみ、

「悟空、ピーピーと言え。同じくらい音高くピーピーと言え。君がピーピー言ってくれなければ、プーアルは勝てない」

悟空は、すべてを察した様子で首肯うなずき、会場一ぱいに鳴り響くほど音高くピーピーと言った。

「ありがとう、友よ。」悟空に言い、ひしと抱き合い、それからピーピーと二人で言い放った。

群衆の中からも、ピーピーの声が聞えた。悟飯やトランクスやクリリンや天津飯が言っている。

暴君ベジータは、群衆の中から二人の様を、まじまじと見つめていたが、顔をあからめて、ピーピー言った。

そんな太宰な気分でピーピー言って、プーアルを支援した。

プーアルは苦悶の表情を浮かべるセルに言い放った

「ヤムチャ様の細胞を使ったのは失敗ですね。」

「な……なに!?人類最強の戦士のはずだぞ…」

「ヤムチャ様の名のある人との戦い戦績を知っているか?」

「……天下一武道会では…全て一回戦敗退だったな」

「ヤムチャ様は非公式戦を含めて勝てたことがない。どんなに優位でも精々引き分けになってしまうのさ」

「……なに?そんな馬鹿なことが!?」

「ええ、そんな偶然はありません。ブルマさんが名づけた『ヤムチャ因子』の影響だったんです」

「ふざけるな!!……くぅっ」

「あまり叫ばない方がいいですよ。寿命を縮めますから。『ヤムチャ因子』は勝ってはいけない。負けることによって輝くなるようになる因子なんです。でもセルさんは、よりによって十年以上負けしらずの悟空さんに勝ってしまった勝ってはいけない存在のものが……負けて輝く存在が勝ってしまう。そんな事象が許されると思いますか?ましてその勝ってしまった相手が勝ち続ける事によって輝く存在であったのならば?セルさん、あなたはヤムチャ様の細胞を使った事によってその因子を体内に取り込んでしまったんです。ようするにセルさんも『ヤムチャ因子』の持ち主。勝ってはいけない存在だったのですよ。そのセルが勝ってしまった。あの悟空さんに。勝ってはいけない存在が勝ってしまった。存在に対する矛盾が、あるいは、あなた自身の存在があなたを許さないのでしょう。今あなたを襲っているのはそれです。何かを出したい感覚に陥っているのではないですか?その出そうとしてるのが『ヤムチャ因子』です。ただ、『ヤムチャ因子』はセルさん、あなた自体のことなんです。自分で自分を自分の外に出す?そんなことあり得ると思いますか?ボクは無いとおもいます。だから、消滅の危機だといったのですよ」

