教師「だから魔法学校は辞めて、他の分野で活躍すべきだ」

教師「例えば、剣術だとか格闘技だとか……」

生徒(220cm180kg)「なんでですか!」

教師「えーと、どう見てもそういう方面の方が向いて――」

生徒「嫌です! ボク、どうしても魔法使いになりたいんです!」ムキィッ

教師「三角筋と大胸筋を隆起させながら近づかないでくれ!」

生徒「お願いします! 頑張りますから見捨てないで下さい!」



教師「わ、悪かった。もう二度とこんなこといわないから許して下さい」

教師「じゃあもう一度……初歩魔法からやってみようか」

教師「魔力を集中して、『ファイア』と唱えるんだ」

生徒「よーし、ファイア!」

生徒「ファイア!」

生徒「ファイアァァァ!」

生徒「……」

生徒「ダメだぁ……」

教師「うーん……一度、魔力を測定してみようか」

教師「じゃあ測るよ」

生徒「はい!」

教師(魔力測定の後、教育の方針を改めて考えるとしよう)

教師「君の魔力は……」ピッ

『0』

教師「もう一度……」ピッ

『0』

教師(そんな……どんな人間だってわずかな魔力を宿してるはずなのに!)

教師(筋力はあるのに魔力は全然ないってことか!)

生徒「魔力がゼロということは……」

教師「ようするに、魔法を生み出す燃料がないってことだ」

生徒「うう……それじゃ魔法を放てるはずがない」

教師(そうなんだよな……こればかりはどうしようもない)

生徒「やっぱり……ボクは魔法使いになれないのか……」

生徒「うわああああああああああん!!!」

ドドドドドッ

教師「ま、待ちなさい! なんて速さだ!」

生徒「うわあああああああん!」

ガシッ ガシッ ガシッ

教師「あっ!」

教師(校内の魔法タワーに登ってる……崖をよじ登るみたいに!)

教師「何をする気だ!?」

生徒「魔法使いになれないのなら……死んだ方がマシです!」

教師「や、やめなさい!」

生徒「とうっ!」

ヒュルルルルルルッ…

グシャッ!

教師「ああああああっ!」

教師「しっかりしろ!」

生徒「い、痛かった……」ムクッ

教師(えええ、高さ30メートルはあるのに……)

生徒「あれ? 生きてる……よほど打ちどころがよかったのかな」

教師(いや、頭からイッてたぞ)

生徒「だったら次は首を吊ります!」

生徒「先生、今までお世話になりました!」

教師「待ちなさい!」

生徒「こうやって首をくくって……!」

ブラーン…

生徒「……」

生徒「……」

ブチッ

生徒「あれえ? なんで?」

教師(やはりロープの方が耐えられなかったか……)

生徒「だったら、これしかない! 先生、離れて下さい!」

教師「それは!?」

生徒「爆薬です……!」

教師「爆薬!? さすがにそんなの喰らったら――」

生徒「さようなら!」

ドゴォォォォォン!!!

シュゥゥゥゥ…

生徒「い、生きてる……」

教師「無傷……!」

生徒「ボクは魔法も使えないし、自殺もできないのか……」

生徒「なんて無能なんだ!」

教師(いやだから、その恵まれ過ぎた筋肉があるじゃん……)

