魔王「私に付けば世界の半分をお前にやろう」
勇者「半分!?」
魔王「(なんかリアクションが大げさだな……)」
勇者「は、半分……」
魔王「(なかなかいい手応えだな、所詮人の子か)」
勇者「ひ、一つ聞きたい!」
魔王「何だ」
勇者「その半分にお前は含まれているのか!」
魔王「...」
魔王「は?」
勇者「世界の半分だろ!
それは土地だけじゃなくそこに住む者も含めての話のはずだ!」
魔王「もちろんそうだが」
勇者「な、なら!」
魔王「だが私を含むわけ無いだろう」
勇者「」ガーン
勇者「そ、そんな……」ガク
魔王「(なんだ一体……)」
勇者「じ、じゃあ! 10分の1でいいからお前を入れるというのは!」
魔王「10分の1だろうと1000分の1だろうと
私がお前のものになったら分前の意味などあるまい」
勇者「なら、私もお前のものになれば問題ないって事だな!」
魔王「(なんか戦ってないのに疲れてきた)」
魔王「お互いがお互いのものなんて恋人でもあるまいし」
勇者「! お、お前……」
魔王「?」
勇者「そういうのは約束が成立したあと少し恥ずかしそうに言えよ!」
魔王「…………」
魔王「お前は私に何を求めているんだ」
勇者「お前自身だ!」
魔王「……? 魔王の座が欲しいというわけか?」
勇者「違う!」
勇者「ああもう、お前と話していても埒が明かん!」
魔王「こっちのセリフだ」
勇者「よし、お前の親連れて来い!」
魔王「何故」
勇者「で、その後私の両親に会え!」
魔王「何故」
魔王「お互い親を持ちださねばならん歳でもあるまい」
勇者「! ……」
魔王「……?」
勇者「そう、だな……」
勇者「親の許可なんて必要ない!
大事なのは私達の気持ち、そうだよな!」
魔王「当たり前だ」
魔王「……」
魔王「(しかし私の考えとは微妙に違う気がする)」
勇者「じ、じゃあ聞くが!
お前の気持ちはどうなんだ!」
魔王「お前のことは高く評価しているが」
勇者「ど、どの辺を評価したんだ!?」
魔王「どの辺て」
魔王「たった一人、我が軍の精鋭たちをなぎ倒して現れたのだ
その力は私さえ超えている可能性もあるだろう
世界の半分と言ったとおり、私と同格と認めよう」
勇者「うんうん、そうだ、互いが同格、認め合う、当たり前だよな」
魔王「……」
勇者「……」
魔王「……」
勇者「………………」
魔王「?」
勇者「……それだけか?」
魔王「それだけ?」
勇者「お、お前、それだけのことで自分に付き合えだなんてよく言えるな!」
魔王「…………」
勇者「私は何もできない女だ……生まれた時から勇者として鍛錬に明け暮れ、
他のことなど何もできない」
魔王「そうなのかもしれんが、苦手なことは私がいくらか補佐してやるぞ」
勇者「!」
魔王「……?」
勇者「ふ、ふふ……お前はなんて男だ
いや、私が馬鹿だった
そうだ、共に生きるとはそういうことなんだ……」
魔王「(なんかよくわからんが、納得したようだ)」
勇者「よし、私はお前とともに歩む!」
魔王「そうか、嬉しいぞ」
勇者「う、嬉しいって、臆面もなくそういうこと言うな!」バシッ!
魔王「(顔真っ赤にして何を言ってるんだこいつは?
ちょっと涙目だし……)」
一ヶ月後
魔王と並ぶ地位を手に入れた勇者主導の元
盛大な結婚式が魔王城にて開かれた
魔族人間を問わない客人たちの祝福の拍手の中
真っ白なドレスに身を包み、涙で頬を濡らしながらブーケを投げる勇者を横目に
式が終わり子供が生まれるその日まで
魔王の頭の上には疑問符が浮かび続けていたという
おしまい
最後まで読んで頂きありがとうございます
楽しんでいただけたら幸いですが、なんでしょう、このお話?