「うるさーーーい。ゴチャゴチャいうな!!!」

セルの腹痛は限界に達したのだろう。あのプライドの高いセルだ。テレビの前で排便もできないだろう----排便をするのならばだが----。

さらには、ちょっと聞くとインパクトがあるものの、荒唐無稽で、
内容の無い嘘八百を考える間もなくだらだらともっともらしく、途切れることもなく聞かせれたんだ。

今のセルはパニック状態だろう。………それにしても『ヤムチャ因子』は酷いよなぁ…

セルは隙だらけだった。

「か〜め〜は〜め〜波!!」

プーアルの渾身のかめはめ波を放ったがセルの腹部に大穴を空けた。

セルはまさかプーアルが、かめはめ波を撃てるとは思っていなかったのだろう。

真に信じられないような意外な顔をしていた。……実は俺も同様だった。

もっとも、腹痛とパニックでプーアルが『か〜め〜は〜め』等と言ってるカオスな状況で、
プーアルが何をしようとしてるのか理解できる奴はそう多くないだろう。

腹部に大穴を空けた後に理解してももう遅い。

「ヤムチャ様〜〜〜〜!!!やりましたよ!ボク達の……ヤムチャ様の勝利です!」

プーアルは大喜びこっちを見てる。

腹部に大穴を空けたセルであったが、その顔は余裕に満ちていた。

次の瞬間腕を上げ、指先を俺に向けた。閃光が放たれる。ああ、フリーザがトランクスに使った技だと理解できた。

理解できた時には、俺の胸は貫かれていた。……ああ、穴が空いてから理解しても……もう遅いよなぁ。

『ヤムチャさん』とか『ヤムチャ様』とかの声が遠くに聞こえる。

薄れゆく意識の中で、カリン塔に登らなかったら、名前がある透明人間に一勝くらいできたんじゃないかと思った。

……で、気が付いたら、横に神様とプーアルがいた。

「あの〜……ここどこですか?」

俺は神様に聞いてみた。

「ここはあの世だ」

「え!?俺、やっぱり例のフリーザの技で殺されたんですか?」

「うむ」

「えへへ!ヤムチャ様〜!ボクも殺されちゃいました」

プーアルは何故か嬉しそうだ。

「そうだ!セルはどうなったんですか!?」

「セルは死んだぞ。」

神様は俺が死んでからのあらましを教えてくれた。

セルにはピッコロ大魔王の細胞も使われており、再生能力を持っていたらしい。

さらには腹部を吹き飛ばされたので腹痛からも解放され、
俺が渡したPPキャンディーが原因だったことも見抜いたと言ったらしい。

セルが偉そうに講釈を垂れてる間に、悟飯が一気にセルに接近して、セルをぶちのめしたという。

俺が殺されたの見て激昂したらしい。

信じられないほどの力を見せつけた悟飯だったが、
仇討ちと嬲りすぎた所為で、セルに地球を巻き込んだ自爆の機会を与えたらしい。

触る事も出来ない程に膨張したセルに対して、プーアルがモグラに変化して地中に潜り、
そこから、大きな風呂敷に変化してセルを地面ごと風呂敷に包んだらしい。

そして可能な限り上空に行って地球への被害を0にしたという話だった。

神様が言うには、俺達は天国に行けるらしい。

野盗上りの俺達も立派になったものだと我ながら感心していた。

ただし、地球を救ったプーアルは俺とは違う場所と言う話だ。

………仕方ないよなぁ…

ただ、俺達はどうせ悟空達がドラゴンボールを使って復活させるだろうから、

それまであの世で修行でもしたらどうかというのが神様の提案だった。

こんな機会は死なない限り訪れない。俺は二つ返事でOKした。

神様もそう言うと思って既に肉体ごとあの世に連れてきていた。

神様は一年近く経ったら生き返らせるように伝えておくと言って立ち去った。

界王様という方に会って修行を受けたり、様々な、あの世の達人に出会って、時として技も教えてもらった。

かなり有意義に過ごせた。見るもの全てが新しかったがそれだけに一年もあっという間に過ぎた。

こうして俺達は生き返った……あの世に留まったまま………

その後も神龍に地球に呼び戻されそうになったが拒否できた。

ベジータは強制的に移動されたようだったが何らかの条件を満たすと神龍の願いを拒否できるようだ。

その後も数年間あの世を彷徨っていた俺達だった。

そんな俺達にも転機が訪れた。その日は奇遇にもセルと悟飯の戦いをプーアルから聞いている時だった。

「悟飯さんがセルに対して『足元がお留守だ』って言いながら何回も蹴ってたんですよ〜」

「……プーアルさんにヤムチャさんですね?」

プーアルの話を聞いていた俺に二人組が声をかけてきた。

少年の様に見える方は『界王神』と名乗った。横の厳しそうな顔つきの男は『キビト』と言うらしい。

二人の様子を見る限り、『キビト』は『界王神』に仕えているようだった。

『界王神』はあの界王様よりも、もっともっと偉い人だという。

その界王神様から協力を依頼された。

「お二人に協力してもらいたいのです」

界王様は続ける。

「魔導師バビディという者が、地球に封印されている魔人ブウを復活させようとしています」

「それを阻止しろと?腕が鳴ります」

「ええ!ただし、阻止自体は私たちがやります。」

「え?じゃあ俺はなにを?」

「バビディの居場所を探すのに協力してほしいのです」

「いや、俺は知りませんよ。バビディの名前も初めて聞いたんですし……」

「ブウの封印を解くためには大量のエネルギーが必要なんです。そこであなたには囮になって欲しいのです」

「囮ですか?」

「バビディは近々地球で開催される天下一武道会というのに目を付けてエネルギーを集めにくるはずです」

「天下一武道会に参加しろと?」

「ええ。あなたは地球人の中では大きな力を持っています。バビディは必ず目を付けるはずです」

天下一武道会なら悟空が参加してるんじゃないのか?俺の疑問はさておき、界王神様が聞いてきた。

「どうですか?協力して頂けますか?」

まぁ、それはそれとして、界王神様に頼まれたら断るわけにはいかない。

「ええ!いいですよ!!界王神様直々の依頼を断る訳がないじゃないですか!」

界王神は満足げな笑みを浮かべ、キビトさんに捕まるように促した。

俺達がキビトさんに捕まると、キビトさんは、

「カイカイ」

と唱えた。すると、この世に戻ってきていた。久しぶりだ。

天下一武道会の出場登録を済ませると係員に声をかけられ、一室に案内された。

その部屋には、悟空達が居た。

俺は軽く手をあげて挨拶をした。

「よう!久し……」
「プーアル!!」

みんなが一斉にプーアルに駆け寄った。

「………」

その後、大きくなった悟飯が俺に気が付いたかのように挨拶をしてきた。

「あ。ヤムチャさんもお久しぶりです」

それを皮切りにみんなも俺との再会の挨拶を終えた。

見なれた感じの子供が一人いた。子供の頃の悟空にそっくりだ。

案の定、悟空の子供だった。悟天と言うらしい。

連覇中でスーパーヒーローでもある悟空は個室を与えられていた。

ちなみにセルも悟空が風呂敷入れて放り投げた事になっているらしい。

「なんでそんな事になったんだ?」

俺の疑問に対して悟飯が答えた。

「なんとなくノリで言っちゃったらしいです」

だが、個室なのは都合が良い。俺は界王神様を皆に紹介した。

「皆さんは素晴らしい力をお持ちだ。是非バビディ打倒に協力してください」

「ええ!僕らで良かったら喜んで!」

そう答えたのはトランクス。父親や母親に似ず、模範的な好青年に成長していた。

時間が余ったので、悟空達に俺があの世で覚えた技の一つを披露した。

プーアルが俺そっくりに変化した。

そして、二人の気を同じくらいに調整し、

「フュージョン!ハッ!」

っと、掛け声とともに指を合わせた。

すると俺とプーアルは融合した。

一同はびっくりしていた。

界王神様は「メタモル星人の技ですね!ヤムチャさんもバビディと戦えるかもしれません」と驚いていた。

悟空は悟飯に「面白れぇな!後でオラ達もやってみようぜ!」と呼びかけてた。

悟飯もノリノリで「ハイ!」と応じていた。

俺は習得が大変だったけど、こいつ等は即出来そうだ。だからサイヤ人って奴は嫌いだ。

界王神様は界王神様で、

「こんなに強い人達が一杯居たなら、ヤムチャさんを連れてくる必要なありませんでしたね!」

なんて喜びのあまりに興奮してた。必要なかった扱いの人のことも慮ってください。

天下一武道会には、悟空が悟飯も出場させているらしい。

その所為もあって、ベジータがトランクスを連れて参加するようになったという。

クリリンや天津飯も参加してみたが余りの実力差に諦めて参加しなくなったという。

当り前だろうになにを考えて参加してみたんだ?

クリリンはこの部屋に居るが天津飯は居ない。独自に自分の限界を探るために餃子と旅をしてるらしい。

相変わらずストイックだ。

そんな事を解けた思考の中で考えていたら、時間----三十分----がきてプーアルとの融合が解けた。

しかし、俺と界王神様、キビトさん、悟空達四人が参加するとなると予選でかち合う可能性が高い。

「なぁ、俺達の目的は天下一武道会じゃないんだ。予選でぶつかった時のことを相談していいか?」

俺は一同に聞いてみた。

界王神様が「ああ、それなら大丈夫……」と言いかけた時に悟空が言った。

「なんだ?おめぇ、そんな事を心配してんか?」

悟空はそう言うと、内線電話を使い始めた。

「予選で分けて……」とか「今回は三人追加で…」とか「それなら、オラ帰っちゃおうかなぁ〜」等と言っている。

話が済んだのか、電話機をおいてこっちを向いた。

「でぇじょうぶだ。運営がなんとかしてくれる」

悟空は汚れてしまった。大人は汚い。

予選も終わり、本選の抽選結果は次の様になった。

ヤムチャ VS ミスターサタン
悟空 VS キビト
界王神 VS 悟飯
ベジータ VS トランクス

悟天はまだ出場しないらしい。俺としては助かった。一回戦敗退の悪夢が広がりそうだったからな。

界王神様やキビトさんの実力は解らないけど、優勝は、悟飯かなぁ〜…… 

疲労によっては悟空にも目があるかも?……と思った。

俺の一回戦の対戦相手は只のおっさんだった。

試合が開始された。弱すぎてどうしようかと躊躇してたら金縛りにあった。

その次の瞬間、背中に何かを刺された感覚があった。

同時に力が抜けていく。背中を見ると妙な男が何かを俺に刺しながら呟いている。

「孫悟空とかは無理だが、エネルギー的にはこいつでも十分。バビディ様もお喜びなるぜ!」

こいつは噂のバビディの手下だったようだ。

「いけません」

選手出場口の声でそちらを振り返る。

飛び出そうとした、トランクスと悟飯を界王神様が制止していた。

ああ、囮ってこういうことか……単なる撒き餌だったのね。

そう思いながら俺は倒れた。

俺が倒れると同時にその男は飛び去った。

界王神様が、

「さぁ!追いかけましょう!!」

と一同に呼びかける。

悟飯とトランクスがそれに応じて飛び立とうした。

「ダメだ!!大会が終わってからにしろ!!」

今度は悟空が制止した。

「な……なにを言ってるんです!?」

界王神様は理解できない様な顔をして悟空を見ている。

「い…今追わないとバビディの居場所が……」

「そんな奴より天下一武道会大事に決まってんだろ」

「え!?」

「それにでぇじょうぶだ。いざとなれば神龍に場所を教えて貰えばいい」

「神龍?誰ですか?その方なら知っているのですか?」

界王神様は理解不能な存在を見るような顔をしていた。

トランクスが「いや……でも……」と言いかけた時、

ベジータが悟空の援護射撃をする。

「カカロットの言う通りだ!誰にも戦いの邪魔はさせんぞ!邪魔をするなら、トランクスとも縁を切る!」

界王神様は渋々追いかけるのを断念したようだ。

……俺は刺され損じゃないのか?