教師「君はどうしてそこまで魔法使いになりたいんだ?」

生徒「ボク……子供の頃、魔法使いの人に助けてもらったことがあるんです」

教師「ほう」

生徒「火災に巻き込まれて、もうダメだと思った時――」

メラメラメラメラ…

子供『もう……ダメだ……。逃げられない……!』

ザバァッ! シュゥゥゥゥ…

魔法使い『大丈夫か?』

子供『あ、ありがとうございます!』

子供『あんな火を一瞬で消しちゃうなんて……魔法ってすごい!』

魔法使い『不可能を可能にするのが魔法だからね』

生徒「こんなことがあって……」

教師「魔法使いに憧れたというわけか」

生徒「はい……ボクもあんな風に魔法で人助けをしたかった……」

教師「……」

教師「……分かった。何とかして君が魔法を使えるようにしてやろう!」

教師「これを飲みなさい」

生徒「これは……?」

教師「“魔力薬”だ。ドーピング剤の一種で、これを飲めばどんなに魔力がない人でも魔力を宿せる」

生徒「ホントですか!」

教師「ただし、恐ろしい劇薬でもある。ほんの少しだけ――」

生徒「いただきます!」グビグビグビ

教師「ちょっ!?」

教師「何やってんだ! 全部飲むなんて!」

生徒「す、すみません!」

教師「それより体は大丈夫か!?」

生徒「う、ううう……」

教師「すぐ吐き出すんだ! 死んでしまう!」

生徒「うぐぐっ……! うぐぐぐっ……! うごぉぉぉぉぉっ!」

教師「すぐ回復魔法を――」パァァァ…

バチッ!

教師「弾かれた!?」

生徒「うごぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

シュゥゥゥゥ…

教師「耐えた……!?」

教師「生きてるということは……これで間違いなく魔力は宿ったはず……」

生徒(260cm240kg)「……」シュゥゥゥ…

教師「!?」ギョッ

生徒「ちょっと体は大きくなりましたけど……魔力は?」

教師「……」ピッ

『0』

教師「ダメだ! 筋肉が増えただけだ!(ついでに骨格も伸びてる)」

生徒「そんなぁぁぁ……」

生徒「やっぱり……やっぱりボクは魔法使いになれないんだぁぁぁ!!!」

生徒「うわあああああああん!!!」

教師「シ、シールド!」バリバリッ

教師(うぐぅ……泣くだけでこの威力……!)

生徒「あ、す、すみません!」

教師(まったく……この身体能力をフル活用したら一体どうなってしまうんだ……)

教師「……あ」

教師「……閃いた」

生徒「先生……?」

教師「君は魔法を使えるかもしれないぞ!」

生徒「え……!?」

教師「まずは炎魔法からだ。手をこするんだ」

生徒「こうですか?」ゴシゴシゴシ

教師「もっと激しく!」

生徒「はいっ!」ゴシゴシゴシゴシゴシ

シュボッ…

生徒「わっ……掌に炎が……!」

教師「今だ! 叫ぶんだッ!」

生徒「ファイアァァァ!」

ボワァッ!

生徒「で……出た!」

教師「この調子だ! 今の君なら他の魔法も使える!」

教師「汗をかけ! いっぱいかけ!」

生徒「ウォーター!」

ドバァァァァッ!

教師「思い切り息を吐け! ローソクの火を消すように!」

生徒「ウインド!」

ビュオオオオオッ!

教師「下敷きで髪の毛をこすれ! こすりまくれ!」

生徒「サンダー!」

バリバリバリッ!

教師「……どうやら全ての属性の魔法をマスターしたようだな」

生徒「先生……!」

教師「おめでとう、もはや君に教えることはない。魔法使いとして世の中に羽ばたきなさい!」

生徒「はいっ! ありがとうございます!」

教師「ただしくれぐれも魔法を悪用してはいけないぞ」

生徒「もちろんです!」

…………

……

校長「その後……彼はどうしてるかね?」

教師「世界中で大活躍してますよ」

教師「炎の魔法で、国を滅ぼしかねない大魔獣を倒したり……」

教師「大地の魔法で水源を掘り当て、水不足の地域を救ったり……」

教師「風の魔法で落ちてくる隕石を宇宙に吹き飛ばしたり……」

教師(まあ、どれもこれも魔力でなく筋力や身体能力による芸当なんだけど)

校長「魔法か……」

校長「しかし、あんな力技を魔法と呼んでいいものか」

教師「いいえ、校長」

教師「“不可能を可能にするのが魔法”……という点では彼も間違いなく魔法使いですよ」

校長「フッ、それが君の口癖だったな」

― 完 ― 
 
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1 . 名無しさん  ID:UG.vILgs0編集削除
テキストはつまらない。体験談だけにしてくれ

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