新しい街で新しい装備を買った。
勇者が旅の中で必ずする『それ』に違和を感じたのは3つめの町へたどり着いたときだった。
着古した防護服、刃の欠けた剣、いらないアイテム。
それらを商店で売り払い、渡された額に――愕然とした。
勇者「あの、本当にこれだけなんですか?」
商人「えぇまぁ、性能も低いですし。あ、売った分のお金と合わせても新しい装備が買えないんですか?」
勇者「そうじゃ……ない」
僧侶「勇者様?」
魔法使い「どしたの?」
女盗賊「んー? こんくらいが妥当じゃないかなー」
購入した額と比較して50%のキャッシュバック。
世間一般で考えればこれでもかというくらい良心的だった。
だが、納得できない。
納得していいハズがない。
納得したら、この世のバランスが崩れてしまう。
故に、勇者は再度訊ねる。
勇者「アンタ、こんな額で買いたたくつもりか……?」
商人「え? いやぁ、適正価格ですよ?」
勇者「そう、か……」
僧侶「あの……勇者様? いったいどういうことなんです?」
最初に仲間になった、幼馴染みの僧侶が受け取った金貨の枚数を数え直してから考える。
彼女自身、この額で納得しているらしい。
勇者「馬鹿、野郎……っ」
女盗賊「ど、どしたの? 勇者くん怖いよ?」
勇者「だって、だってさ……」
勇者「こんな可愛い女の子が着古した服なのに元値より安く買うなんてあり得ないだろ!?」
僧侶「…………」
魔法使い「…………」
女盗賊「…………」
勇者はまず僧侶を指さす。
勇者「まず僧侶、お前だ!」
僧侶「はい!?」
勇者「一見地味な感じだが色々とパーツが整ってて、田舎出身なせいで逆に純朴さがある! 胸もそこそこあるし、礼儀正しくてお嫁さんには打ってつけだ!」
僧侶「えーっと……ありがとう、ございます?」
勇者「次に魔法使い!」
魔法使い「はいはい」
勇者「ミステリアスな感じと、魔法使いというジョブでありながらミニスカート、且つ脚線美はそんじょそこらの女王様にも負けないラインを作っている! 言ってしまえば、イイ感じに臭そうな足だ!!」
魔法使い「失礼な! 臭くない! ……え? もしかして臭う? どうしよう、ショック……」
僧侶「いえ、気になったことはありませんよ」
女盗賊「そうそう。徒歩で旅してるんだからちょっと臭ってもしょうがないよ」
勇者「そして女盗賊!」
女盗賊「はーい」
勇者「この中では一番の巨Oで人懐っこい。しかも絶滅危惧種のボクっ娘! 男子中学生辺りが告ろうと頑張る対象第一位だぞ!」
女盗賊「わっ、なんか大絶賛だ!?」
勇者は商人をまるで親の仇であるかのように睨む。
それほどまでに彼は怒っていたのだ。
最初の町で装備を整えたときは、驚きのあまり何も言えなかった。
2番目の町で、これは偶然ではないのだと悟った。
それでも3度目の正直を期待した結果がこれだ。
元値の50%だ。
あり得ない……あり得てはならない。
こんなに可愛らしい女の子の使用済みの衣服が元値以下で買いたたかれる現実なんて。
だから彼は激昂せざるを得なかったのだ。
勇者「わかったか? 商人さん」
商人「言いたいことだけは……」
勇者「で、いくらで買う?」
商人「元値の80%でどうでしょう?」
勇者「嘘だろ……? なんてアコギな商売を……」
商人「じゃあ90%……? これ以上はこっちも利益が……」
勇者「ん? もしかしてまた同じ値段で売りに出すつもりか?」
勇者「写真付きで売ろうと思わないのか?」
商人「!!」
勇者「もしアンタが話に乗るなら写真はこっちで用意する」
商人「……な、なるほど。敢えて使用済みであることを公言して売れば、仕入れ値を高く設定してもお互いに儲かるんですね?」
勇者「あぁ、そうだ。幸い、ここにみんなの寝顔写真がある」
商人「あ、でも女盗賊さんのヨダレがこぼれてるんですが……」
勇者「逆に興奮するだろ!」
女勇者「ね、勇者くん。ぼくらの写真ってどゆこと? ってか恥ずかしいからやめてよ!」
僧侶「いつの間に撮ったんでしょう? しっかりフラッシュまで焚かれてますね」
魔法使い「光ったのに気付かなかった自分がちょっと悔しいね。魔物に夜襲されなくて良かった……」
女盗賊「なんだろ……ぼく、勇者くんを信じちゃいけない気がしてきた」
勇者「トラストミー」
やがて最後の交渉が始まる。
勇者のカードは出揃った。
対する商人はただただ押されるばかり。
全員が固唾を飲む中、静かに白旗が掲げられた。
商人「も、元値の……3倍で買い取らせて戴きます」
勇者「っしゃああああああああああああ!!」
僧侶「勇者様が勇者様からお金の錬金術師になりそうな気がするのですが……」
魔法使い「ま、こういう交渉事も旅には必要よね」
女盗賊「ぼくも無駄に盗みを働かなくて済みそうだから、まぁ……うん」
三者三様の意見。
だが勇者は気にしない。
だって欲しかったのはお金ではなかったのだから。
彼はただ証明したかったのだ。
この3人の美女の使用済みの衣服には価値があるのだと。
*
その日の晩、勇者はみんなにお説教された。
僧侶からは、幼馴染みがこんなこと考えてたなんて知りたくなかったと。
魔法使いからは、比喩でも女の子を臭いと言うなと。
女盗賊からは、勇者くんの天職はもっと違うモノだと思うと。
僧侶「全く……しょうのない人ですね」
勇者「すまない」
魔法使い「けど可愛いって思ってくれてたのは嬉しいかな」
女盗賊「うん、ぼくもそこはちょっと嬉しかった」
女盗賊が勇者の肩に寄り掛かる。
おっぱいはぽよんぽよんだった。
女盗賊「ね、勇者くん。ぼく、可愛い?」
勇者「可愛い! prprしたいくらい可愛い!」
僧侶「なっ!? 女盗賊さん、危険ですよ! 危険が危ないですよ! 妊娠したらどうするんです!?」
女盗賊「えへへー。勇者くんの遺伝子はいちおー優秀だから欲しいなー」
勇者「お任せ下さい、マドモワゼル」
魔法使い「応じないで。明日から一緒に旅する気が失せる」
結局、貞操観念にうるさい僧侶と、気まずくなることを避けたい魔法使いの手によって女盗賊と勇者の子作りは阻まれたのであった。
負けるな勇者、頑張れ勇者。
女盗賊ちゃんはマジで良いお嫁さんになるから。
勇者「さて、装備は整ったし明日の朝にはまた旅に出るか」
女盗賊「おー!」
おしまい
もうちょっと頑張れる気がしたけど、だらだら長引かせてつまらなくさせたくないんで終わらせときます
女キャラの服が元値以下で売られるのっておかしいよね!?
みんなもそう思うよね!?
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