俺はその間に担架に乗せられた。

プーアルが心配そうに駆け寄る。

「ヤムチャ様〜〜〜!!大丈夫ですか!?」

そこにキビトさんがやってきた。

「この男は私が何とかする。お前はあの男をつけて、バビディの場所を調べてきてくれ」

プーアルが俺を心配そうにみて、「でも……」と渋る。

俺はプーアルを見つめて、黙ってうなずいた。

プーアルはそれを受けてバビディの場所を調べに飛んで行った。

医務室に運ばれていく俺をキビトさんが追いかけようとした。

「キビト選手!早く試合位置についてください。」

アナウンサーが促す。

「い…いや……試合は………」

「ヤムチャには後で仙豆を持って行くから早く試合をやろうぜ!協力してやんねぇぞ」

とは、悟空。一目見て命に別状がないのは見抜いてるんだろうが……

キビトさんは一言「スマン」と言って、俺に背を向けて武舞台に向かった。

それから数分後大歓声が起き、間もなく気絶したキビトさんが医務室に運ばれてきた。

それから暫くして歓声が起き、それから界王神様が医務室にやってきた。

「キビトはまだ気絶したままですか?彼が起きてれば、回復して差し上げられるのですが……」

キビトさんが「何とかする」って言ってたのは、回復させるということだった様だ。

「しかし、悟飯さんは強いですね。手も足も出せずに場外負けでした。」

かなり実力差があったのだろう。界王神様には全く外傷がない。

歓声が医務室にまで聞こえてきた。ベジータとトランクスの勝負が決まったようだ。

「あー疲れた!」と言ってボロボロになったトランクスが入ってきた。

「その様子じゃ負けたのか?」

「ええ!父さんにはまだまだ敵いませんね。地球人ならそろそろ体力も落ちるのですが、伸びる一方ですよ」

そう言いながら、勝手に医務室の道具を使い始める。注意を受けない所を見るともう見慣れた光景なんだろう。

「やっぱりサイヤ人って言うのは体の作りが違うんだな」

「そうですね。失礼ながら、ヤムチャさんはあの世に居たのに年を取っているようですが?」

「あ、ああ。俺はあの世に居ただけで生きていたからな。最近は体力を維持するので精一杯だよ」

再び大歓声が起きる。

「悟空が勝ったようだな」

「ええ。また一人運ばれてきますよ」

トランクスは断言した。

かくして、断言通りに俺の一回戦の相手が運ばれてきた。不戦勝扱いだったらしい。

「あの人は後三秒で『痛てぇー』と言いながら起き上って帰りますよ」

トランクスはカウントダウンをした。

トランクスの予言通りの出来事が起きた。

「あの人は天下一武道会の名物おじさんなんですよ。ですから、悟空さんも毎回本選に出られるように工夫してます」

悟空……っと俺が知ってた頃の悟空を思い浮かべていたら、トランクスがドアに向かった。

「そろそろ、父さんと悟飯くんの試合なんで見てきますね。お大事に」

界王様が心配そうに声をかけてきた。

「彼らは私の話を忘れてしまったのでしょうか?」

サイヤ人の思考は地球人のそれとはかけ離れているみたいだし、俺に解るはずがない。

歓声が沸き起こった。終わったようだ。おそらく悟飯の勝ちだろう。

医務室には誰もこない。

まぁ、トランクスは俺の様子見もあってきたみたいだし、ベジータはこないよな。

それから暫くしたら、決勝が始まったのかかってない程の大歓声が起こった。

部屋が揺さぶられるようだ。これに刺激を受けたのかキビトさんが目を覚ました。

「う…ううん?ここは……」

「ようやく目を覚ましましたか?」

「これは界王神様!ああ……孫悟空に負けて気を失ってたのですね。これはお見苦しいところを……」

流石悟空だ。ダメージを残さずに気絶させたようだ。

そもそも気絶させる必要があったのか疑問だが……

「それよりもヤムチャさんを回復させてあげてください」

界王神様がキビトさんに指示する。

「あ!そうでした!!」

キビトさんがベッドを降り。俺の所にくる。そして両手をつけて、

「ふん!!」

っと力を入れると、俺の体力はみるみる間に回復した。

「あ!ありがとうございます」

俺はキビトさんにお礼を言った。

界王神様は落胆したような声をだした。

「予定が大幅に崩れてしまいました……」

「まぁ、とりあえず、悟空達の試合を見に行きましょう」

まだ、一度も悟空達の試合を見ていない。どれほど強くなったのか気になっていた。

「まぁ、やることもありませんし………」

渋々、界王神様がついてきた。

表に出た。そこでは悟空と悟飯が凄まじい攻防を繰り広げていた。

二人ともスーパーサイヤ人を超えたレベルで戦ってるのではないだろうかと思える水準だ。

俺でもほとんど動きが見えない。観客は見えてるのか?