私には意味がよくわかりませんでした
意味がわかった方は是非私にも教えて下さい
では
・・・・・・・・・・・
魔王「これが、私と母さんの馴れ初めだ」
勇者子「(私達が生まれるまで理解が追いついて無かったんだ……)」
魔王子「(っていうか理解してないのにやることやったんだ……)」
魔王「今にして思えば、全ては勇者の策略だったのかもしれんな」
子s「え?」
魔王「魔物の統率者である私がいなくなれば、世の混乱は大きなものとなっただろう
だが、勇者は平穏に両種族の平和を手に入れた
全く、敵わないな」
魔王子「(絶対に違うと思う)」
勇者子「(確実に違うと思う)」
魔王「ふぅ……」
魔王子「? どうしたの、父さん?」
魔王「勇者は、幸せなのだろうか?」
勇者子「え?」
魔王「思えば、あの時も勇者は泣いていた
いかに最良の手段とはいえ、戦士として、女として
好きでもない相手に身を捧げるなど、嫌悪と屈辱でいっぱいだったはずだ」
勇者子「(兄さん)」
魔王子「(何?)」
勇者子「(お父さん一発殴っていいかな?)」
魔王子「(本人は真剣に悩んでるから……)」
魔王「今の平和は……お前たちが生まれたのも、もしかしたら私が今生きているのも
勇者のおかげ、と言えるかもしれない
私は今幸せだ、だが、勇者のことを思うと……」
勇者子「お父さん」
魔王「? どうした?」
勇者子「もしかしてバカなんじゃな」フガッ(口に手
魔王子「シッ!」
魔王「?」
魔王子「それなら、母さんに一言言ってあげればいいよ」
魔王「一言?」
ガチャ
魔王「勇者」
勇者「あ、ま、魔王か」
魔王「今日も魔族の言葉の勉強か、
私や通訳もいるのに、お前の勤勉さには頭が下がる」
勇者「お前は私と会った時から、人間の言葉がペラペラだったじゃないか」
魔王「為政者として当然だ……と言いたいが
実のところ、お前が現れなければ学ぼうとも思わなかったろうな」
勇者「え?」
魔王「一度お前と語らってみたかった
そのために勉強していたが……
はは、お前の来るペースが想像以上に早くてな、少し焦ったぞ」
勇者「だ、だからっ! いつもいつもそういうことをさらっと言うな!」カァァ
魔王「……お前には本当に感謝している
あの時には見えなかった、人間の面も色々と見ることができた」
勇者「な、なんだ、神妙な顔で……」
魔王「私にこんなことを言う資格があるのか、わからないが……
ありがとう、愛している」
勇者「」
勇者「」
魔王「」
勇者「」
魔王「……」ドキドキ
勇者「」
魔王「あ、あの……」
勇者「」ブワッ!
魔王「!?
魔王「ど、どうした!?」
魔王「(や、やはり私の事など!?)」
勇者「す、すまん……か、勝手に涙が……」
勇者「さ、最近、ちょっと、思ったんだ……」
勇者「もしかしたら、お前、私の言ってること、全然わかってないのに、
その場の勢いで結婚とかしたのかな、って……」グスッ
魔王「そこはまぁ、そうだっ!?」ガスッ(石
ドアの影
子s「」ゴゴゴ
魔王「(殺気!?)」
勇者「で、でも、今、愛してるって言ってくれて……
そしたら、なんか、嬉しくって……」グスグス
魔王「……」ギュ
勇者「ま、魔王?」
魔王「ふふ、今、初めてお前を抱きしているような気がする」
勇者「こ、子供まで生まれてるのに何言ってるんだ!?」カァッ
勇者「っていうか、やっぱり何もわかってなかったのか!?」
魔王「何を気にする必要がある?」
勇者「な、何をって……」
魔王「私は今、幸せだ
愛する者に愛されていたと、今更わかった」
勇者「〜〜〜っ! 遅すぎだ、バカ!」
魔王子「」グイッ
勇者子「あ、ちょ、ちょっと引っ張らないで!」
魔王子「親がイチャイチャしてる所覗くなんて趣味悪いでしょ」テクテク
勇者子「えー……」ズルズル
この出来事は、世界に平和が訪れたことに比べればとても小さいが
この家族にとっては、とても大きな出来事であったという
おしまい
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