魔物少女「あ…あの…私、悪い魔物じゃないです」

勇者「だからどうしたの?」
魔物少女「み……見逃していただけませんか?」
勇者「え?いやだけど」
魔物少女「あぅ…………
もしかして…私…殺されちゃうんですか?」
勇者「うん」
魔物少女「…あぅ……」

魔物少女「あ…あの…私、人とかは襲わないんです」
勇者「へぇ」
魔物少女「森で、茸や山菜をとって生活してるだけなんです」
勇者「ふぅん」
魔物少女「な…なので…見逃していた」
勇者「いやだ」
魔物少女「…うぅ……」

勇者「じゃあ、サクサクッと倒しちゃうかな」
魔物少女「うぅ……」
勇者「はがねのけんの切れ味をためしてみるかな」
魔物少女「あ…あああ…」
勇者「よーし、いくぞ」
魔物少女「あ…ぅ…」パタッ
勇者「…あ…あれ?まだ何もしてないぞ」

勇者「おーい、生きてますかー」ツンツン
魔物少女「…ん…んん」
勇者「お、よかった。生きてるみたいだな」
魔物少女「ん…あ…はっ!」ガバッ
勇者「おっ、起きた」
魔物「…あれ?私はなにを?」
勇者「ん?俺に殺されるとこだったんだよ」

魔物少女「え?…殺され?」
勇者「うん」
魔物少女「…あ!」
勇者「思い出した?」
魔物少女「…お…思い出したくなかったです」
勇者「べつに思い出さなくても構わないけどね」

勇者「もうあきらめたら?」
魔物「……うぅ」
勇者「んん…、じゃあ特別サービスで先に攻撃させてあげる」
魔物「…そ、そんな酷いことできません」
勇者「しないと死ぬよ」
魔物「うぅ………
でも…私、たたかったことなんて…」
勇者「じゃあ記念すべき初バトルだね」
魔物「…嬉しくないです」

魔物「…え…えいっ」ポカッ
勇者「……え?今の攻撃?」
魔物「…手が痛いです」
勇者「……これは、
倒してもたいした経験値にならなそうだなぁ」

勇者「ヒトガタだからてっきり上級魔族かなんかだと思ったのに」
魔物少女「…そんなんじゃないです」
勇者「これじゃあ、スライム倒したほうがおいしいよ」
魔物少女「……うぅ」
勇者「じゃあ、なんか命のかわりに差し出せるものあるなら。
助けてやるよ」
魔物少女「ほ、ほんとうですか!」

魔物少女「…あ、でも高価なものなんてないです」
勇者「このさいなんでもいいや。
正直弱いもの虐めは格好悪いしね」
魔物少女「…勇者さん、かっこいいです」
勇者「よせ、褒めても何もでないぞ」

勇者「ふむふむ…」
魔物少女「ど…どうしたんですか」
勇者「よくよく見ると、なかなかかわいいじゃないか」
魔物少女「え…そ…そんな…照れます」
勇者「売O宿にでも売れば金になるかもな…」
魔物少女「ばい?なんですかそれ」
勇者「…いや…でも民は魔物を極端に恐れてるからな」
魔物少女「…さっきからなんの話しですか?」

勇者「そうだ、金持ちには物好きが多いときくし…」
魔物少女「ですから…さっきから何の話ししてるんですか?」
勇者「知りたい?」
魔物少女「はい」
勇者「じゃあ耳かして」ゴニョゴニョ

魔物少女「ひ…ひぃ…」
勇者「お前さん、頭の角以外は普通の女の子だしな。
やっぱり金を稼ぐといったら…」
魔物少女「お、お願いします!
それは、それだけは許してください!」
勇者「む…我が儘だな」

勇者「じゃあ、お前何か特技とかあんの?」
魔物少女「特技ですか?」
勇者「そう、魔物ならではの特技」
魔物少女「お料理は得意ですよ」
勇者「…いや、だから魔物ならではの」
魔物少女「お掃除やお洗濯もできます」
勇者「…こりゃ、やっぱ売るしかないか」
魔物少女「そ、それだけは許してください!」
勇者「えぇー」

魔物少女「そ…そうだ!
家にきてください。おもてなしをさせてくださいね」
勇者「宿代わりか…まぁ、そのへんで妥協してやるか」
魔物少女「ありがとうございます」

勇者「…ここがお前の家か?」
魔物少女「…は、はぁ、古い山小屋を一人で改築したんですが」
勇者「……おれの実家より立派だ」

勇者「中も綺麗だな」
魔物少女「いつも暇なので、お掃除ばっかりしてるんです」
勇者「そうか…まぁいいや」
魔物少女「まってて下さい。
今ご飯の準備しますから」
勇者「ああ、俺はそのへんで寝てるわ」