トランクスがこちらに気が付いた。

「あれ?もう大丈夫なんですか?」

「ああ、キビトさんに治してもらったんだ。」

キビトさんはトランクスとベジータに対して、「お前たちも治してやろう」と言っていた。

トランクスがお礼を言ってるのに対して、ベジータは悔しそうに二人の戦いを見つづけていた。

プーアルが戻ってきた。

「ヤムチャ様〜〜!!ご無事だったんですね!!」

プーアルは嬉しそうに俺に抱きついてきた。

界王神様はというと試合を見て呆然としていた。

試合は悟空の勝ちで終わった。

悟飯はベジータとの戦いでかなり損耗していたのだろう。

俺達は悟空用の個室で悟空達がくるのを待った。

それから暫くしたら、悟空と悟飯がやってきた。

悟空は俺を見て、「ありゃ?誰かが仙豆を取りに行ったのか?」と言っていた。

大会終了後に取ってくるつもりだったらしい。

まぁ、瞬間移動が出来るわけでもないし仕方がないのかもしれないが…

全員をキビトさんが回復させようとしたら、悟空だけは拒否した。

「これくれぇボロボロの方が恰好がいいだろ?他の大会は無傷なのが多いしさ!」

と言うことらしい。もはや、あの純朴な悟空は存在しない。もうプロなのだ。

悟空は記者会見に行ってくると言って、部屋を出ていった。

悟飯が悟空のフォローをする。

「あの……記者会見とかをサボるとおかあさんが怒るので
………それにおとうさんはサービス精神に溢れてますから…悪気はないんです。許してください」

ああ、そういえばセルゲームの時にもマイクパフォーマンスとかしてたなぁ。と昔を思い出す。

キビトさんは回復を終えて、界王神様に質問した。

「このプーアルに調べて貰ったおかげでバビディの場所が解りました。どうしましょう?」

プーアルはエヘンとでも言いたげに胸を張っている。

「……いえ、先に界王神界に帰りましょう」

「なんですと!?」

「ゼットソードですよ。悟空さんと悟飯さんの戦いを見てて、思いつきました。」

「聖域に人間を迎えるとおっしゃっているんですか?」

「ええ!あなたも悟空さん達の戦いを見たでしょう?必ずやゼットソードを引き抜けるはずです!」

「し………しかし、いくらなんでも………」

「とにかく試しにやってみましょう。悟空さんが戻り次第、界王神界に行きますよ」

界王神様は有無を言わせぬ物言いで、キビトさんを黙らせた。

悟空が記者会見を済ませて戻ってきた。キビトさんに回復させてもらいながら、予定を教えた。

「オラは反対だな。明日は今日の武道会を受けて朝からテレビっちゅーのに出ねぇといけねぇ」

悟空の反応を受けて界王神様が目を丸くした。

「な、何を言ってるんですか!?ゼットソードを引き抜ければ凄まじいパワーも得られるんですよ!?」

「ふん!俺達サイヤ人はそんな方法で得たパワーには興味はない」

我が意を得たりとベジータが発言した。

「オラはベジータと違ってそこら辺には拘りはねぇけどさ、それって一人しか抜けねえんだろ?」

悟空はあっさりとベジータの考えを否定した上で、もっともなことを言う。

「で、ですが……」

「あんまりゾロゾロ行っても仕方がねぇだろ?
そんなら、若い悟飯とトランクスだけ行って、オラ達はそのバビディって奴をやっつけに行こうぜ!」

「万が一を考えたら、ゼットソードを抜いて万全な態勢で臨んだ方が……」

「バビディを放置してそのブウって奴が復活したらどうするんだ?」

「……………」

「試してみて、オラとベジータでは無理そうなら、オラ達もそこに行けばいいんだしさ」

ナチュラルな戦力外通告がきました。知ってたけどね。

「それにオラとベジータは二人と違って戦いたくてウズウズしてるんだ!なぁ?ベジータ」

「ああ……戦う取り分で揉めなくて済む分楽だな」

界王神様は覚悟を決めた顔つきになった。

「……キビトは悟飯さんとトランクスさんを連れて界王神界に行ってください」

対して、キビトさんは慌てた様子で反発した。

「なにをおっしゃるのですか!!界王神様に万が一のことがあったらどうするんですか!!」

「悟空さんが言うことももっともです。それに私は賭けてみたくなったのです。このサイヤ人の可能性に…
……私はブウ相手に生き残ったんですから、今度も大丈夫ですよ」

説得は無理と踏んだのかキビトさんは「どうか、ご無事で…」とだけ言って悟飯とトランクスを掴んだ。

「カイカイ」

三人は目の前から消えた。

プーアルの案内で一同はバビディの所行った。

俺も何が出来るかわからないが、一応ついて行った。

バビディの宇宙船が見える岩陰に身を潜ませた。

「ブウの復活は屋外でするはずです」

等とここにきて、再び慎重になってしまったようだ。

そう思っていると宇宙船から一人の男が出てきた。

一目散にこちらに飛んできた。

ベジータが解りきったことを叫ぶ。

「バレてるぞ……!!オレ達のこと!!」

男の目標は俺の様だ。と、思うと攻撃するつもりなのか俺の眼前に掌を向けた。

「バリアー!!!」

俺は男が攻撃を放つ前にあの世で習得した技の一つを展開し、男のエネルギー波を完全に凌いだ。

男は軽く舌打ちをして宇宙船に逃げ去った。

界王神様はさっきの男を知っていたようだ。

「今のはダーブラ……!!」

ベジータがそれに応じる。

「強いのか?」

っと、悟空は二人の会話に全く興味がないのか、俺に話しかけてきた。

「なぁ、ヤムチャ!今の技すげぇな!!何時の間に覚えたんだよ!どうやったんだ?」

俺のバリアーに興味津々だ。

「あ、ああ。あの世で習得したんだ。人間の限界を悟って、プーアルに促されるまま技の習得に力を入れたからな」

「すげぇなぁ!!オラ死ぬのが楽しみになってきたぞ!!早く死なねえかな?」

かける言葉がないとはまさにこのことだろう。

「他にも技を覚えたんだろ?どんなのがあるんだ?」

「あ、ああ……前に見せたフュージョンとか瞬間移動とか…」

俺が話している途中なのに悟空は何かを思い出したかのようにベジータの方に向いた。

「そうだ!ベジータ!!フュージョンしねぇか?」

ベジータが嫌そうな顔をして応じた。

「フュージョン……って、そこのヤムチャとプーアルがやってた恥ずかしいあれか?」

「ああ!」

悟空は満点の笑顔で返事をした。

「ベジータはさっきの奴と戦いたいんだろう?」

「ああ……敵の中では一番マシなようだしな」

「マシって!?あのダーブラですよ!?」

界王神様の抗議を無視して二人は話し続ける。

「オラもあいつと戦いてぇ!」

「なに!?」

「それに明日の朝が早えから、さっさと終わらしてぇ」

「カカロット……」

「ついでに言うとフュージョンも試してみてぇ」

「ふざけんな!!ほとんどがてめえの都合じゃねぇか!」

「そこで、フュージョンをすれば、オラもベジータもアイツと戦えるし、早く終わるだろ?」

ベジータが怒るのももっともだ。悟空は全くめげずに押し切る気だ。

「もしベジータが協力しないなら、オラは武術家を引退する。悟飯も武術大会に出させない」

「なんだと!?」

「幸いオラには一生食っていける貯蓄がある。引退した後も引く手数多だから関係ねぇけどな」

「……くそっ!」

ベジータが折れたようだ。

悟空はすっかり悪い大人になったようだ。もっともベジータも少しはフュージョンに興味があったのだろう。

始めから満更ではない表情だったし、悟空が引退して戦いをやめるなんてことがないのはお見通しだったはずだ。

悟空とベジータは岩陰に隠れた。声だけが聞こえる。

「フュージョン!ハッ!」

気で解る一回で成功しやがった。これだからサイヤ人って奴は……

岩陰から出てきたそいつは、

「ゴジータとでも呼んでくれ。時間に限りがあるんだ。行くぞ!」

っと言って率先して宇宙船に突撃した。

「……罠が」

っと言ってる界王神様を無視していた。

界王様すら知らないんだし、ある意味仕方がないのかも知れない。

ゴジータの力は圧倒的だった。

バビディは各階に一人配置して、倒すごとに次の階に行けるようにしていたようだ。

ところが、一階は数秒。二階は即時に暗黒になったものの移動時間を含めてた一分以内に倒した。

しかもスーパーサイヤ人にもならずにだ。

ところが敵が居ない三階でその出来事が起こった。

突如頭を抱えて唸り始めたのだ。

界王神様は何かに気が付いたのか、「何も考えないでください」と呼びかけている。

ゴジータがの苦悶が一段落した。

「はあああ……」

と言いながら顔を上げたゴジータの額には『M』の様な文字が浮かんでいた。

※建て主はドラゴンボールのアニメを見たことがないので、ゴジータという名称程度しか知りません。
口振りが違う等のクレームはなしにしてください。
気になるのなら、悟空やベジータの育った環境が違うからと脳内補正をお願いします。
それも出来ないなら、読むのをやめることをお勧めします。

界王神は明らかに恐怖していた。

それを見たゴジータが界王神に問いかけた。

「どうかしたのか?」

それを聞いた界王神の方がビックリして聞き返した。

「ど……どうもないのですか?」

ゴジータは不思議な顔をしながら答えた。

「なんだか頭がガンガンするし、なんか妙な声も聞こえるが問題ない」

界王神はなんとも表現に困る表情をして「そうですか……」と応じていた。

「そんな事よりもさっさと行くぞ!」とゴジータは次の階に進んでいった。

次の階には例の男、自信満々に満ち溢れたダーブラが待ち構えていた。

ダーブラが前口上を述べてる間にゴジータはダーブラにエネルギー波を浴びせて倒した。

ゴジータはなにごともなかったかのような様子で、「次に行くぞ」と進んでいく。俺達も続く。

その次の階には妙な奴居て、大きな殻の様なものもあった。

おそらくバビディとブウが封印されてる殻に違いない。

ゴジータはバビディに言い放った。

「くだらんなかったな。もう終わりか?」

バビディは悔しそうに答えた。

「なんで僕の支配下のに……くそぅ…ブウさえ復活してれば……!!」

「ほぅ?ブウとはそんなに強いのか?」

ゴジータは興味津々にバビディに質問した。

「ああ!そこの界王神が恐怖するほどにね!」

「界王神が恐怖するというのは強さの基準としてはあてにならんが?」

ゴジータとバビディのやり取りに界王神様が苛立って介入した。

「何をやってるんですか!後は、そこに居るバビディを殺したら終わりなんですよ!」

ゴジータは界王神様を無視してバビディに質問を続ける。

「どうやったら復活したんだ?」

「各階層にダメージを吸収する装置があるんだよ。それでダメージを集めればブウは復活するはずだったんだ!」

「それで……その装置はお前が死んでも作動するのか?」

「……もう装置は完成してるからね。僕が居なくても動くはずだよ」

ゴジータはそれを聞くとそこらに腰かけた。そして、

「こいつの術の影響か俺はこいつを殺す気にはなれん。雑魚すぎて興味もないしな。殺したければお前らがやれ」

と、界王神様に言った。

界王神様はそう言われた直後にバビディを葬った。

そのまま界王神様が施設を弄ろうとした時、突如ゴジータが界王神様の腕を捻じりあげた。

界王神様が叫んだ。

「何をするんですか!?」

ゴジータは何の感慨もなく言い放つ。

「俺はブウの封印を解く。邪魔はさせん」

「なにを言ってるんですか!?」

界王神様は理解不能といった面持ちだ。

「フュージョンが解けるまで待つ。解けたら俺達が戦えば解けるらしいからな」

「な……なんの為にそんなことを!!」

界王神様は悲鳴に近い声をあげる。

「今はそうでもないんだが、さっきまでサイヤ人の血が騒いでな……強いと聞いたからには戦わない訳にはいかない」

「それはバビディの術の影響だったんです!今は違うんだったら、無理に戦う必要はないでしょう!!」

界王神様は必死で抗議してるが無駄だ。サイヤ人は常識測れる様な連中じゃない。

「いや、折角ここまできたんだ。折角だしブウとやらを見てみたい」

ほらね?そして、このゴジータを止める術を俺達はもってない。

そのうち、ゴジータのフュージョンは解けた

フュージョンが解けた二人は顔を見合わせる。

先に口を開いたのは悟空だった。

「さっきはああ言ったけどどうするよ?」

「フン!どうせダーブラに毛が生えた程度の奴だろう?わざわざ封印を解くまでもあるまい」

「そうは言ってもよ〜 正直、ベジータだとダーブラに結構苦戦したんじゃねぇか?」

「バカか!俺があの程度の奴に苦戦するか!!」

「本当か〜?」

悟空は疑惑の目を向ける。

「いいだろう!そこまで言うのなら封印を解くぞ!!」

「ええ〜……オラ明日早いんだって」

「カカロット!!貴様の魂胆は解っているぞ!!
本当は貴様も封印を解いてみたいのに俺がどうしてもと言って封印を解いたと責任を擦り付ける気だろう!」

「あちゃ〜……バレてたか」

悟空は本当に悪い大人になったなぁ……としみじみと感じた。

「ああ!オラはベジータの言う通り封印を解いてみてえ!!ベジータも協力してくれ!」

「フン!いいだろう。それでこそサイヤ人だ」

界王神様が制止する。

「あの……」

俺が二人の代わりに界王様に応じた。

「止めても無駄だと思いますよ」

「ですが……」

「だって、既に全力で戦っていますから」

「………宇宙はどうなってしまうんだ…」

『ビー ビー ビー ビー』

ほどなくブザーが鳴った。

一同の動きが止まった。

「なにか起きるのでしょうか?」

聞くまでも無かったが、俺は界王神様に一応聞いてみた。

「おそらく、ブウが復活するのでしょう」

やっぱり、聞くまでもなかった。

大きな殻が二つに割れた。中から煙が湧いて出た。

その煙はかなりの気を持っていたが、これが強さだとすると悟空やベジータの敵ではなさそうだ。

ただ、なんとも不思議で不気味な雰囲気を感じる。おそらく額面通りの強さではないだろう。

ベジータは大笑いした。

「はっはっはっ!!やっぱりだ!!!俺達サイヤ人の敵ではない!!」

「なんか、ちょっと不思議な感じがするけど、それを含めても勝てそうだな!ちょっとワクワクすっぞ」

とは、悟空の評価。

「悟空さん!ベジータさん!仙豆です!食べてください!!」

プーアルは何かを感じたのか、悟空とベジータに仙豆を投げた。ここを調べた帰りにカリン塔に寄ったのだろう。
あの時は俺も体力が衰弱していたし、キビトさんの事は知らなかったからな。

「ふん!この程度の奴に回復が必要とは思えんがな」

「そう言うなって!何があるか解んねぇし、善意は無碍に拒否しないのが大人って奴だぜ」

そう言いながら、二人は仙豆を食べた。

煙は天井で集まり、人との形となっていった。そして、

「ブウーー!!!!」

と言いながら、一人の太っちょな奴が現れた。

界王神様の方を見る。

「あわわわわわ………」

と、怯えている。

この怯え方からすると、どうやらこいつが魔人ブウで間違いがないようだ。

悟空とベジータはどっちが戦うかじゃんけんをしていた。

途中じゃんけんの動きが止まり、

「これ…悟飯か?」、「くそっ!」、「すげぇな!これが例の奴か?」等と小さな声で話していたようだ。

一番初めに動いたのは、意外なことに界王神様だった。

キョロキョロしてるブウに気合のような何かを飛ばした。

ブウの顔が一瞬ひしゃげる。が何事もなかったかの様に同じ技を界王神様に放つ。

界王神様が吹き飛び、壁にぶつかり大きな音を出した。

これによって、悟空達も戦闘が開始されてることに気が付いたようだ。

ブウはいきなり攻撃されたことに腹を立てたのか、頭から蒸気を出した。

魔人ブウの気が爆発的に上がった。悟空達と同等かそれ以上かもしれない。

ブウは界王神様を振り回したり、天井に投げつけたりしたために、宇宙船が崩壊した。

場面は屋外に移る事となった。

界王神様は大ダメージを受けて地面に伏せているが、ブウは容赦しない。

馬乗りになり殴りつける。それを妨害したのはベジータだった。

ブウの横腹を蹴りつけ界王様から引き離した。

「弱い奴を嬲って楽しいか?この俺様が相手だ!」

ベジータは親指を自分の胸につきたてながら宣言した。

「あ!まだじゃんけんが終わってねぇのに汚ねぇぞ!」

という、悟空の抗議などどこ吹く風だ。

俺は界王様を保護するとプーアルを見る。

プーアルは首を横に振る。仙豆は無いようだ。

ベジータは奮闘しているもののブウが優勢だ。

それよりもブウの気が一向に減らない。

「こりゃ、ベジータの奴やべぇな」

悟空が流石に焦った様な口振りで独り言を言っている。

悟空は俺達をちらりと見ると、

「オラも戦ってくる。界王神様のことは任せたぞ」

そういうと悟空もブウとの戦いに参加し始めた。

戦いは悟空とベジータが圧倒しているもののブウの気が一向に減らない。

このままだと悟空達はジリ貧だろう。せめてゴジータになれれば……と思っていたら、悟空がチョコにされてしまった。

ブウが悟空型のチョコを食べるとどうした事かブウの見た目が変化した。

気も大幅に増える。どうやら、悟空は吸収されてしまったようだ。変化した姿がどことなく悟空っぽい。…服とかが。

ベジータは焦った様にこちらを見て声を張り上げる。

「お前たちは逃げろ!!!」

確かにその通りだ。あまりの出来事にボーっとしていた。

悟飯かトランクスの気を探す。界王神様の回復も必要だし、それがベストだろう。

気を探していると今度はベジータが吸収されたようだ。今度は肉片に取り込まれた。見た目がまた変化した。気も増加した。

こうなれば悟天の場所にでもと思っていたら、ブウがこっちに向かってきた。

「ヤムチャ様!手を!!」

プーアルも同じことを考えていたのか、気を探っていたようだ。俺は界王様の手を握りながらプーアルに駆け寄った。

プーアルが精一杯伸ばした手を辛うじて掴んだ時にはブウの顔が目の前にあった。……が同時に眼前が変化した。

プーアルの瞬間移動の方が少しだけ早かったようだ。

見慣れぬ場所だった。

目の前には、金色の長い髪を持った眉無し男性が立っていた。全身が発光している。

凄まじい気を纏うこの男は俺達を見ると驚いた。

「界王神様が大怪我をしてるじゃないですか!!」

それを聞いてキビトさんが界王神様に駆け寄る。

ここは界王神界で、この男は声の感じからすると悟飯なのか?