勇者「ごちそうさまでした」
魔物少女「はい、おそまつさまでした」
勇者「山菜や茸だけっつってもなかなか美味いもんだな」
魔物少女「ありがとうございます。
ちなみに、勇者さまは、いつも何を食べてるんですか?」
勇者「肉」
魔物少女「お肉ですか。何のお肉ですか?」
勇者「魔物」
魔物少女「そ…そうですか」

魔物少女「お風呂の準備ができました」
勇者「そんなもんまであるのか?」
魔物少女「えぇ…まぁ、簡素なものですけど」
勇者「お前、結構すごいな」
魔物少女「…いえいえ」

勇者「…こいつ、結構つかえるんじゃねえか?」

魔物少女「湯加減どうでした?」
勇者「なかなか」
魔物少女「そうですか。
お布団の準備ができてます。もうお休みになって下さい」
勇者「おう」
魔物少女「私はお風呂に入ってきますので、
なにかあったら呼んで下さいね」
勇者「わあった」

勇者「…さて、寝るかな」

コンコンッ
勇者「あぁ?」
魔物少女「…私です。入ってもよろしいですか?」
勇者「いいぞ」
魔物少女「失礼します」
勇者「何かようか?」
魔物少女「…いえ…あの…」
勇者「なんだ?はっきりしろよ」
魔物少女「…ぅ…その」

魔物少女「…ですから…男のかたは…」
勇者「…?」
魔物少女「…今日のお昼に言ってたじゃないですか」
勇者「…もしかして、アレのことか?」
魔物少女「………」コクコク
勇者「…あー、なんで急に?」
魔物少女「だって、男のかたは皆そういうことが好きだって
それに…勇者さま、私のことかわいいって…」
勇者「…確かに言ったような気がする」
魔物少女「…私…他にできることないし。
でも、そういうのは怖いし……でも勇者さまなら……」
勇者「だが断る」
魔物少女「えぇ!」

魔物少女「…やっぱり、魔物は嫌ですか?」
勇者「いや、そういうのじゃないんだ?」
魔物少女「…じゃあ」
勇者「俺、ちっちゃい娘はちょっと…」
魔物少女「あぁ…」

勇者「そうだな。もっと大きくなったら相手を頼もうかな」
魔物少女「え?…あ……」
勇者「じゃあ、眠いから寝るわ」
魔物少女「あ…おやすみなさい…」
勇者「おやすみ」

勇者「じゃあな」
魔物少女「はい、勇者さまもお気をつけて」
勇者「おう!」

魔物少女「いっちった……」
魔物少女「そういえば…
最初は殺されそうになったんだっけ」
ガクガクブルブルガクガクブルブル


数時間後

魔物少女「さてと、茸でもとりにいこうかな」
バフッ
魔物少女「きゃっ…なにこれ?……帽子?」
勇者「そうだ角を隠すためのな」
魔物少女「あわっ!勇者さま!
…も、もしかして…急に気が変わって私を食用にしようと」
勇者「似てるが違う」
魔物少女「に…似てるんですか?」
勇者「これからお前には炊事洗濯
その他諸々の雑用をやってもらう」
魔物少女「え?」
勇者「拒否権はないからな」
魔物少女「あの……」
勇者「どうした?拒否権はないんだぞ?」
魔物少女「…帽子ありがとうございます」


数ヶ月後

魔物少女「ご飯できましたよ」
勇者「………」
魔物少女「ど…どうしました?私の顔になにかついてますか?」
勇者「…いや」

勇者(……なかなか成長しないなぁ)

数年後

勇者「…おかしいな」
魔物少女「どうしたんですか?」
勇者「なんでお前は成長しないんだ?」
魔物少女「成長?してますよ」
勇者「いや、大人になるってことね」
魔物少女「私達はこの姿で大人なんです」
勇者「な、なんだってー!」

勇者「…う…嘘だ」
魔物少女「嘘じゃないですよ。
…赤ちゃんだって産めるんです」
勇者「…な…なんてことだ、これを楽しみして
魔王まで倒したというのに」
魔物少女「はい、勇者さま格好良かったですよ。
魔王を一撃で倒すんですもん」
勇者「畜生!ちくしょーーー!」


勇者「…はぁ、なんだか罪悪感が」
魔物少女「勇者さまー」スリスリ
勇者「こら、そんなにくっつくな」
魔物少女「元気な赤ちゃんが産まれるといいですね」
勇者「…そうだな」

勇者「…まぁ、いいか」

この後、この勇者は、当然のごとく歴史に名を残すことになる。
しかし、それは魔王を倒した勇者
ではなく小さな女の子を嫁にした
勇気ある者として……である


勇者「どうしたんだ急に」
魔物少女「今日の私は悪い魔物なんですよ。
いーっぱいいけないことしちゃいますね」
勇者「そうか、じゃあ悪い魔物は懲らしめてやらないとな」
魔物少女「…あぅ、勇者さまにやられちゃうよぅ」 
 
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1 . 1  ID:p6Vm.Kjt0[評価:5 ]編集削除
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