プーアルは悟飯の気を頼りにここに移動したようだ。

界王神様は悟飯を見るなり感嘆の声をあげた。

「おお!!その姿は!!ゼットソードが抜けたんですね!!!」

「えっと……これは…その…」

悟飯はばつが悪そうに言いよどむ。

キビトさんが悟飯の代わりに説明した。

「残念ですが、それはその者が元々成れたスーパーサイヤ人3と言う奴らしいです」

界王神様が落胆したのが見て取れた。沈んだ声でキビトさんに質問した。

「……それではゼットソードは?」

「……ゼットソードはもう一人の若者が引き抜きました。今持ってるのがゼットソードです」

トランクスが言われてゼットソードを振り回す。強そうな太刀筋だ。

フリーザ辺りでも微塵切りに出来るかもしれないと根拠もなしに想像してみる。

界王神様はキビトさんにさらなる質問をする。

「それで引き抜いた結果どうなったのですか?」

「そ……それが…非常に言い難いのですが、特別何も起きませんでした」

「そんな馬鹿な!!この界王神界に伝わるゼットソードですよ!?」

「はぁ……ですが……彼らが言うには、非常に重いので、これで鍛えるのではないかと言うことです」

「………悟空さんもベジータさんも吸収されてしまったし、どうしたらいいんだ。」

界王神様は頭を抱えて座り込んだ。

それを聞いた悟飯をトランクスが界王神様に駆け寄った。

「父さんたちが吸収されたってどういうことなんです!?」
「おとうさんが吸収されたですって!?」

同時に質問していた。

界王神様は悟飯達にあらましを告げた。

「そんな……」

と、落ち込むトランクス。悟飯も同様に落ち込んでいる。

「ゼットソードを究極のトレーニング機器と考えれば、二人とも鍛えることが出来るんです」

界王神は一縷の望みを見出すかのように二人に声をかける。

「……」

「ところで……ブウは吸収した相手の特徴を引き継ぎます。悟空さんとベジータさんの特徴を教えて頂けませんか?」

トランクスが先に口を開いた。

「父さん……父は強敵と戦って勝つのを第一の喜びにしています。後はトレーニングマニアで働かないくらいですかね」

続いて悟飯が悟空の特徴を言い始めた。

「おとうさんは、戦うことが大好きです。後は、適度な修行をしたがります。それとお調子者です」

界王神が険しい顔をした。

「ブウが好戦的になったかもしれませんね……ちょっと千里眼で見てみます」

そう言うと界王神様は目を閉じた。暫くして唖然として目を開けた。

その様子を見て悟飯はたまらずに質問する。

「どうだったんですか!?」

界王神様は信じられないような顔をして口を開いた。

「信じられません………ひたすら腕立て伏せをしています……」

暫くは大丈夫そうだったので、トレーニングをしながら色々と話をした。

界王神様は千里眼での観察に余念がない。

俺はトランクスが剣を振り回してるの見ながら悟飯に聞いてみた。

「なぁ……さっきのスーパーサイヤ人3だっけ?あれになってれば天下一武道会で悟空に勝てたんじゃないのか?」

悟飯は少々考えた後に言い難そうに答えた。

「……ならなくても優勝できましたよ」

「それって……」

「ええ。八百長ですね。ただ、僕が勝手にやってるんで片八百長ってやつです」

悟飯は割り切ったのか、事もなげに言ってのけた。

「悟空はその事を知っているのか?」

「さぁ?おとうさんは戦いのセンスが抜群ですから気が付いてるかもしれません」

「………」

「あるいは、気が付いてないかもしれませんし、気が付いてても気にしてないだけかもしれません」

「………」

「ただ、言えることは、僕はおとうさんに食べさせて貰ってるので、おとうさんの仕事が順調な方が助かります」

悟飯はまだ子供だしな。

「それと、僕はおとうさんの後をついで、職業としてのチャンピオンになる気はありません」

「ああ……学者になりたいんだっけ?」

「ええ。観衆もおとうさんの優勝とパフォーマンスを望んでいますしね」

界王神様が何かを言い始めた。

「……ブウが子供を誘拐しました」

心当たりがある。

「5〜6歳の男の子じゃありませんか?」

「……はい、そうです。」

「ああ!腕立て伏せを強要しています!」

悟飯も気が付いたようだ。俺の代わりに答える。

「……たぶん、それは悟天…僕の弟です。鍛えて将来戦う気なんでしょう」

キビトさんが発言した。

「このブウならば放置をしても良いのではありませんか?」

これを聞いた悟飯が苛立を隠さずに言った。

「ブウはおとうさんたちを吸収しています!救出しないといけないので、放置はできません」

界王神様が突っ込む。

「どうやって救出する気なんですか?」

「それは……」

と、返答に困ってる悟飯の代わりにトランクスが答えた。

「救出が無理でも仇は取らないとな。それに父さん達だけを生き返せるかもしれない」

「そうか!その手があったか!流石トランクスさんです!!」

と、理解が出来ていない界王神様を横に悟飯が興奮している。

「できるかどうかわからないけどな……」

トランクスは無心に剣を振りながら悟飯に答えている。

「あなた方の気持ちもわかりますが、ブウが暴れると簡単に数百の星が消滅するのです!」

界王神様は納得しなかった。

「勝てるかどうかも解らないのに、下手な刺激を与えるのはやめてください!!」

界王神様は沈痛な面持ちで続ける。

「ゼットソードが期待外れでした。多少筋力をつけたところでどうにかなる相手ではありません」

俺もそう思う。だが、悟空やベジータをこのままにしておくわけにはいかない。

それにこいつらはずっと重力室で保育したんだ。俺にとっては子供みたいなものだ助けてやりたい。

「勝てるか勝てないかだと、こいつ等は確実に勝てると思いますよ」

界王神は意外な顔をした。

「悟飯さんのスーパーサイヤ人3ですか?確かに強いとは思いますが、確実というほどでは……」

「いえ、フュージョンです」

悟飯とトランクスは試しにフュージョンをしてみた。

フュージョン後の男は『正義のサイヤ人!ゴテンクス』と名乗った。

二人ともヒーロー願望があったようだ。

ゴテンクスはゴジータを上回るパワーを持っているようだった。

トランクスもベジータに遠慮して力を隠していたらしい。
まぁ、ベジータにライバル認定されると面倒だろうから正解だったろう。

さらにこのゴテンクスはゴジータと違いスーパーサイヤ人3になれるようだ。

ゴジータの方もなれたのかもしれないが、俺は未確認だ。

ただ、俺が思うに、なれる実力があっても気が付かないとなれないものなんだと思う。

スーパーサイヤ人もトランクスが気が付くまで誰もなれなかったが今じゃ悟空達は当然の様に変身している。

問題はゴテンクスの状態でスーパーサイヤ人3になると活動時間が極端に短くなるくらいだろう。

界王神様もゴテンクスの圧倒的なパワーを認めて、ブウ討伐を認めたようだ。

二人はキビトさんに回復させてもらい。再びフュージョンが出来るようになるまで暫く休憩した。

休憩も終わり、二人は地球に戻る事となった。

トランクスはゼットソードを片手に、

「これでブウを微塵切りにしてから気で消滅させてやりますよ!」

と息巻いていた。普通の方法ではダメージを与えられないと教えたからだ。

二人は地球に到着してから、ある程度ブウに近づいてからフュージョンをするそうだ。

悟飯とトランクスはキビトさんに捕まった。

二人はキビトさんの「カイカイ」という声と共に目の前から消えた。

暫くして界王神様は信じられないことを言った。

「………ゴテンクスさんが吸収されました」

界王神様が言うには、ゴテンクスはブウを完膚無きまでに叩きのめしたいたらしい。

余裕だったので、「お父さんたちを解放すれば命だけは助けてやる」等と交渉していたという。

ところが、ゼットソード切った肉片の一部が岩陰に潜んでいて太陽拳を受けた後にそれが奇襲で襲ってきたらしい。

そしてそのまま吸収って流れと聞いた。

界王神様が暫く観察した話だと、新しいブウは非常に規則正しく生活しているらしい。

早朝から朝は勉強。午前は野良仕事。午後は筋トレ。夜になるとゼットソードを使って素振りをしているらしい。

悟天は解放したと聞いた。

「まだ、なんとも言えませんが、ブウの脅威は去ったのかもしれませんね」

界王神様は安堵の表情を浮かべた。

界王神様の目線ならそれで良いのかもしれないが、俺は納得できなかった。

悟空は俺の親友だ。
武天老師様や神様の所で長いこと一緒に修行した仲間だ。
あいつは俺が最も尊敬してるヒーローだ。

ベジータは、あいつは否定すると思うが、俺は友達だと思うっている。
天邪鬼な言動をとるが実は結構いい奴だ。長いこと同居してきたから知っている。
ブルマの家に長いこと居候しててもその事自体には文句も言わなかった。

トランクスと悟飯は俺にとっては子供みたいなものだ。
赤ん坊の頃からしってるし、おしめだって換えた事がある。
プーアルと一緒に保育したし、修行馬鹿の父親に代わって遊園地にも行った。

そいつらを犠牲にしろっていうのか?

界王神様にとってはそれがベストではないにしてもベターなのはわかる。

だが、俺にとってはそんな平和な宇宙なんて存在しない。

俺の不満を知ってか知らずかプーアルは界王神様やキビトさんと打ち解けている。

プーアルは界王神に質問している。

「界王神様とキビトさんがしてるお揃いのイヤリングってなんなんですか?」

界王神様が言うには、ポタラという界王神に代々伝わる秘宝という話だ。ちなみに効果は不明らしい。

「ちょっと見たいなぁ〜……」

プーアルが界王神様に甘えている。

「別にいいですよ。」

界王神様は右のイヤリングを外した。左のイヤリングに手をかけた時にプーアルが声をかけた。

「あ!一個でいいです」

暫く、イヤリングを見つめた後に、プーアルが今度はキビトさんに声をかけた。

「綺麗なイヤリングですよね〜 キビトさんのも同じ物なんですか?」

「見てみるか?」

そう言いながらキビトさんは左のイヤリングを外した。

 

突如二人は引き寄せられるようにしてぶつかった。

何故か合体してしまったようだ。

プーアルはどさくさに紛れてキビトさんが落としたポタラを拾っていた。

界王神様(?)は非常に混乱していた。

効果不明だったポタラには、一組を分け合うと合体する効果があったようだ。

暫く様子をみたが、フュージョンの様に解ける様子はない。

話していて解ったのだが、合体というよりは、界王神様がキビトさんを吸収してしまった形の様だ。

なんだか、界王神界に居づらくなってしまった。

「えっ……っと、一応ブウの件は解決したみたいだし、俺は帰りますね」

俺はプーアルを連れて悟天の気を頼りに、逃げるように地球へと瞬間移動をした。

悟天の所へと瞬間移動した。

そこにはチチさんは当然として、ブルマやクリリン、天津飯と餃子、武天老師様等の一同が集まっていた。

開口一番、一晩中泣きはらした様な顔でブルマが俺を怒鳴りつけた。

「ちょっと、ヤムチャ!!どこに行ってたのよ!!!!」

悟天やチチさんを見るとブルマ同様に顔を泣きはらしていた。

クリリンや武天老師様、天津飯は沈痛な面持ちだった。餃子の表情からはなんの感情も読み取れない。

ブルマの話によると、

解放された悟天が、
悟飯とトランクスが融合したと自称してる男が助けに来たこと、
その男が悟天を誘拐した人物に対して、お父さん達を解放しろと迫っていたこと、
最終的にはその男も吸収されてしまったことをチチさんに伝えたということだ。

それと、悟空やベジータ、悟飯、トランクスが行方不明になっていることから、
それらの話は事実で全員吸収されていると推定したらしい。

事実、救出の為にドラゴンボールを集めて神龍を呼び出し、
『悟空達を連れてきて』と頼んでみたものの、
『その者たちは強力な者に吸収されており、それから引きはがすのは神の力を大きく超えており不可能』と拒否されたという。

その報告会がここで開かれてる最中だったという。

なるほど、みんな泣いたりして暗くなっているはずだ。

ブルマが説明を終えると、明らかに何かを期待した目で俺をみてる。

地球に帰ってきて解ったことが一つある。ブウの気は化け物でどうしようもない。

そんな目でみられても人間には出来ることとできないことがあるんだ。

もっとも、俺にはできないことの方が多い気がするがな。

そう言うわけで、周りに助けを求める視線を送る。

ところが周りの連中も俺に期待の視線を送ってるような気がする。

天津飯は俺と気の大きさが大して変わらないんだし、次元が違うのが解るだろう?なんでそんな目で俺を見る。

天津飯は何かを感じたのか一同を代表して口を開いた。

「お前は長いことあの世にいただろ?何か不思議な技で何とかしてくれるんじゃないかとみんな期待しているんだ」

みんなそんな目でこっちを見んな。そんなダジャレが頭に浮かんだ。

「実際に不思議な技を疲労したそうじゃないか。俺は半信半疑だったが、お前は突然現れたからな。今ではお前だけが頼りだ」

一同が一斉に頷いている。

チチさんが涙を浮かべながら、俺の手を両手で握りしめて懇願してきた。

「こうなったらヤムチャさんだけが頼りなんだべ。おねげぇできねぇか?」

視線に耐えきれずに目線をそらす。そこには悟天が涙ながら上を見上げていた。目が合った。

「……お父さんを助けてくれないの?」

俺に何が出来るんだ?俺だって、あいつらを助けたいよ!でも無理なものは無理。

武天老師様が呟く。

「……やっぱり無理じゃったか。ヤムチャに死ねと言ってるようなものじゃ。無茶を言ってはいかんぞ」

それを聞いた悟天は号泣した。チチさんもさめざめと泣いた。クリリンは下を向いて「……くっ!」っと悔しそうだ。

ええい!もうヤケだ!!俺だって助けたいんだ!何とかなると信じよう。

「………ブルマ…昔お前の家において行ったホイポイカプセルはまだあるか?」

「え!?あるはずだけど……」

「……できるだけのことはしてみるつもりだ。あんまり期待するなよ」

「ヤムチャ!?」

ブルマは驚き、一瞬の間を開けて喜びに溢れた表情になった。こいつって美人だったんだな。

他の連中も一瞬の間をあげた後に、それぞれ喜びの声をあげて歓声があがった。

悟天は俺に「おじさん、ありがとう!!」と言って、泣きながら抱きついてきた。

武天老師様は笑顔で、「いいか!くれぐれも無茶をするなよ」と言っていた。

要求自体が無茶です。ヤムチャに無茶振り……なんちゃって。界王様の修行の成果を今実感している。

俺はブルマからホイポイカプセルを返してもらいプーアルと一緒に作戦会議をすることにした。

悟空邸の客室のベッドに寝転びながら、プーアルに話しかけた。

「さて、どうしたものかな?」

プーアルは飽きれたような声をあげた。

「なにも考えてなかったんですか?安請け合いしすぎですよ!」

「そうは言っても、あの雰囲気では断れないだろう?」

「ま……まぁ、そうかも知れませんけど………」

俺は愚痴のように呟いた。

「せめてヒーローになってる悟空がいてくれたらなぁ〜」

「元気玉ですか?」

「ああ……あいつが呼びかければ地球中から限界まで力を集められただろ?」

「でも、それであのブウは倒せたでしょうか?……それに呼びかける手段が……」

それもそうだ。もっとも、悟空は居ないんだし別の手を考えないといけないな。

プーアルが俺に提案してきた。

「倒す方向だと無理なんで、別の方向で考えませんか?」

「説得とかか?」

「え…ええ」

「それだと悟空達が帰ってこないからダメだな。そもそも説得も何も世間的には無害なんだし」

「そういえば、悟空さん達は吸収された後どうなってるんでしょうかね?」

「吸収っていうんだから……」

と言いかけて、俺は神龍が言っていたという言葉を思い出す。

「『引きはがす』って言われたらしいから、ブウの体内にでも張り付いているのかな?」

「じゃあ、ブウの体内に入って引きはがせば救出できますね!!……って入る方法がありませんね」

プーアルは一人で発案して、一人で結論をだし、一人でしょげていた。

だが、俺はプーアルの話を聞いて閃いた。

「そうだよ!ブウの体内に入ればいいんだよ!!」

プーアルは不思議な顔をしている。

「吸収されるんだよ」

俺は得意気に言った。

プーアルの「え!?それだと……」というプーアルの言葉を遮り続ける。

「吸収される直前にバリアーを張るんだ。俺の予想が正しければ、これで吸収は免れるはずだ」

「そんな手が!?流石ですヤムチャ様!!」

プーアルが話しかけてきた。

そう言えば、ブルマさんに返してもらったカプセルには何が入ってるんですか?

「ああ、マイティマウス号やパンツァーファウストとか剣とかヌンチャクとか……俺の切り札だな」

「え……」と言ってプーアルの動きが止まる。

「プーアルが言いたいことも解る。だが、素手でどうにかなる相手とは思えん。あのブウなら死ぬことはないだろう」

プーアルはまだ何かを言いたげだが俺は続ける。

「卑怯なのは解っているが、まずはブウに吸収対象として思われなければならないからな」

「……ヤムチャ様…大丈夫ですか?」

プーアルが心配そうに聞いてくる。

「ああ……マイティマウスでこっそりと近づいて、パンツァーファウストを撃ちこむ。
怯んだところに、剣で斬撃を加え、バラバラになったブウの肉片をヌンチャクで破壊する。どうだ?完璧だろう?」

「は…はぁ……」

プーアルは生返事だ。

俺もこんなので勝てるとは思っていない。

「まぁ、不死身のブウにはダメージは与えられないだろうが、吸収へのインパクトにはなるだろう」

そう言ってプーアルを納得させることにした。

「そういえば……」と言ってプーアルは俺にポタラを見せながら聞いてきた。

「界王神様の所から持ってきちゃいました。どうしましょう?」

「あ……ああ、これが終わったら、ブウに関する報告と一緒に界王神様への所に返しに行こう」

そう言ってひとまず、俺が預かる事にした。

翌日、俺は悟空達を助ける為にブウの所に行くことにした。

気を探り----探すまでもないのだが----プーアルと共に瞬間移動をした。

目の前にブウが居た。畑を作るつもりなのか、小石拾いをしていた。

急に現れた俺達をブウは不思議な顔をしてみている。

俺も目の前にブウが居たからビックリだ。そう言えば、瞬間移動ってこういう技だった。

順序が逆になったが、俺はカプセルを投げて、マイティマウス号を出し乗り込んだ。

エンジンを吹かして、パンツァーファウストを構える。

そして、俺はブウめがけてそれを撃ちこんだ。

このまま車で逃げるか、追い打ちをかけるか、剣を片手に一瞬迷う。

ブウの気に全く揺らぎがないことに気が付きマイティマウス号で脱出を図る。

しかし回り込まれてしまった!!

プーアルが呆れ果てた感じで話しかけてきた。

「……ヤムチャ様…本気だったんですね……」

ブウが目の前に居る今の状況よりも衝撃的だったようだ。

俺も撃ちこんでから気が付いた。あの武器って弱いよね?

ついでに言うとこの車……遅いよね?

ブウはなんとも言えない顔をして俺の顔を見つめ続ける。そして一言、

「今のは面白かったぞ」

……気に入って頂けたようでなによりです。

ブウが吸収した悟飯達がそうさせるのか、ブウは俺達のことを気に入ったようだ。

折角のチャンスなので、一緒に生活してチャンスを窺うことにした。

なんなら、直接吸収して欲しいとお願いしてもいいだろう。

暫く一緒に生活してわかったが、言動こそ悟空達の影響が出ているが、このブウというのは本質は子供だ。

それも3才児くらいの感じだろう。一時期は本気で保父さんを考えた俺にとっては、相手をするのはお手のものだ。

おそらく、無敵で不死身だった為に誰も矯正できず、本能のままに暴れて界王神様達がお手上げだったのだろう。

あるいは、このブウを作ったというビビディの教育の賜物だろうか?

自分が眠る度に封印していたんだ。それだけで、碌でも無い親代わりだったと容易に想像ができる。

そういう意味ではブウも可愛そうな奴なのかもしれないな。できればブウを含めて、皆を助けてあげたいものだ。

ブウもかなり懐いてきたと感じたある日の会話。

「そういえば、ブウは人を吸収できるんだよな?」

「ああ……」

「俺もブウさんと一緒になりたいんで吸収してもらえないでしょうか?」

「お前、弱いから嫌だ」

「…………」

吸収をお願いする案は失敗に終わったようだ。

ちなみに、普段のブウは暇潰しに凶悪な犯罪者を捕まえたりしている。

この前は桃白白を捕まえたらしい。街に買出しに行った時に評判になっていた。

それから暫くしたある日のことだった。

「俺は他の星に行くぞ」

ブウは突然俺に言った。

「え!?なんでだよ?」

「この星に強い奴が居ない。俺は強い奴と戦いたいんだ」

お前と戦える奴は宇宙中探しても居ない。断言できる。

「お前たちも連れて行きたいが、宇宙に出る以上は無理だろう。ここでお別れだ」

待て待て!ここでお別れしたら、悟空達を解放できなくなるぞ!

瞬間移動でブウの場所は解るが、移動した先が宇宙空間でした。

とか、人間が生きられない星でしたとかだったら、俺が死んでしまう。

界王神様が協力してくれればそのリスクはないが、ブウを放置したいのだから協力は望めないしな。

「……どうしても行くのか?」

「ああ!決めた」

ブウの意思は固いようだ。

俺は最後の手段に出ることにした。

「……なぁ、ブウ?」

「なんだ?」

「俺達は友達だよな?」

「ああ!!」

ブウは明るい笑顔で答えた。

「………ここに一組のイヤリングがある」

俺はそう言ってブウにポタラを見せた。

「友情の証にこれを分けたい。俺は左につけるから、お前には右につけて欲しいんだ。」

「ああ!それなら、何時までもヤムチャと一緒だな!いいぞ」

ブウはそう言うと耳をイヤリングを付けられる形状に変化させた。

そして俺からイヤリングを受け取るとブウは右の耳にイヤリングをつけた。

俺は少し迷った。それを見てブウが不思議な顔をして聞いてきた。

「どうした?お前はつけないのか?」

心の中でブウに謝りながら、俺はポタラを左耳に着けた。

俺とブウは急激に引き寄せられる。

今の俺にはバリアーを張るという選択肢はなかった。

なるようになるし、このブウやその中に居る悟空達と一緒になる。

そう考えると悪くなかった。

そして俺達はぶつかって一人となった。

「ヤムチャ様〜〜〜!!!」

そんな悲痛な叫びを聞きながら……

一瞬の意識の空白があったが、すぐに正気に戻った。

ブウの精神が三歳児だったせいか、俺の……ヤムチャの精神が基本となったようだ。

もっとも、ブウの精神や記憶技術等は諸々引き継いでいる。そんな感じもする。

自分であって、自分では無いとでも言おうか、なんとも妙な感じだ。

あるいは、ブウの精神も別に存在していた、同様に考えているのかも知れない。

考えの整理が終わるとプーアルが心配そうにこちらを見ていることに気が付いた。

「俺はどんな見た目なんだ?ちょっと鏡に変化してくれないか?」

俺はプーアルにリクエストした。

「ヤムチャ様〜〜〜〜〜!!!!」

プーアルは俺のリクエストを無視して、泣きながら抱きついてきた。

一通り泣いて落ち着いたのか、プーアルは鏡に変化し、俺はそれで全身を確認した。

………界王神様達のバランスの悪い合体状態を見てたから覚悟してたが……これは酷い。

俺があこがれ続けた結婚はできそうにない。

「どんな見た目になってもヤムチャ様はヤムチャ様ですよ!!」

プーアルは励ましてくれている。

「それに悟空さん達も一緒に居るんですから!!ブウだってちゃんと育てれば、絶対良い子ちゃんでしたって!」

そこでプーアルが冷静になり質問してきた。

「ところで何で合体したんです?」

「俺がコントロールできれば誰かに内側行ってもらい悟空達を助けようと思ったのだが………」

「そんな!ヤムチャ様、無茶しすぎですよ!」

流石プーアル。界王様の修行が活きている。

「チチさんには悟天さんがと悟空さんが残した莫大な財産があったんですよ!
ブルマさんは……元々お金持ちですし、望むなら再婚もできたし、子供も産めたと思いますよ!」

プーアルが泣きながら言う。

「いつもヤムチャ様ばっかり……」

プーアルの号泣が止まらない。

「まぁ、こいつらも帰りたいだろうしな」

俺はそう言いながらまるで全身から痰を吐き出すかのようにもぞもぞさせる。

それは口に収斂していき、舌の上に乗った固形物となる。そして吐き出す。

それを四回ほど繰り返した。

終わった時には四人の人物----悟空、ベジータ、トランクス、悟飯----が横たわっていた。

それに伴って、俺の見た目もまた変化したようだ。怖いから鏡はまだ見ない。

もっとも必要なら見た目くらいは変化できるようだ。俺の中のブウが教えてくれた。

俺は倒れてるサイヤ人達に手を当てる。そして『治れ』と念じた。

そうしたら四人とも治った。ブウの力の様だ。

悟空達は、初めは『ブウ!?』等となっていたが、すぐにヤムチャでもあることに気が付いたようだ。

やがて、俺がブウから解放した事に気が付き、彼らは感謝していた。

ベジータでさえ、「……ありがとう。その姿…悪かったな」という始末だった。

「…礼は言わんぞ」と言うと思っていたから意外だった。

俺は、チチさんや悟天やブルマが心配してるから早く帰って安心させるように促した。

「じゃあ、またな!今度ちゃんと礼をすっから、明日にでもきてくれ!」とは、悟空。

そんな感じで、四人は家族の待つ家に帰っていった。

「家族か……」

俺は四人の後ろ姿を見ながら独り言を言った。

プーアルが、「ヤムチャ様なら絶対に結婚できますよ!」と言ってきた。

「結婚なんかしなくても俺にはプーアルが居るから大丈夫だ」

俺の返答を聞くとプーアルは右手を後ろに回しながら、顔を真っ赤にして照れている。

ただ、俺はブウと合体したから、普通の寿命じゃない。やがてはプーアルとも別れる時がくるだろうと思った。

プーアルは俺の考えを察したのか、

「ボクはこう見えて、長生きなんですよ!そう簡単にヤムチャ様を一人にはしませんよ!!覚悟してください!」

プーアルは何かの責任を負ったかの様に胸を張った。

プーアルの発言を聞いて、ブウの気持ちが踊っているのを感じた。

こいつも孤独だったんだよなぁ……しみじみと感じた。

ブウが俺との融合を嫌がっていないのとも関係があるのかもしれない。

結婚はできそうにないが家族は増えた。これからは、俺達は三人旅だ。

俺の気持ちを感じたのかブウの心がまた踊った。

この際だからと、俺は前から思っていた疑問をプーアルにぶつけてみた。

「そういえば、昔、プーアルはドラゴンボールをドッジボールくらいだと思っていたと慌ててたよな?」

「え!?……ボクそんな事こといいましたっけ?」

「ああ……あの世でナメック星人の最長老に会った時に元々のサイズがそうだったと聞いて俺は驚いたからな」

俺は生唾を一つ飲み込んでプーアルに質問した。

「もしかしたら、お前は知っていたんじゃないか?」

「え!?何を言ってるんですか?やだなぁ……ヤムチャ様」

「ピラフ一味に閉じ込められて絶体絶命の時に、満月の話を振り脱出の端緒を作ったのもプーアルだったよな?」

「え?そんなことありましたっけ?」

「………もしかして、サイヤ人を含めて、全部知ってたんじゃないのか?」

「エ……エヘヘ……全部偶然ですよ!………ポタラだって偶然渡してただけですしゴニュゴニョ」

「……ああ!そう言えば、ポタラを界王神様に返しに行かないとな!」

「そうですよ!帰りはナメック星にでも行ってみますか?噂のドラゴンボールを見れますよ!」

「ああ!それもいいな!!」

「それじゃあ、ボクにつかまってください」

俺は言われるがままにプーアルの腕を掴む。

「カイカイ」

プーアルがそう言うと移動した。

………あれ?プーアルはいつの間にキビトさんの技を使えるようになったんだ?

そんな疑問と共に、以前セルへの心理戦で言ってた『ヤムチャ因子』が気になった。

その存在の有無は、ブウと合体した俺に驚く界王神様にポタラを返し、その後に行ったナメック星で明らかになった。

ナメック星では、フリーザ一味がドラゴンボールを求めて暴れていたために対峙することとなったのだ。

その結果は……また別のお話。

チラ裏SS オチマイ

書いてる側も飽きていく中で、付き合って頂いた皆様においては、お疲れ様でした。 
 
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